四部再開、こっち書き切ってから五部行きたい!
「・・・・あ、承太郎さーん。」
「先に食ってるぜ!」
東方仗助と、そうして、虹村億泰が学生らしく日本昔話ごとき山盛りの米をカッ喰らっていた。その横で、虹村形兆と、広瀬康一が気まずそうに食事をしていた。
そうして、その向かいの席。
そこには、顔色の悪いポルポ、彼らにはポリブスと名乗っている女が畳の上に横たわり、それを介抱する数人。
そうして。
「なんだ、遅かったではないか。」
平然と同じように飯をカッ喰らっているスタンドの姿があった。
何を見せられているんだ。
それが空条承太郎の素直は感想だった。
自分に敗北し、そうして石仮面を承太郎に渡したポルポはそのまま帰国した。
「・・・少し、他国に用があり、無理矢理こちらに寄ったので。一端、帰って参ります。」
それだけを告げた後、彼女は二、三週間ほど姿を消し、そうして改めて連絡が来たのだが。
何故か、それは牛タンの味噌漬けを専門にしている名店に呼び出されたのだ。
そうして、通された座敷に向かい、ふすまを開けた先で見たのが、その光景だった。
「・・・・・うっぷ。」
「だからよぉ、俺言ったよな?ぜってえ、食えねえって。」
「まあ、プロシュートの兄貴、食べようって言う気概は認めてあげましょうよ。」
「普段よりも、食事量は多いぞ。」
「ほんとにしょ~がねえなあ、お前は。」
「空条承太郎、座れ。好きなものでも頼め。」
承太郎は頭を抱えた。
何故、この場を仕切るべき女がどうも体調不良で蹲り、スタンドが指示を出しているのだ?
「ブラックサバス、おかわりいいか!?」
「俺も!」
「好きにしろ。」
いや、その前に平然と牛タンを食べているスタンドにツッコむべきなのだろうか?
何か、取引的なものを考えていた承太郎はその場の状況について言いたいことが多くあったが、何から話せばいいか分からなくなり立ちすくむ。
「あー承太郎さん、座ったら?」
「今、どういう状況だ?大体、康一君たちが何故?」
「えっと、その・・・」
「丁度、町に着いたポリブスたちと出くわしたんだ。それで、飯おごるって言われた億泰が広瀬と東方に連絡した。」
「で、あれは?」
「小食のくせに、学生の食欲に食えると希望を抱いて頼んだ牛タン御膳に惨敗したポルポだ。」
「そうして、残したものを処理している。」
もぐもぐと食事を平然としているブラックサバスに承太郎は頭が痛くなる。
「・・・スタンドが、何故、食事をしている?」
「知らん、ただ、せっかく産まれたのだ。この世の美味、というものを味わってこそだろう。」
「カロリーが必要なのか?」
「知らん。ただ、私以外にも食事が出来るスタンドを知っているが。」
承太郎は考える。考えて、これは考えても無駄だと理解してため息を吐く。
「まったく、やっぱり無理だったろうが。」
「だってえ、いけるってえ、仗助君たちの食べっぷり見たらさあ。」
「いけないに決まってるじゃないですか。あなた、普段の食事量いくらだと思ってるんですかねえ、ご主人は。」
横たわったポルポは、プロシュートとクララに背中などを撫でられたり、座布団を枕にして横たわっている。そんな中、リゾットが何かノートを取り出した。
よくよく見れば赤毛の坊主頭の、見れない男もからかうように笑いながら彼女の背中を撫でていた。
「ブラックサバス、ポルポはどれぐらい食べていた?」
「そうだな、確か・・・」
リゾットはポルポが食べたらしい食事量についてメモをする。
「それは、なんですか?」
珍しい形兆の敬語など気にもとめずに、リゾットは息をつく。
