音石戦を少しとジョセフの話。
ちょっと、下品?下ネタ?みたいな部分があります。
感想、評価ありがとうございます。また、いただけましたら嬉しいです。
誤字脱字などは感想での指摘はご遠慮くだされば幸いです。
感想いただけましたらうれしいです。
お題箱作ってみました、何かあれば
https://odaibako.net/u/fujineko56
「・・・・・何故だ。」
「何がでしょうか?」
「なんでてめえはリゾットに抱き上げられてるんだ。」
空条承太郎は、ポルポにあってから何回目かのよく分からない虚無感に襲われていた。
そこは杜王町にある港近くの野原だ。
レッド・ホット・チリ・ペッパーと、そうして杜王町にやってくるとある人物について話をするためだ。
承太郎は、東方仗助、広瀬康一、そうして虹村兄弟に話をしたわけだが。
そこに呼んでもいないはずの人間達がひょっこりと現れる。
リゾットと、そうしてそれに片腕抱きされたポルポとそれを虚無顔で見つめるプロシュートだった。
「えーっと。」
ポルポは気まずそうな顔でリゾットを見る。彼はあの表情の読めない凪いだ顔で答える。
「重さを噛みしめている。」
「えっと、です!」
「ですじゃあなくないっすか?」
「こいつはとろくさいからな。徒歩で歩くと大分掛かるぞ。」
「あの、ポリプスさんがものすごく、え?って顔してますけど。」
(すげえ裏切りにあったって顔してるな・・・)
そんな会話を重ねるボケボケした上の人間にプロシュートがため息をつき、事情を語る。
曰く、なのだが。
スタンド能力を使う料理人の料理を食べたポリプスが健康体に近づき、おかげで若干とは言え体重が増えたことをリゾットにいたくはしゃいでいるらしい。
「当たり前だ。なかなか増えなかった体重に、骨の強化まで。実に素晴らしいスタンド能力だ。」
リゾットは上機嫌でポルポの頬を撫でる。肉が付いたせいか、むにっとつまめることがよほど嬉しいのかこね回されている。
ポルポは困惑気味にされるがままだった。
プロシュートがそれをとんでもない虚無顔で見つめている。
全員がどうにかしろよとプロシュートを見つめるが彼は無理だというように首を振った。
「あー。トニオさんとこに行ったんですね?」
「確かに、顔色良くなってるっすね!」
「ええ、それもあるんですが。彼の料理をブラックサバスがいたく気に入ってしまって。」
「思ってたんですけど、あいつグルメすぎません?」
東方仗助のそれにポルポは困ったように微笑んだ。それにリゾットが引き継ぐように言った。
「散々甘やかされているからな。だが、毎日あの料理を食べるべきだ。あいつらにも見せてやりたい。こんな顔色のいいお前はみたことがないからな・・・・!」
「ま、毎日、骨とか内臓とか、目玉がああなるのは嫌なんですけど。」
興奮気味のリゾットにポルポはそう言い返す。
睡眠不足にストレスによる胃腸の荒れ、体重減少による筋力の低下と、それに加えて骨粗鬆症予備軍。
(めっちゃ言われたな、体のこと・・)
そうして、体の不調が多いと言うことはそれ相応の目に遭うと言うことでもあり。
「おれあ、二度と見たくねえぞ、あんなの。」
「だが、この健康状態は手放しがたい・・・・カラマーロのやつも喜ぶぞ。」
「まあ、帰国まではなんとかこの状態を保ちてえな。」
リゾットはおそらく上機嫌なのだろう顔で、穏やかにポルポに微笑みかけた。
その場にいた数人は、こんな顔も出来るのかと不思議な気分になる。
「・・・・カロリーの消費を抑えるために抱き上げてるんですか?」
「いや、ポリプスがとろくせえのは事実だ。それとは関係なく、人目を気にしなくていいならこの運搬はいつも通りだ。」
形兆のそれにプロシュートが答える。ポルポはそれにまた裏切られたかのような顔をした。
(運搬・・・・)
(荷物なのか。)
(ポリプスさん、ものすごい切ない顔をしてる。)
「で、それでそんな状態でやってきたと?」
「・・・・いや、今回はポリプスの要望で来ただけだ。虹村を襲ったスタンド能力者についてだろう?聞いていた。」
リゾットがそう言っている中、皆の視線がポルポに向かう。そんな中、彼女はとても珍しいことに前髪を気にしているのか、いじくっていた。
それにリゾットが驚愕するように目を見開いた。
「・・・・お前、どうした?」
「え?」
ポルポはなんというか、少し後ろめたさというか、子どもが分かりやすく隠し事をしているときのようにそっと目をそらした。
それにプロシュートがずいっと彼女に顔を寄せた。
「おい、てめえよお?」
「え、あ、な、なんでも・・・・」
