ボーダーにカゲさんが増えた。   作:バナハロ

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修行に成果が出るのは師匠次第ではなく弟子次第。

 C級ランク戦では、得点の高い相手に勝てば、それだけ多くのポイントが獲得できる。

 つまり、初期ポイントを多くもらってる隊員も、油断をして低ポイントの相手に負ければ、それだけゴッソリと持っていかれる。よって、よっぽどのバカ……或いは連勝中で調子に乗ってる奴でなければ、例え才能があってもそれに胡座をかくような事は無い。

 緑川駿は後者、つまり調子に乗っていた。初期ポイントも同期の中では圧倒的、戦闘訓練では4秒とブッチ切り、その上、個人ランク戦でも負け無しだった。

 今、戦っている相手に勝てれば、自分はもうB級に上がれる……はずだったが、目の前の幼馴染の黒江双葉はかなり粘っている。

 押しているのは自分の方、攻めの手数が多いのも自分のはずだ。スコーピオンと孤月のため、軽さに差があるから当然と言えば当然だが、にしても余裕を持って捌かれてしまっている。

 

「チッ……!」

 

 緑川は苛立ちを隠せなかった。物事がうまくいってる時に急に躓くと、人はストレスが溜まり、動きが単調になるのだ。

 スコーピオンを枝刃によって両手に装備し、まずは右腕から斬撃を繰り出す。それを、後ろに反り身で回避されたため、逆の腕で首を取りに行った。

 その攻撃に対して、双葉は孤月の峰に手を添えてガード。そのガードされた孤月に、さっき躱された右腕で斬撃を加える事で押し出し、後方に大きく吹き飛ばした。

 攻撃手の攻防にしては、かなり大きな隙だ。その隙を逃すようなアホではない。

 急加速し、追撃する。左手のスコーピオンを消して、右手一本に集中する。通り過ぎざまに一閃が来る、と読んでいたのか、目の前の双葉は、孤月を前方に構える。おそらく、ガードするのだろう。

 しかし、緑川は薄く笑みを浮かべ、攻撃はせずに双葉の横を通り過ぎた。

 双葉の背後の壁に足を着けると、そこを踏み台にして加速。前腕にスコーピオンを生やし、胴体を斬り裂こうとした。

 

「なっ……!」

 

 しかし、宙に浮いてるはずの双葉が、地面に孤月を突き刺して無理矢理止まっていたのを視認したことで、緑川の思考は凍り付いた。

 空中に浮いてて身動きを取れない相手を背後から襲撃するからこそ、急加速による直線的な一撃が決まるのだ。

 だが、相手が動きを止めているのなら、それは変わって来る。地面に突き刺した孤月の上に立っている双葉は宙返りと共に緑川の一撃を回避し、着地しながら孤月を地面から抜いた。

 こうなれば、隙だらけなのは緑川の方だ。今度は双葉が地面を蹴り、緑川の背中に追撃する。

 しかし、スコーピオンはどんな姿勢からも攻撃出来るのが強みだ。カウンター狙いで、背中から勢いよくスコーピオンを繰り出した。

 それも、双葉には読めている攻撃だった。下にしゃがんで回避し、孤月を振り抜いて緑川の身体を両断した。

 

 ×××

 

 その後、さらに8〜9本戦ったものの、双葉の勝ち星は七つ。おそらく今のC級で一番強いと思ってた緑川に勝ち越せたので、これはバカ師匠に報告出来る、と少しウキウキしながらブースを出ると、先程勝ち越した一個上の幼馴染が立っていた。

 

「駿、お疲れ様」

「お疲れ。双葉、強いね」

「そう?」

 

 悔しかったのか、その言葉は穏やかには聞こえなかった。多分、負けるのが初めてなんだろう。悔しさがにじみ出ていた。

 それに対し、双葉はあまり自慢にならないように答えた。

 

「まぁ、師匠がいるから」

「師匠?」

「一応。師匠に教わってなかったら、今みたいに戦えてなかったよ」

 

 それに対し、緑川は「ふーん……」と素っ気ない返事を返しつつ、一応、気にはなるため聞いてみた。

 

「どんなこと教わったの?」

「えーっと……」

 

 相槌を返しながら、トリガーを解除して生身に戻り、学生服のポケットからメモ帳を取り出した。

 

「『喧嘩の要領その1』」

「喧嘩?」

 

 そこに引っかかった緑川だったが、まぁ戦闘の要領って事か、と頭の中で切り替えた。

 実はこの要領は全部、海斗の生身の喧嘩から来てるものであり、しかもどう戦闘について教えたら良いか分からなかったバカ師匠に「じゃあ、生身の喧嘩の要領で良いので教えて下さい」と自分から提案した、なんて言えるはずなかった。

