蛸の見た夢   作:藤猫

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リゾットと成り代わったらしい人


憧れに目を焼かれる

「・・・・・久しぶりだね。」

 

リゾットは、とあるホテルの一室にて、一人の女と向き合っていた。

まるで、幽鬼のような女だった。

日に当たっていないが故の青白い肌。欝々とした印象を受ける腰まである長い髪。女にしては明らかに凹凸に乏しい体は、ひょろりと高かった。明らかに肉が足りていなかった。その身に纏う真っ黒なスーツはまるで喪服のように重々しい。

白と黒で構成されたかのようなその中で、唯一、その瞳にだけ夕日のような赤が色として宿っていた。

その容姿は女というよりは、中性的な男にも見えた。

 

「・・・ああ、久しぶりだ。前に会った時よりは、顔色がいいな。」

 

お世辞かと言われれば、少し悩む台詞であるが一応は口数の少ないリゾットからすれば十分であった。

ポルポはそれに、苦笑する。

 

「そうかい、ありがとう。久しぶりと言っても、どれぐらいぶりかな?」

 

そう言った女は、けして醜いというわけではないが、どこか疲労を感じるというのだろうか、淀んだ空気のためかひどく疲れた様な笑みを浮かべていた。

 

「・・・・ああ、そうなる。」

 

女の前にいた男、リゾットは平淡な印象を受ける声音で肯定の言葉を吐いた。女は、それに頷き、向かい合ったテーブルの向こうで、怯える様に腕を撫でた。

 

「そうか。それで、君が呼び出されたことについて話そうか。」

 

 

リゾットは、目の前の女に無表情で見返した。

女、ポルポは賭博の利権等を握る幹部だ。年齢は、確かリゾットと同い年ほどであったはずだ。

年若く、気弱そうで、おまけに女であるポルポが組織内でそこまでの地位を築けたのは、そのスタンド能力と古参であることが大きい。

ポルポのスタンドは、スタンド能力を発現させるもの、らしい。

らしいと語尾に着くのは、そうであるという確信が置けないことと、リゾット自身がポルポによってスタンドを発現させられたからだ。

リゾットにとって、女は、ひどく不思議な印象を持っていた。

今でも、時折、女と初めて会った時のことを夢であったんじゃないかと思うことがある。

それほどまでに、女は、どこか現実味を欠いている時があった。

ただ、それでも、何故か女はよくよくリゾットを気遣っている節があった。

事実、それによってリゾットや彼の身内が助けられたことは多々あった。ただ、なぜ、そんなことをするのかリゾットには分からなかったが。

それでも、リゾットは、女を信用していた。信頼、していた。

女は、リゾットに言ったからだ。

その言葉を思い出す前に、ポルポの言葉がそれを遮った。

 

「・・・・・君たち、暗殺者チームは、私の部下になることになった。」

「は?」

「分かるね?」

「あ、ああ。」

 

それにポルポは満足したように笑った。

リゾットはそれに疑問符は抱いても、納得の姿勢を取る。目の前の存在は、腐っても幹部なのだから。ただ、意外だったのだ。

ポルポは、組織の人事というのだろうか、パッショーネに入るための試験官を担当している。そんな彼女と自分たち暗殺チームは、あまり関係がないはずだ。

 

「うちのチームは、確かに規模は広いんだが、少々スタンド能力を持つ人が少なくてね。まあ、武闘派が少ないんだよ。もちろん、君たちには今まで通り暗殺稼業はしてもらうけれど。私の護衛等もしてもらうと思っていればいい。」

 

話はそれだけだよ。

 

リゾットは、それに困惑を抱きながら頷いた。それ以外の選択肢などないのだから。リゾットは、それに素早くメンバーにこのことを伝えておかなくてはいけないと考えた。

黙り込んだリゾットに、ポルポはぼんやりとしたような目で囁いた。

 

「・・・・・リゾット。」

「ああ。」

 

ポルポとの会話は、いつも、静かでぼんやりと終わる。ポルポ自身、聞けば答えはすれど、さほどおしゃべりではないリゾットとの会話はお世辞にも弾むとは言えない。

ただ、リゾットは、その女との簡潔で静かな会話は嫌いではなかった。

 

「そこは、居心地がいいかい?」

 

リゾットは、その言葉の意味を正しく理解した。そうして、小さく頷いた。

 

