ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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なり切れば武器になる。

「ヒーローネーム『どすけべ』。希望変更ネーム『マジックハンド』」

 

 直後、脆い光の刃で象られた両手がビビビビッと正面に伸びる。なんて訳の分からない遊びをのうのうとこなしている阿呆の頭を、後ろから小南と風間のが殴った。

 

「何馬鹿やってんのよ⁉︎ わかってる? 大ピンチよ!」

「頼むから集中しろ。分かってるのか、現状が?」

「うーるせーなー。両手無くすことなんて中々ないよ? 楽しまないと!」

「じゃ、俺は……そうだな。雷光ゲンジか?」

「「ヒゲを引き抜かれたくなかったら、お前も黙ってろ!」」

 

 相変わらず緊張感のない奴だ。頼むから大人になって欲しい。

 

『で、どうする? 風間さん』

『どうするもこうするもない。とにかく、速攻で重い方を片付ける他ないだろう。次に撃たれたら終わりだ』

『とにかく、海斗。あんたは下がってなさいよ。一応、あんたのレイガストがあれば、防げる可能性はゼロじゃなくなるんだから』

 

 簡単な話で、レイガストを出して誰かが使えば良い。その際の候補は小南だろう。理由は、双月という巨大な斧を使うから。

 そんな中、海斗がふと思いついたように言った。

 

『よし、こうしよう』

『『『断る』』』

「聞けよ!」

 

 一方で、バカやっている敵を眺めながら、ガトリンはコスケロに声を掛ける。

 

『よくやった、コスケロ』

『なんか、あまりやった感じしないんですけどね。あの余裕を見てると』

『奴らは手練れだ。どんな状態でも余裕は崩さないだろう。だから、戦力を削いで選択肢を削る事が必要だった』

『ああ、まぁそうなんですが……』

 

 ……とはいえ、両手を失って遊ばれると、やっぱり「うまくいった」感じが半減する。

 

『とにかく、まずはあのヤンキーを集中狙いだ。あの義手は敵のブレードトリガーだから、あの状態でも油断は出来ん』

『大砲の方は?』

『あと4〜5分といった所だ。終われば、強引にでも撃ちにいく。援護しろ』

『了解です』

 

 そう言うと、再び敵を眺める。向こうも、おそらく内部通信で作戦を立てている。ずっと遊んでばかり、というわけではないだろう。

 可能性としてあり得るのは、あの片腕のアームを解除し、あの盾トリガーを仲間に譲渡して使う事。それが可能であれば、敵はあの男を引き気味に使うだろう。

 防御力は使い手より明らかに下がるだろうが、それでも0というわけではない。確実に仕留めておいた方が賢明だ。

 従って、まずはあのヤンキーから……と、思った直後だ。茶髪の男が、自分から突撃して来た。

 

「!」

 

 狙いは、ガトリンだ。よりにもよって火力が一番高い自分を選んできた上に、他の仲間は一応、フォローするように動いてはいるが、明らかに突出し過ぎている動き……とても戦術的な作戦とは思えない。

 ヤンキーに対しアームを振るうが、それを跳び箱のように回避しながら蹴りを放ってくる。

 それをガードしつつ、大砲の銃口で横から殴りつけるが、それをわざと食らって殴り飛ばされながら、手前のアームにスコーピオンを引っ掛けてしがみつき、蹴り返す。

 

「チッ……!」

 

 ただの蹴りのわりに、なかなか重い。喧嘩慣れしている奴の威力だ。バシリッサのアームを床に突き刺し、体制を崩さないようにしながら、3本のアームで猛襲を仕掛ける。

 それを、回避しながら本体に腕を突き込んだ。

 

「っ……」

 

 ガードし、反撃を受けるが、それを読んでいたように体を横に倒しながら、手を地面につけてローキックを放つ。

 また蹴り、トリガー込みの攻撃で無ければ、踏ん張れば何の問題もない。ましてや、パシリッサならば踏ん張る必要すらない……と、思った直後、脚の脛の辺りに、刃が出ているのが見えた。その代わり、片腕から義手が消えている。

 

「ッ……!」

 

 踏ん張るために使ったアームで強引にその場から引離れようとしたが、間に合わず足の甲の先を切り飛ばされる。

 