「何でもじゃあねえだろうが!潔く吐け!また勝手な行動する気か?」
プロシュートのそれにポルポは視線をうろうろさせる。
「・・・・今すぐつれて帰ってもいいんだぞ?」
リゾットのそれに彼女は顔を真っ赤にして、それを隠すように頬を両手で覆った。
「そ、その、ジョ、ジョセフ・ジョースター様が、こ、来られると聞いて。その、会いたくて・・・」
ポルポというそれは前世と言える世界でジョジョという漫画を読んでいた。
そんな中で一番にどの部のジョジョが好きかと言われると、最初の物語のジョナサン・ジョースターを気に入っていた。
元々、ディオという存在を気に入ったのは、ジョナサン・ジョースターが始まりだった。
あの、燃える船の中で、人でなしの頭を抱きしめて死んでいく青年のことをずっと覚えている。
スピードワゴン財団の話を聞き、この世界がジョジョの世界と知ったとき、自分が物語に関わることなどないだろうと高をくくっていた彼女は日本に住むことを目的としていたが、もう一つだけ夢があった。
というのも、ジョナサン・ジョースターの墓参りをしてみたいという願望があったぐらいには。
といっても、あまりにも情報が少なすぎると早々に諦めていたのだ。
(彼の孫の、ジョセフ・ジョースター様は、ジョナサン様と瓜二つ!ということは!見た目だけならば年老いたジョナサン・ジョースター様と擬似的に会える、ということでは?)
それは、本当に、滅多に出てこない、彼女のとても俗的な願望だった。
ジョナサン・ジョースター、最初の星、特別な力はなけれど怪物に立ち向かった英雄。最後まで愛と、輝かしい勇気を抱えて散った人。
(私とは、正反対。)
美しい、直接見れば、目が潰れてしまう星の人。
そこで、ポルポはいいやと思う。それと同時に、自分はジョセフ・ジョースターに会っておきたいのだとも分かっていた。
自分はツェペリの子どもを殺したから。
(だから、私は・・・・)
そこまで考えて自分に何か視線が向かっていることに気づく。
「・・・・あれ、あの、みなさん?」
「・・・・殺す。」
「え?」
「俺が殺す。」
「え、え?」
プロシュートがばしばしと殺気混じりに海の方を見ている。ポルポは混乱する。混乱して、何が起きているのか考える。そこでリゾットがポルポの頭を自由な方の手でそっと抱きしめる。
自分よりもデカいなあと静かに考えている彼の豊かな胸筋に頭を押さえつけられ、リゾットは静かに言う。
「安心しろ。お前に無礼を働いた男に必ずけじめを付けさせてやる。」
その言葉の後にぼそりと承太郎が呟く、
「マジかよ、あのジジイ。」
それに全てを察したポルポはリゾットの手から頭を持ち上げて叫ぶ。
何かまったく接点のないジョセフへの反応に、無駄にちょっと現状ジョセフ・ジョースター周りをざわつかせている仗助の存在によって妙な勘違いを生んでいると。
「お待ちくださいお待ちくださいお待ちください!!!何もされてませんし、ジョセフ様には会ったこともありませんからね!?私のこと、いくつだと思ってるんですか!?年齢聞きましたよね!?私との年の差を考えればありえないってわかるでしょ!?」
プロシュートの方を見て叫ぶと、彼は本当か?というように胡乱な目をする。殺気混じりの、ああ、これはもう殺る前提の目だと理解する。リゾットを見れば彼はびっくりするぐらいに穏やかな顔をしてポルポに微笑みかける。
「安心しろ、お前の信頼に応えてみせる。」
「落ち着いてください、リゾット!!私が敬虔なカトリック家系で!!異性と接触もろくろくせず!!それこそ、異性とここまで近距離になったのはあなただとかプロシュートぐらいって話しましたよね!?異性の経験もございませんから!!!勝手に勘違いしないでください!ただ、諸事情で、ジョースターを調べることがあって勝手に尊敬してるだけです!不動産王、商人として憧れているだけですから!!!」
ポルポは滅多にしないような大声を出して、げほげほと咳き込み始める。そうして、縋るようにリゾットのことを揺すぶる。ひ弱すぎてリゾットはまったく揺れなかったが。
「本当に違うんですよ!!!」
悲痛なポルポの叫びが辺りに響いた。
「ああ、聞かせて貰ったぜ!!正午に港!俺を探し出せる老いたスタンド使い!その女が処女って事までぜーんぶ聞かせて貰ったぜ!!」
ポルポの必死の言い訳になんとか場が収まった後、空気を読んだのかそのタイミングでレッド・ホット・チリ・ペッパーが億泰のバイクから躍り出て、小馬鹿にするように叫ぶ。
それに皆の視線が一瞬、ポルポに向かった。
誰も指摘しなかったのに、こいつ言いやがった!!!