「こいつ、体重減少がひどくてな。医者に指導が入っているんだ。まあ、これぐらい食べたなら。夕飯も量もそこまで意識しなくていいな。」
「体重が少なすぎて医者に怒られたってことですか?」
仗助が不思議そうに言えば、リゾットはため息を吐いてポルポの現在の体重をつげる。それにその場にいた、健やかに育った健康優良児たちは驚愕の目でポルポを見た。
「え!?」
「え、俺の、体重が、そうだから。え、それの?」
「成人女性の平均ってどれぐらいだっけ?」
「・・・・俺の、体重の、半分、いや。」
その驚きようにプロシュートがケツを叩くように睨む。
「いいか、女の体重に下手な茶々を入れるなよ、わかったなガキ共?」
それに学生組はうっすと神妙な顔で頷いた。
「すみません、あの、ちょっと胃が限界で。」
青い顔のポルポに承太郎はため息をつき、何も頼まないのも思ったのか軽く食事を取っていた。
ポルポはリゾットに寄りかかるような形で向かい側に座っていた。
リゾットは無言で錠剤をポルポの口元に持って行く。それに彼女は素直に口を開いて放り込まれる。そうして、またリゾットに渡された水で飲む。
「うっぷ。」
「・・・胃薬か?」
「ええ。まあ、気休めかなあ?」
苦笑交じりにそう言いつつ、ポルポはあの、穏やかな笑みを浮かべた。
承太郎はそれに小さく息をつく。
「で、用事が終わって、杜王町にわざわざ帰ってきた理由は何だ?」
「・・・・矢の、末路を知りたいため、というのが一番でしょうか。」
「矢が気になるのか?」
それに彼女は目を伏せて、軽く首を振る。
「人は、持たない方がずっと自由であると知っておりますので。矢を持ち去った人間は?」
「虹村形兆の話で後を追ったが、家はもぬけの殻だな。」
「ああいったスタンドなら、確かにどうやっても逃げられるでしょうね。人手にも限界がありますし。こういった人の出入りの少ない町で人を動かすと、やたらと目立つ。」
悩ましいとぼやくようにポルポは苦笑する。
それに承太郎はため息を吐く、やはり、前と同じように掴めず、意味不明なことが多い。けれど、一応は待つと決めたこともある。
承太郎はちらりと、女の近くに座る目新しい男を見た。
「そいつは?」
「ああ、彼は。」
「おれあ、ホルマジオってんだ!よろしくな、兄さん?」
それに承太郎は思わず顔をしかめた。
「“リゾット”に“プロシュート”に、“ホルマジオ”か。どれだけ食い意地張ってるんだ?」
「あ、あははははは、お恥ずかしい。わざと、とかではない、はずなんですが。」
「いいだろ?覚えやすくてよ!」
楽しそうなホルマジオのそれに承太郎はじっと彼を見る。
いいか悪いかで言えば、悪いだろう。
ここにあのお調子者の解説屋がいれば、ドブカスほどではないが自分と同列の人間だと叫んでいたことだろう。
ただ、強いて言うのなら。
血と、死臭がする気がした。
「なあ、兄さん。」
そこまで考えていた承太郎にホルマジオがあくまでにこやかに話しかける。
「せっかく飯食う仲になったんだ。飯がまずくなるようなことやめようぜ?」
ゆらりと目を細める様は、賢しい肉食動物のように冷たく、らんらんとしていた。それに承太郎が構えるか迷っていると彼はにぱりと明るく笑った。
「おお、そうだ!あとよ、これとかおすすめだぜ!さっき食ったら酒に合いそうだった!!」
毒気を抜かれるような笑みの後に、敵対心を忘れさせる、なんだろうか。猫のような笑みを浮かべた。
それに承太郎は軽く息をつく。
「やれやれだ。いらん。」
「お、そりゃあ、残念。」
(なあ、仗助。)
(なんだよ?)
(今、何の話してるんだ?)
(億泰、安心しろ。俺も分からん!)
