「おい、アレはなんだ」
二宮隊の作戦室では、ベッドでバカが不貞寝を決め込んでいたのを、二宮がドン引きした様子で呟く。
隣に立っている犬飼が真顔のまま答える。
「無謀にも真木さんにバトルを挑んだらしいですよ。口で」
「……あいつはバカなのか? いや、そうだったな」
真希理佐……冬島隊のオペレーターだが、その強さと圧は戦闘員を遥かに凌ぐ。気に入らない事があれば、年上だろうと年下だろうと容赦はしない。三上には容赦する。
理屈が通っていれば理解はするけど、それでも後からプライベートに問い詰める。
さて、その時のバカ対天才のダイジェストがこちら。
『アア? なんだテメェは!』
『食堂では静かにしなさいと言っているの。それに対するご返答が「なんだテメェは」? 日本語を理解出来ないわけ?』
『なんで関係ねェ奴にんな事言われなきゃいけねェんだよ!』
『関係あるでしょ。被害を被っているんだから。路上の喧嘩で二次被害を被った人が、その二人に文句を言う立場にないと言いたいの?』
『おごっ……そ、それは……!』
『そもそも、ここは多くのボーダー隊員が使う場所。時には感情を殺して作戦に従事しないといけない隊員達がリラックスして食事を摂れる場にも関わらず、そこの空気を悪くするようなことをするのは人としてどうなの?』
『なっ……⁉︎』
『組織にあなたのような協調性のない人間がいると迷惑なの。作戦も場も何もかもが崩れるの。二宮隊があなたを受け入れていること自体が不思議で仕方ないくらいだわ。分かったら少しは態度を改めなさい』
『…………はい』
以上である。フルボッコだ、フルボッコ。正論の火炎放射器によって、何もかも焼き尽くされた。
で、不貞腐れてベッドの上で寝ている。まぁ、二宮には当然、そんなこと知ったことではないわけだが。
「……まぁ良い。そんな事より犬飼。次のランク戦は少しフォーメーションを変える。そこのバカをスナイパーにして使う。遊撃隊のつもりではあったが、やはり役割分担というものがないと厳しいところがある。最低限、敵の位置を知らせるという事もできないアホがいるからな」
「分かりましたー」
そのアホはいまだに不貞寝しているが、作戦についてアレに話しても仕方ない。とりあえず、氷見と辻が来たら話す事にした。
×××
翌日、海斗はスナイパーの合同訓練に来ていた。来たくなかったけど。
でも二宮の命令ならば仕方ない。一応、狙撃用トリガーもセットしているし、当たらないスナイパーほど意味のないものはない。正確に言えば、海斗に限っては割とあるけど、本人はその理由をよくわかっていない。
しかし……気が進まない。何せ、敵を殺すときは拳でやらないと気持ち良くないから。遠距離からコソコソと隙をついて狙撃とか、あんまり好きじゃないのだ。
「お、珍しい奴が来てるじゃねーの」
そんな風に声をかけてくるのは、当真勇。相変わらずのリーゼントとニヤけた顔で声を掛けてきた。
「俺だって来たくて来てねーよ。二宮さんが行けって言うから」
「ま、良いんじゃねーの。お前がもっと狙撃出来るようになんなら、二宮さんはもっと助かると思うし。そしたら、またラーメンとか奢ってもらえんじゃね?」
「この待ち時間なんなの? 時間の無駄だろこれ。さっさと始めようぜ、一瞬の隙を見せた奴から脱落する、死のゲームって奴をよ」
「マーカーつけるだけだから、緊急脱出もしないけどな」
なんて話している時だった。その2人の元にまた新しい人影が現れる。
「陰山先輩、お疲れ様です!」
「雨取と……C級か?」
「ち、チカ子! 挨拶したい人ってこの人⁉︎」
「ア?」
今、売られたのだろうか? アホ毛と猫が目立つ少女と千佳が駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ、出稲ちゃん。陰山先輩、優しい人だよ」
「どこが⁉︎ 軽く2〜3人は殺ってそうじゃん!」
「あと、女の人に手を出せないし、二宮さんとレイジさんに頭が上がらないし、ラーメンって言えば言うこと聞くし、風間隊に目を付けられてるし、可愛くて強い彼女もいるし、割と弱点多いから大丈夫だよ」
「雨取さん? お前そういうこと言うキャラじゃないだろ? どこのボケカスが入知恵した?」