微妙な気まずい雰囲気の中、ポルポだけが思わず口走ったこととは言え、それを言われて顔がゆでだこのように真っ赤になる。
そうして、プロシュートに圧倒的な殺意が湧く。
(俺の出番はないか・・・)
リゾットは羞恥心のあまり、自分の肩に顔を埋めるポルポの背中を慰めるように叩いた。
何せ、プロシュートはカラマーロと同レベルで、ポルポを侮辱されることを嫌っているのだ。
「これは!?」
レッド・ホット・チリ・ペッパー、いや音石明は乗っていたバイクが狙撃されたことに気づく。タイヤが割れ、その場に止まる。
「・・・・けいちょ~よぉぉぉぉ!何のつもりだ!?」
そうして、音石の視線の先には虹村兄弟が立っていた。
「・・・・けじめだ。少なくともな。」
「はっ!今更、正義の心に目覚めたってのか!? 俺をスタンド能力者にしたのは、てめえなのによ! 今でも覚えてるぜ~てめえの矢に貫かれたときの痛みをよ~!!」
その言葉にスタンド能力によって兄と連れてきた手前、億泰はどこか気まずそうにオロオロとする。それに対して形兆は淡々と言った。
「それについてはすまなかった。」
それに音石は目を見開いた。何せ、だ。
彼がスタンド能力を発現したとき、まだ能力は弱く、目の前のそれに貴様ごときと罵倒されたのだ。
その時のことを考えれば、彼は驚くほど弱々しいというのか、謙虚と言えばいいのか。
「謝ってドーする気だ、ボケが!!」
「てめえ、まだ人を殺してねえだろう?」
「は、はあ?な。なんだよ、俺だってそれぐらい、すぐに、いや、これからするんだよ!」
「・・・・人を殺した奴ってのは、独特のもんがある。少なくとも、俺にはそれが分かる側になった。後悔は、しちゃいねえ。それは俺にとって、俺が今までを生きるために必要なことだった。だからこそ、俺は分かってるつもりだ。俺は、いつかに、誰かによって、どんな理由があるにせよ、殺されるだろうさ。」
俺は死ぬべき人間だ。
淡々と答えたそれに、億泰は黙り込み。けれど、それを否定しなかった。
形兆はそれに傷つくことはなかった。それが道理だと分かっているつもりだ。
悪辣なままでいればいい。今更、どうしろというんだ。償いなど出来ないし、善行をなしたとて意味などない。
意味などないと、わかってなお。
あの、青い瞳が自分を見つめる様が。
いいや、それと同時に、思い出す。
朝焼けの、瞳。
(ああ、俺は、クズだな。)
あの人に、見捨てられることが。救えないものと呆れられることが、怖い。
いいや、分かる。あの人はそんなことはしない。
けれど、このまま悪辣に生きて、“地獄”に墜ちるとき。
せめて、あの人に近しい地獄に墜ちたい。
だから、形兆は決めた。
ならば、と。せめて、と。
今まで散々に間違い続けた中で、せめてと、あの人に報えるような男であるために。
そうして、と形兆はちらりと己の弟を見た。
これから自分がどう生きるのかを、見せるために。
「そうだ、いいか、音石、てめえはまだ殺してねえ。ならよ、まだ、お前は境をこえちゃいねえ。戻れるんだ。」
「戻るだあ!?今更何を言ってやがる!?」
「いいや、てめえはまだ戻れる!てめえが本当に罪を犯すその前に、境を越えるその前に、てめえを止める!!」
それがてめえに俺の出来る唯一の償いだ!!
「はっ!ほざけ!そうして、てめえのスタンドのトロさを知れ!」
レッド・ホット・チリ・ペッパーはそう言って動き出す。それに億泰が兄を庇うようにレッド・ホット・チリ・ペッパーに手を振った。
が、圧倒的なスピードでチリ・ペッパーはそれを避け、形兆に向かっていく。彼は元々それを予想していたのか、展開していたバッドカンパニーが銃撃を浴びせる。
「はっ!だから言っただろうが!遅いんだよ!」
そう言ってチリ・ペッパーは形兆の腹に一撃を浴びせる。彼はそれに吹っ飛ばされる。
「惨めだなあ!本当に!」
「ああ、だがよぉ、てめえは俺の弟の能力をわかっちゃあいねえな?」
「は?」
「ああ、そうだ!」
空間を削り取ってることに変わりはねえんだよ!
「まさか、囮に!?」
背後に現れた億泰にチリ・ペッパーが叫んだ。
(こ、この後って、どうなるんでしたっけ?)
