とりあえず、犬飼先輩はこのパチモン小説ではレイガストを持っています。
さて、B級ランク戦当日。今回の試合は二宮隊、東隊、生駒隊、那須隊の4部隊。
その試合を、玉狛支部で見ているのは三雲修、空閑遊真、雨取千佳、そして新たに加入したヒュースだ。他にも小南桐絵がお茶を飲んでいる。
まだ試合が始まらないテレビの前で、足を組みながらデータを読むヒュースが、ポツリと呟いた。
「……なるほど、確かに二宮隊だけダントツと思われてもおかしくない強さを誇るな」
「ちょっと、敵を認めてどうすんのよ。あんた達一番の障壁になってる相手よ?」
「現状を把握し、相手を認めるのも必要な事だろう。越えなければならない相手ならばなおさらな」
それはその通り、と小南は黙っておく。
しかし……と、ヒュースは悩まされる。二宮、犬飼、辻の三人部隊の時であれば、まだ何とかなったかもしれない。三人とも点を取る力はあるが、こちらは四人。他の部隊との乱戦を考慮すれば、やりようはある。
だが、いるのはもう一人、バカがいる。あの反則級回避をする阿呆まで一緒になれば厄介だ。
仮にもスナイパーもいるとなれば射程で有利を取るわけにもいかない。奴のサイドエフェクト的にに、アレは敵を仕留めるためのスナイパーではなく、スナイパーを狩るためのスナイパーだから。
「お、もうそろそろ始まるよ」
遊真の声が耳まで届き、顔を上げる。
MAP選択権を持つのは那須隊。選ばれたMAPは市街地Cだ。どうやら、スナイパーで有利を取るつもりらしい。
その上、那須にとって遮蔽物はあまり意味を為さない。下からスナイパーを狩れるからだ。
だが……それも、二宮隊に対しては有利を取れているとは言えない。
「オサム、少しは二宮隊の対策を考えてきたのか?」
「……いや、まだ何も浮かんでない。思った以上に隙がないから。頭の悪さが弱点の先輩もいるけど、ラーメンを出せば他の人達の言うこと聞くから……」
「……」
無駄に軍隊気質なあの男は、上官の言うことには絶対服従。奢ってくれる人限定ではあるが、それでも賢い二宮の指示には従う。それは結果だけ見れば、賢い行動を取るバカの完成なのだ。
「まぁ、それを探るためにこうして今日も観戦するわけだし、気楽に見ようよ」
遊真のセリフで「それもそうね」みたいな空気になり、全員がテレビに目を向ける。それとほぼ同じタイミングで、実況の三上から声音が響いた。
『それではB級ランク戦、スタートです!』
場所はスナイパー有利の市街地C。選んだのは那須隊で、各隊ともスナイパーはいるが、二宮隊の狙撃手だけスナイパーがおまけのアタッカーなこともあり、不利な対面になると踏んだのだろう。
当たり前だが、ランク戦で大事なのは地形戦をよく練ること。こういう二宮隊への牽制の仕方も面白いかも、と修は頭の中にメモをする。
さて、そんな中、試合はまず各隊とも序盤の動きを見せる。
『全隊員、転送完了。それに伴い、スナイパーはバッグワームを着用。日浦隊員、東隊長、隠岐隊員、陰山隊員がバッグワーム……ん?』
そこで、三上が小首をかしげるような仕草を見せる。それは修、遊真、千佳、小南も同様だ。なんか今、酷く馴染みのない名前が混ざっていた気がする。
そんな中、解説役として呼ばれた出水と米屋のバカコンビがおちゃらけた口調で口を挟む。
『いやいや、三上。あのバカがバッグワームなんて羽織るわけないだろ。どんな相手でも喧嘩をはりたがるバカだぜ?』
『そうそう。誰かと見間違えてんだろ。もしかして、三上疲れてる?』
『そ、そうかもしれませんね。失礼致しました。ではこの茶髪でスーツの方は……犬飼先輩かな? いずれにしても珍しいですね』
『犬飼先輩こんな目つき悪くないでしょ』
『じゃあ二宮さん?』
『二宮さんにしては背が低くねえか?』
『辻隊員?』
『いやいや、髪、髪』
『……』
『……』
『……』
そこで、沈黙が流れる。スーツで茶髪の男なんて、もう他に一人しかいない。
