ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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ギリギリなのもいいとこなんですけど。

 鉛弾によって重さを増した星の杖のブレードだが、それでも速さはギリギリ目で追える程度の速さは保っていた。その上、ヴィザの攻撃からは「攻撃するぞ」という感情がほぼ感じられない。それでもほんの些細な変化からなんとか海斗が見据え、内部通信で指示を出して全員が回避なりガードなりで凌いでいた。

 しかし、敵の人型はヴィザ一人ではない。横からヒュースが磁力による攻撃が飛んでくる。その攻撃は、出水が全て相殺していた。

 ヒュースの弾を凌ぎつつ、ハウンドをヒュースに放つ。それを盾と宙に浮いてる破片で跳ね返されるが、その隙にグラスホッパーを踏んだ緑川がヒュースに接近する。

 ブレードを振るおうとする緑川に対し、カウンターを放とうと身構えるヒュースだが、目の前で再びグラスホッパーを使われ、通り過ぎた。

 直後、さらに別方向から米屋が仕掛けた。幻踊孤月によって肩を穂先がナメたが、致命傷ではない。

 突いた槍を引っ込めて、すぐさま突きかかる。槍の長さを活かしてそれなりに距離を保ちながら攻防を繰り広げる。

 本命は、その後の三輪秀次だ。ハンドガンを向け、弾を放った。銃弾はヒュースに一直線に向かうも、盾がそれを阻むように形成される。しかし、その弾は軌道を変えた。

 

「!」

 

 初見なら当たっていただろうが、この弾を使う相手とは既に戦闘済みだ。ガードを広げ、弾を防ごうとした時だ。頭上からバカが奇襲して来た。緑川のグラスホッパーを借り、大きく真上にジャンプした海斗はアイビスを構えている。

 しかし、ヴィザが構えを取っているのを見て、攻撃はキャンセルせざるを得なくなった。

 

『斬撃が来る。全員しゃがめ!』

 

 それにより、全員ヒュースから距離を置きつつ、斬撃を紙一重で回避する。それでも肩や脇腹を掠めたりしていたため、完全に回避しきることは出来ない。

 

『どうする? このままでは削り殺されるだけだ』

『あの全方位斬撃のお陰で数の優位も活かせてないしな』

『分断した方が良いんじゃない?』

『だな』

 

 攻撃を凌ぎつつ、作戦を展開する。会話に参加できていないのは、もちろん海斗だけだ。バカ過ぎるというのもあるが、会話している暇があるならヴィザの斬撃のタイミングを口頭で伝えなければならない。

 

『あの斬撃は海斗でなければ躱せない。鉛弾をさらに重ねれば斬撃の速度は落ちるし、俺と海斗で黒トリガーを引き受ける』

『了解。じゃあ俺と出水と緑川で磁力の方だな』

『じゃ、とりあえず一発ぶっ放すから、だれか磁力の方を連れて行ってくんない?』

『はいよ』

『はいはい』

 

 そう言った直後、出水は二種類のトリオンキューブを混ぜ合わせ、八分割する。

 

「『変化炸裂弾』」

 

 その弾が突撃し、四つずつ左右に分かれ、ヴィザとヒュースに向かって行く。

 

「「!」」

 

 その二発をガードする事により、大きな爆破が起こる。その隙を突いて、米屋と緑川がヒュースに突撃した。

 

「チィッ……!」

 

 二人の斬撃を磁力の盾によってガードする。直後、自分の腹に何かが直撃した。レイガストのシールドモードが、自分の腹を掴むような形で突撃していた。

 それに気づいた時にはもう遅い。スラスターにより、自分の身体は大きく後方に連行されていった。

 

「……さて、黒トリガー相手に2人になったわけだが」

「問題ない。忍田さんの話によれば、もう2人ほど援軍が来るらしい」

「へぇ、誰?」

「俺が嫌いな二人組だ」

 

 一発でわかってしまった。それが誰なのか。考えるだけで胃が痛くなるメンツだが、この際、気にしている場合ではない。

 