「ええ。」

 

女は、それに心の底から嬉しそうな微笑みを浮かべた。それは、曇り空から注ぐ日の光に似ていた。

その笑みも又、リゾットは気に入っていた。

 

 

リゾットは、そのまま自分たちのアジトへと歩みを進めた。

今日、ポルポに呼び出されたことはチームの皆には伝えてある。ポルポの傘下に入ることはすでに伝えてあり、詳細は帰ってからであると伝えてある。

 

安心して。報酬はたっぷり払うから。

 

最後に言ったその言葉は、おそらく真実だ。信頼できる。

帰り道を行ながら、彼は、スタンド使いになってから、中々に長い付き合いになった女との出会いを思い出していた。

 

 

リゾットは復讐を遂げた後、ギャングの下っ端として生活していた。そんな折、上から潮時だとある場所へ使いに出された。

今思えば、あれはいなくなっても支障のない存在を価値あるものにするための選別であったのだろうと考える。

指示された場所は、とある建物の一室で、中には二人の女がいた。

一人は、金髪の美しい女であり、そうしてもう一人がポルポであった。

ポルポという名前は知っていた。珍しい名前であったし、年若くして人員関係の部署を任されているということは聞いていたのだ。

ただ、その様子は、はっきり言って裏の世界に生きている人間にしては、あまりにも平凡であった。それこそ、彼が退いた表の世界にこそ、相応しいと言えるような、そんな凡俗さが彼女にはあった。

ポルポは、椅子に所在なさそうに座り、じっとリゾットを見ていた。

何故、自分がここに来たのか、分からないことは多くあったが上からの指示にリゾットは従うことにした。

金髪の女が、自分の体を検査しようとすると、何故かポルポはそれを止めた。

 

「カラマーロ、すいません、彼をこちらに」

「ですが・・・」

「いいんです。それよりも、君、こっちに。」

 

ポルポはそう言って、自分と向かい合わせの形で置かれた椅子を指さした。

何故か、その声は焦りとも言える様な声音でリゾットたちをせかした。

カラマーロと呼ばれた女は、ひどく不機嫌そうな顔をしたものの、ポルポの指示に従い、リゾットから離れた。

示された椅子に座ると、女はじっとリゾットを凝視した。

顔色の悪い女というのが、最初の印象だろうか。思わず、飯を食って寝ろとまで思ってしまったのだから、あの時の顔色はそれほどに酷かった。

 

「名前は?」

 

リゾット・ネエロ。

 

簡潔な返答に、やはりポルポは動揺を見せた。何故、そんな反応したのか分からなかった。ただ、彼女はすぐにその動揺を引っ込めて、リゾットに問うた。

 

「・・・・同い年だし、リゾットと呼ぼうか。君は、ここで何があるのか聞いているのかな?敬語は結構ですので。」

「・・・・いや、聞いてはいない。ただ、時期が来たからと言われた。」

「そうか。」

 

ポルポは疲れた様にため息を吐き、そうして、ゆっくりと顔を上げた。

そうして、くるりと指先を振った。

 

「ここに、君の見えない何かがいるんだ。」

 

リゾットはそれに顔をしかめた。何を言っているんだということが、正直な感想であった。その様子を察したのか、ポルポは苦笑した。

 

「信じられないだろうね。けど、皮肉なことに事実なんだ。君は、これから今見えないこれを見える様に試練を受けなければいけないんだけど。生き残るか、どうかは分からない。」

 

生き残るか、という単語でリゾットは己に背負わされたリスクを察した。ポルポは、少しの間迷うようなそぶりを見せた後に、囁くように言った。

 

「君さえ良ければ、逃がしてあげようか?」

「ポルポ!?」

 

ポルポの発言にカラマーロが叫んだ。ポルポは、気にした風も無くリゾットを見つめた。青白い顔で、淡く微笑んだ女にリゾットは向かい合う。

黙り込んだリゾットに、ポルポは言葉を続ける。

 

「今なら、試験に失敗したことにして逃がしてあげられる。もちろん、イタリアは無理だけど、ほかの場所なら、働き口とか用意してあげられる。整形もおまけしてあげようか。堅気に戻してあげられるよ。」

 