だっはー!とこそこそとふざけあう二人にポルポはにこにこと笑みを深める。
「億泰君、仗助君。元気そうでよかったです。」
「え、あ、はい!」
「げ、元気です!馬鹿は風邪ひかねえんで!」
仗助は固まりつつ答える。何せ、仗助とポルポはあまり話をしたことはない。以前のことで怪我を治した折にお礼と、あと、秘密だといってお礼に商品券をもらった程度だ。
承太郎は何かを知っているようだが、彼もポルポのことを話したがらず、仗助としては矢を目的にしているということだけだ。
億泰も億泰で、形兆に礼儀を持てと散々に言われているために姿勢を正す。
「形兆君も、どうでしたか?」
それに形兆はどこか、気恥ずかしそうに目を伏せ、まるで従順な犬のように頭を垂れて返事をする。
「変わりは、ありません。」
「そうですか。顔色は、悪くないですね。きちんとご飯を食べているようですね。」
「はい、弟の、こともあるので。」
「お父様は?」
「変わりは、ないです。」
「そうですね。ならばよかった。」
形兆はどこか恥じ入るように目を伏せる。それに仗助と億泰は、とくに弟である彼は度肝を抜かれた。康一もだ。
(な、なんだよ、あれ!)
(知らねえよ!!)
(え、え、え!!??どういうこと!?)
ざわつく三人組を形兆は殺意混じりに睨む。それに彼らはそっと視線を逸らした。
「・・・産まれたのですね。」
「え?」
そんな中、ポルポは康一の方をじっと見てそう呟く。それに彼が目を大きく見開くと同時に、勝手にエコーズが現れる。
ポルポはにこにこ笑い、エコーズに手を差し出した。
「彼女、苛烈だったでしょう。でも、可愛いところもある子だと思うので。そう、嫌わないでくださればと。」
「知ってたんですか!?」
康一は驚愕の声を上げる。
「由花子さんのこと、知ってたんですか!?」
「ああ、そう言えば。確かに忠告はしたほうがよかった、ですね?」
「よかった、じゃないですよ!大変な目に遭ったんですからね!?」
「すみません、ただ、あなたの矢への適応は少し、特殊でしたから。目覚めるためのきっかけが必要だったんですね。」
彼女はエコーズと戯れながらそんなことを言った。
「肉体の練度というのは、反復方法が一番です。ですが、精神の成長には、時としてそれを必要としないことがある。ひつようなのは、きっかけ、なのです。」
「・・・・そのために、必要だった?」
「ええ、事実。こうやって、一つの影が産まれ墜ちた。私は、できるだけ、この子たちが産まれおちることを祝福したかったので。事実、あなたはあの危機を乗り越えられたでしょう?」
にこにこと笑うポルポの手の中で、エコーズは何か、赤ん坊のようにくるくる笑っている。康一はそれにいたたまれなくなる。ちらりと見た仗助や億泰があらま、という顔で口の前を手で覆っているのを見て、急激な羞恥心に襲われる。まるで、自分がポルポに甘えているような気分になったのだ。
「ああ、もう!エコーズ!戻れ!」
それにエコーズはちらりと康一を見、そうしてポルポを見る。
ポルポは軽く手を振る。それにエコーズは康一の方に戻り、姿を消す。
「もう!なんで言うことを聞かないんだよ!!」
「・・・この子はスタンドに好かれやすいのだ。能力者になって間もないなら、余計にこの子に引かれやすいのだ。」
そういうブラックサバスをちらりと皆が見る。
そうして、三者三様に思う。
茶あ、すすっとる、このスタンド!