「小南先輩が『怖がられてるバカを見かけたらこう言え』って……」
あの野郎、余計な真似してくれやがるものだ。多分だが、怖がられるのを回避するために気を回したのだろうが、余計だ。怖がられるのは慣れているし。
「もう言わなくて良いからな。舐められる方が余程不愉快だから。OK?」
「は、はいっ」
そう言うと、後ろから当真が口を挟んだ。
「まぁでも、こいつは確かに怖い奴じゃねーから。そんな怖がるな。損だぜ」
「ア?」
「ついさっき、うちのオペレーターに論破されて肩を落として撤退してたからな」
「テメエエエエエ! なんでその恥ずかしいエピソード知ってんだああああああ!」
「いやだからうちのオペレーターだから」
「あのクソ女……次あったらボコボコにしてやる! ……いや、あれ一応女だし、手を上げんのはアレか。い、言い負かしてやる!」
「無理無理無理」
「アア⁉︎ ……まぁそうか。無理だなあれには」
残念だけど、勝てる気がしない。海斗特攻が突き刺さっており、海斗が生まれて初めて関わりたくないと思える人物だった。
「だから、次誰かにバラしたらお前を殺すから。生身で」
「おー怖っ。怖ぇからやめとくよ」
……中々、肝が据わっている。自分にビビらない奴は珍しいので、なんかちょっと仲良くなれそうな気がしていると、また新しい奴が現れた。
「あれ、珍しい奴がいるな」
「おい、誰だ同じ入りで来る奴は」
そこにいたのは、荒船と穂刈。たまに村上と話したりする時、顔を合わせる事もある二人だ。
「何してんだお前」
「訓練に参加する以外の何があんだよ」
「お前も来るのか? スナイプ界に」
「スナイプ界って何。てか、そんなわけないだろ。コソコソ隠れて長距離陰キャ砲を撃つくらいなら、正面から正々堂々と拳で語り合うわ」
「お前これだけスナイパーがいる中でよくそういうこと言えるな……」
そんなの気にするような奴らじゃないくせに……と、ため息をつきつつも、だ。
そろそろ訓練が始まるようで、狙撃手達は自分達の席に座り始める。海斗はとりあえず当真の隣に座る。そして……反対側には千佳が座ろうとした……が、それを止める影。
「雨取さん、こっち空いてるから、そこ俺に貸して」
「あ、うん。ユズルくん」
絵馬がわざわざ隣に座ってきた……いや、サイドエフェクトによってわかる色的に目的は自分ではなく、千佳の方っぽい。
「おう、絵馬」
「どうも、陰山先輩」
「お前好きなの? その子のこと」
「ぶほっ!」
吹き出された。あ、好きなんだ、とすぐに理解し……ている間に、自分の胸ぐらを掴んできた。
「なんで言うのなんで言うのなんで言うの」
「コクれよ、男なら」
「無理だって……!」
「ユズルくん? もう始まってるよ?」
「っ、ご、ごめんっ……!」
千佳がそう言う通り、他のスナイパーはみんな撃ち始めている。訓練の内容は、的に銃を撃つ普通の感じのもの。
ふと隣の当真の的を見ると、割と随分外していた。弾はまばらに散らばり、的には不規則に穴が……いや、違う。
多分だけど、これ撃ち終わった後に完成するのは、木の葉の額当てのマークだろう。
「へぇ……」
面白い。そういうの出来るんだ……と、思ったのとほぼ同時。良いこと思いついた。
「絵馬、絵馬」
「……何」
「ハートマーク作って送れ」
「ブフォ!」
吐き出しながら、引き金に当たった指が明後日の方向に弾を飛ばす。
「な、何そのキモい発想……!」
「バカやろう、中坊の女なんざベタなくらいがちょうど良いんだよ。捻くれて見せてホントは愚直なのが好みなんだから」
「木虎先輩とか見て同じこと言えんのかあんた⁉︎」
割と愚痴にも聞こえる事を言いながら騒がしくしている時だった。海斗の反対側の席の当真が口を挟んだ。
「じゃあ……唇のキスマークとか作ってみたらどうだよ」
「当真さんまで何なの……⁉︎」
「峰不二子的な」
「女は秘密を着飾って美しくなる?」
「そうそれ」
「いや俺男だから!」
「そういう女になれよってことで」
「雨取に」
「あんな下品な女になられてたまるか!」
それは確かにそうだ。千佳はトリオン量以外の全てが小さいし、何もかも真逆も良いところである。
「でもお前、良いのか? 青春はあっという間なんだぜ?」
「そうだぜ、ユズル。好きな女とイチャイチャするなんて機会、一生のうちに何度もあるもんじゃねーぞ?」
