ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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戦いは基本的に後出しジャンケン。

 例え量が多くても、普段から防衛任務をこなしている隊員であれば、徐々に慣れて来るものだ。それはB級隊員でも同じであり、上位ともなればA級予備軍とまで呼ばれる実力を持つ彼らなら、すぐに対応してみせた。

 一匹ずつトリオン兵を捌き、確実に自分達の周りから敵を逃さないように仕事を続けた。

 その辺、一帯の最期の一匹を切り刻んだ奥寺と小荒井は、隊長である東に報告した。

 

「東さん、最後の一匹が片付きました」

「よし、じゃあ他の隊の加勢に行くぞ」

 

 そう指示をした直後だ。背後で既に骸と化していたはずのバムスターから、バキリと何かを割るような音が耳に響く。

 そのあとは徐々にバキバキッと連鎖的に響き渡り、やがて大きな穴を作った。そこから姿を現したのは、今まで東でも見たことのなかったトリオン兵だ。

 ウサギのような耳、太い腕、比較的小型かつ人の形をしている。一つだけ分かるのは、かなり不気味な雰囲気を纏っていたことだ。

 

「こいつもトリオン兵か?」

「初めて見るカタチしてんな……!」

 

 未知のトリオン兵を前にしても、中々に冷静な部下達だったが、東としてはあまり好ましくない。こちらが動かないからか向こうも動かないが、睨めっこしている場合ではないし、そもそも間合いが近すぎる。新型なだけあって何をして来るかわかんないのも厄介だ。

 すると、他の箇所から新手の群れか、衝撃音が他所から聞こえる。

 しかし、何をして来るか分からないバカなら、ボーダーにも一人存在した。運の良い事に、ランク戦で幾度となくぶつかった相手でもある。

 

「奥寺、小荒井。引き気味に戦るぞ。何者か分からないが、周りは気にせずこいつ一人に集中した方が良さそうだ」

「「了解!」」

 

 返事をしながら、3人揃って退がろうとした直後、一気に新型は距離を詰め、右腕を一番近くの奥寺に向かって行った。

 

「!」

「奥寺……!」

「小荒井、動くな」

 

 姿を消していない状況で撃つのは好ましくないが、この際仕方ない。奥寺と小荒井の間を抜けてアイビスが新型に向かう。

 直撃したはずだが、分厚い腕に弾がはじかれる。

 

(アイビスを弾いただと……⁉︎)

 

 とはいえ、多少でも動きが止まったため、奥寺は殴打を回避することが出来た。

 

「すみません、東さん」

「気にするな。それよりも目の前の奴に集中しろ」

 

 ほんの一瞬だったが、数メートルほどしか離れていなかったとはいえ、こちらの動き出しの方が早かったのに一瞬で距離を詰められた辺り、かなり素早い身のこなしだ。その上、アイビスを弾く装甲を持っている。おそらく、パワーも相当なもののはずだ。

 本部にすぐに報告しようとした直後だ。本部から先に報告がきた。

 

『こちら本部、各地の隊員へ。新型トリオン兵の存在を確認。サイズは3メートル強、人に近い形態、戦闘力は頭部から電撃、ショットガントリガーのアステロイドを受けても無傷の装甲。特徴として隊員を捕らえようとする動きがあり、諏訪が捕らえられた。以上』

「忍田さん、こちら東。アステロイドどころか、奴はアイビスも弾く」

『アイビスも……⁉︎ 了解!』

「ひぃ、た、隊員を捕らえる……?」

 

 小荒井がぶるりと身体を震わせる。捕らえられたらどうなるのだろうか? その後に新型が撃破されれば大丈夫なのだろうが、それも敵わなかったら? 考えれば考えるほど恐ろしい。奥寺も同じことを思ったようで、額に汗を浮かべている。

 

「落ち着け、二人とも」

 

 そんな中、二人の後ろから東が声をかける。その声に、2人ともハッと意識を取り戻した。

 

「目の前の人型を見ろ」

「……」

「……」

 

