戦闘体から生身の体に戻ったエネドラは、二宮隊と影浦隊の面々に取り囲まれていた。
向けられている銃口やブレード。敵のエースと思われる馬鹿二人だけが武器を出していないのがまた困った。
流石にこの状況で焦らないことはない。額に汗を浮かべながら、中腰になって距離を置こうとする。しかし、背中にドンっと何かがぶつかった。二宮がポケットに手を突っ込んで立っていた。
「逃げられると思うな、近界民。お前は捕虜にする」
「チッ……猿どもが……!」
「おっと、下手な事は言わない方が良いよ、近界民さん」
「テメェ今二宮さんのこと猿っつったかアーハン⁉︎」
「……二宮さん大好き人間がいるから」
「犬飼、気持ち悪いことを言うな」
油断も隙もない。ワープでもしない限りは。それを可能とする遠征メンバーが来るまで、時間を稼ぐしかない。
「ハッ、テメェら……街を守らなきゃなんねえって時に、こんなとこで雁首揃えてて良いのかよ?」
「黙れ。それとも、捕虜になるまで眠っていたいのか?」
直後、二宮の周りにトリオンキューブが浮かべられる。星の数ほど、というか夜空が目の前に浮かんでいるような数だ。ボーダーのトリガーは生身の人間は傷つけないが、それでも気絶するほどの痛みを与える事が可能だ。
(……何やってやがる、ミラ……!)
奥歯を噛み締めた時だ。後ろから海斗がエネドラを蹴り飛ばした。
「ガッ……⁉︎」
うつ伏せに倒れた所、背中を海斗が踏み付け、背中に「泥の王」本体が装備されている腕を回して捻じ上げた。
「こいつなんか知らんけど時間稼ぎしようとしてますよ」
「なっ……⁉︎」
「なるほど。なら、陰山。そのまま押さえ付けておけ」
そう命令しつつ、二宮は影浦に顔を向けた。
「影浦、救援感謝する。しかし、ここは俺達で受け持つ。B級合同に合流しろ」
「……チッ」
正直、二宮の命令に従う必要はない。しかし、ここに残っていても退屈である事は確かだ。
「おい、海斗」
「あ?」
「テメェを殺るのは俺だ。相手が黒トリガーだろうとやられんじゃねえぞ」
「そりゃこっちのセリフだボケ」
それだけ言って、影浦隊はB級合同部隊の方へ引き返した。その影浦の背中を眺めながら、エネドラは思わずつぶやいた。
「テメェらよ、どういう関係なんだ? 戦闘中、クソ仲良かったくせに憎まれ口叩き合うとか……」
「誰と誰の仲が良いんだボケがァッッ‼︎」
「いだだだ! 肩外れる、肩外れるって!」
正直、エネドラもこっちの世界出身なら仲良しトリオになってそうだな、と二宮も犬飼も辻も氷見も思ったが、口にしなかった。言わぬが花である。
そんな時だ。ブゥン、と海斗の周りに黒い穴が空いたことで、緩みかけた空気が一気に引き締まった。
「!」
再び、トリオンキューブを出す二宮と銃口を向ける犬飼、孤月を構える辻、反射的にエネドラを持ち上げてその場から離れる海斗。全員が全員、油断なく黒い穴を睨むが、さらに海斗を追うように暗い穴が出現し、黒い棘が向かってくる。
「うおっ、ちょっ、何……!」
「はっ、終わったなテメェ! こいつはミラの……って、待て待て待て! 俺を盾にすんなコラ! 俺にも刺さんだろうが!」
「クソガード!」
「テメェ、今はトリガー使ってねえんだからクソじゃねぇだろ! つか、いい加減にしろ猿!」
なんかあの二人が話すと緊張感が無くなるが、それでも海斗は狙われ続けるわけで。
二宮隊のメンバーは気を抜く気にはなれなかった。黒トリガーは撃破した。しかし、新たな敵の攻撃。迅の予知はもしかしら、現在の状況を指しているのかもしれない……。
そう思った時だ。海斗がエネドラを腰を掴んで頭上に持ち上げて走っている時、そのエネドラの真上に暗い穴が現れた。
「! 陰や……!」