ポルポは形兆と億泰が飛び出していった後、リゾットに抱えられていた。幸いなことにリゾット自身が筋力があることと、ポルポの軽さのおかげで今の方が早いのが実情だ。
そんな中、彼女はこれからのことを考えていた。
四部はあまり記憶にない。
形兆が死んだことだとかを覚えていたことが幸運なのだ。
(・・・・この部の、ラスボスの名前も、容姿も思い出せないし。)
というか、ラスボスに関しては何故か途中で容姿が変わった気がする。よく覚えていないのだが。ただ、スタンドに関しては猫っぽくて気に入っていたのでそれだけは覚えている。
いや、というよりも、ラスボスを思い出せないのは、ひどい理由があり。
(だめだ、ラスボスの、手が好きな人のことを思い出そうとすると、同僚のクソコラしか思い出せない!!)
ネットの酷い弊害であるがかの男、ポルポは覚えていないが、吉良のことを思い出そうとすると散々にこすられ続けてきた某同僚が変なことを解説している映像しか思い出せないのだ。
「・・・・あいつら、大丈夫なのか?」
「はい、一応、保険はかけておきました。」
「ホルマジオとクララを港に向かわせたのはこれか。」
「ええ、まあ。」
ポルポはじっと虹村兄弟のことを見つめた。
「よくやった、億泰。」
「え、あ、お、おう!!!」
兄に褒められて億泰はぱああああと顔を明るくした。咄嗟のこととは言え兄を犠牲にしたことが後ろめたかったのだ。形兆は音石に話しかける。
明らかに弱っているらしいチリ・ペッパーに形兆は荒い息で言った。
「・・・音石、止めろ。確かにてめえはつええ。だがな、勝てねえ存在はこの世にごまんといる。」
「は!今なら命だけは助けてやるっているのか?」
「・・・・俺は刑事罰を受けることは出来ねえ。証拠がねえからだ。今、この世界には、俺たちを裁くための環境が整ってねえことだ。わかるか?俺たちは、一個人の理性なんつう曖昧なもので、私刑によってでしか裁かれねえことをしてるんだ。」
スタンド使いに裁かれる、その末路が生優しいものなんて思ってるのか?
形兆の静かな、冷たい声に音石は少しだけ怯えるような顔をした。
「・・・矢と弓のありかを言え。そうすれば、少なくともましな結果になるはずだ。」
そんな中、承太郎が静止の声を上げる。形兆はそれに従うつもりだった。
だが、単純な億泰はそうも行かず、チリ・ペッパーを攻撃し、そうして、地面がえぐれ地面に埋まっていた電線が姿を現した。
「あんの馬鹿野郎が!」
プロシュートの叫び声と共に、億泰がチリ・ペッパーに応戦しようとする。形兆はそれを止めるために手を伸ばす。
チリ・ペッパーの指が震われるその瞬間、ふわりと黒い布が彼らの間に現れる。
「な、なんだ!?」
突然のそれにチリ・ペッパーは動きを止める。彼が回りを見回せば、二人の姿が見えなくなった。
ちらりと見れば、承太郎がすでに近づいて来ていた。
「ちっ!まあいいさ!殺すの後にしてやるよ!」
そう言ってそのままチリ・ペッパーは姿を消した。
「お、億泰と、形兆は!?」
仗助がそう叫んで辺りを見回すが、誰もいない。ただ、突然現れた黒い布、もっと言うのならば大きめのコートだけが存在していた。
「お、億泰君!形兆さん!」
「・・・・やれやれだな。そこまで追い詰められて切り抜けるとは。」
「遠隔操作であのパワー。」
「電力さえあれば無限に力を振えるか。人間社会では敵無しだな。」
承太郎とプロシュート、そうしてリゾットが一種の呆れさえ含ませて話し合う。リゾットは腕からポルポを下ろし、そうして彼女はコートの方に近寄っていく。
「おい、あんたら!今はそんなときじゃねえだろ!?」
「そうだよ、億泰君と、形兆さんが!」
仗助と康一のそれに、大人たちはああと思い出したかのように頷く。そうして、承太郎はちらりとポルポを見た。彼女はコートにしゃがみ込んでいる。
「・・・・あのコートは。億泰の影から現れ、二人に覆い被さった。それと同時に、二人が消えた。おそらく。」
ポルポがコートに向かって話しかける。
「ブラックサバス。出てきてください。」
その言葉と共にコートが持ち上がり、その下、正確にはコートで作られた影から何かが現れる。
「ふん、この程度、造作もない。」
「はい、ご苦労様です。お二人とも、怪我は?」
ブラックサバスは両手に掴んでいた虹村兄弟は茫然とした顔でポルポを見つめる。
「ね、ねえです。」
「・・・・俺もだ。」
ブラックサバスは二人と影から引っ張り出して地面に放る。それにポルポはコートを受け取り、肩に羽織った。
「に、人間を影に収納できるんすか?」
「はい、一応、保険として会った時にブラックサバスに頼んでおいたんです。」
ポルポがそう穏やかに言っていると、叫ぶように形兆が億泰を怒鳴りつける。
「億泰!てめえ、何故攻撃した!仗助たちが来るまで何故待てなかった!?」
「け、形兆さん、落ち着いて!」