 無機質な目がジロリとこちらを見ている。無感情に攻撃して来る敵というのも、これ以上にない程怖い。その上、殺されるのではなく近界民の世界に連れて行かれてしまうのだ。両親とも、友達とも会えなくなる。

 青ざめる二人に、続いて東がさらに聞いた。

 

「アレと陰山、どちらが怖い?」

「「ぶふっ……!」」

 

 思わず吹き出してしまった。あのアタッカーの中でもトップクラスの実力を持ち、感情の色を読めるとかいうアニメではサイコキラーが持ってそうな能力、アタッカーの癖にアイビスを持ち、何処からでも壁抜きをぶっ放せる「見つけたら絶対殺すマン」の称号、B級ランク戦では毎度毎度の影浦との死闘の結果、二人の戦闘の半径20メートル以内の隊員は巻き込まれる事があるため「アレは最早自然災害」「ステージトラップ」「竜巻」とまで言われている、ある意味では二宮レベルで恐ろしい男の1人だ。

 そんな先輩と、所詮はプログラム通りに動くトリオン兵……そんなの、比較するまでもない。

 

「「……陰山先輩です!」」

「なら、まずは冷静になれ。怖がるな、とは言わん。適度な恐怖心は必要だ。しかし、必要以上に恐れることはない。忍田さんからの指示にもよるが、それが出るまではいつも通りやるぞ」

「「了解……!」」

 

 返事をした直後、さらに距離を詰めて来るラービットを相手に、奥寺と小荒井は孤月を構えて向かって行った。

 

 ×××

 

 本部より東、風間隊。菊地原に新型トリオン兵「ラービット」の拳が直撃し、後方に大きく殴り飛ばされる。

 それに追撃しようとラービットが動き出した直後、両耳が微妙に反応した。風間と歌川のステルス攻撃に反応し、弱点の口の中を閉じて一閃を防いだ。

 瓦礫の中から身体をパンパンと払いながら菊地原が2人に憎まれ口を叩く。

 

「もー、何やってんですか。一撃で決めてくださいよ」

「隠密攻撃に反応されたか。こいつも耳がレーダーっぽいですね。ワイヤーを使いますか?」

「いや、そこまでするほどの相手ではない。菊地原、装甲が厚いのはどこだ」

「特に厚いのは両腕、あとは頭と背中ですね」

「なら、まずは耳、その後に足、最後に腹をバラしていく」

「「了解」」

 

 そう返事をし、ラービットの動きをうかがう。今度は向こうから攻めて来ることはなかった。囮戦法を使い、隠密フィニッシュを決める風間隊の動きを学習しているのかもしれない。

 それならば、今度はこちらから攻めるまでだ。歌川がメテオラをラービットの足元に放ち、砂煙を立ち上げる。まず、耳よりも敏感な目を潰すと、三上から視覚支援をもらい、煙の中に突入した。

 風間と菊地原がラービットを囲んで、両腕の動きを封じつつ引き気味に立ち回る。その直後、ラービットは両腕を地面に振り下ろした。さっきと同じパターンだ。

 それによってコンクリートの地面が隕石が落下したように大きくサークル状に割れ、砂煙が晴らされてしまう。

 さっきと同じように、今度は歌川に拳を繰り出そうとした。今度は、拳を繰り出される前に菊地原が動いた。足を狙うよう、低姿勢になって一気に掻い潜るが、それも学習されていた。

 周りを薙ぎ払うように両腕の裏拳を振り回して一回転する。それを菊地原と歌川が後方に跳んだのと、風間がラービットの耳をステルスから一気に切断するのが同時だった。

 

「今度は一回で決めたぞ、菊地原」

「……聞こえてました?」

「次は足ですね」

「行くぞ」

 

 新型を前にしても、風間隊は慌てる様子を見せないどころか完全に平常運転だ。

 A級三位部隊の名は伊達ではない。元より遠征メンバーは黒トリガーに対抗できると判断された部隊、どんな新型が出て来ようと、彼らが負ける要素などまるで無かった。

 

 ×××

 

 某所、修と遊真は二人で大量のトリオン兵を相手に奮闘していた。そんな修の横で、黒豆サイズのレプリカが静かに告げる。

 

