ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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言い訳です。
前回の話の続きをどうする予定だったか忘れたので、諏訪さんの活躍とかどうするつもりか忘れましたので、せっかく柿崎隊と変えたのにあんま意味ないことになっちゃいました。すみません。


そろそろなんとかしなければならない。

 玉狛第二の試合は、ほとんど圧倒的だった。新たな戦術を取り入れたメガネと白チビと大砲&鉛弾が、ヤらしくもハメに近い戦術で点を荒稼ぎ。

 玉狛第二ならではの戦術に、思わず海斗は普通に引いた。

 

「……なるほど、これが戦術ね」

「そういう事。ま、相手にスナイパーがいないから、ここまで綺麗にハマったっていうのもあるけどね」

「でも結局、白チビがやられたら終わりなのは変わってないよね」

 

 それはその通りだ。バカのくせに核心だけたまにつけるあたり、割とムカつくけど嫌いじゃない。

 

「分かんないでしょ。もしかしたら修が超強くなって帰ってくるかもしれないじゃない」

「それはないな。俺も多くのトリガー使いを見て来たが、あれは稀に見る才能のないトリガー使いだ」

「あんたは黙ってなさいよ、ヒュース!」

「だろ? あいつほんと弱くてよ、飲み込みも悪ぃーし」

「あんたも仮にも師匠でしょうが! 少しは弟子を持ち上げる方向でいきなさい!」

 

 なんて話していると、その三人の会話に迅がしれっと口を挟んだ。

 

「良いのか? 海斗。余裕こいてて」

「あ? 何がだコラ口の中に百葉箱ダンクシュートすんぞアン?」

「何でそこまでされないといけないの……いや、まぁ色々と面白い未来が見えてるからな」

「?」

「このままボケッとしてると、お前負けるかもよ?」

「……は?」

 

 イラっと、少し片眉を上げる海斗の横で、小南がニヤニヤしながら肩に手を置いた。

 

「ふふっ、だってよ。海斗?」

「バーカ、あり得ねーよ。メガネが五京人いたってあり得ねーよ」

「いやそんだけいたら負けるだろ……」

「世界の総人口より上じゃないの……」

「頭の悪い数字の引き合いだな」

「お前ら殺すよホント」

 

 全く失礼であるが、失礼JAPAN日本代表選手のエースを張れる海斗が言えた話ではない。

 

「ま、でも俺達に勝つつもりなら、もっと強くなる事だな。今なら、百戦やっても百回うちが勝つ」

「……そうか。まぁそうなるだろうな。今のままでは……な」

 

 ヒュースがそう言うと共に、席を立った。

 

「戻るぞ」

「そうだな。そろそろ帰って、メガネくん達に話もしないといけないから」

「よし、いくか。ヒュース」

 

 との事で、3人は観戦席から出ていく。その背中を眺めながら、海斗と小南は顔を見合わせた。

 

「……どうする?」

「そろそろ戻るかー」

「そうね」

「なんか、腹減ったな。飯食って帰らん?」

「良いわね」

 

 なんて話しながら、二人もとりあえず観戦室を出て行く。もう既に海斗は忘れていた。迅に予知された未来など。

 

 ×××

 

 さて、翌日。二宮隊の作戦室にて、海斗が飲み物を飲んでいると二宮が入って来た。

 

「あ、二宮さん! お疲れ様です。なんか飲みますか?」

「……コーヒー」

「お任せあれ!」

 

 相変わらずのなつき具合である。すぐにインスタントコーヒーを淹れにいった海斗は、まずお湯を沸かし始める。

 その海斗に、後ろから二宮が声を掛けた。

 

「昨日はどうだった? 玉狛の試合」

「派手になってましたよ。大砲ばんばか撃って」

「……隠れる地点を片っ端から壊し、空閑の間合いにした、と言ったところか?」

「あ、大体そうですけど何でわかるんですか?」

「わからない奴がいるか。他にスナイパーがいなかったらそうなるだろう。特に、雨取の場合は一発撃てば場所が割れる。こそこそ隠れるより、バレる前提で撃った方が良い」

「あ、なるほど。そういう事なんですね」

「……分かってなかったのか?」

「い、いいえ? 分かってましたよ?」

「……まぁいい。他に何か分かったか?」

「あ、はい。後は、なんか鉛弾狙撃と、メガネのスパイダーとー……あと、マンティス? 白チビがめっちゃスパイダーで加速してましたよ」

「……」

 

 その説明を受けて、二宮は小さくため息をつく。本当にこいつは、この野郎という感じ。要するにあの試合を見て派手なとこしか分かっていない様子だ。

 おそらくだが、今の情報から察するに、千佳に高台を取らせ、メガネが建物の間にワイヤーを張り巡らせ、その陣の中で速度にバフが掛かった遊真が点を取る……と言ったところか? 