女は、何故か、試すようだとか、騙すようだとか、狡猾だとか、そんなものではなく、何故か夢を見る様な目でリゾットを見た。

気味が悪いとは思わなかったけれど、ただ、何故という単語が頭を占めた。

それをして、女にどんな利益があるというのか。

試されているのか。そんなことが頭をよぎっていると、カラマーロと呼ばれた女がポルポに詰め寄った。

 

「ポルポ、あなたは何を言っているのですか!?そんなことがばれれば、どうなるか分かってるんですか!?」

 

それにポルポは無言のまま、リゾットを見つめた。

 

「君は、あまりここには似合わないから。だから、表に帰るといい。君は、何にも悪くないんだから。」

 

その言葉に、リゾットは目の前の存在が自分の復讐を知っていることに思い至った。

それは、不快ではなかった。

リゾットがしたことを愚かという人間は多い。悪くないなんて、言う人間はいないだろう。

だからこそ、その肯定の言葉が嫌ではなかった。

子どもなりにした覚悟、怒り、理不尽。

それを肯定されたことは嫌ではなかった。

リゾットは、困惑したままであったが、それでも素直な感情を口にした。それが正解であるのかもわからないまま、そう答えるしかないのだからと。

そうして、女に対して、せめてもの真摯さを見せたかったのかもしれない。

 

「・・・・俺は、ここに来た理由がある。それ相応の。だからこそ、俺はここで生きていくだけだ。」

 

今更、帰る資格などないのだから。

 

それに、ポルポは悲しそうに微笑んだ。そうして、諦めた様に首を振った。けれど、その眼には何故か仄かな憧れがあった。

 

「そうか、じゃあ。試験を始めようか。きっと、君なら、大丈夫だろう。」

 

そう言って、ポルポはリゾットに手を伸ばした。

 

「・・・私は、君に救いは与えられないけど。せいぜい、地獄で一緒に頑張ろうじゃないか。」

「そうか。それは、心強いな。」

 

ポルポが手を伸ばす直前に、リゾットはそう言った。なぜ、そんなことを言ったのか。ただ、慰めてやりたかったのかもしれない。

まだ、甘さの残る青年が抱いた、微かな憐れみだった。

 

リゾットは、今でも、彼女が己に与えた言葉を信じている。女が、己にした夢を見る様な、願う様な目が、彼の持っていた懐かしい柔らかな何かを少しだけ思い出させる。

ポルポは、何故かリゾットを信頼に満ちた目で見る。何故か、少しだけ気安い言葉をかける。

重い目だと思う。それこそ、裏の人間がするには、あんまりにも重い目だ。

けれど、その眼はリゾットが己のなしたことを後悔しなくていいのだと思わせた。

まるで、溺れる様な女が、息継ぎをするようにリゾットの前で体の力を抜くさまを見ていると、少しだけ死んでしまった幼子を思い出した。

リゾットにとって、ポルポとは、そんなものだった。

表の匂いを残したまま、裏で生きる彼女とは、まさしく郷愁の証だった。

 

ポルポの言葉を伝えた時の仲間の半信半疑の様子を見ても、彼女への信頼は揺らがなかった。

事実、次にきた任務の報酬の欄にあった、まさしく桁の違う額を見て、リゾットは呆れ半分に笑った。

その信頼の意味が分からずとも、ただ、長く積み上げた信頼に、いつか殺される日が来るかもしれないと分かりながらも、その素直な瞳を疑うことをリゾットはしなかった。

 

 

ポルポ、という単語を見て、何を思い出すだろうか。

イタリア語で蛸を意味する単語であるが、明らかに人に付けるべき名前ではない。キラキラネームもびっくりだ。まあ、コードネームなのだから関係ないのだが。

 

(・・・・まあ、もう、会う機会はないんだろうけど。)

 

ポルポは、締め切った部屋の中で、己のスタンドであるブラック・サバスを見た。いちいち、家具やらなんやらを考えるのが面倒な為、気に入ったという理由で適当なブランドで揃えた部屋だ。

幹部になっても、金を使う気は起きない。それよりも、堅気に戻してほしい。

 

(・・・・ああ、でも、今まで貯め込んだお金。原作が始まった時のための貯金は置いといて。これからは、リゾットたちに貢ぐことになるのか。)

 