『数が多すぎるな。ここは退いた方が良い』

「でも、ここを通したら千佳達が……!」

『忍田本部長から、B級隊員は全部隊合同で避難の進んでいない地区から一箇所ずつ回っていくそうだ』

「そんな……!」

 

 それはつまり、避難の進んでいる地区は後回しになるということだ。現在、一番進んでいるのは千佳がいる地区だ。完全に修のしたことが裏目に出てしまった。

 多分、忍田の判断は正しいのだろう。自分の師匠である烏丸も、その判断に従い、部隊の合流を優先するだろう。逆にもう一人のウィス様なら、その指示などガン無視して、一人でここのトリオン兵を一掃しそうだ。例え、新型がいたとしても。

 

「っ……!」

 

 どうするべきか悩んでいる時だ。近くのビルから轟音が聞こえる。ラービットが姿を現した。

 

「新型……!」

 

 修をターゲット決めたラービットは、一気に飛び降りて拳を叩き付ける。それに対し、修はレイガストのシールドモードで対応した。

 拳は黄色い薄い壁に阻まれる。しかし、勢いまでは相殺し切れない。修の立っていた地面が沈み込んだ。二発目はマズイ。

 そう判断した修はレイガストに穴を開けた。

 

「アステロイド!」

 

 大玉の一発がそこから放たれる。しかし、反対側の腕で弾かれると共に二発目の準備に入られた。まさに攻防一体、厄介なことこの上ない相手だ。

 

「『強』印」

 

 横から聞き慣れた落ち着いた声が聞こえる。

 

「五重」

 

 ラービットの身体をガードした片腕ごと持ち上げて蹴り飛ばした。さっきまでとは違い、宇宙服のような戦闘体に身を包んだ遊真が修の横に立つ。

 

「うおっ、かってーなこいつ」

「空閑! 黒トリガーは使うなって言っただろ!」

「でも、このままじゃチカがやばいんだろ?」

「……!」

「出し惜しみしてる場合じゃない、一気に片付けるぞ」

 

 そう言って、追撃しようとした直後だ。銃声と共に降り注いだ弾丸が遊真に襲い掛かる。

 

「⁉︎」

「命中した! やっぱこいつボーダーじゃねーぞ!」

「本部、こちら茶野隊! 人型近界民と交戦中!」

「そこのメガネ、さっさと逃げろ!」

 

 ハンドガンを構えた少年二人が銃口を向けていた。修が弁解しようとした直後、二人の少年の横からゆらりとラービットが立ち上がる。

 

「そいつを蜂の巣にして……」

「! スラスター!」

 

 それが視界に入った修が、レイガストを投擲した。茶野隊の2人を巻き込んで、シールドモードのレイガストが後方に飛ぶ。

 

「なっ……⁉︎」

 

 裏切られた? と思ったのもつかの間、間一髪、2人が立っていた所にラービットの腕が降り注ぐ。

 さらに、そのラービットにアステロイドが大量に降り注いだ。絶え間なく、雨のように注がれる弾丸は、元々ダメージを受けていた頭部の外殻を砕き、中の目玉に穴を空けた。

 それにより、トリオンを噴き出して地面に横たわる。

 

「目標沈黙!」

「あ、嵐山さん!」

 

 嵐山隊が佐鳥を除いて揃って立っていた。レイガストから解放された茶野隊の二人が、嵐山に声を掛ける。

 

「あ、嵐山さん! 人型近界民が……!」

「落ち着け。彼は味方だ」

「え……⁉︎」

 

 そう諭してから、本部に声をかける。

 

「本部! こちら嵐山隊! 新型を一体排除した!」

『……っ!』

「……本部?」

 

 しかし、応答がない。いや、正確に言えば何か聞こえて来るがノイズが酷くて何を言っているのかわからなかった。

 反射的に本部の方に振り返ると、爆撃型トリオン兵イルガーが自爆モードで本部に突っ込もうとしていた。

 

「あれは……!」

 

 木虎が声を漏らした直後、本部で大きな爆発が起こった。

 

 ×××

 