 

「『自分から手を出すな。まずは相手に殴らせて正当防衛を勝ち取る』」

「え、それ本当に喧嘩の要領なの?」

「黙って聞いて」

「アッハイ」

 

 続いて二つ目。

 

「『その二、相手の表情から、攻撃のタイミングを予測しろ』」

「急に高度になったな……」

 

 しかし、これに関しては海斗が自分のサイドエフェクトを隠すためにかなり遠回しに言ったため、高度な表現になってしまった。まぁ、双葉はサイドエフェクトについて知ってたためあまり意味なかったが。

 実際、一応努力してみたら分かりやすい相手なら表情からどう来るか予測できるようになってしまった。まぁ、強い奴ほど無表情で戦うのであまり意味はないが。

 

「『その三、あー……三つ目はないわ。強いて言うならフィーリングで』」

「投げやりだな! ていうか、言われた言葉そのまま書いてんの?」

「師匠からの教えだからね」

 

 というか、そもそもメモするほどのことは書いてあったのだろうか。正当防衛、動きを読め、フィーリングと大したことは書かれていなかった気がする。

 しかし、双葉はむしろ納得できた。喧嘩慣れしてる様子から、ボーダーに入る前は恐らくヤンキーだったのだろう。

 手を上げても敵に手を上げさせてから、絶対に自分から手を出さない正当防衛スタイルは、ボーダー隊員になってからはカウンターを得意とする戦法に変わっている。

 それを双葉も真似したお陰で緑川に勝てたわけだが、双葉としてはもう片方のスタイルも教わりたかった。自分に指導してくれる時の技で、拳や蹴りを使う技だ。

 双葉もそれを知りたい。戦闘において、孤月以外で敵に攻撃を与える方法が欲しかった。しかし、海斗はどうにもそれを教えたがらなかった。

 

「ちなみに、その師匠は何を使うの?」

「スコーピオン」

「お、俺と一緒じゃん。ちょっと会ってみたいんだけど」

「良いけど……」

 

 今、師匠がどこで何をしてるのか分からない。確かシフトは入っていなかったはずだが。

 まぁ、あの師匠を見れば大抵の人は怖がって、例え緑川でもナメた態度は取らないだろう、と思いスマホを取り出した。電話をかけるためだ。

 耳に当てると、ノーコールで電話に出た。

 

「もしもし、武天老師様ですか?」

「どんな呼び名?」

『どんな呼び名?』

 

 緑川と電話の相手の声がハモった。声の主は海斗ではなかった。やけに落ち着いた声だ。

 間違えて電話してしまったのかも、と思い、双葉は焦って画面を確認する。

 

「あれ、えっと……」

『ああ、悪い。俺は陰山じゃないけど、これは陰山の電話だよ』

「え? どちら様ですか?」

『村上鋼だ。陰山の友達だ』

 

 なるほど、と双葉はホッとした。もしかして、あのバカ師匠はスマホを落としたのだろうか。

 

「武天老師様は?」

『あいつどんな呼び方させてるんだ……一応、聞くが、陰山の事だよな?』

「はい」

『あいつはここだよ』

 

 そう言った後、スマホからはものすごい轟音が聞こえてきた。

 

『死ねコラカゲカスコラァアアアア‼︎』

『テメェもカゲカスだろうがボケナスがァアアアア‼︎』

 

 あと汚い暴言も。恐らく、自分達と同じようにブースで個人ランク戦をしてるのだろう。

 

『テメェのそのチリチリ頭削ぎ落として仏に転生させてやろうかアアン⁉︎』

『やれるもんならやってみやがれ禿げ‼︎』

 

 何を言ってるのか斬り合いの轟音でわからないが、多分汚い言葉を使ってるので分かりたくもない。

 ふと緑川の方を見ると、かなりドン引きしていた。

 

「……やっぱ俺会わなくても良いや」

「……うん」

 

 小さく頷くしかなかった。

 

『で、陰山に何か用か? 用があるなら後にした方が良い。こいつら、一度喧嘩を始めるとお互いにスタミナ切れるまでやめないから』

「いえ、たった今、なくなりました」

『そうか』

「では、失礼します」

『ああ』

 

 そこで通話は切れた。ため息をついてスマホをポケットにしまうと、緑川が割と本気で心配そうに双葉に声をかけた。

 