優雅に湯飲みを持って茶をするブラックサバスに仗助が口を開く。
「・・・・いや、気にしなかった俺らも悪いんですけど、マジでなんですか、このスタンド。」
「どう、とは?」
「や、なんか、こう。自意識がはっきりしすぎというか。飯も食うし。」
「私も、現れた頃からこんな感じで。いえ、でも、現れた頃よりも意識はしっかりしてますね。ご飯も食べますし。」
その言葉に仗助の視界の端で、億泰が己のスタンドに恐る恐る茶を差出しているのが見えた。ザ・ハンドはそっと断っているのが見えた。
(手で押しのけられて、首まで振って断られてる・・・)
「それで、こちらとわざわざ呼び出した理由があるんだろう?」
食事を食べ終わった承太郎のそれにポルポは頷いた。
「・・・・ええ、お話ししたいのは、この町にあるだろう、もう一本の矢についてです。」
それに承太郎はぴくりと眉を震わせた。
「矢が、もう一本!?」
「ええ、元々、あのスタンド能力を発現させる選定の矢は、確か全部六本あったはずです。そのうちの一本がこの杜王町に存在し。そうして、持ち主は発言したスタンド能力で殺人を犯している。」
「・・・・それは?」
「情報の出所は、スタンド能力、とだけ。私は極端な話、この町をさればいいですが。あなたたちはそうもいかないでしょう。」
ポルポはそう言って軽く茶を啜る。一瞬の沈黙の跡、仗助が口を開く。
「・・・・それは?」
殺意さえ感じるその声に、ポルポの近くにいた赤毛の男と、プロシュートから同じような鋭い殺気が出る。それにポルポは軽く手を上げた。制止され、二人の男からの殺気は途絶える。
「私に伝えられる情報は、この町には矢を持つものがもう一人おり、そうして、そのスタンド能力を使い、殺人を繰り返していること。性別が男であること、ぐらいでしょうか?」
ポルポは静かに口を開く。
「・・・どれだけ滞在できるかはわかりませんが。それでも、矢の末路について、私も知りたく思いますので。できるだけのご協力はしたいと考えております。」
「・・・・なあ、ポリブスさんって何者なんですか?」
店を出、ポルポたちと別れた仗助がそう承太郎に問えば、彼は疲れたように息をつく。
「さあな、ただ、表社会の人間じゃあねえだろ。」
「てことは、は、犯罪者!?」
「・・・・それですむタイプじゃねえな。」
承太郎は帽子を深く被り直した。
その女は、彼があの旅であったものたちに似ていた。似ていて、そのくせまったく違う。ただ、悪と言っていいほどの死臭を感じるのに。それから、ドブのようなにおいもしなかった。
「あれだけのスタンド使いを抱える組織、それは。」
「裏社会であるはずだ。スピードワゴン財団に知られることもなく、ですか?」
明るく弾んだ声に後ろを振り向けば、あの、空色のキャスケットを被った少女がいた。
黒い髪を肩口で切りそろえた涼しげな首元がよく見えた。
「まあ、こんだけ戦い慣れしてる一般人がいるかって話ですね!」
「・・・・何のようだ?」
「むむむ、どんな女の子も、自分に用があると思わないでくれますか、色男さん!」
クララは不満そうに承太郎に指さした。青い瞳を細めてつんとすました顔は小生意気なことこの上ない。
「そりゃあ、悪かったな。」
「反省するなら赦しましょう。」
「えっと、ポリプスさんたちは?」
「ご主人たちは他に用があるってことで。私は形兆君に用があるだけですよ。」
それに皆が形兆の方を見る。彼はどこか、幼い顔でクララを見た。億泰はそれになんだかとても不思議な気分になった。
なんだか、らしくなくて。けれど、変わらずそれは兄で。
「けいちょー君、お元気でした?」
「あ、ああ、まあな。」
「学校にはきちんと通っていますか?」
「まあな。」
「お、結構です。私は、残念ながら途中で止めたというか、通えなくなったというか。まあ、いいことですね!」
彼女は当たり前のように形兆の懐に飛び込み、そうして、首に手を回す。形兆は今まで受けたことのない気安いそれに固まる。元より、小柄なクララとの身長さのせいか、ぶら下がる形になる。
それに形兆は固まってクララを見下ろすだけだった。クララは不満そうにぶーと口を尖らせる。
「はあ、形兆君、こういう時は今日も可愛いねと言いながらキスの一つでもするものですよ。」
「で、できるか!!」
「おや、残念。」
顔を赤くして怒鳴る形兆にクララはけらけらと笑う。それにトリオははわわと口元に手を当てて、クララと形兆の顔を相互にぶんぶんと見つめる。
(え、え、え!?あれになに!?何だよ、億泰!?)
(知らねえよ!!え、なに、なんだあれ!?)
(ねえ、まじでわかんないの!?)