 ズズン……と、内部にも大きな衝撃が響き渡る。それによって、作戦室の面々は一度、動きを止めた。

 

「なんだ?」

「本部にこの前の爆撃型が突っ込んで来たそうです」

「直接攻撃を仕掛けてきたのか」

 

 二宮は奥歯を噛みしめる。他にも新型のラービットなどが表で暴れているらしいし、本格的にこんな所で遊んでいる場合ではない。

 そんな時だ。ようやくバカの声が聞こえた。

 

「うおっ……揺れたな……。地震?」

「……寝過ぎだぞ、バカめ」

 

 ようやく目を覚ました。本当に死んだかと思った二宮としては、ホッと胸をなでおろす他ない。犬飼と辻も同様だった。

 

「何があったんですか? 俺、気絶してました?」

「大規模侵攻が始まった。もう一時間以上、外では戦闘が続いているぞ」

「あらら。それはすんません」

「ま、楽できたって言えば、楽できたんだけどね」

「そういう問題ではないでしょう」

 

 犬飼が隣からケタケタ笑うと、辻がツッコミを入れる。

 それにより、二宮はとりあえず忍田に報告した。

 

「忍田さん、ようやく陰山が目を覚ましました」

『やっとか』

「自分達もB級合同に参戦しますか?」

『いや、遅れた分は働いてもらう。二宮隊は単独で新型の相手だ。基地南部の敵を片付けろ』

「了解しました」

 

 返事をすると、そこで通信を切る。さて、ようやく出動だ。

 

 ×××

 

 B級合同のうち、合同できた部隊の中央で影浦が報告を聞いて声を漏らした。

 

「アア⁉︎ 二宮隊は別行動だァ⁉︎」

 

 言ってしまえば、B級と一口に言ってもその中での実力はムラが多すぎる。影浦や弓場、二宮、生駒、東といった単品の実力はA級並みである隊員もいれば、A級隊員レベルなら一人を相手に全滅させられてしまうかもしれない部隊もいる。

 しかし、影浦の不満はそこではなかった。ただ単純に……。

 

「チッ、あのバカがくりゃ、新型討伐数勝負でなんか奢らせようとしてたのによ」

「残念そうだね、カゲ」

「ああ? なわけあるか。いないならいないで清々するわボケ」

 

 隣の北添にチャチャを入れられ、舌打ちと共にそう返す。そんな二人の耳元に、柿崎の声が届く。

 

『オイ、カゲ! くっちゃべってる暇があんならこっちの新型手伝え!』

「ちっ、了解。ザキさん」

 

 ボーダー内でも、人当たりの良い柿崎に対し、流石に「うるせーバカ。テメェでなんとかしろこの野郎」とは言えなかった。そもそも、ラービットと張り合えるB級隊員は上位のエースしかいない。

 短く了承した影浦は、マップに写っているラービットの元へ向かう。この新型は確かに手強いが、影浦からすれば大した相手ではない。じっくりやれば倒せるし、部隊が揃っていればもっと楽に倒せる。

 とりあえず、柿崎が相手をしているラービットの前に立った。

 

「お待たせっす、ザキさん」

「やっと来たか!」

 

 他のB級隊員も次々に集まって来ているし、東の合流が済めばもっと楽に仕事が終わるだろう。

 せっかくの大規模侵攻なのだから、もっと面白い奴と戦り合いたい、そう思いつつ、とりあえず新型との交戦を始めた。

 

 ×××

 

 出水と米屋は走っていた。学校での昼飯を中断し、急ぎ足でトリオン兵を駆除しながら本部に向かっている。

 

「『変化弾』+『炸裂弾』」

 

 両手のトリオンキューブを、正面で混ぜ合わせる。

 

「『変化炸裂弾』」

 

 16分割されたトリオンキューブが、全て発射される。同じ方向に向かい、一番端の1発が正面のモールモッドの目を貫くと、残りの15発は方向を変えて別の獲物に襲い掛かる。