「お前は良いのか?」

「問題ない。目の前の敵を倒すぞ」

 

 その声は、つい数週間前に聞いた声だ。空閑遊真を見つけ、殺す気が昂っている時の三輪の声。あの時は厄介この上なかったが、現状ではここまで頼もしい存在になるとは思わなかった。

 

「……やるぞ、海斗」

「あいよ」

 

 短く返事をして、2人で敵の遠征部隊最強のコマに襲い掛かった。

 

 ×××

 

 スラスターにより飛ばされたヒュースは、途中で自身のトリガーでレイガストを破壊した。

 しかし、そのヒュースにさらに米屋と緑川が強襲する。2人がかりで攻防を続けながら機動戦に持ち込んだ。

 

(なるほど、俺とヴィザ翁を引き離すつもりか)

 

 狙いは読めた。確かに、自分がヴィザの援護に回れば、たとえ5人掛かりでも返り討ちに出来る。

 しかし、ヴィザに対し2人がかりというのは少な過ぎないだろうか。まぁ、敵に対してそんな助言をするつもりは毛頭ないが。むしろ、自分で三人も足止めできるなら、それこそ望むところだ。

 

「『メテオラ』」

 

 後方から声がすると共に、前の二人が後ろに飛び退いた。爆発する弾が自身の盾に直撃し、ヒュースも距離を置くように下がった。

 さて、まずは的確な分析からだ。まずは槍使い。相当、戦い慣れたように見える大胆かつ繊細な動きは中々にやりづらい。特に、自分が受けた躱しても当たる攻撃には注意が必要だ。

 続いて、小さい奴。動きは機敏で、空中で跳べるジャンプ台のようなものは厄介で、腕も悪くない。しかし、3人の中では一番若い。隙があるとしたらこいつだろう。

 最後に、後方の黒コート。黒いコートは自分達の黒いマントとかぶってる、なんてしょーもないことは思わなかったが、一番の要注意はこの男だ。操る弾の精度は高い上に、直撃すればタダでは済まない威力、その上、援護をするのが敵ながら上手いのはかなり厄介だ。

 とりあえず、まずは数を減らす所からだ。

 

「『蝶の楯』」

 

 自身の唯一の武器でありながら、応用の幅は唯一と思わせないトリガーを車輪の形にし、目の前の三人に飛ばした。

 

「うおっ、来た」

 

 米屋が声を漏らすと共に、襲い来る攻撃を回避する。

 派手な攻撃は目眩し。本命は、磁力を使った死角からの攻撃。しかし、それは出水のハウンドに阻まれる。蝶の楯はボーダーの弾を弾き返す。それでも磁石の弾の軌道を変える事は可能だ。

 さらに、跳ね返らせた弾を別の弾に当て、複数の磁石の軌道をそらす真似を見せた。

 その隙に、グラスホッパーを使った緑川が一気に距離を詰める。スコーピオンを使った双剣の剣技が襲い掛かってくるが、ヒュースも近接戦は苦手ではない。何せ、自分の剣の師匠は、国宝の使い手なのだから。

 ヒュースも同じように両手に磁石の双剣を作った。磁力の反発によってスコーピオンより速く、スコーピオンより一撃が重い。

 緑川の乱撃を跳ね返すと、両手の双剣を合体させて大剣を作り上げ、一気に振り下ろした。反射的にスコーピオンを交差してガードした緑川だが、二本とも叩き斬って肩から腰までの表面を撫でた。

 

「っ……!」

「浅かったか……」

 

 しかし、磁力の反発を使えば、大剣でも速度を出すことは可能だ。まず一人目、と心の中で唱えたヒュースだが、緑川もA級4位部隊のアタッカーだ。簡単にはやられない。

 下からせり上がってくる大剣に対し、グラスホッパーによって空中で一回転して回避した。その着地点にさらにグラスホッパーを置く。

 今度はヒュースの斜め上をとった。そこからさらにグラスホッパーを置き、今度は、背後に、その次は斜め前に。徐々に加速し、すれ違う度にブレードを出し、ヒュースの身体を徐々に削っていく。