胸ぐらを掴まれ、億泰はオロオロしながら呟く。
「だ、だってよぉ・・・・」
「だってもくそもじゃねえ!何故だ!?」
形兆のそれに億泰は情けない声を上げた。
「・・・・だってよぉ、なんかよぉ。このままだと、兄貴、あいつに、殺されてもいいと思ってるみてえでよぉ。」
怖く、なっちまったんだ。
それに形兆は思わず固まった。
そんな気はない。気はないけれど、同時に、自分はチリ・ペッパーに殺されても道理だと思っていたのは事実だ。
何と返せばいいのか分からずに黙り込み、そうして顔を背ける。
「・・・・港に向かった。追うぞ。」
そう言って歩いて行く形兆の背中を承太郎と仗助が無言で追う。プロシュートもまた同じように歩き出した。それに康一だけがおろおろと形兆たちと億泰たちのことを交互に見る。
「ちょ、置いていくの!?」
そんな康一とすれ違う形でポルポと、そうして、リゾットがうなだれる億泰に近づいた。
億泰は兄に叱られて、動けなくなっていた。
兄が変わったのは分かった。
どう変わったかは分からないが、何か、昔の妙に疲れているような雰囲気は薄くなり、落ち着いた、というのが感覚としては正しいだろう。
億泰がチリ・ペッパーを追うのは正直言って、対外的なものでしかない。仲良くなった、形兆を助けてくれた仗助への恩義という部分が大きい。
けれど、それと同時に、兄の言葉でチリ・ペッパーについてのけじめというものを意識してしまったことがある。
億泰はまだ人を殺したことはない。ただ、兄に自分は協力してしまったことはある。ならば、兄の償いは自分のためのものでもあるはずで。
動いてしまったのはきっと、兄が殺されてもいいと思っていると理解してしまって。
死なないで欲しかった。殺されても、死んでも当然の罪を背負ってなお。生きている兄の後ろ姿を見ていると、死なないで欲しいと思ってしまって。
「億泰君。」
「ポリプス、さん。」
「・・・・形兆君は確かに罪深いです。悪辣なる者はいつか罰を受けるでしょう。」
でもね、と女は穏やかに微笑んだ。
「大好きな人に死んで欲しくないって気持ちは分かります。どんなにやってはいけないことをして、当人もそうだと認めても、大好きな人に死んで欲しくないこと、理解します。」
億泰はそれにポルポを見上げた。彼女は、見たことがないような優しい微笑みを浮かべていた。
億泰はそれをまじまじと見る。
女の人にそんな笑みを向けられたことはなかった、いや、優しそうな笑みを向けられたことはある。あるけれど、それは今まで見た中で何か、毛並みの違うというのか、違うぐらいに一等優しい笑みで。
ポルポはそっと億泰のことを抱きしめてくれた。
華奢で、固いとも言える体からは何か落ち着くようないい匂いがした。
なんだか、お腹が減るような、いつかに夕暮れの中に嗅いだにおい。
億泰はそれに漠然と思う。ずっと、こうしてくれないだろうかと。
「億泰君、だから、強くなりましょう。」
「強く?」
馬鹿などと蔑まれる億泰だとしても、それはとても幼い声だった。
「ええ、形兆君の事を守れるぐらい、あなたが強くなりましょう。お兄さんから頼れるようになるぐらい。」
「で、でもよぉ、なれっかな。俺に、俺に、兄貴よりも。」
「なれますよ。」
体を離したポルポは億泰に微笑んだ。
「あなたは強い子です。確かに無謀と、勇気は違います。先ほどのあなたのあれは無謀と先走った行動でした。でも、大好きな人を守りたいと願う心は確かに勇気だ。」
だから、あなたはきっと強くなれる。勇気とは、人間にとってもっとも尊く、強い心なのだから。
何故だろうか。
億泰は考える。何気ない言葉で、正直、分からない部分のある言葉なのに。
何故か、その言葉を聞いていると、不思議と体の奥から力が湧いてくるような気がした。
「ポリプスさん!」
「はい、なんでしょう?」
「俺、なんか、出来る気がします!」
億泰はそう言って、うおおおと形兆たちの後を追って走って行く。康一はそれを茫然と見つめ、ポルポはにこにこと笑いながら元気ですねえと見送った。
「・・・・おい。」
「なんですか?」
承太郎と仗助よりも少し先にいた形兆にプロシュートが言葉をかける。
「弟分ってーのはよ、兄貴の後ろ姿を見てるもんだ。」
「何が言いたいんですか?」
形兆にしては珍しい敬語の中でプロシュートは淡々と言い返す。
「いいか、億泰は今、成長しようとしてんだよ。」
「・・・どこがですか、あいつは馬鹿なことばっかりするのに変りはねえ。」
「ああ、そうだ。あの時のあいつの選択は失敗だった。だがな、俺たちだって失敗しないわけじゃねえ。あいつは自分の意思で決め、てめえを守ろうとした。俺が知る限りのあいつは少なくとも、てめえの指示の下で自信のなさそうな顔をしてたぜ?だが、そんなあいつが、てめえで選択をしようとした。」
それは、『成長』ってことじゃねえのか?