そう二宮が言いかけた時には遅かった。その穴から出て来た棘は、エネドラの腹に突き刺さる。
「グァッ……⁉︎」
「え? どうしたの? なんか赤い雨が……あれ? 血?」
思わず足を止めてエネドラを見上げると、黒い棘がエネドラに突き刺さっていた。
「え、嘘⁉︎ 俺の所為か⁉︎ 俺の所為なのか⁉︎ ちょっ、止血止血……や、やり方分からんし……!」
「て、テメェ……何のつもりだ……!」
「いやいやいや! 一応、お前を庇うために持ち上げてたとこあんだけど⁉︎ 逃げてる奴を止めるにはまず足を狙ってくるかなって思って!」
「ミラ‼︎」
何言ってんだこいつ、と思った時だ。さらに別の箇所からザシュッと人体を切り裂いたような音が耳に響いた。そっちに顔を向けると、エネドラの左手首が斬り落とされていた。
「おいおいおい! もしかして狙われてたのって俺じゃなかった?」
というか、なんで左腕? と思いながら、落ちる左腕をギリギリキャッチする。
とりあえず、頭上のエネドラを地面に置いた。
「おーい、生きてる? 平気?」
人体にいくつも穴が空いた上に片腕を取られたのなら、無事でいられるはずがない。そもそも、そんな状態の人間に普段と変わらない様子で声を掛けられる海斗も中々の神経だったが、そんなものにツッコんでいる場合ではない。
「海斗くん、とりあえずそこから離れて!」
「狙われてるぞ!」
犬飼と二宮がそう言った直後だった。海斗の真下に大きな穴が空き、その中に海斗は落下していった。
×××
時は遡り、基地南部。そこは旧・三門市立大学だった。そこの屋上で、ランバネインは辺りを回していた。
小さい隊長とその部下達を追って来たが、ここにきて姿を隠された。場所は高いビルが多い。恐らくだが、屋内戦を仕掛ける気なのだろう、とランバネインは予測した。
今まで、ランバネインの飛行トリガーを見て、屋内戦を仕掛けてくる気の敵は何人もいたが、そもそも飛行よりも火力がメインのランバネインとしては、屋内戦の方が攻撃が当てやすくなる。
中々、手強い部隊であったはずだが、その程度の事に気付かないとは、とやや落胆してしまう。
それがおそらく隙になったのだろう。自分に目掛けて、ボッと大きな炸裂弾が飛んできた。
「!」
屋上から飛び降り、回避しながら撃ち返すランバネイン。射撃の方向には、さっきまで戦闘していた部隊の男がいた。
射撃戦を仕掛けて来た? と、微妙に腑に落ちない。ここまでわざわざ誘導して来ておきながら、不利である撃ち合いとは、必ずしも裏がある。
そう思った直後、別の場所から射撃がきた。見覚えのないオレンジ色の隊服の男がアサルトライフルをこちらに向けていた。
それを回避しつつ、ランバネインは「なるほど」と、小さくほくそ笑んだ。ここに追い込んできたのは、屋内戦のためではない。そもそも、ここは敵地だ。援軍が来る可能性は大いにあるに決まっている。地の利を活かした射撃戦だ。
これでは、あまり高く飛んでは的になる。
「面白い……!」
この射撃戦に応じよう、そうほくそ笑みながら、建物の間を飛び続けた。
×××
「そうだ。撃ち続けろ。敵は人型近界民だ」
大学の一教室の窓からランバネインを監視している風間は、協力を得たB級隊員に声を掛けた。
参戦しているのは柿崎隊、荒船隊、鈴鳴第一の三部隊だ。村上は来馬と別役を逃がすために1人、新型三体と戦っているので不在だが。
「……風間さん。本当にやるんですか?」
菊地原が風間に尋ねる。
「ああ、やる」
「確かにその戦法の練習もしてましたけど……」
「なら、集中しろ。お前の援護も必要になる」
「なんか、陰山先輩のバカが移ってません?」
「……気の所為だ」
「なんですか、今の間は」