「そうだよお前。好きなあの子は、待ってるばかりじゃ振り向いてくれないんだよお前」
「勇気を振り絞れ、ユズル。あの子のハートに壁抜き狙撃」
嫌な年上二人組によってユズルは問い詰められる……が、残念ながらそれで流される程、ボーダー隊員はちょろくなかった。小南以外は。
「しないから!」
「ちぇー」
「まぁそんなら良いわ」
その前二人揃って狙撃に戻った。海斗はのんびりとスコープを覗き込んで、的の中央を狙う。
引き金を引いてみると、少し右に逸れる。止まっている的にくらいは真ん中に当てたいものだ。
そんなわけで、次は少し左を狙うが……今度は左すぎた。こうして改めてやってみると……的には当たるけど、中々真ん中は難しいものだ。
何度か調整して撃ち続けていると……隣から声がかけられる。
「へぇ、筋は悪くないじゃねぇの」
「あん?」
なんだ急に、と思う間もなく、当真からさらに声を掛けられる。
「独学か?」
「ガンナートリガーの撃ち方なら犬飼に教わったけど。無いよりマシだろっつって」
「なるほどな。それでそこそこ当てられるってのも中々やるじゃねぇの」
「? 狙えば当たりはするじゃん?」
相手が動かなければ。
自分は本職のスナイパーではないので、二宮も百発百中を期待しているわけではないのだろう。
「ほーう? 益々面白ぇじゃねぇの」
「何が。てかお前自分の練習しろよ」
「もう終わった」
「は? ……ほんとだ」
的には綺麗な額当てのマークが完成している。思った以上の精度にドン引きである。
「お前……すげーな」
「No.1は伊達じゃねえぜ。それよりお前、構えてみろ」
言われて、構えてみる。スコープの先の的が表示され、中央に赤い点を合わせる……が、得物が長いとどうしても少し揺れてしまう。スタンドで立てているとはいえ、これだから狙わないといけない武器は苦手なのだ。
それでも、若干の手ブレは合わせようとすれば的の中心に行くので、後はその時に狙うだけなのだが……。
「……っ」
引き金を引いた。トリオンによる弾丸は真っ直ぐと突き進み、的へ向かう。でも、当たる前に分かった。
「ダメだこれ」
また中心から逸れて、的の右側に穴を空ける。撃つ直前に、少しズレたのが見えた。やはり、狙撃は苦手だ。特に今日は調子が悪い。
「あーくそっ」
「なるほどなー」
「んだコラ。茶化してんのか。チャカで殴るぞ」
「いやいや、お前はどうやら俺と同じタイプらしい」
「は?」
「ズバリ……感覚派だな」
「……いや俺別にニュータイプじゃないよ」
「いやそんな超感覚じゃなくて」
じゃあ何? と、視線で問うと、当真は真顔で答える。
「当たる時っつーのが肌感覚で分かるってことだよ。俺の場合はリーゼントの揺れ具合とかで気流を読んだりしているが、とにかく他の奴にはない何かで撃ってる奴のことだな」
「ほう、きりゅー……」
気流って何? と思っても口にしない。自分より頭悪そうなやつが知ってる単語を自分が知らないとか嫌だ。ちなみに、トリオンの狙撃に気流は関係ない。
「お前の場合は、まだ狙撃自体の経験不足でその当たるっつー感覚を掴めてねーが、撃てば撃つほどそういうのは分かるようになるもんだ」
「……つまり、とにかく練習ってことか?」
「そういう事だ」
何の助言にもなっていなかった。なんだそれ……と、少しため息を漏らしていると、当真が少し弁解するように言う。
「いやいや、その感覚って誰でも分かるもんじゃないぜ。普通は狙い方とか、撃つ時は何処を見るとか、そういうのを教わって覚えるモンだから。早い話が、お前は割と才能あんだよ」
「……マジか」
まぁ、スナイパーの才能というより、人と戦う才能だろう。孤月や銃手トリガーだって、基本的にはそこそこ扱えた。アタッカーになったのは人を殴るのが得意だったからだが、武器の取り扱いは全体的に得意なのかもしれない。
「もしお前が良けりゃ、あとでうちの作戦室来いよ。撃ち合いの練習台になってやる」
「マジか。やるわ」
「ま、風穴何発も貰うのはお前の方だと思うけどな」
「言ったなコラ。じゃあ負け込んだ方は真木理佐の後ろから膝カックンな」
「良いぜ」
話しながら、とりあえずスナイパーの練習を続けた。
×××