そして、それはテレビの前の玉狛第二と小南も同じだった。
「か、陰山先輩が……バッグワーム?」
「天変地異の前触れ……?」
「あ、あり得ない……いつでも何処でも堂々と喧嘩したがる人が……」
「あいつボーダーに入って一年経っても『バッグワームって何? 甚爾の呪具袋?』とか言ってたのよ⁉︎」
唯一、平然としているヒュースが、少しついていけていない様子で眉間に皺を寄せる。
「貴様ら……何を驚いている? 奴はスナイパーのトリガーも持っているんだろう。スナイパー有利なマップにおいて、それらを狩るためにバッグワームをつけるのは当然だろう」
至極ごもっともな意見だ。レーダーから映らなくなるトリガーのバッグワームは、位置を知られたら不利になるスナイパーにとって必要不可欠なものだ。
そして、それらを狩るためのスナイパーも装備すれば、スナイパー有利なマップでスナイパーは下手に撃てなくなることを指し示す。
……だが、問題はそれを使っている本人のことだ。
「あのバカな海斗がそんなことを考えられるわけがないでしょ!」
「そ、そうです。『レーダーに映らなくなる? いやそんなコスいことしてる暇があんなら堂々と正面から叩きのめせよ』とか言い出すタイプなのに……」
「いやいや、あの人なら『そんな小細工いくらしたって、要するに勝ちゃあ良いんだろうが』とか言い出しそう」
「そ、そうだね……後は『普通に殴り合うのに邪魔』って言う気も……」
「よく分かった」
つまり、滅多に使わない奴が使った事で動揺しているのだろう。……にしても、たかだかバッグワームを使っただけでこの騒ぎって……と、ヒュースは冷や汗を流しながらテレビを見る。
『あいつ体調悪いんじゃね? そういえば、この前あいつラーメン屋で机の上に落ちた焼豚食ってたぜ』
『そういや、かげうらで昼食ってる時も、まだ焼けてないお好み焼き食ってたな』
『うえ……あいつ結構、悪食だよな。てか焼けてないお好み焼きって美味くねえだろ……』
『大丈夫だろ、頭が弱い分、身体は強いから』
『それな』
ガッハッハッハッ、と笑うあんまりな同級生二人を眺めながら、ヒュースはとりあえずバカには触れないことにした。
×××
『なんか今、バカにされた気がするんすけど……』
「実際、バカなんだから仕方ないだろ」
耳元でそんな海斗の声が聞こえ、二宮は適当な返しをする。実際、普段ならありえないバッグワーム起動を実況と解説がイジっているのだろうが、仕方ない。それくらいアホなのだから。
頭が弱いとは思っていたが、予想以上の弱さだったことが前の試合で発覚したので、今日は狙撃手の運用で奴を使うと決めた。
戦術の幅は広ければ広いほど良い。遠征を視野に入れているのならばなおさらだ。バカが狙撃手として使えるようになれば、長距離戦もこなせるようになる。
さて、そんなわけで、二宮隊は久しぶりに犬飼、辻、二宮の三人のフォーメーションで出る。
その前に、バカにだけはちゃんと指示を出しておかなければ。
「陰山、お前は狙撃位置について逐次、敵の居場所を報告しろ。辻、犬飼は狙撃ポイントを抑えに行け。陰山がいれば、このマップのスナイパーは浮いたコマになる」
『二宮さん、でも俺、東さんの場所はわかりませんよ。あの人、たまに色とか発さなくなるし』
「良いからやれ。出来る範囲でだ」
『了解』
『大丈夫だよ、海斗くん。俺も辻ちゃんもそこまで期待してないから』
『気負わなくて良いよ。どうせ出来るとは思ってないから』
『お前らあとで覚えてろよ』
とのことで、動き始めた。まぁ、元々バカがいなくてもトップを行く地力はある。この試合も普通にやれば負けることはないだろう。
×××
「さーて、狙撃位置にっ……と」
犬飼が早足気味に坂道を登る。転送位置が高台から近いのはラッキーだった。このまま走っていけば一箇所は抑えられる……と、思っている時だった。
ふと、遠くから飛んでくるトリオンキューブ。それを、レイガストでガードしながらバックステップで下がり、民家を壁にして隠れる。