ジョジョの奇妙な冒険というものを知っているだろうか。あの、非常に、色々な角度で有名な漫画である。

独特な擬音だとか、立ち姿だとかで有名なあれである。

生まれ変わって、己の生まれた世界がそれであると知ったのは、目の前のスタンドのおかげであった。

ポルポは、記憶の上では、たしかに平凡な人間であったはずだ。それこそ、会社にだって通っていた、一般人であったはずだ。

けれど、その記憶は途中でぶつりと途切れて、気づけばどう見ても白人種の外国人になっていたのだから、意味が分からない。

死んだ記憶は、微かにあった。確か、事故に巻き込まれたはずだ。

意味が分からなかった。そんなことを言おうと思えるほどの図太さも無く、ただ、生まれた場所で生きることを彼女は選んだ。

だって、どうしようもない。どうにかすることも出来ない。

生まれた場所は、少なくともそこそこ裕福な家だったため、生活に困ることはなかった。

ともかくは、ここで生きて行こう。そうして、いつか、日本に行こう。

そうすれば、色々と曖昧になったが自分の家族のことも、少しはわかるかもしれない。

幸いなのか、二度目の親はあまり子どもに興味がないようで、気楽であるとも言えた。

そうして、生きていて、何故か矢に貫かれた。

痛みに震える中で、彼女は生き残り、目覚めると病院の上で小柄な青年と対面した。

 

ドッピオであった。まごうことなく、あの、漫画で見たドッピオであった。

馬鹿じゃねえのと思った。

そりゃあ、スピードワゴン財団なんて単語を見て、察してなかったわけじゃなかったが。それでも、なんであえて最初に会う原作の人間がドッピオなのか。

叫ばなかった自分を褒めたいとポルポは思う。

そうして、冷や汗を垂らすポルポに、ドッピオ、というかボスが言った。

 

曰く、ポルポを矢で貫いたのは本当に偶然で矢での実験に巻き込まれたのだという。そうして、ポルポはスタンドに目覚めた様だった。そうして、そのスタンドが何故か、矢をとりこんでしまった、らしい。

取り返したいが、スタンドの能力が分からなければ、下手に殺すことも出来ないからとポルポは生かされた様だった。

そうして、ポルポのスタンド能力は、ざっくり言えばスタンド能力を発現させる、ものらしいことが分かった。

ざっくりしすぎているが、本当にそれだけなのだ。

ポルポは、そのままパッショーネに取り込まれることになった。

殺して、矢が帰って来るかもわからないのだから、そのままの方がいいとディアボロは判断したらしい。

ボスは、わざわざポルポのためにスタンド使いについての部署まで設けて、彼女に高額な報酬を与えた。

そこで、ようやく、ポルポは思い出したのだ。己に向かい合ったスタンドのその姿に。

自分って、初期に死ぬデブじゃね、と。

 

(地獄だ。)

 

まさしく、それからのポルポの生活は地獄であると言えた。

慣れないギャングとしての在り方はもちろん、少しずつ迫る死がぎりぎりとポルポを締め付ける。

自分の死を知っているとは、どんな気分か分かるだろうか。病気であるわけでもない、他殺という死に方が、回避できないかという幻想を見させる。

ポルポのジョジョの奇妙な冒険への知識はそこまでない。ポルポが出て来た、たしかジョルノという存在が出て来た五部への知識なんてざっくりとしたあらすじ程度しか覚えていない。

 

(・・・・私が気に入ってたの、一部と三部だったんだけどなあ。)

 

一番の推し、というか気になるキャラクターがディオだったのだ。といっても好きというよりは、一部を読んだ時にこのキャラクターはどんな末路を辿るんだろうかという好奇心で長い漫画を読んでいた部分もある。

シリーズは一通り読んだものの、そこまでの読み込みはなかったため、忘れていることは忘れている。

ポルポは、必死に生きた。

原作がいつ始まるか分からないのだから、いつだって尻に火を噴くような感覚で生き続けた。ただ、臆病に、びくびくしながら生きた。

その臆病ぶりが、ボスに彼女の安全度を示し、信用を得る理由であったのかもしれない。

カラマーロという、少女を助けて、腹心になるなんてこともあった。

彼女は、金髪のスタイルの良い美女であるが、物質を砂に変えるというスタンドを持っていて、ポルポの出した死体を処理するのにちょうどいい。

彼女もまた、ポルポが発現させたスタンド使いだ。頭がよく、よくよく助けてくれている。

といっても、今日も又、リゾットに甘すぎると怒られたばかりだが。

 