 乱反射と呼ばれる、緑川の身軽さと機動力が重なってようやく出来る早業だ。

 

「チッ……すばしっこい……!」

「トロいね!」

 

 磁力を用いた双剣でも、二本手持ちでは追い付かない。中々の速さだ。

 ならば、他に持たずに本数を増やせば良い。ヒュースの周囲に磁石の破片が浮かび上がり、さらに苦無のような短刀の形をした弾が作られる。

 

「あ、ヤバい……!」

 

 そう判断し、緑川はいち早く間合いから抜け出した。直後、ヒュースの周りをブレードが取り囲むように展開された。流石にどんなに速くても、あの中では生きられない。

 

「あっぶねー……」

 

 結局、大きなダメージは与えられなかった。せめて腕の一本くらい取りたかったが……まぁ、それでも十分に役割は果たしたと言える。

 

「旋空孤月」

「ーッ‼︎」

 

 何故なら、背後を取った米屋が本命だからだ。いや、正確にはそれだけが本命ではない。

 

「『変化炸裂弾』」

 

 後方に待機していた出水も含めての本命だ。前後左右上からの攻撃がヒュースに向かい、大きな爆発と爆煙がその辺り一帯を支配した。

 流石にやったか? と思ったが、フラグになりそうなのでその可能性は打ち消す。こういう場合は、生きている事態を想定すべきだ。

 そのため、緑川と米屋は一旦、敵から距離を置く。

 

「……どうだ?」

 

 出水が声をあげる。その質問に答えるかのように、煙の中から声が聞こえて来た。

 

「なるほど……『玄界の進歩も目覚ましい』か……」

 

 師匠の言ったその言葉が頭の中で反復する。自分の最新鋭のトリガーに対し、まだまだ進んでいない技術のトリガーでここまで食い下がられるとは……数の優位があるにしても、たった三人がかりであるにも関わらず、だ。エネドラ程ではないがまだまだ自分も敵を侮っていたのかもしれない。

 恐らくだが、ここからヴィザの救援にも金の雛鳥の確保にも、目の前の敵を倒さない限りは参加出来ないだろう。

 ……ならば、だ。

 

「良いだろう。ここからは、俺も本気でやろう」

 

 目の前の敵に集中するのみだ。

 

 ×××

 

 バカが騒いで行った遠征艇は、トリオンにより大方修理された。と言っても、壊された卵は元には戻せなかったが。

 そんな事はさておき、現状はあまり好ましくない。金の雛鳥の行方は、ミラがバドを使って捜索中の上、泥の王を持つバカっぽい男もヴィザを相手に中々、堪えている。

 これならば、いっそのこと金の雛鳥と泥の王を一纏めにした方が良さそうだ。

 

「ミラ、金の雛鳥は?」

「発見しました。おそらくですが、別の入り口の方に向かっていると思われます」

「ヴィザに連絡し、泥の王を金の雛鳥の方に誘導するよう指示を出せ。雛鳥達の方にはラービットを複数体投入し、ルートを迂回させろ」

「了解しました」

 

 続いて「それから」と言いながら立ち上がる。首をクルリと回しながら、ミラに伝えた。

 

「俺も出る。大窓の準備をしておけ」

「了解」

 

 どういうわけか、泥の王を持つ男はエネドラの死角からの攻撃もヴィザの高速斬撃にも対応して見せている。それでも無傷で済んでいるわけではないが、二人では相性が悪いのかもしれない。その上、脱出トリガーを使われるわけにはいかないのだから、これは相当ヴィザもやりづらいだろう。

 ならば、相性など関係ない自分自身が行くしかない。キューブにして、本国に持ち帰れば黒トリガーも強力な兵士も自分のモノにできる。

 

 ×××

 

「三雲くん、あなた腕を上げたのね」

 