がやがやと聞こえる野次馬に形兆は顔を赤くし、さりとて、ポルポの顔がちらついて乱雑に扱うこともできない。
そんな形兆の様子にクララは楽しそうに目を細めた後、無言で彼の首から腕を離した。そうして、彼女は一枚の紙を彼らに見せる。
“レッド・ホット・チリ・ペッパーは電気を通してどこにでもいける。家の中でも、どこでも、話をするなら電気の通っていない場所でするように”
皆がそれを読んだことを理解した後、紙を握りつぶす。
「以上、伝言でした!」
「そっちが本題か。」
「まあ、ですけどねえ。ただ、形兆君の様子が気になったのも事実ですよ!あ、形兆君、私お暇いただいてるので遊びましょ!」
「は!?え、は!?」
「おっし、野郎共!お小遣い貰ってるので、おごったるから遊びに行きますよ!」
そう言ってクララはそのまま形兆を引きずって歩き出す。それに一瞬戸惑ったかのような顔をした億泰と仗助は現金な性格のせいか、それに着いていく。そうして、康一も慌ててそれに着いていく。
そんな背を、承太郎はやれやれだと軽く首を振って見送った。
「いやあ、すげえな。あいつ、ただ者じゃねえってわかるぜ。」
「ああ、お前にも分かるか。」
「おお、分かるぜ。そうして、引き時も分かってる。」
ホルマジオがぼやくようにそう言えば、プロシュートが苛立つように舌打ちした。
それにホルマジオはにやにやと笑う。
「お、なんだ?拗ねてんのか?」
「くだらねえこと言ってんじゃねえ。」
「はっ。ポルポに強いって、身内以外が認められて面白くねえんだろ?かわいいよなあ、お前のそーいうとこ。」
「あ゛!?」
「お前ら、道で止めろ。」
リゾットがそんな風に喧嘩を止めるのと聞きながら、ポルポは次の目的地である場所を探して辺りを見回す。
そうして、とうとう見つける。
「・・・あった。」
「・・・・探していたのは、イタリア料理店?」
「日本に来てまで何故?」
「つーか、さっき食ったばっかだろ?」
「あ、さすがにもう無理ですか?」
「食えというなら食える程度の余裕はあるが。」
「そうですね、なら、お願いします。どうしても、ここには用がありましたから。」
「・・・・本当にすごいですね。」
「それはありがとうございます。ですが、あなたはお食べにならないので?」
「ええ、私は、その。ちょっと、胃が辛くて。」
ポルポは死屍累々という単語がふさわしい周りを見回した。
イタリア料理店、トラサルディーにやってきたポルポはやってきたのだからと料理を注文した。
ポルポは純粋に胃のキャパシティがなくて食べられなかったのだが。
「・・・・リゾットは睡眠不足、プロシュートとホルマジオは肝臓ですか。予想通りですね。」
「ぽ、ポルポ、本当に、これは害はないのか?」
ポルポに制止され、トニオに攻撃をすると言うことはしなかった三人であるが、料理の後遺症と言うべきそれに戦いている。
「体調は?」
「す、すこぶる、いいが。」
「彼はスタンド使いなんです。食事と使って人を健康にする、そういった能力。」
その言葉に三人はトニオを見た。彼は不思議そうにそれを見返した。彼らはポルポがわざわざ、ここに足を運んだのは目の前のそれを組織に勧誘するためだろうと踏んだのだろう。
実際は違う。
「すたんど?」
「あなたのような能力を使う存在を、そう呼んでいるのです。そうして、私も。」
ポルポのそれにずるりと彼女の影から姿を現した影にトニオは驚いた顔をする。
「ほう、なるほど、このような人が他にも。」
「ええ、ですが、私が今日来たのは、同類に声をかけるためでも、料理を食べたくて来たわけでもありません。」
今日は、アントニーオ・ヴォルペ様にご用があって参りました。
「・・・・どこでその名を?」
「ヴェルペ家はすでに没落し、ご当主の身柄ごと、組織に売り渡されています。あなたの弟君、マッシモ様はすでに組織に所属しておられます。」
「帰ってください!!」