「……おっと、早速見つかったか」
現れたのは、水上敏志。やりづらい射手を前に、まず警戒したのは周囲に生駒か南沢が来ていないか、だった。この男が無策で仕掛けてくるとは思えない。
「あかんあかん、ここはあかんよ犬飼。ここは隠岐の家やさかい」
「いやいや、誰の家でもないでしょ」
そう言いながら、壁を盾に銃を構えた時だった。耳元に海斗から通信が入る。
『犬飼、北東から狙撃くる』
「!」
それを聞いて、レイガストで自身を包み込みながらしゃがんだ。言われた通り、犬飼の頭があった場所を綺麗にアイビスの銃弾がレイガストを貫いて通り過ぎていく。
「! 避けたか……じゃ、ほな」
一撃離脱のつもりだったようで、水上はハウンドをかましながら下がっていく。それを、シールドでガードしながら犬飼も狙撃された方向に遮蔽物が行くように退避する。
にしても「隠岐の家」とか言っておきながら、別の場所にいる隠岐から狙撃をさせるとは、相変わらずコスい男だ。
「サンキュー、海斗くん」
『まだ来る。えーっと……みっ、みなみにし? から爆撃』
「南西ね」
上から降ってくる追尾炸裂弾。下がりながら、水上が嫌がらせしてきているのだろう。ついでに自分の居場所を知らせてアタッカー二人を呼んで合流。
そのまま仕掛けてくるのか、それとも一旦落ち着くのかは分からないが、こちらも部隊との合流を急ぎたい。ここは逃げの一手……と、思っている時だった。
『犬飼、近くに熊谷が来てる。あと多分、那須の射程内』
「!」
それを聞いた直後、水上が去って行った方向とは違う方角から弾の雨が降ってきた。
すぐにシールドで傘をさしながら後方へ下がる。マズイ、割と囲まれている。或いは、エンカウントしたタイミングが最悪だったのかもしれない。
何にしても、このままはマズイ。どうするか……なんて悩んでいる時だった。
『犬飼、あと3分粘れ』
『ちょっと、海斗くん今日は狙撃手でしょ。来ちゃだめだよ』
『俺じゃねーから。辻が来る』
「……!」
少し驚いた。まさか、海斗にここまで堪え性があったとは。情報共有もしっかりしてくれている。
これは……二宮さんの言った通り、また別のフォーメーションができるかも。
そんな風に思いながら、戦闘を続けた。
×××
「狙撃位置についた。いつでも良いぞ」
『了解!』
東がそう報告すると、小荒井の元気な声が返ってくる。現在、東のスコープの先では、犬飼、辻のコンビを相手に那須隊の熊谷、那須が戦闘中だ。もっとも、辻は異性相手に近距離戦はこなせないので、犬飼の近くで那須の射撃を凌いでいるだけだが。
狙撃手は隠岐の一発以来、特に動きはない。スナイパー有利なマップでこれだけ狙撃がないのは、やはりバカという抑止力があってこそだろう。
本来なら、ここで二人に二宮隊へ突撃してもらい、1点掠め取るのが当初の作戦なのだが……今、こうして外から見ている東には危険に思える。それを、2人が気づけるだろうか?
『待って下さい』
そんな中、奥寺が口を挟んだ。
『どうした?』
『このまま行くと……なんか、危ない気がして』
『なんだよ。奥寺』
小荒井に聞かれた奥寺が、少し緊張気味に言い返す。
『俺ら……もしかして、陰山先輩に見られてんじゃねって。だとしたら、これここで突っ込んでも犬飼先輩も辻先輩も簡単に避けちまうんじゃないかって』
その意見に、東は少なからず感心した。よく分かっている。今回のマッチアップならば、海斗はわざわざ高台など取りに行かず、生駒隊を相手に暴れ回るのが普段のやり口だ。
だが、今回はやたらと大人しい。相手がガールズチームとはいえ、犬飼の援護に辻が先に到着したくらいだ。
『あー……それはあるな』
『それに、割とあの2チームの戦闘、長引いてるし、二宮さんもすぐ来る気がする』
奥寺の意見に、小荒井は頷いた。点は取れても二人ともやられる可能性はある。
ならば、東が聞くことは一つだ。次はどうするのか?