 C級を引き連れて別の入り口を目指している途中、木虎がそんな事を言い出した。この同級生が自分を褒める事など今まで一度も無かったため、思わず唖然としてしまう。それが、木虎には少しカチンと来た。

 

「何?」

「あ、いや……木虎も人を褒めることがあるんだなって……」

「どういう意味よ。私は認めるべきところは認めるわ。さっきだって、他の正隊員達が簡単にやられていった新型を相手に粘っていたじゃない」

「あ、あー……いや、粘ることしか出来なかったけど……」

 

 自分の最大火力のアステロイドも、新型は怯む程度でダメージにはならなかった。あのまま戦えば捕まっていただろう。

 

「それでも十分でしょう。あなたが粘ったから、C級達は無事でいられるのよ」

「それはそうだけど……でも、それも陰や……ウィス様から教わったことなんだ」

「……あの人から?」

「ああ。『喧嘩は心が折れた時点で負けだ。殴られても蹴られても切られても刺されても撃たれても沈められても絶対に立ち上がれ』って」

「あの人、どんな喧嘩を送って来たのよ……撃たれてって……」

 

 その上、かなりデタラメなことを言っているが、それでも結果的に間違った方向には進んでいない。敵の視線を引き、ほんの少し気を引くだけで味方の奇襲が成立する。レイガストのシールドモードを上手く使いこなせれば、剣の腕は無くても粘ることは可能だ。

 

「ウィス様も最初から喧嘩が強かったわけじゃないんだって。まずは精神的に負け犬にならないようにして、殴られ続けて、敵の隙を伺い、その上で反撃してたって。そしたら、いつのまにかレンガや金属バットで殴られてもピンピンするようになってたらしいよ」

「そこはいいわ。聞きたくない。バイオレンス過ぎ」

 

 まぁ、当然だろう。ボーダーに所属しているとはいえ、喧嘩が好きなわけではない。ましてや、リアルの人間は殴れば血が出るし。

 そんな話をしてる時だ。後ろにいた千佳がピクッと反応し、前方を見た。その後に出て来るゲートとラービット。三色揃っている。

 

「! 新型……!」

「こっちの道はダメだ! 迂回するんだ!」

 

 すぐにC級隊員に指示を出した。

 

 ×××

 

 ヴィザが急に機動戦に持ち込んできた事により、三輪と海斗は退がるのを余儀なくされた。レッドバレットによりブレードの動きは見えるが、それでも距離があり過ぎる。スコーピオンの投擲やハンドガンで狙いを定めている間に、次の斬撃が来てしまう。

 

「おいおいおいおい! これあいつらと別れたの失敗だったんじゃねーの?」

「バカ言え! あの磁力使いがいれば、俺達はまとめて斬られていた」

「でもなんかあの爺さん元気になってんぞ! 別の狙いがあるっぽいけど!」

「別の狙いだと……⁉︎」

 

 現状で黒トリガーの回収以外、向こうに狙いがあるとは思えない。それは変わらないだろう。

 なら、他に何を狙う? 自分が向こうの指揮官ならどうするか? 黒トリガーの確保に、一番必要な事は何か? 

 考えてみれば、何故あのジジイが急にやる気を出したか、だ。そもそも、あの黒トリガーは生け捕りには向いていない。即死斬撃が運悪く海斗の身体を斬り裂けば、緊急脱出待った無しだ。

 生け捕りに一番必要な駒は、思い付く限り一つだけだ。

 

「新型か⁉︎」

 

 そう理解した直後、背後の民家がぶっ壊された。その後に出て来たのは、予想通り新型トリオン兵、そして逃げ惑うC級達と三雲修、木虎藍だった。

 

「しまった……!」

「三輪先輩……ウィス様⁉︎」

「あれ、メガネと木虎じゃん。なんでお前ら戻って来てんの」

 

 見事に嵌められた。護衛対象が増えた上に、まともな戦闘員は自分と海斗だけ。修は弱いし木虎のダメージは大きい。

 

「さて。では、参りましょうか」

 