トニオはすぐにそれらがどこの組織の人間、どういったものたちなのかを察したのだろう。
叩きつけるようなその声にポルポは淡々と答える。
「アントニーオ様、私はあなたを勧誘しに来たわけではありません。」
「おいおい!ポルポよぉ!」
ポルポのそれにホルマジオが驚いた声を上げる。
「お前、まじで言ってるのか?こんな有用な、食べるだけで人を健康にするなんてスタンド能力だぞ?」
「・・・・スタンド能力は精神の力です。ならば、当人にとって望ましい場所にいるのが一番でしょう。それに彼は、ここにいるのが一番いい。彼のことは口外禁止ですよ。
そう言って、あの、もの悲しい苦笑交じりに言われれば、ホルマジオはもちろん、プロシュートも、リゾットも頷くことしか出来ない。
元より、組織から離れて一時のバカンスを装ってここまでスタンド使いたちに関わったのを知られれば組織からどんな目で見られるかという話だ。
(まあ、こうやって日本に来れるのは、ポルポがボスから信頼ありきでだけどよ。)
ホルマジオやプロシュート、リゾットたちがそんな彼女の危険な行動を赦すのは、滅多に何かを望まない女が願うことぐらいは叶えてやりたいのだ。
その程度の恩義と情ぐらいはとっくに積み上げてしまっていたから。
「しょ~がねえなあ。わかったよ。」
「・・・俺も構わねえ。」
「同じだ。」
三人の返答にポルポは頷き、そうしてトニオに視線を向ける。
「私が今日、あなたを訪ねたのは、弟君のことです。」
「・・・・マッシモの?」
「彼は今、組織の内のとあるチームに所属しているのですが。彼は同じチームにいるとある少女を気にかけています。」
「・・・・それは、珍しい。」
それにポルポは苦笑し、そうして言葉を続ける。
「・・・彼女は先天性の病気を患っており、麻薬で傷みを誤魔化さねば生きていけません。あなたにはそんな彼女の治療をお願いしたくて参りました。」
「それは、弟からの頼みですか?」
「いいえ、これは私の勝手な行動です。彼は組織でも重要なポジションにおりますので。なかなか身動きは取れませんから。」
「重要なポジションということは、交渉材料にでもする気ですか?その少女の命と引き換えに?」
嫌悪感の籠った声だった。それはある意味で道理で、ポルポはそれに傷つかなかった。
けれど、何か、咄嗟に言葉が出てきた。
「・・・・その子、あの、まだ十二才なんです。十二才で、幼くて。でも、組織にいて。傷みを誤魔化すために、麻薬を使って。もう、自分も曖昧で。」
漏れ出た声の後に、女は、ぽつりと呟いた。
幸せに、なってほしいなって。
それは本当にささやかで微かな声なのに。なのに、まるで胸を抉るかのような、そんな、ささやかな声だった。それが、それが、トニオは目の前のそれが悪意というものから遠いような気がして。
思わず言った。
「・・・イタリアには、行きません。その少女を連れてきてくださるのなら。」
「はい、ありがとうございます。」
穏やかに微笑んだポルポの服の裾をちょいちょいと誰かがつまむ。それに後ろを振り向くと、そこには何か、心なしか目をキラキラさせるブラックサバスの姿があった。
全てを察した彼女はトニオに申し訳なさそうな顔をする。
「あの、この子の分の料理も追加できるでしょうか?」
「・・・・食事を、するのですか?」
それにポルポはこくりと頷いた。
一回書いた気がしますが、質問あったので。
暗殺人チームとポルポ周りの年齢 原作時
ポルポ 28才
カラマーロ 25、6才?
リゾット 28才
プロシュート 24才
ペッシ 十代後半?19ぐらい、20にはなってないかな?
メローネ 二十代前半、でも、プロシュートより年下
ギアッチョ 二十代前半、プロシュートよりは年下かな?
イルーゾォ 25才ぐらい?でも、30代言っててもおかしくないかなとは思う。
ホルマジオ 30代前半
ソルベ&ジェラート 30代前半
クララ 十代後半 ペッシよりも年下かも