 また、鉛弾の狙撃もプレッシャーと敵へのデバフ、二つの意味を兼ね備え、中に入れば大抵のやつ……いや、A級隊員でも何も出来なくなる所だろう。

 

「ワイヤー陣にレッドバレットに高速斬撃……か」

「何でわかるんですか⁉︎」

「バカいえ、分かるに決まってるだろう。それだけの要素が揃っていればな」

「スッゲー、あったま良いー!」

「お前のその褒め言葉は、褒め言葉になっていない事を理解しろ」

「え、そ、そうですか……?」

 

 まぁそこはさておき、だ。せっかく試合を見て来たのなら、色々と試して見ることもある。

 

「じゃあ、陰山。お前ならどうそれを攻略する?」

「え?」

「せっかく試合を見たんだ。それを考えないと意味がないだろう」

「え、えーっと……俺もワイヤーを使って、白チビの相手をしながら、レッドバレットを避け続けて隙を見て眼鏡を倒す?」

「何をニュータイプみたいな事を言っている。対応策を考えろと言っている」

「え、えー……ゴリ押しはダメですか?」

「ダメ」

「じゃあ、えーっと……あ、まずは白チビを倒す!」

「それはゴリ押しだろう……」

 

 ダメだ、分かっていない。もっと分かりやすくする為に喩えを出す事にした。

 

「犬飼と辻がこの中に入ったら?」

「え? えーっと……あーそっか。白チビと鉛弾狙撃の中か」

「ああ」

「えーっと……なんだろ。あの二人なら……」

「……」

「……」

「……対応策を聞いて、採点してやる。50点満点中、30点以上で合格」

「し、失格だったら?」

「聞きたいか?」

「……」

 

 真剣に考え始めた。少しバカには難しいかもしれないが、いい加減脳筋のままでは色々と任せられない。せめて自分がやるべきことくらいは理解できるようになって欲しいものだ。

 

「え、えーっと……まずは雨取を倒す? いや、グラスホッパーないし、白チビいるから無理か。まずはー……メガネから殺す?」

「何故?」

「落としやすいから」

「……まぁ良いだろう。+5点」

「ひっく⁉︎」

 

 ワイヤーの追加を防ぐため、も言っていれば10点あげた。まぁ、メガネはああ見えて受けが上手いので簡単にはいかないだろうが、辻と犬飼なら行けるだろう。

 

「その後は?」

「その後はー……えー、あー……あ、ワイヤーを削る?」

「……5点」

「だからどうして!」

「その前にやることがあった」

「えー……な、なんだろ」

 

 射線を切れ、という話だ。砲撃でもワイヤーを結んでいる建物を壊せば削れてしまうので、千佳は移動する必要が出て来てしまう。ワイヤーを切ってでも狙撃してくる可能性もあるが、ワイヤーかレッドバレットどちらかを防げるなら問題ない。

 

「で、その後」

「白チビを倒す!」

「……5点」

「だからなんで!」

「スナイパーが浮いているだろう。先にそっちの点を取れ」

「……な、なるほど……ちなみに、二宮さん的に満点の回答は?」

「そもそもワイヤー陣を完成させない」

「ズルい!」

「当たり前だ。完成されたら、犬飼と辻だけでは対処しきれん。それほど決まれば厄介な陣形だ。……今の場合で言えば、ワイヤーを削りつつ俺かお前が来るまで時間稼ぎ、が正解だ」

「おごっ……!」

 

 確かに、という顔をする。それも対応策の一つだ。二人がワイヤー陣にいた場合どうするか、といっただけで「仲間を呼ぶ」を無しとは言っていない。

 