その言葉に形兆はプロシュートのことを見た。彼はじっと、その、青い瞳で形兆を見ていた。あの少女とは違う、燃えるような、青い炎のような瞳。
「いいか、変わること全てを成長とはいえねえ。でもよぉ、あの時、てめえを守り、あいつに勝つって意思は少なくもいい方向に進んでるって言えるはずだ。それを見守ってやってこそが弟分への信頼ってもんだろ?」
「・・・俺は、あいつを足手まといだと思ってたのに、ですか?」
「でも、捨てなかった。そりゃあよ、お前があいつに期待してるって証拠じゃねえのか?」
形兆は一瞬立ち止まり、そうして呟く。
「・・・・わかりません、わからねえ、んですよ。」
(・・・・大丈夫だろうか?)
ポルポはモーターボートに乗って港に残してきたプロシュートとリゾット、そうしてクララのことを考える。
彼らの実力からして、おそらくスタンド能力が強力なだけの音石に負けることはないだろう。
(というか、過剰戦力でしたね。)
「・・・・おーい、大丈夫か、お前?」
「あ、はい、大丈夫です。」
ポルポはこっそりと内ポケットに隠したホルマジオに話しかける。彼らは音石がもしも先にジョセフ・ジョースターに接触しないかの監視役として港に行かせたのだが。
今は小さくなったまま、護衛としてポルポの内ポケットに収まっている。
「苦しくないです?」
「ねえよ。もしもなんかあったら適当なもんで攪乱するからな?」
「はい、お願いします。」
そう言いつつ、ちらりとポルポは億泰と形兆、そうして乗っている承太郎を見る。
(・・・気まずい。)
彼女は驚くほど落ち着いていた。それは彼女にとってリゾットたちが、音石程度に負けるということがどれほどあり得ないか理解してのことだった。
ギターの音がかき鳴らされる。
仗助に小指を折られてなお、根性というのだろうか、激情だけでギターをかき鳴らす青年に、音石に素直に感心した。
リゾットはそう思いつつ、現れた音石を見つめる。
(射程距離範囲には、入ったな。)
このままリゾットにはいくらでも音石を殺すことも、再起不能にすることも出来る。が、とリゾットは静かに怒る、姉貴分そっくりな燃えるような青い瞳をたぎらせたプロシュートを見る。
(今回はガス抜きのためにこいつに任せた方がいいな。)
プロシュートはゆっくりと歩き出した。そうして、それにクララも加わる。
ガス状の攻撃と風、この二つは、相性が非常に悪く、そうして相性は非常によい。
そんな中、音石はギターの音と共に歌うように叫ぶ。
「テメエラノ オフクロモ コロシテヤルウ!!!!」
叫んだ音石は満足そうに息を吐く。
「ああ、そうだ!あの処女のオンナ、やせっぽちだが気に入ったんだよなあ!てめえらを殺して、好きにするのも悪くねえな!!」
それにリゾットは音石から視線を逸らし、プロシュートとクララに視線を向ける。それにリゾットは何よりも先に二人が音石を殺さないように制さねばならないことを理解した。
自分の身内がもっとも嫌うことの一つは、ポルポの尊厳を侮辱されることなのだから。
チリ・ペッパーに体の向きを変えられた仗助を追い抜き、プロシュートは言った。
「てめえ、今、なんつった?」
「ああ?ああ、あの女の取り巻きかあ?ふ、いや、何!妙にあの女は気に入っちまってなあ。あいつだけは殺さないでおいてやるよぉ。飽きたら、わからねえけどなあ!!」
それにプロシュートから爆発的な殺気と言えるそれが放たれる。それは、いくら強いスタンドを持っていても十九歳の平和ボケした国で育った青年の精神を揺るがせる。
「リゾットォ!クララ!」
「分かっている。」
「準備は出来てる。」
その言葉と共に、排水溝の中で何かが壊れるような音がした。
「ん、な、電線が!?」
「ああ、電線は壊した。すでにてめえも俺の射程距離には入っちゃいるが。今回は俺は手出しはしない。」
「ザ・グレイトフル・デッドッ!!」
「あ、あれが、プロシュートさんの、スタンド!!」
下半身もなく、多眼のスタンドからガスが吹き出す。
「な、なんだああああああああ!?」
音石はまだ電力を使い切っていないチリ・ペッパーを使おうとする。が、彼の一瞬の精神的動揺は十分な隙になった。