正直に言って影響を受けていないわけでもないかもしれない。以前の自分ならこんな戦い方は思い付かなかった。
しかし、それでも悪い気はしない。元々、近界民の存在自体がSFの世界なのだ。映画の戦法を真似したところで、悪い事は何もない。
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
それだけ言うと、風間は窓から飛び出した。
×××
空を飛びながら、ランバネインは敵の分析を行っていた。恐らくだが、ガンナーが五人に狙撃手が四人。しかし、腕の良い敵は少ない。決して下手なわけでもないが、避けるのに苦労はない。たまに飛んでくる追尾弾は厄介だが、この弾は小回りが利かない。地形を利用すれば建物に命中するので問題なかった。
「とりあえず、一人ずつ潰していくか」
そう決めて、曲がり角を曲がった時だ。自分の身体に重たい衝撃が響いた。何かと思って顔を向けると、小さな隊長が自分に飛び蹴りを放って来ている。その足からブレードが生えていて、自分の脇腹を貫通していた。
「ッ……!」
捨て身の特攻かと思えば、飛んできた小さな隊長の頭上の手には、ワイヤーが握られている。
しかし、それを視認した頃には、遠心力を用いた勢いによって体勢は崩され、近くの建物に突っ込んだ。
「グウゥウッ……‼︎」
廊下に投げ出され、尻餅をつきながらも受け身をとり、なんとか体勢を立て直す。
それをさせまいと、風間が追撃した。一教室の中で風間とランバネインが正面からぶつかり合う。別に銃器を出さなくても光球を放てるランバネインの猛攻を回避しつつ、天井や壁、床に張り付きながら風間は距離を詰め、一発当ててすぐに距離を置いた。無理な攻めはしない一撃離脱作戦のようだ。
(…………いや)
違う、とランバネインはすぐに頭を切り替える。おそらくこれは、陽動!
そう確信し、背後にシールドを張る。後ろから、歌川がメテオラを放って来ていた。それを防ぎ切ると、お返しと言わんばかりにビームを放つが、元々距離があったからか、避けられてしまう。
「チィッ……‼︎」
あの高度な連携を誇る部隊が2人とはいえ揃っている。それをこの狭い空間で相手にするのは厄介だ。真上に光球をまとめて放ち、逃げ道を作るとすぐに飛び上がった。
そのランバネインを眺めながら、風間はすぐに次の指示を出す。
「人型が屋上に上がった。射撃地点の移動が完了した者から射撃を開始しろ」
『『『了解』』』
全員から返事を聞くと、風間は再び窓から飛び降り、ワイヤーを出しながら空中を移動する。
飛行中のランバネインは、敵の射撃を回避しながら反撃した。飛びながらでは当たらない上に、一発でも反撃が来れば、当たろうが当たるまいが建物の壁を利用して逃げ、別の狙撃地点を探しに行かれてしまう。中々に面倒な相手だ。
そんな中、またワイヤーで空中を移動しながら風間が蹴りを入れてくる。
今度は当たらない。シールドでガードをしてビームで反撃するが、それは読まれていたようで、回避しながら壁に張り付き、再びワイヤーを用いて攻撃してくる。
「ハハハッ、この俺に向かって空中戦を挑んでくる奴は初めてだ‼︎」
「そうか。良かったな、初体験だ」
風間は敵とお喋りしながら戦うつもりはない。短く会話を打ち切り、計画通りに離れ、一撃離脱を試みる。ランバネインが風間の背中に射撃しようとした時、別方向から狙撃が飛び、ランバネインの頬を掠めた。
「チッ……なるほど。囮の囮というわけか。ならば」
その狙撃の方向に、雷の羽を4〜5発撃ち返した。狙撃手や射撃手には精度ではなく、数と火力で押し切ることにした。直後、放った狙撃地点から光の柱が立つ。
「なるほど、負けたら逃げられる仕組みか。玄界は便利なトリガーを持っているな」