「あの……一応、聞くけど、カツアゲとかされてないよね?」

「されてない。変な人だけど悪い人じゃないから」

「悪い人としか思えなかったんだけど……」

「本当に。で、今日はどうする? もう少し戦る?」

「いや、今ポイントごっそり持ってかれてB級が遠のいたし……続きは正隊員になってから」

「良いよ」

 

 短くそれだけ話して、緑川はブースを後にした。またポイントを稼がなければならないが、それ以上に双葉へのリベンジが重要だ。

 今回の戦闘でも、双葉には師匠がいて、何となくだが、カウンターを狙う戦略があったのは分かった。なら、自分にもそういう戦略がないとリベンジは果たせない。今日の所は帰って考えてみることにした。

 さて、残った双葉はどうしようか。もう少し模擬戦を続けても良いけど、せっかく自分の師匠が全力で戦闘してるみたいだし、見学しておきたかった。

 村上の電話の向こう側では激しい戦闘音が聞こえたし、ランク戦でもやってるのは明確だ。それに追加し、第三者である村上との電話を通して戦闘音が聞こえた以上は、モニターに映ってるのは明白だ。

 なのでモニターに目を向けたのだが……映ってるのは、別の隊員の試合だった。

 

「……?」

 

 自分の推理が外れたのだろうか? まぁ、わざわざ推理だけで探すのは馬鹿馬鹿しい。探偵ごっこがしたいわけでもないので、再び電話を掛けた。

 

「もしもし?」

『もしもし……って、女の子?』

 

 別の声だった。さっき程は落ち着きのない声。割と友達多いじゃん、って思った直後だ。

 

『死ねオラァアアアア‼︎』

『テメェが死ねハゲェエエエエ‼︎』

『ハゲじゃねェはクソッタレがァアアアア‼︎』

『精神的にハゲェエエエエ‼︎』

『お前らうるせぇ! 電話中だ!』

 

 うるさいと文句が言える、ということは、ランク戦ではなく訓練室なのだろうか? 

 まぁ、怒鳴り返せるので師匠の友達なんだろう。自己紹介は会った時にすることにして、要件を頼んだ。

 

「あの……今、何処にいますか?」

『え? ああ、こっち来るのね。了解。太刀川隊の作戦室においで』

「え、た、太刀川隊⁉︎」

 

 その名はC級隊員の双葉でも知っていた。A級一位部隊であり、それはつまり、玉狛を除けばボーダー最強の部隊を意味する。それに追加し、隊長の太刀川慶は攻撃手ランキング、ソロ総合ランキング共に一位に君臨している男がいる作戦室だ。これにうろたえるな、と言う方が無理がある。

 

『道わかんないか?』

「い、いえ、大丈夫です。行けます」

 

 メンツに圧倒されそうだが、圧倒されている場合ではない。それよりも、師匠の戦闘が終わる前に早く行かなくては。

 走って廊下を移動し、太刀川隊の作戦室へ。考えてみれば、フル装備の海斗の戦闘を見るのは初めてだ。普段、双葉に指導してくれる時は明らかに全力ではないし、最初に見たときはレイガストを手放していた。ランク戦の様子は見せたがらないし。

 拳や蹴りを使うのは何となく分かっているが、どう使うのかがとても気になる。

 それ以外にも、そもそも師匠は何故、攻撃手ナンバーワンの隊室にいるのか、もしかしたら太刀川慶にも一目置かれているのだろうか、もしかしたら自分は割とすごい人を師匠に出来たんじゃないだろうか。

 考えれば考えるほどワクワクしながら作戦室に到着し、ノックをした。

 

「ほいほーい。およ? かわいいお客さんだねぇ〜」

 

 顔を出したのは、まさに「のほほん」を絵に描いたような顔をした女性だ。

 

「もしかして、君がカイくんのお弟子ちゃん?」

「は、はい。黒江双葉です」

「太刀川隊オペレーターの国近柚宇だよー。おいでおいで、今ちょうど盛り上がってるから」

 

 盛り上がってる、という言葉を聞いて、ワクワクはさらに増した。もしかしたら、四つ巴でもやってるのかもしれない。

 ウキウキしながら中に入ると、そこでは。

 

「クタバレオラァッ‼︎ ファルコンパァァァンチィッ‼︎」

「当たるかボケェ! カウンタァッ‼︎」

 

 喧しくスマブラをやる師匠の姿があった。その隣にはチリチリ頭の男の人、その隣には目を半開きにした落ち着きのある男の人、師匠の反対側の隣には、ニヤニヤと楽しそうに微笑んでるクリーム色の髪の男、そしてその隣にはモジャモジャした髪に髭を生やした唯一、成人してそうな歳上っぽい人がソファーに並んで座っている。ソファーの隣には椅子が置いてあって、そこには帽子を被った人が座っていた。