『なるほどな。じゃあ、どう動く?』
『様子を見たいです。生駒隊も近くにいるでしょうし、無闇にバトルは危険だと思います』
『俺も。こんな所で真っ先にやられんのはごめんっす』
『了解した』
やはり、二人とも少なからず成長している。それに少しフッと微笑みながらも、まだまだ及第点と思わざるを得ない。
東にもハッキリと分かったわけではないが、二宮の狙いはさらに奥にあるのだろう。
×××
「っ……!」
中々、仕留めきれない、と那須は少し冷や汗を流す。元々、犬飼も辻もマスタークラス。簡単には勝てるとは思っていない。
だが、それにしても予定外だった。海斗がここまで援護に徹するとは。那須の変化弾の軌道は全て読まれているし、簡単に凌がれる。
「玲、どうする? このままじゃ二宮さんが来ちゃうかも……!」
「……仕方ないわ」
「そうね、一旦退……」
「モードチェンジ、ベジータ」
「はい?」
今まで少し遠慮気味に戦っていたが、仕留めるにはやはり全開で行くしかない。
両拳を握り締め、肘を曲げて拳を上に向け、中腰になる。
「ハアァァァァッッ……!」
「れ、玲。本気? 一旦、下がった方が……」
「ギャリック砲!」
ダメだ、入り切っている。いやまあ、実際入り込んだ那須は強いわけだが。それもノリノリならノリノリなほど格上も食っていけるポテンシャルが発揮される……なんて思っている時だった。
玲が変化炸裂弾を放つ直前、犬飼と辻は左右に分かれて退避する。そして、その後ろから巨大な旋空孤月が飛んできた。
「!」
「危なっ……!」
距離があって助かった。無かったら、那須はバッサリやられていただろうが、右手だけで済んだ。
二人でなんとか避けて、距離を保つ。だが、これで二宮隊を挟んだ形になった。
しかも、犬飼と辻は左右にバラけている。ならば、片方を落とすチャンスだ。
「くまちゃ……トランクス!」
「くまちゃんで良い!」
近い方の犬飼を標的にする。那須の気弾……もとい変化弾が散りばめられながら犬飼を追い、そして中心から熊谷が突撃する。
変化弾の弾丸をレイガストでガードしつつサブマシンガンで撃ち落とす犬飼だったので、すぐに熊谷は追い付いた。
孤月を振り被り、面打ちにしては少し斜め気味にしながら一気に振り下ろす。
それを、レイガストで犬飼は止めた。だが、これは想定内。本命は……那須の変化弾。
「シールド」
犬飼がサブマシンガンを引っ込めてシールドで身を固める。だが、弾丸はほぼ360度を囲んでいる。犬飼はとった……と、思ったのも束の間だった。
「シールド」
さらにシールドを呼ぶ声が増える。実際、シールドは張られた。二宮によるものだった。これで、変化弾は全て遮られる。
ゾワッ、と熊谷の脳裏に嫌な予感がよぎる。二宮の間合いで、那須の攻撃は遮られ、犬飼との間合いも近い。
すぐに離れようとした直後だった。
「スラスター」
犬飼の静かな声音が、やたらと耳の中を反復した。
その後、手に握られていたレイガストが離れ、熊谷を後方へ押し飛ばす。空中に飛ばされ、遮蔽物もクソもない箇所を悠々と飛行しながらも身動きが取れない。
すぐレイガストを壊そうと思い、孤月で破壊しようとした時には遅かった。二宮から放たれた速度重視のアステロイドが、熊谷を蜂の巣にして緊急脱出させられた。
×××
「二宮さんはあっち……ってことは、辻ちゃんはフリーってことやな」
そう言いながら、生駒が辻へ距離を詰める。顔面へ突きを放ち、それを右に首を捻ってかわす辻の方へ刃を向け、横へ切り払う。
が、それをしゃがんで回避されると、辻はアッパーを繰り出して生駒を下がらせた後、孤月を横に斬り払う。旋空により範囲を拡張したが、同じく旋空で真上から刀に向かって振り下ろして相殺させつつ、それを踏み台にして真上を飛び越えて辻へ迫り、廻し蹴りを放つ。
蹴りを腕でガードした辻を、下から斬り上げるように刀を振るう。同じく刀でガードした辻だが、体勢が崩されて身体が宙に浮く。
その隙を、逃さずに水上がハウンドを放った。左右から取り囲むように迫り、空中の辻はフルガードで応対。一発、足を貫いたが、それくらいは必要経費だろう。
その後、背後から迫ってきたのは、南沢だった。
「辻先輩、もーらいっ……!」
と、言いかけた時だった。パッ、と遠くが光る。それにいち早く気付いた隠岐が声を上げた。
「海!」