そう言ってる間に、別の建物の窓から射撃が飛んできたため、回避しながら次の獲物を狙う。敵を倒せば倒すほど厄介な射撃は減っていく。
続いて、次の射撃手に5〜6発の弾丸を浴びせた。そこからも脱出の軌跡が見える。
その跡を見て、風間が三上に確認を取る。
「誰だ?」
『鈴鳴の別役くんと柿崎隊の巴くんです』
「チッ……荒船や半崎でないだけ良かったが……やはり、長くは保たないか。聴覚共有だ」
『B級隊員にはどうしますか?』
「必要ない。慣れていないと射撃や狙撃の精度が落ちるかもしれん」
『了解です』
耳を使って敵の動きを先読みし、必ず裏を取れるようにする事にした。
空中を移動しながら味方の隊長達に言った。
「荒船、柿崎、来馬。敵はお前らを集中的に狙って来るぞ。精度より数を優先されているから、わかっていても避けられないかもしれない。気を付けろ」
『『『了解!』』』
指示を飛ばした直後、また新たな光の柱が立った。また一人、荒船隊の穂刈が落ちたようだ。グズグズはしていられない。
建物と建物の間にワイヤーを張りながらランバネインに再び奇襲を仕掛けた。
「ほう、またも先手を譲ったか……俺の動きを先読みするトリックでもあるのか?」
「どうかな」
そう言いつつ、空中戦を展開する。奇襲はいなされたが、そのままの勢いで逃げるランバネインを追う風間。
直後、ランバネインから2時の方向から射撃が飛んできた。来馬のハウンドだ。追尾弾であるため、ランバネインの後を追う。それに対し、ランバネインは正面から4〜5発飛んできた追尾弾に自身の弾を被せて撃ち抜き、そのまま来馬を撃破した。
来馬の捨て身のお陰で脚は少し止まった。一気に風間が距離を詰め、襲い掛かる。
しかし、それは端的に言って罠だった。空中で身を翻したランバネインは、風間に球を向ける。
「熱くなり過ぎたな!」
「……そうだな」
その球が放たれる直前、ランバネインに一発の射線が向かって来る。隣のビルの屋上の一つ下の階から、帽子を被った男が狙撃して来る。
それは、ランバネインにとってカモでしかなかった。風間と荒船に対し、射撃を思いっきり放った。ビルと風間が爆発し、ランバネインは動きを止める。これで終わった。後は雑魚を狩れば良いだけ……そう思ったのだが、おかしい。敵を倒した時に出るはずの脱出トリガーの跡が見えない。
そう思って両サイドを見た時、風間は片腕を失いつつも、周囲のメンバーからシールドを受けて生き残り、そして荒船は片足を失いながらも、ビルから飛び出して孤月を抜いていた。
「なんだと……⁉︎」
二人が生き残れたのは、二箇所への同時射撃によって狙いと弾数が半端になっていたのと、周りの人間のシールドをもらった事だ。なんであれ、ランバネインが動揺したことには変わりない。
真逆からの斬撃に対し、ランバネインはシールドで対応する。イーグレットを防ぐシールドで斬撃を止め、手の平から雷の羽を放つ準備をする。今度こそ、ゼロ距離だ。絶対に防げない。
「中々楽しかったぞ。玄界の戦士達よ」
本当に気が高ぶっていた。こんなに興奮する戦いは久しぶりだった。ニヤリと好戦的な笑みを浮かべながらも、後一歩叶わなかった戦士達に敬意を向ける。
「受け取れ」
そう呟き、トドメを刺そうとした時だ。
「残念ながら、こっちのターンはまだ終わっていない」
「……なに?」
その直後、突如現れた二人組みが、ランバネインのトリオン供給機関を一撃で破壊した。姿を現したのは、目の前の小さな隊長の部下2人だった。
「っ……まさか、最後の最後でステルス戦法だったとはな……!」
悔しげに、しかし愉快そうにほほえむランバネインの顔に、ピシピシと亀裂が走る。
「迂闊だった……」