『隊長……!』

『問題ない。それより、他のメンバーに動きがないのが気になる。警戒しておけ』

 

 動きがない、というのは語弊があるが、ヤンキーをフォローする為か、左右に展開し、犬を処理しつつ、遠巻きにコスケロの相手をしている。まるで、ヤンキーを鉄砲玉にしているようだ。

 

「よそ見してんなオッサン」

「!」

 

 直後、さらに追撃する為か、振り抜いた脚を強引に地面につけたヤンキーは、足から刃を消すとともに、片腕から生えた腕を伸ばして天井に貼り付け、引っ張りながらジャンプし、上空からさらに接近してくる。

 しかし、それはこちらの味方が持つトリガーにとってカモでしかない。

 

『コスケロ、やれ』

『了解』

 

 発射される黒壁。ヤンキーを取り囲むように放たれた直後、海斗も天井に張り付いたまま指示を出した。

 

「釣れたぞ。やれ」

 

 直後、動いたのは太刀川と小南。コスケロを挟み、黒壁に捕まらないよう遠巻きに旋空とメテオラを放つ。

 

「!」

 

 勿論、手元に残しておいた黒壁とドグで応対する。凌ぎつつ、空中の海斗を追うコスケロと連携し、ガトリンも海斗を狙おうとする中、ふと違和感に気付く。

 

「コスケロ、一人足りないぞ! 気を付けろ!」

「!」

「もう遅い」

 

 直後、風間がコスケロの黒い壁の内側に接近し、ブレードを振り抜いた。

 

「っ……!」

 

 反射的に後ろに身体を逸らしたが、片腕を持っていかれる。そして、その隙を逃す風間では……。

 

「風間、後ろだ!」

「!」

 

 が、その周囲からガトリンとドグが接近して来ていた。周りは黒壁、左右からドグ、後ろからガトリン。抜ける隙はない。

 

「チッ……!」

 

 小南と太刀川がガトリンに一撃ずつ放って止め、片方のドグは海斗がマンティスを放って自分の元に引き寄せて砕いた。

 敵の数が減れば十分だ。残りの1匹は風間自身が叩き潰しながらスパイダーを壁に放ち、強引に黒壁の隙間を抜けて脱出した。

 再び四人揃うと、風間が一息ついた。

 

「……これだけやって、腕一本か……。やはり、所詮はバカの考えた手だな」

「あ? テメェ文句あんのかコラ。てか、重い方をやれっつったろ最後」

「やめなさい、海斗。重い方に行ってたら、風間さん死んでたわよ」

「はははっ、まぁ良いだろ。でも、陰山。やるならもう少し俺にも暴れさせてくれ」

 

 聞いていると、太刀川も頭が悪いように思えて来た。

 

 ×××

 

 機動戦士ガンダムと、ドラゴンボール。相反するアニメだが、共通している面は二つとも戦闘を行うという点だ。

 見ていれば分かるが、この二つの戦闘に戦術はない。作戦はあるが、基本的には超強い人達が敵と戦う、という物語だ。その戦いに「技」はあっても大きな「駆け引き」は無い。

 が、それが強さになることもある。よって、那須の新たなバトルスタイルは「サイヤ人モード」と「ニュータイプモード」に別れていた。

 サイヤ人モードでは、近接戦闘を挑み、崩した所で気弾を放ち、フィニッシュするゴリ押しタイプ。

 ニュータイプモードではファンネルを用いて敵に躱させ、当たるタイミングでビームライフルを撃って次に行く搦手タイプ。

 まぁ、早い話が頭の中でどのアニメをイメージするか、が重要になってくるわけだ。

 だが、今回の相手は、その二つとも通用する相手では無かった。

 

「チィッ……!」

「玲、舌打ちの時くらいアムロ風はやめて!」

 

 何故なら、敵は分身を使うからだ。実体は一つで、広域殲滅を何度しても、実体がないから分身が減らない。レーダー解析をしてくれてはいるものの、こちらが消してしまうのでそれらは無意味と化してしまうのだ。

 

「仕方ないな」

「どうするの?」

「第三のモードを、解放する」

「え……?」

 

 まだあるの? と思いつつ、玲の方を見る。

 