 一発ずつ、まるで各駅停車のバスがバス停を経由していくようにトリオン兵の目玉を撃ち抜きながら、最後の一発が消えるまで一六匹の敵を薙ぎ払った。

 その出水の背後から、モールモッドが襲いかかるが、それを米屋が飛び蹴りで弾きとばし、崩れた所を槍の投擲によって目玉をブチ抜く。

 倒したモールモッドの上に着地すると、槍を目玉から引き抜いて、頭上で振り回しながら次の敵に向ける。

 

「おい、背中がお留守だぜ弾バカ」

「るせー、お前がいたのが分かってたんだよ、槍バカ。おら、崩すぞ」

「はいよ」

 

 今度はハウンドを使った。自動で敵を追尾する弾で当たりどころよりも崩しをメインに使い、足元や体勢を傾かせる。

 警戒区域内であれば、わざわざハウンドを細かく分割などしなくても、メテオラで建物を瓦礫に変えて隙を作れるのだが、普通の住宅街ではそうも行かない。

 

「オラァ! 旋空孤月!」

 

 崩れた敵を一掃するように、真横に孤月を振り抜いた。正面にいた敵がほぼ全て真っ二つに割れ、トリオン兵達は一斉に動かなくなる。しかし、その後ろからさらにワラワラと湧いて出て来た。

 

「やれやれ……キリがねえな」

「それな。せめてもう一人二人いてくれりゃ……」

「二人とも動くな」

 

 直後、後ろから2人の間を抜けて弾丸が通る。それらが、正面のバムスターの口を穿った。

 後ろを見ると、三輪秀次が歩いて来ていた。

 

「俺を置いて行くとはどういう了見だ、お前ら」

「あー……悪い」

「クラス違ったし、走ってりゃ合流出来ると思ってたからな」

 

 三輪隊も太刀川隊も今日はオフだったが、大規模侵攻ともなれば休んでなどいられない。なんであれ、頼もしい援軍である事には間違いない。

 二人を見て、三輪があと一人足りないことに気づいて聞いた。

 

「海斗はどうした?」

「あいつは本部で待機だ」

「ここ最近、二宮隊は毎日入ってるよな」

 

 それを聞いて、三輪の表情は少し曇る。二宮は真面目な性格であり、それはボーダーの活動だけでなく大学生活に対しても同じはずだ。

 そんな人が毎日、シフトを入れるとなると、何かあるのではないだろうか? 二宮隊に何かあるとすれば、九割の確率でバカ関係だ。

 

「三輪、来るぞ」

「ああ」

 

 今は考えている暇はない。目の前から迫ってくる白いバケモノの群れを片付けなければ。そう思ってハンドガンを向けた直後だ。その白いバケモノ達の隊列が突然崩れた。

 何かと思って群れの中心を見ると、小さな少年が両手にスコーピオンを構えて立っていた。

 

「あれ? いずみん先輩とよねやん先輩と三輪先輩?」

「緑川!」

「そこはみわりん先輩でも良いんじゃね?」

「陽介、お前から殺すぞ」

 

 これで援軍は二人になった。A級一位部隊の射手、A級四位部隊の攻撃手、A級七位部隊の隊長と攻撃手。狙撃手がいないが、これだけ間合いが近ければ、むしろアタッカー2人、オールラウンダー1人、シューター1人はベストのバランスと言えるだろう。

 一旦、緑川が3人の前に飛びのき、3人は各々の武器を構えた。

 

「俺が指揮を執る。前衛に陽介と緑川、お前らは好きに暴れろ。俺と出水でフォローする。良いな?」

「「「了解!」」」

 

 即席の4人部隊は、三輪の号令と共に突撃した。

 

 ×××

 

 遠征艇の中には、6人の近界民がモニターを眺めていた。うち、5人は角付き、所謂トリガーホーンという人工的に作られたトリオン受容体だ。トリオン量に加え、質も大幅に上がる。

 アフトクラトルの面々は、ボーダーの戦闘員の戦闘をじっくりと見物していた。

 基地を叩いてみたが、目標である雛鳥達は見えなかった。分散の手にも掛からなかったし、中々に手強いのかもしれない。

 なんであれ、自分達の出番は、彼らの戦力の底が見えてからだ。その時が来るまで、しばらく待機し続けた。

 

 


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