そこから一気に向かって来たのは、アイビス。一直線で南沢に向かった事もあり、すぐに近くにいた隊員二人と本人がシールドを張る。咄嗟だったこともあり、集中シールドとはいかなかった。
大きく広がったシールド3枚を貫き、南沢の右腕を奪う。危機を感じた南沢はグラスホッパーでその場を退避。その隙に、辻も二宮の方向へ移動した。
「っぶねぇ〜! 市街地Cのスナイパー怖ぁ〜」
「気ぃつけろ、海。今の、バカじゃなくて本職のスナイパーなら終わってたで」
撃って来たのは海斗。らしくない動きに困惑するが、一先ず、遮蔽物を作りながら合流する生駒隊。
何にしても、状況は良くない。二宮隊三人を前に、生駒隊が正面からぶつかる構図になってしまっていた。那須はいつの間にか逃げたようで、姿がない。
水上が落ち着いた様子でしれっと尋ねる。
「どうします、イコさん。二宮隊と正面からやります?」
「やりたくないけど、やるなら今やん? 海斗、今なら位置割れてるし。多分、東隊も那須隊もしばらく仕掛けて来ぉへんし、逃げられへんわ」
「しゃあない……覚悟決めましょか」
話しながら、生駒は孤月を構え、水上もトリオンキューブを出す。あまり勝てる気はしないが……ここから逃げられる可能性の方が低いだろう。それくらい、綺麗に正面から対峙してしまっている。
「辻ちゃんも犬飼も揃っとるし、二宮さんガンガンフルアタックして来んで。とりあえず、1点でももらっとこか」
「「了解」」
その会話を最後に、一気に戦闘を開始した。
×××
『那須隊、熊谷隊員が落とされ、まず先制したのは二宮隊! そのまま、二宮隊と生駒隊が正面から激突する!』
三上の実況の通り、生駒隊と二宮隊が派手な中距離戦を展開していた。先に手を出したのは生駒隊。派手な旋空孤月により、中距離でも斬撃が迫る。
受けるより攻撃に転じたい二宮達は、回避しながらハウンドで牽制していた。
相性は、良くも悪くもない。特に、二宮が最も警戒している東が姿を見せていない以上、どうしてもフルアタックはしづらい状況になっていた。
また、現状では生駒隊にとっての切り札になっている隠岐も隠密に徹している。
そういった心理戦により、割と五分の勝負が繰り広げられていた。
そんな中、解説席の仲良し二人は……。
『いや……ていうかさ』
『誰なの? あの海斗っぽい見た目のスナイパー』
二人ともドン引きしていた。それはそうだろう。犬飼と辻の引くほどの読みの良さ、そしてスナイパーが撃ちそうなタイミングで撃った一発。外しこそしたが、確実に南沢の腕を奪っていった。
『あれバカじゃないだろ。絶対、誰かルパンみたいにスナイパーが変装してんだろ』
『いやいや、スナイパーが変装してたらあそこ外さないから』
『じゃあスナイパーの腕前だけ海斗。あとは海斗じゃない誰か』
『なんだその最大公約数みたいな人間。腕悪いけど頭の良いスナイパーなんていなくね?』
『いやいや、頭良くもないやつ。どうせ二宮さんの指示だし。純度100%のバカ』
『じゃあやっぱ海斗じゃん』
『それな』
『二人とも、真面目に解説してください?』
三上ににっこりと微笑まれ、二人とも黙った。この子、海斗によく怒るようになったからか、怒りなれて来たようで怒ると怖くなった。
『まぁ、やっぱ有利なのは二宮隊ですね。隠岐も忍んでますけど、海斗がここまで援護に徹してると仕事もしづらいでしょうし』
『とはいえ、海斗の素人臭い潜伏場所なんて隠岐からしたらバレバレだろうし、海斗の狙撃も実質機能しないっしょ』
つまり、条件はほぼ五分。狙撃は機能せず、正面切っての戦闘なので海斗が居場所を知らせるもクソもない。だからこそ、二宮隊に分がある。
『では、生駒隊が勝つには?』
『近距離戦に持っていくこと、ですかね。アタッカー二人いるし』
『まぁ二宮さんと犬飼先輩の弾幕潜って近付くとか、カゲさんでもできないっしょ』
そう言う通り、モニター上ではジワジワと押され始めていた。
何かあるとしたら、他の二部隊。このままジワジワと3点丸々、二宮隊にあげるようなことはしないだろう。
『ま、何にしても、次の1点がどちらかのチームに入った時、他の二部隊も動くと思いますよ』
それにより、周囲の見学しに来た隊員達も固唾を飲んで試合を見守る。どちらのチームも地力は強い。だからこそいつ拮抗が崩れるか分からない。
緊張気味に眺める中、米屋が呟いた。
『やっぱ大人しくしてるバカには慣れねえわ』
『それな』
『二人とも?』
なんか違和感が残っていた。