 みんなでゲームをやるためにわざわざ大移動したのだろうか、ソファーの向かい側に置いてあるもう一つのソファーの上にテレビが置いてあり、挟まれた机の上にゲーム機が設置されていた。

 少し離れたベッドでは、見覚えのある鳥の羽のようなアホ毛が寝転がってるのが見えた。

 

「……え?」

「やりたかったんでしょ? スマブラ」

「…………え?」

「ほら、入って入って」

 

 呆けてる間に、国近に背中を押されて作戦室の中へ。その国近に、あんまりにも理解出来ないため、恐る恐る聞いた。

 

「あの……みんなで訓練してたんじゃ……?」

 

 一応、喧嘩とは言わず表現を和らげて言ってみたが、何にしても伝わらなかったようだ。キョトンと可愛らしく首を傾げた。

 

「何の話?」

「え、だって……喧嘩してるみたいな声が……」

「ああ、それはカイくん達だけだよー。他のみんなは仲良くスマブラ中。小南は一勝もできなくて、ふて寝してるけど」

 

 やっぱあれ小南先輩だったのか……と、思う隙もなかった。全力戦闘かと思いきや、ただのゲームを奥から聞こえた戦闘音も、スマブラのものだったようだ。

 ガッカリした。ストレートに。肩を落として大きくため息をついた。ようやく師匠の全力の戦闘が見れると思ったら、全力のスマブラを見る羽目になった。

 とりあえず、国近の後に続いてバカな男子達の輪に入る。すると、まず最初に太刀川が気付いた。

 

「お。おい、陰山。来たぞ」

「ファルコンバァァァァンツ‼︎ ……え、来た?」

「オラァ、隙ありじゃボケェ‼︎」

「んがっ、テメッ……!」

「オイ、海斗。後にしろよ」

「悪いな、黒江。俺が席譲るから。やるだろ? スマブラ」

 

 最後に言ったのは村上だった。ソファーから立ち上がり、席を譲ってくれたが、その優しさがまた苛立ちを隠せなかった。そこで気を使うなら、まず自分の勘違いを解いて欲しかった、と。

 落胆やら苛立ちやらが渦巻いて、なんかもう頭の中がぐちゃぐちゃになった双葉は、怒鳴り散らすように答えた。

 

「やります!」

「お、威勢が良いね〜。よし、やろっか」

 

 幸い、四月になったとはいえ、まだ春休みだ。明日も学校はない。

 ムカつきを抑えることもなく、双葉はコントローラーを握った。

 

 ×××

 

 ヤケクソになった双葉だったが、ガチ勢には勝てなかった。正確に言えば、ガチ勢は国近のみだが、そのゲームに付き合ってる出水と太刀川も必然的に強くなるわけで。

 太刀川のリト○マック、出水のダッ○ハントに速攻でボコボコにされ、国近の膝の上で不貞腐れた。

 

「可哀想にねぇ。今、お姉さんが敵討ちしてあげるからね」

「やっちゃってください。ギッタギタにしてやって下さい」

「おいおい! 国近きちゃったらゲームにならんだろ!」

「太刀川さん、荒船さん! まずは柚宇さんから叩きましょう!」

「了解だ、ぶった斬ってやる!」

「ほほう、面白い。三人がかりとは」

 

 最早、どうボタンを押したらそうなるのか分からない速さで、国近の操るジョーカーが画面内で縦横無尽に暴れ回る。

 それを引き気味に見つつ、双葉はその線に放置されてる二人の死体をチラ見した。言うまでもなく、バ影浦とバ陰山だ。

 プレイ中にも関わらず、双葉は呑気に国近に聞いた。

 

「あの、ところで何故、武天老師様は喧嘩を?」

「武天老師様?」

「陰山先輩です」

「え、なんでそんな呼び方させてんのカイくん……」

「お喋りとは余裕だな国近!」

「余裕だよー。えいっ」

「はー⁉︎ 死んだ!」

「何やってんすか太刀川さん!」

 

 荒船はともかく、太刀川と出水はとても同じチームとは思えないコンビネーションの悪さで、的確に足の引っ張り合いをしているのをまるで無視して、国近は続けた。

 

「ん、大した理由じゃないよー。顔を合わせたらとりあえず喧嘩するの、あの二人」

「ええ……なんでですか」

「さぁ? 私も出水くんから聞いただけだから」

「あいつらはよく喧嘩するんだよ」

 