 そう言ったヴィザがまず向かったのは、新型の相手をしている木虎だった。いち早く気付き、強引にラービットから距離を置こうとした木虎だが、まともにヴィザと戦闘していなかったので戦闘力を知らない。

 

「っ……!」

「まずは、1人目ですね」

 

 目で追えない居合によって、木虎の身体は真っ二つに斬り裂かれた。

 

「っ……!」

 

 タダでやられるつもりなかった。アステロイドを銃口から放つが、あっさり回避され、緊急脱出してしまう。

 続いてヴィザが目を向けたのは修だった。腕利きは無視し、先に弱いのから落とすつもりのようだ。C級の確保はラービットに任せ、戦闘員は自ら叩く。

 

「クソッ……メガネ、逃げろ!」

 

 新型の相手をしている三輪が叫ぶ通り、修はスラスターを使って後方に跳んだ。しかし、空中に浮けばヴィザの遠隔斬撃が待っている。星の杖を起動しようとした直後、海斗がそのヴィザに突貫した。

 スラスターを使ったスコーピオンライダーキックを放ち、ヴィザは攻撃をキャンセルして杖で防御する。

 

「ここまで近付きゃ、遠距離斬撃も意味ねえだろ。その上、俺を斬るわけにもいかねえよな?」

「面白い」

 

 近距離でヴィザに居合だけは使わせないように拳を連続で叩き込む。右腕でスラスターを使いながらのパンチを回避され、腰に来る杖の殴打をジャンプで回避すると、空中で半回転しながら後ろ廻し蹴りを放った。

 それも回避され、居合の構えを取るヴィザに対し、海斗は唾を飛ばした。それがヴィザの目に向かう。

 

「おっと……」

 

 流石に目を潰されては居合は放てない。首を横に倒しつつ居合を続行しようとしたが、着地した海斗がモグラ爪を放ち、それを読んで後方に下がり、居合を放った。

 大分、姿勢が崩されたからか、海斗はそれも左腕の義手を犠牲にして回避して接近を仕掛け、右拳による最速のスコーピオンパンチを放つ。それをヴィザは鞘でガードした。

 

「テメェ……まだ本気でやってねえな?」

「ふむ……その直感力、まるで獣ですな」

「がおー」

「その軽口には、些か頭に来ることもありますが」

 

 海斗の拳をあっさりと鞘で押し返すと、今度はヴィザが仕掛けた。杖の居合によって、海斗の左足を持っていく。

 

「わ、やべぇ」

「まず一本。そして、2本目ですな」

 

 そう言って、二度目の居合を放とうとした時だ。空から無機質な声が聞こえて来た。

 

「『強』印『五重』」

 

 その直後、降り注ぐ拳。反射的にヴィザは居合の目標を変えた。

 遊真の拳とヴィザの居合が直撃する。小さな爆弾が爆発したかのような衝撃が走り、その場にいた海斗は後方に飛ばされた。

 

「遊真……!」

 

 思わず声を漏らした海斗に狙いを定めたラービットが拳を降り注ぐが、その前に壁が現れ、ラービットの顎を強打する。浮かび上がったラービットに斬撃が複数入った。

 

「悪い、遅くなったな。海斗」

「迅……!」

 

 ようやく、二人の強力な援軍が到着した。三輪にとっては気に食わない援軍だが、それでも強力なことに変わりはない。

 

「海斗、秀次。こいつらは俺達が引き受ける。お前らはC級とメガネくんを連れて本部まで行け」

「ああ? あのおっさんとの喧嘩はまだ終わってねえぞ」

「海斗、ラーメン」

「了解」

 

 随分と三輪は海斗の扱いを慣らしたものだ。迅の指示に従うのは癪だったが、それがベストなのはよくわかっていた。

 

「オラ、C級! 俺について来いやボケ!」

「お前は片足ないだろう。殿を頼む。俺についてこい」

 

 ラービットを切り抜けながら、三輪と海斗と修はC級を引き連れて走り出した。

 

 


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