「ごめんなさいね、クマちゃん。これはまだ実践で使ったことがないモードなの」

「え? あ、そ、そう……」

 

 割とどうでも良いが、ウキウキ気分の那須は止まらない。

 

「だから、合わせてね」

「え、あ、合わせるって? せめて漫画のタイトルを」

「フライデー?」

『こんにちは、ボス』

「小夜子⁉︎」

 

 平然と声をかけると、玲は耳元に声を掛ける。

 

「僕達のバックアップは考えなくて良い。君は敵のトリックを見破れ」

『了解しました』

「アベンジャーズ、もう一仕事だ!」

「私しかいないんだけど……」

 

 無視して、那須は両手からアステロイドを放った。大玉が一気に敵の元へ向かう。

 が、敵の近界民はジャンプして回避し、分身を増やす。

 それらを前に、那須は両肩の上に細かい変化弾を24発分、作り出し、発射した。

 飛び交うミサイル(という設定の弾丸)は敵の分身を的確に穿っていく。もちろん、残像である為、避けてしまうわけだが、フライデーのバックアップで透けた分身はマーキングされていく。

 外したのは5人。その中に本物がいる。とりあえず、1番近いやつに接近し、蹴りを放った。

 

「!」

 

 偶然にも本物だったようで、その近界民はシールドでガードする。

 

「なんで、私が本物だと……!」

「諸君、話し合えば分かる」

 

 言われても無視して近界民は反撃する。が、それを那須は手首を掴んでガードし、反対側の手で殴り掛かる。

 その一撃はシールドに阻まれた。近距離でお互いに両腕が封じられる。ならば、頭数の多い方が勝つ。

 付近のドグが那須の方を向き、頭部のブレードを伸ばして突っ込んできた。……が、それらは熊谷によって阻まれる。

 

「っ……!」

 

 直後、那須の胸前にエネルギー(という名のトリオンキューブ)が集まる。胸部のヤユニビームに模した変化炸裂弾が一気に放たれた。

 ゴウッと放たれた一撃により、弾丸は爆発。視界から近界民は一気に後方へ弾き飛ばされ、後方の壁に背中を強打する。

 瞬間的にトリガーを切り替えることで自信を守っていた那須の周りには固定シールドが囲んでおり、機械的な目で煙の奥を見る。

 

「話せて良かった」

「何処が話し合いよ……!」

 

 奥歯を噛み締めているかのような声が聞こえてきたのは、煙の奥。咄嗟にシールドで防いだのだろう。片腕が無くなった近界民が姿を見せる。

 

「! まだ……!」

「大丈夫だ、ローディ。分身の中に一人だけフック船長がいれば、すぐに見分けはすぐに付く」

「なんであなたさっきからあらゆるキャラを完コピしてるわけ?」

 

 直後、まだ残っている分身、さらに追加された分身、全員の片腕が消滅した。

 

「全員、フック船長になっちゃったじゃない」

「フライデー?」

『問題ありません、ボス。本物へのマーキングは完了しました』

「ご苦労。さ、ダンスの時間だ。全員、タキシードを用意しろ」

 

 そう言うと、那須はさらに接近する。本物に向かって一直線。拳を放つが、それを回避されて反撃が来る。

 それをガードして受けつつ、射撃を放って接近する。ノリについていけない熊谷も、ひとまず仕方なく援護をする。

 正面に来た那須は、ゼロ距離から射撃を放つ。回避され、ボディに斬撃が来た。

 それを避けた直後、首に手が伸びてくる。

 

「!」

「あまり調子に乗らないことだね」

 

 ギギギっ……と、指先に力が込められ、締め上げられる。直後、その手を強引に後方へ伸ばされ、投げ飛ばされた。

 腰を床に強打しつつも、射撃を放ち続ける。が、拙いものとなり、近界民は接近し、片手の刃を構えてトドメを刺そうとした時だった。

 背後から、ドッと背中を刺される感触。後ろを見ると、熊谷が尖ったドグの頭部を突き刺していた。

 

「ッ……!」

「終わりね」

「……最後に一つ、良い?」

「何?」

「その子なんなの?」

「知らね」

 

 もう考えないようにする熊谷だった。

 

 

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