「ハウリン・ウルフ!!」
クララのそれと共に、音石に向かってガスの混ざった風の固まりが叩き込まれた。
コンテナに叩き付けられた音石は立ち上がろうとする。
立ち上がろうとして、自分が何をしていたのか、分からなくなる。
(お、俺は、俺は、えっと、確か・・・・)
思考が鈍り、そうして、持っていたギターが重くて持ち上げられないことに気づく。
ばっと見た自分の体に彼は叫んだ。
「な、なんだこりゃああああああ!!??」
「お、老いてる!?音石がおじいさんになってる!?」
「ああ、そうだ!これが、俺のスタンド能力! そうして、てめえ、精神的な揺らぎでスタンド能力のコントロールを手放したな?」
それに音石はチリ・ペッパーに視線を向けようとする。
「だから言っただろうが!おせえんだよ!!直ってのはなあ、素早いんだよ!!」
いつのまにか近づいたプロシュートの手が、音石に触れる。
「わ、わああああああああああ!?お、音石がどんどん、し、しわしわに!!」
「このやろうがよおおおおお!?誰が誰を好きにするって!?てめえごときが、誰の尊厳を侮辱するんだ!?」
老人にプロシュートの拳が叩き込まれた。音石はそれを避けられるはずもなく、その場に倒れ込み、そうして動かなくなる。
音石本人の意思が老化によって鈍ったことでチリ・ペッパーもまたふらふらと制御不能になっていることが分かった。
「おもちゃで遊んだら、お片付けまで、ですよ!」
クララがそう言って、そんなチリ・ペッパーもハウリン・ウルフが咥え、そうして海に落とす。
「・・・・海水は電気を通しやすいっすからね。」
叫び声を上げるチリ・ペッパーを見て仗助が話す。音石が動かなくなったことを見て、プロシュートが吐き捨てる。
「覚えとけ、この世で最もしちゃいけねえのは、侮辱することだ。他人の精神に泥を塗り、拭うことの出来ねえ恥辱を与える。それは、死よりもなお重いって事をな。」
プロシュートのそれを聞きながら、リゾットは彼が音石を殺さなかったことにほっと息をついた。
「・・・・なあ、ポリプスさん。」
「はい、なんでしょうか?」
「このじいさんが、仗助の?」
「ええ、ジョセフ・ジョースター様ですね。似ておられる。」
「え?」
「ジョージ・ジョースター様に、いえ、ジョナサン様に。」
ついた船の中で、ポルポは億泰と形兆と共にジョセフ・ジョースターがいる部屋に通された。そんな中、ポルポはじっと遠目に見るジョセフを見つめる。
その様相は、ジョナサンの父親に似ているように見えた。
(いえ、違う、皆によく似ておられるのでしょう。ただ、私にとって年老いた姿を知っているのが彼だけだから。)
似ている、似ていて。いいや、きっと、ジョセフ・ジョースターという存在が年老いて穏やかになったからこそ、よけいにかの一つ目の星に在り方が近づいたが故だろう。
(彼が年を取れば、きっとこんな感じに。)
そこまで考えて、ジョセフから名を問われ、三人は名を名乗る。
が、彼は見事に聞き間違い、がくりと三人は肩を落とす。
「・・・ぼけてんなあ。」
ホルマジオの声にポルポは苦笑しつつ、それが悪いこととは思えなかった。
彼がそうなっても赦される世界の方が多分、いいのだろうと思うから。
近づいたポルポたちにジョセフはところで、と聞く。
東方仗助は自分のことを、何か言っていなかったかと。
それに億泰も形兆も答えられない。そんな中、ポルポはジョセフに言った。
「・・・・嫌ってはいないと思いますよ。」
「・・・・何故?」
それにポルポは少しだけ考えるような仕草をした後、覚悟を決めたかのように言った。
「・・・・あなたは、ずっと会いに来なかったリサリサ様を、エリザベス様を嫌いましたか?」
それにジョセフ・ジョースターのぼんやりした眼に光が宿る。
「おまえさん、何故、それを・・・」
「嫌いではないと思います。ただ、感情が結びつかず、知らないから決められない。一度、話をしてみてください。これからどうするかは、そこから決めれば良いと思います。何も話さずに決めつけだけでお別れはとても寂しいと思いますよ。」
「・・・そうじゃろうか?」