 口を挟んだのは、村上だった。

 

「似た者同士だから、同族嫌悪って奴かな。前まではカゲ……あ、髪がチリチリしてる方な。影浦雅人って言うからカゲなんだけど」

「……それ、二人ともカゲなのでは?」

「起きてる前で言うなよ。それをやったゾエが『こんなのと一緒の呼び方すんな』って、酷い目にあったから」

「……」

 

 危なかった、と双葉はホッと胸をなで下ろす。

 

「まだ陰山がB級に上がったばかりの頃はカゲの方が勝ってたんだが……少しずつ互角になってきてな。その戦闘の様子が他の隊員達にあまりに強烈な印象を与え過ぎるからって、カゲと陰山の戦闘は禁止になったんだ」

「ええ……」

「それから、喧嘩になったら別のことで決着をつけることになったんだけど、今日の決着が、たまたま出水がいたから太刀川隊の作戦室でスマブラで決めることになったんだ」

 

 何それ、とジト目になる。本当にバカな人を師匠に選んでしまったものだ。

 

「じゃあ、小南先輩達がいるのは?」

「せっかくだからゲーム大会することになって……強いて言うなら、たまたま近くにいたからだな」

 

 まぁ、そういうノリも高校生ならではなのだろう。双葉ももしかしたら高校生になった時……いや、にしても女子高生がすることではない。国近と小南が異端なのだと理解しておくことにした。

 

「で、良いのか?」

「? 何がですか?」

「今日、別にゲームをしにきたわけじゃないんだろ?」

 

 聞かれ、双葉は少しどきっとした。その通りだ、本当はマジの戦闘を見に来たわけだし、期待外れといえば期待外れだったかもしれない。それに、緑川に勝ったことも報告したかったし、色々な意味で残念だった。

 

「はい。本当は模擬戦でもやってるのかと思っていたのですが……」

「起こすか? 俺で良ければ、陰山とやりやっても良いぞ。あいつの全力を出させるくらいなら出来る」

「いえ、次の機会にします。今は寝かせておいてあげたいので」

「そうか」

「あの……こんな質問しては失礼かもしれませんが……」

 

 控えめに双葉は口を開くと、恐る恐る聞いた。

 

「私の師匠は、この中では何番目あたりに強いんですか?」

「……そうだな」

 

 顎に手を当てると、村上は今いるメンツを見渡した。出水は攻撃手では無いので外すとして、他は攻撃手が六人も揃っている。

 太刀川、影浦、荒船、小南、陰山、そして自分。強化睡眠記憶によって、この中で全員のスタイルを一番把握している村上的に判断した。

 

「3、4番目ってところじゃないか?」

「……真ん中くらいって事ですか?」

「ああ。太刀川さんと小南がツートップなのは間違い無いと思うけど、やっぱりカゲと陰山は互角だから。若干、陰山の方が勝率は低いけどな」

「……そうですか。師匠でも、そのくらいなんだ」

 

 ボーダーの攻撃手は化け物揃いだ。近界に比べて、原始的と言われることもあるトリガーだが、言い換えればシンプルということにもなる。

 シンプルな武器を取り扱う場合、まず重要なのは使用者の腕だ。それによって、武器の威力は大きく変わってくるのだ。

 そのシンプルなトリガーが主力である組織のトリガー使いのレベルが低いはずがない。

 双葉が目指すのは攻撃手だが、それは目の前の化け物達と競い合うことになる。

 追い付くには、一朝一夕では無理だ。しかし、モタモタしていると距離を離されてしまう。

 そのためには、剣の腕以外の武器……つまり、師匠の格闘術が必要だ。実際、喧嘩で自然と身についたものだから格闘術なんて大袈裟なものではないが。

 

「実は、本当は武天老師様の本気の戦いを見られると思って、今日はここに来たんです」

「……ああ、陰山の?」

「はい。ですが、武天老師様はそれを教えたがらないみたいでして……」

 

 ふむ、と村上は顎に手を当てる。まぁ、あのバカの考えてることは大体、見当がつく。それに、何度かサイドエフェクトを利用して海斗のスタイルを真似してみた感じから、教えるのを嫌がる理由もなんとなく分かる。

 しかし、双葉の早く強くなりたいという気持ちも分からなくもないので、気持ちは汲んでやる事にした。

 

「まぁ、俺の方から一応、聞いておいてあげるよ」

「ありがとうございます!」

 

 期待に満ちた表情で言われ、多分拒否られるのが想像できるので少し胃が痛くなった。

 

 

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