さて、当真vs海斗の戦闘が、二人しかいない冬島隊の作戦室で始まった。市街地のステージで、二人はランダムに配置される。
動きながら、海斗は市街地内で早速、人影を見つけた。副作用によって自身に対する感情を色で見分けられる……が、当真の色は少し変わっていた。
「……あん?」
殺意も警戒もない。一つあるのは「こいつ面白い奴」みたいな浮かれた感情の緑色だ。
なんか……変な奴だな、と思いながらも、まぁ見つけたは見つけたので、自分はこの場でアイビスを構えた。元々、自身がスナイパーを持たされているのも、マップ選択権がなくても壁抜きをできる副作用を持っているからだ。
味方をコソコソ狙っているスナイパーを見つけ次第、壁や天井、床下をぶち抜いて牽制できる。
そんなわけで、撃った。民家の壁と天井を抜いて、真っ直ぐと弾丸は当真の元に向かう。
が、動いている的に当てるのは苦手だった。バッグワームに穴を開けたものの、少し逸れて外した。
「チッ……」
自身のサイドエフェクトではシルエットしか分からないため、バッグワームのようなヒラヒラしたものを身に付けられていると狙いづらい。
とりあえず、肉眼で見るしかない。そう思い、スコーピオンで天井をあけて、そこから顔を出した直後だ。額を、一本の斜線が貫いた。ギレン総帥のように。
「……!」
やられた……いや、というか早すぎる。
顔を出したのだって、まだ顎さえ空けた穴の淵から出ていなかったにも関わらず、見事に抜かれた。
そんな疑問を解消するように当真から通信が届く。
『バカかオメーは。ンなところに穴空けたら、誰だってそこから顔出すと思うだろうが。言っとくが、俺や奈良坂……B級なら半崎とかトノなら余裕で今の隙くれー当てるぞ』
「……マジか」
スナイパー……あんまり驚異に感じたことはなかったけど、こっちが狙撃するって考えると厄介だ。
……なおさら、アタッカー以外をやる気にならない。
『あとお前、シールドあんま使わねーのな。お前なら今の場合、回避は無理でもシールドくらい使えば凌げたんじゃねーの?』
「あー、まぁそれはな」
シールドはどうにも使い忘れてしまう。そもそもシールドって自分の手で操るわけではないので、あまり扱うのが得意じゃないのだ。ガードにしても殴るにしても、物を使うなら手で扱うものの方が良い。
『で、もう終わりか?』
その煽るようなトーンの口調に、イラリと眉間に皺を寄せる。
「あ? ふざけんな。お前をぶち抜くまでやるわ」
『面白ぇ、上等だ』
との事で、またしばらく二人で撃ち合いを始めた。
×××
バッグワームを着込んだまま、海斗は民家の中に潜む。ここまでフルボッコにされ続けたわけだが、もう少しで勝てそうな気がする。
挟んだままライフルを片手に、当真の場所を確認する。向こうはこっちの場所に気がついていないはずだ。
段々と分かってきた。自分のサイドエフェクトは狙撃手同士の撃ち合いに向いている。向こうに居場所は分からなくとも、こちらには筒抜けだからだ。
ならば……初手、最初の一発を当てれば勝てる。
だが、その一発を向こうは待っている。途中からバッグワームを解除して、片手にイーグレット、片手にはいつでもシールドを使えるように身構えられている。
つまり……当真に確実に当てられる狙撃位置が重要になるわけだ。
「……よし」
決めた、作戦。当真は逆にこっちに早く撃って欲しくて仕方ないはずだ。場所は分からないが、一発撃てばバレるから。
壁・天井抜きも最初こそいけるはずだったが、おそらく向こうは逆に障害物が壊れた場所を利用してシールドや銃口をこちらに向けているはずだ。
「近付くしかないか」
絶対にバレないように……と、コソコソと民家の間を移動する。正直、隠密行動は得意ではないのだが、近づけば近づくほど向こうはシールドも間に合わなくなるはずだ。
とにかく移動し、いよいよ民家一軒を挟んで当真までの距離、直線で18メートルほどまで近づいた。
ここはもはやスナイパーどころか旋空孤月の間合い。というか、自分ならここまで寄れば斬り殺せる。
それでも一応、スナイパーバトルなので、ライフルを構えた。
「……いや」
ダメだ。ここから民家まで、壁と天井は三枚。後でバレる可能性はある。だが、これ以上近づくのは危ない。
ならば……これだ。アイビスを解除し、レイガストを出した。その上で、レイガストにバッグワームを巻きつけ、思いっきり投げつけた。