「おそらくだが、あのワイヤー陣を作った時点でどこの部隊も、今後は玉狛を狙うようになるだろう。単体の話だけで言えば、メガネも大砲も落としやすい駒だからな」

「な、なるほど……」

「と、いうわけで、お前の得点は15点だ」

「いやそれで罰ゲームはちょっと勘弁してくださいよ!」

「そもそもお前の頭には柔軟性というものがない。全て肉体でなんとかできると思っているからだ」

「そ、それはー……」

 

 まぁ意地が悪い問題であった自覚はあるため、罰ゲームまでは考えていない。だが、もう少し普通の判断力が欲しい所でもある。

 良い機会だ。罰ゲームと称して、戦術の勉強でもさせる事にした。

 

「とりあえず……特に東隊の戦闘ログを全て見直せ。そして何をどう思うか、自分ならどうするかを考えられるようになれ。このランク戦の最中ならまだ良い……が、実戦において、前の試合のようなミスは許さん」

「……えー、他人の試合を見て学ぶって超退屈そう……」

「そうか。つまり、次の祝勝会でお前だけ焼肉抜」

「嘘です超やります!」

 

 その返事に満足すると、二宮は作戦室を出て行った。勿論、バカから質問があれば答えるつもりだが、基本的にはやはり自分で学ばせたいものだ。

 

 ×××

 

 犬飼は、ラウンジに訪れた。今日は試合ではなく防衛任務。昨日に次いですぐに任務だ。

 なので、トリオン体に換装するからあんまり意味ないとは言え、左右に首を倒しながら歩いていると、ふと視界に入ったのは出水と米屋。バカと仲が良い二人組だ。

 何やら盛り上がっている感じなので、ちょっと声をかけてみた。

 

「二人とも、おつかれー」

「あ、犬飼先輩」

「お疲れ様です」

「何話してんの?」

「いや、もうすぐスカウト組が帰ってくるじゃないですか」

「それで、バカも結構、色んな人と絡むようになりましたし……今後に備えて、絡ませちゃいけなさそうな人たちをあらかじめピックアップしていました」

「……あー」

 

 確かに、と犬飼は理解する。結構、気難しい人が多いが、その筆頭がバカであり、そのバカに負けずとも劣らない人は割と多い。

 つまり、早い話が二人目の影浦にならないようにするためだ。

 

「今、誰が挙がってるの?」

「草壁ちゃん」

「……あー」

 

 確かに、と思う。まぁそもそも絡む機会が無さそうだが……いや。

 

「……あっ、里見」

「そうなんすよ……そっちは逆に絶対意気投合するじゃないですか」

「二宮さん信者だもんね……」

 

 つまり、三人の頭に浮かんだフローチャートは「バカ→里見→草壁」とたどり着く図。あの年上も恐れない系女子中学生は、まず間違いなく里見とバカが作戦室で絡んだらキレ散らかす。

 里見はまだ良い。だが、沸点の低さとプライドの高さが反比例しているバカは……と、今から胃が痛くなった。

 

「……気をつけよっか」

「そうですね……」

「とりあえず、海斗をなるべく小南といちゃつかせる方向で……」

「いや、俺らは近付かなくて済むように」

「「切り離し作業になるんですか!」」

 

 いや、そんなこと言われても犬飼には関係ないのだ。普通に関わり合いになりたくない。

 

「じゃ、俺行くねー」

「ちょっ……頼みますよホント! 俺ら気まずいの嫌っすからね!」

「でも、そうか。俺も関わりたくはないわ。出水、任せた」

「殺すぞ槍バカ!」

 

 なんて話を聞きながら、犬飼は自分の作戦室に向かった。

 とはいえ……まぁスカウト旅以外にも、色んな意味で会わせたらいけなさそうな人は多くいる。そろそろ遠征訓練もあるし、何かあってからでは困るので、確かにあのバカを何とかしないといけないかもしれない。

 そんな風に考えながら作戦室の前に向かうと、辻と氷見がこっそりと中を覗いていた。

 

「おつかれー、ふたりとも。何してんのー?」

「「しーっ」」

「え、なに?」

 

 二人に人差し指を立てられ、少し気になる。何かヤバいものでも部屋の中にいるのだろうか? 