「ええ、互いに恨んでないのなら。せめて、きっちりとさようならと言った方がいいです。」
ポルポはジョセフの温かな、大きな手を握った。それにポルポは少しだけ、失礼だと思いながら嬉しくなった。
何せ、その手は、彼女が大好きな誰かのために戦った者の手によく似ていた。
「・・・そう、じゃろうか。」
ジョセフは縋るようにポルポの手を握り返した。
そんなとき、扉が勢いよく開けられる。敵が船に潜入したという話に三人は警戒するように扉の方に体を向く。
そんな中、入った来た船長は、部屋に荷物を運ぶと入りこんだ男と、互いが敵だと怒鳴り合う。
(ガーン!ま、また、選ぶ・・・・)
そこで気づく。
「あ、兄貴!どっちだと思う?」
億泰は兄がいると顔を明るくして形兆を見る。彼はジョセフの前に立つ形で億泰を見た後、そうして言った。
「てめえが決めろ。」
「え!!!???」
ギャグ漫画バリの顔芸を披露した億泰の視界にレッド・ホット・チリ・ペッパーの姿が映る。
(ジョセフ様のこと、隠しておこう。)
ポルポがコートを脱ぎ、構える中形兆はバッドカンパニーをだし、ジョセフの周りに布陣を敷く。
「ケツは拭いてやる。」
それに億泰は目を見開き、そうして叫んだ。
「わ、わかったぜえええええええ!本体は、てめえだーっ!!!」
声と共に、億泰は長髪の方の男を殴る。それと同時に、レッド・ホット・チリ・ペッパーが消えた。
「よくやったな。億泰。」
「な、なんでわかったんだよ!」
形兆と音石のそれに億泰は答える。
「簡単だぜ、兄貴!二人ともぶん殴る気だったんだよ!」
その言葉に形兆とポルポはがくりと肩を落とす。
「・・・・だめだ、やっぱり。」
「いえ、まあ、自分の選択すべきというか、最適解を引いているとは思いますよ。」
ポルポがそう言いつつ、ジョセフの方に振り向くと同時に、音石が何か、無意識のように呟いた。
「そうかあ、負けた。負けたなら、やはり、賽はそちらか。」
その声と共に、ポルポは自分の、背中。ちょうど、腹の裏側に何かが刺さったような感触があった。
「え?」
思わず漏れ出た声の後に、ポルポは自分に何が起こっているのか理解できず、倒れ込む。痛みはない、苦しくはない。
ただ、何かが腹に飲み込まれていくのが分かる。何か、覚えのある感覚で。
「ポ、ポリプスさあああああん!!」
「な、なんで、なんで!選定の矢が、ポリプスに刺さってるんだあああああああ!!」
(矢が、刺さって?あ、そうか。この、感覚。ボスに、
意識が薄れる、眠るような感覚がした。
「引き抜け、今すぐ引き抜くんじゃ!!」
「やってるよ、じいさん!!」
「ポルポ!!!!」
「あ、あんたは、ホルマジオ・・・」
腹に埋まっていく何かが引張られる。けれど、そんなことも気にせずに、矢はずるずるとポルポの中に沈んでいく。
(ぶらっく、さばす?)
心の中で問いかける。それに自分の影の中で、何故か、体の制御が利かないようにぐねぐねと揺れるブラックサバスの姿が見えた。
(・・・・こわい。こわいよ。)
リゾット、どこ?こわいよ・・・・
それを最後にポルポはまるで眠るように意識が沈んでいくのが分かった。
ポルポ
原作を思い出そうとする、思い出せないわけではないが圧倒的に無駄なネットミームとかクソコラを思い出して正史なのか分からなくなる自分が嫌。
メルカリジョニーが頭から離れないし、ワザップジョルノだけやたらを思い出せる自分が嫌。
リゾット
カタギだった頃よりも、ポルポとかチームと暮らしている時間の方が鮮やかに思い出せるし、あの子のことも忘れる顔知れない自分が少しだけ嫌なこともある。
ただ、記憶の中に弱い女と、血なまぐさい男たちが笑っている記憶があることは素直に嬉しい。
プロシュート
彼の記憶に、遠のく過去はない。彼はずっと、今の地続きを生き続けている。
彼が始まり、産声を上げたのはずっと血だまりの中だった。
クララ
彼女は自分が覚えていたい記憶といらない記憶の選択をきちんとしている。
可愛い妹と、愚かな主人と、そうして血なまぐさい愉快な仲間と、そうして。
弟を守り続ける青年のことを覚えていられればそれでいい。