「!」
反射的に当真がそっちに気を取られた隙に、レイガストを解除してアイビスを出し、銃口を向けて放った。
当真はシールドを出したが、少し焦ったのだろう。シールドをアイビスの弾丸が貫き、当真のイーグレットも破壊した。
しかし……本人は消しきれていない。その隙に接近。片手には、拳を構えている。
「死ねコラ」
「いや待て待て待て! それルール違……」
胸を貫く一撃を叩き込んでから、そういえばスナイパー限定だったことを思い出した。
「……おい」
「……悪い」
そんなわけで、反則負けである。
結局……一勝もできなかった。せめて接近OKなら何とかなったものの、スナイパー同士の戦闘となると大分厳しい。
「いやー、惜しかったな」
「どの辺が?」
「あの辺?」
「あの辺か」
「やっぱりその辺かも」
「殺すぞ、この辺で」
余裕まんまで適当なこと言いやがって……と、思わないでもないが……当真は苛立ちに気がつく事もなく、しゃあしゃあと続ける。
「まぁでも、俺とスナイパー限定であれだけやり合えりゃ十分なんじゃねえの? 最後とか危なかったし、もっと経験積めばスナイパーも出来るようになんだろ」
「……あそう」
そんな事を言われても、実感は湧かない。実戦で試す他ないが……勝手に個人ランク戦なんてしたら、また二宮に怒られそうだし……やはり、次のランク戦でスナイパーをするしかない。
「あとは実戦で試してみろよ」
「へいへい……」
あまり実感は湧いていない。結局、当真には弾を当てられていない。惜しいとこでイーグレットを一度、破壊出来た程度。他は全部、射線が読まれていたように集中シールドで凌がれた。
まぁ……でも、とりあえずなんか途中から特訓みたいになっていたし、ひとまず今日は二宮からの任務は果たせたと思っておこう。
「飯行こうぜ。世話になったし、晩飯奢るわ」
「バカ、お前後輩だろ。飲み物で良いわ」
「結局奢られるんかい」
なんて話しながら、冬島隊の作戦室を出て行こうとした時だ。扉が開かれ、中に入ってきたのは真木理佐だった。
「うわっ」
「は?」
嫌な奴と会った。と、そこでさらに当真が余計なことを思い出す。
「あ、てか罰ゲーム」
「あー……」
結局、勝てなかったのでやらなければならない。しかし……さっきのトラウマだろうか? 割とこれに膝カックンするのはしんどい。
だが……勝負は勝負だ。やるしかないので、ため息をつきながら目の前の理佐に声を掛けた。
「真木」
「あなたに呼び捨てされる筋合いは無いんだけど」
「……」
ダメだ、隙を窺うには……これしかない。
「じゃあな、当真。また礼は今度するから」
「おう」
「仮にも他部隊の作戦室を使ったのに、そのオペレーターに何もなし?」
「……オジャマシマシタ」
カタコトでそう言いながら、立ち去った。
真木理佐はその海斗の背中を眺めつつも、ため息を漏らしながら当真に声を掛けた。
「……ちょっと、なんであんなの作戦室に入れたの」
「いやー、面白そうな奴だったから」
「二宮隊はただでさえ今、反則級なのにさらに強くしてどうするの」
「俺らは関係ないだろ。……てか正直、真木ちゃんだってあいつ嫌いじゃないだろ」
「……もう少し礼儀を覚えればね」
正直な人間を嫌いになる程、偏屈ではない。それに、強いし成果も上げているし、隊員としても有能であることは認めている。
「てか、二宮隊がA級に来たら、A級も喰われるとこあんだろうなー。特に俺らなんか相性最悪」
「やるからには負けるつもりないけど?」
「わーってるわ。あいつの副作用は、視界に入ってなきゃ使えねえ。うちのワープなら勝ち目はある」
まぁ、それは確かにだけど、二宮ならまたそれに備えて作戦を考えるだろう。面白くなりそうだ……なんて思いながら、とりあえずいつまでも作戦室入り口で話すのはアレなので、中に入ろうとした時だった。
後ろから、膝の裏をカックンと突かれた。綺麗に入りすぎで、無様にも床に尻餅をついてしまった。
「っしゃ入ったー! 当真、見たよな。これで罰ゲームOK?」
「オッケーオッケー。だからお前もう逃げたほうが良いよ」
「あん?」
「……」
前言撤回、こいつ嫌い。
「殺す」
「あ、やべっ」
逃げたので追いかけた。