そう言って戦闘体から生身に戻り、そのまま地面に落下していったが、そのランバネインの脚を風間がスパイダーで巻き付け、激突する前にキャッチする。
「本部、こちら風間隊」
通信機越しに忍田に報告した。
「人型を撃破した」
『……っ!』
しかし、通信の向こうでは何やら忙しない声が聞こえる。何かあったのか? と思ったのもつかの間、忍田から連絡が来た。
『……風間隊。突然で申し訳ないのだが、緊急任務だ』
「はい?」
『陰山隊員が敵に連れ去られた。即刻、捜索と救出を頼む』
「……」
バカは、いつも風間の予想の遥か上を行く。風間の額に珍しく冷や汗が浮かんだ。
×××
海斗は、気がつけば知らない船で尻餅をついていた。目の前には黒い角の近界民が二人、海斗の右手にはエネドラの左腕が握られていた。
「何お前ら。近界民?」
「無駄だと思うが聞いておこう。そいつを渡せ」
「そいつ?」
「手に持っているものだ」
「あそう。了解」
素直に了承すると、海斗はエネドラの腕から「泥の王」を外し、握り拳を作った。
「はい、ロケットパンチ」
エネドラの腕を敵の近界民のうちの一人、ハイレインに渡す。
ハイレインはその腕を横に打ち払うと、相変わらずの無表情のまま海斗に片眉を挙げた。
「……何のつもりだ?」
「いやだって腕が欲しいって言うから」
「……ミラ、何故こいつをここに連れて来た」
「隊長のご命令でしたので」
ハイレインの予定では、どの道簡単に黒トリガーを渡すとは思っていなかったので、元の場所に戻るのと黒トリガーを引き換えにする予定だった。あとは卵の冠で海斗ごと回収すれば、泥の王を相手に左腕一本で勝利した優秀な兵隊を手に入れられた。
しかし、まさかここまでリラックスされるとは思わなかった。そもそも、こいつは敵の遠征艇に捕まっていることすら分かっていないのかもしれない。わかっていても、それがどれだけの窮地を示しているのか理解していない。
バカとはある意味面倒なものだ、そう思った時だ。
「それよりさ、一つ聞かせてくれない?」
「……なんだ?」
「なんであいつの事殺したん? 仲間じゃなかったのか?」
「こちらの都合だ。貴様には関係ない」
「……」
なるほど、と海斗は内心で相槌を打つ。最近、三輪秀次という友達が出来て、少し人の死について考えることもあった。自分の両親の死に関しては今だに特に何か思う事もないが、三輪は自分の姉が殺されて本気で悔やみ、悲しみ、憎んでいた。その為にボーダーに入り、近界民を片っ端から片付けるマンに変化した。
エネドラにも両親や家族がいたはずだ。ムカつくオカッパウ○コだったが、その家族が「エネドラは仲間に殺された」と知ればどう思うのだろうか? その怒りはどこにぶつければ良い?
「……よっこいしょーいち」
海斗はその場で立ち上がり、首をコキコキと鳴らす。抵抗される可能性も考えていたハイレインは、海斗に見えないよう遠征隊の中に動物達を張り巡らせる。
しかし、海斗は好戦的に微笑み、ハイレインに告げた。
「見えてるぜ、このワクワク動物野郎」
「……何?」
「テメェらなんか相手にしていられるか。それより、この船の何処を壊しゃ、テメェらはこっちの世界に永久に留まる事になんだ?」
そう言った直後、海斗は脚を振り上げ、遠征艇の机を蹴り飛ばした。床から浮かび上がり、ハイレインの視界を塞ぐ。
すぐさま回避した時、レイガストの投擲が目前に迫っていて、反射的に回避したが、背後のトリオン兵を生み出す卵に直撃する。
「チィッ……ミラ! こいつを追い出せ!」
「泥の王は如何いたしますか?」
「ヴィザとヒュースに追わせろ。必要ならば俺も出る」
「了解」
そう告げられた直後、海斗の正面に再び黒い穴が開かれる。突撃しようとしていた海斗は見事にその中に突っ込んだ。