(・・・・仕方がないじゃないか。)

 

リゾットは、ポルポにとって夢だったのだ。

ポルポは、ギャングになり、多くの死体の上で立ちながら、昔の生き方を忘れられない。

殺すことに潔癖でありながら、死にたくないから死体を積み上げ続けた己に嫌気がさした。

いつだって、死ぬことを考えた、殺したことの報いを想像して震えていた。

そんな中、リゾットは、正直ポルポの中で二番目の原作の存在に会って、彼は、ポルポにとって理想的な潔癖さを見せてくれた。

汚れたのだから、表にはいかない。けれど、ここで生きていく。地獄で、生きていく。

いつか、彼は、誰よりも死に近い殺し屋になる。けれど、それでも彼は生きていくのだという。

その在り方は、ポルポにとって、なんて眩しく見えたのだろうか。

正直な話、疲れ切っていたというのもある。

何時か来る死に、怯え続ける生活は、正直な話疲れるには十分だった。

自分が、生きたいのか、いっそのこと死にたいのかも分からなかった。

心強いなんて、そんなことを言われて、嬉しくならなかったわけではない。たとえ、それが戯れでも。

表に帰ればいいという言葉に、疑いもあったとはいえ、ここで生きていくという覚悟にどうしようもなく憧れた。

彼は、生きて行こうとしていたのだ。

ポルポは、怠くて、息がしづらくて、このまま目覚めなければいいという諦観的な死を願ったまま、それでもこうやって息をし続ける。

リゾットに会うと、ほっとした。その覚悟を前にすると、少しだけ自分がその覚悟を持てる気がした。

リゾットは、愛想はなかったが、その静けさに安堵した。

ポルポは、仕事のことを頭の中で並べる。

誰を殺して、誰を生かすかなんて考える自分が嫌になる。

原作通り幹部になった自分には、嫌になるほどの利権が持たされた。

 

(・・・・・運用して、原作通り、金を用意して。ああ、いくら貯めればいいんだろうか。あと、リゾットたちへのお金も用意しておこう。)

 

ポルポは、死にたくないと思っていた。それでも、どうしても原作通りに話が進むことを疑ってもいなかった。自分が、死ぬことをぼんやりと考えていた。

はやく、その死が来ればいいと思っている自分がいた。

裏の世界で生きるには、ポルポはあまりにも前世を捨てきれなかった。

死んでしまう未来を、いつ来るかも分からずに、ぎりぎりと痛めつけられた精神が悲鳴を上げていた。

もう、いっそ、殺してほしかった。

逃げるのにさえ、疲れていた。

それでも、暗殺者チームのことを優遇したのは、少しだけ希望とそうした願いがあったからかもしれない。

彼らが、反旗を翻さなければ原作とはずいぶんかけ離れたことになるだろう。

けれど、それでも、ポルポは彼らに価値を感じたのだ。こんな地獄で生きていかねばならぬのなら、少しぐらいは好きにしていいじゃないかと思ってしまったのだ。

その結果、どうなるかなんて考えてはいなかった。

その先に自分がいないと、ポルポは無意識に思っていた。

 

(・・・・・その時は、ジョルノに殺されるのかな。どうやって、死ぬんだっけ。確か、拳銃で殺されるんだっけ。嫌だな、痛そう。)

 

死ぬならば、いっそ、プロシュートか、ギアッチョに殺されるのが一番楽かもしれない。凍死と老化ならば、すこしだけ楽に死ねるかもしれない。

 

(・・・・ああ、でもいっそ、それなら、リゾットに殺されるのもいいかもなあ。)

 

メタリカは痛そうではあるけれど、憧れに殺されるのなら、中々に満足できそうな死かもしれない。

ポルポは怯える様に体を丸めて、ちらりとブラック・サバスを見た。

もしも、スタンドとは、精神の象徴なのだとしたら、原作と同じスタンドのこれは何なのだろうか。

あのポルポと、自分は違う。ならば、ここにいるポルポとは何なのだろうか。

自分は、どこに行けばいいのだろうか、

そんなポルポを、ブラック・サバスは見つめた。

彼女と同じ赤い瞳は、なんだか、少しだけ寂しそうだった。

 

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