 

「どしたの?」

「中で、海斗くんが……」

「ログ見てる……」

「えっ……あ、あの喧嘩大好きで落ち着きがないあの子が……?」

 

 その確認に、二人とも頷いて答えた。信じられない、と言った表情だ。暇さえあればランク戦で問題を起こす子が……と少しだけ感動し、中を覗いた。

 どうやら、彼は彼なりに変わろうとしているのかもしれない……そう思うと、ちょっとだけ感慨深くなったり。

 さて、どうしようか。本当は中で任務の時間になるまでまったりしたいのだが、邪魔しちゃ悪い気もする。三人とも、とりあえずこっそりと作戦室から出て行った。

 

 ×××

 

 さて、それから2日後。二宮が、作戦室で海斗に声を掛ける。

 

「じゃあ、陰山。この二日間の成果を見せろ」

「はい!」

 

 思った事や理解した事をノートに書き記してあるそれを渡す。さて、割と真剣に映像を見ていたようだし、少しはまともな事を書いているかも、と思いながら開くと、とても短くこう書かれていた。

 

『先手必勝。

 ・なんかごちゃごちゃやってるけど、おれが的を見つけて、そこに二宮さんと犬飼がぶっ放して、おれと辻がきしゅーを仕駆ければ勝てるとおもいます』

 

 イラッとした。誤字が多かったり、漢字で書けってとこが多かったり、あと「的」を「マト」という意味なのか「敵」の誤字なのか無駄に悩まされたりしたが、何より結局、脳筋であることにムカついた。

 そのため、ノートをパタンと閉じると、二宮は冷たく言い放った。

 

「やり直せ」

「えっ」

「まずは漢字を覚えるところからやれ」

 

 やはり、バカは一筋縄じゃいかないことを理解した。

 

 ×××

 

 さて、まじめに取り組んでものの見事に地雷を踏み抜くことに成功した海斗は、一度作戦室から出た。疲れが出たからだ。

 今まで頭を使って来なかったからか、急に頑張っても成果は出ない。でもそれは喧嘩のやり始めと同じだ。流石に海斗も、小学校四年生になるまで喧嘩で高校生に勝てたことはなかった。

 これからもう少し足を引っ張らない程度に頑張らせてもらおう……なんて思っている時だった。

 

「「……アア?」」

 

 影浦と目が合い、一気にさっきまでの気合いを忘れた。

 

「ここはストレートパーマかけるとこじゃねーぞ。髪の悩みなら美容師にしやがれ」

「いい加減、人の頭以外でいじることを覚えたらどうだ? ワンパターン野郎が」

「ワンパターンの何が悪ぃーんだよ。今も昔もワンパターンなドラマが流行ってんだろうが、ご○せん然りド○ターX然り。いつでも王道が重要なんだよバーカ」

「その安易な王道が広まりすぎた結果が、今のな○う系だろボケ。何事も王道にオリジナリティを合わせんのが大事になんのが分かんねーのか」

「そのオリジナリティが行き過ぎたら誰も付いてこれねーんだよ。バカ面白かったのに先進的過ぎて打ち切られたHUNGRY J○KERの悲しみ忘れたか?」

 

 なんて話が徐々に逸れていったときだ。ガタッ、と一席から誰かが立ち上がる音が聞こえる。

 それに伴い、二人とも黙ってそちらを向く。やたらと圧があるオペレーターが着ているスーツ姿の女性が、そこに立っていた。

 

「ちょっと、そこの二人」

「「ア?」」

「うるさいんですけど?」

 

 直後、影浦はフリーズした。ヤバい女に目を付けられた、と。面倒な事になるのはほぼ間違いない。

 しかし、関係ない海斗はのうのうと口を開いた。

 

「うるせーよ、腐れババァ。他人の喧嘩に口挟む暇があんならさっさと食い終わってここからクシャトリヤでも押し出しながら出て行ってNT-Dでも展開してろクソが」

「……は?」

「俺知らね」

「あ、テメェ待ちやがれコラ!」

 

 立ち去る影浦を追おうとした直後、その海斗の襟がガッと掴まれる。

 

「アア⁉︎」

 

 掴んだのは、声をかけて来た女。ショートヘアに、オペレーターとは思えない程、鋭い視線……真木理佐が立っていた。

 

 

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