緑谷出久がリーダーになる話。

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令和前に投稿したかった。


令和前リーダー伝 いずく

 健康で優しい人に育ってほしいと願われ、出久と名付けられた少年がいた。

 

 彼は産まれてすぐに泣いた。

 その翌日に漏らした。

 普通の赤ちゃんだった。

 

 普通の赤ちゃんである出久は、はちきれんばかりの愛情をもって育てられた。

 

 そうして何年か経ったある日のこと、彼はヒーローを見た。釘パンチで釘付けになったかのように見まくった。

 彼にとってそのヒーローのカッコよさは富士山だった。それはもう5つ分くらいの富士山であったと記憶している。

 

 だから彼は、リーダーになろうと思った。

 

 これはだいたい平成が終わりそうな頃の話。

 

 〇〇〇〇〇

 

「諦めたほうが良いね」

 

 死刑宣告だった。

 満員電車でお腹が痛くなりjkに囲まれて車内連絡で電車遅延のお詫びを聞いたときくらいの。前日下痢気味で。

 

 だけど彼は──

 

「前日から下痢気味とわかっているならおむつを履けば問題ない。でしょ? 先生」

「なんの話?」

 

 ──リーダーを諦めるつもりなどなかった。

 

 〇〇〇〇〇

 

「無個性のくせにヒーロー気取りかデク!?」

 

 凄惨な笑みを浮かべ、手のひらに拳を打ち付けて小さな爆発起こす金髪の少年。

 

「何回言わせるんだかっちゃん。ヒーローじゃない──」

 

 相対するは天パの少年。

 タンクトップに半ズボン、肌を多く見せるその姿はまさに健康優良児を体現しすぎている。

 

 そう、健康の神の化身であると噂されたような気がしないこともないようなそうでないかもしれない彼こそが。

 

「──リーダーだ」

 

 緑谷出久 個性:なし

 

「いつもわけわかんねえこと言ってんなよ!!」

「リーダー……」

 

 人は生まれながらに平等じゃない。

 家庭環境や遺伝、そして運なんてものは頑張っても、生まれ持った某を埋められるとは限らないし、努力が必ず報われるなんてことはないし、努力は無駄にならないなんてこともない。

 だけど、それは彼が夢を諦める理由にはならない。

 

「あああぁぁああああぁあああぁああおおぉおおおぉぉおぁぉああああぉああああおおおあ!!!!!!」

「うるせぇぞ! デクゥゥゥゥ!!!」

 

 緑谷出久、齢4歳にして持ち得た強き精神。

 

 〇〇〇〇〇

 

 10年経って、中学生3年生。高校受験を迎えることになった出久。

 

「今から進路希望のプリントを配るが皆! だいたいヒーロー科志望だよね」

 

 そう言って教師はプリントを投げ捨て、クラス中の生徒達も沸き上がる。

 

「先生!」

「んん!? どうした緑谷ァ!」

 

 誰よりも勢い良く席を立ち、天井を突き破らんばかりにすこぶる元気よく手を挙げる出久。

 タンクトップに半ズボン。

 露出が多くそこから見受けられるのは、筋肉モリモリでちんこ丸出し彫刻を想起させる肉体。

 

「僕はリーダーです!」

「そうかァ! リーダーみたいなヒーローになりたいか! 確か緑谷は雄英高を志望してたな!」

「昨日は快便! 今日も快便! それなら明日も快便! 小さなことからコツコツと! それがリーダーとなる秘訣です!」

「ッゴラァ! デクゥゥゥゥゥ! お前いつもわけわかんねえこと言ってんじゃねえよ!」

 

 タンクトップ半ズボンの出久に、手のひらから生じた爆炎をぶっ放す金髪の少年、爆豪勝己。

 

 放たれた爆発を咄嗟にしゃがんで回避。

 しゃがみこんだ状態から床に付けた両手を支えにして、足で机を爆豪へ蹴り飛ばす出久。

 

「オラァ!」

 

 机は爆破によって叩き落とされる。

 しかし、その爆破による煙で己の視界を遮ってしまったことが爆豪にとってのミスだった。

 

 煙の中から()が爆豪へ向かって飛んでいく。

 

 そう、机は最初に放たれた爆発により真っ二つに分かたれていた。最初に出久が蹴り飛ばした机はその片割れ。

 

 だが──

 

「っ──アァ!」

 

 ──爆豪勝己は生まれ持った天性のセンスがある。

 

 飛来した机を目で確認してから、小さな爆発で体を少しだけスライドさせ回避したのだ。

 

「流石だ、かっちゃん」

 

 回避した先に彼は居た。

 

「センスの塊だよ。もうセンスそのものだ、センス」

 

 時間差で蹴り飛ばした椅子すらも爆豪なら──いやセンスなら避けるに違いないと信じまくっていた出久が、既に回避先に回り込みセンスの顔面に拳をぶち当てる。

 

「っ! クソデクがああああああぁぁ!!」

「待て待て待て! 一瞬過ぎてわけわからんかったが、お前ら一応これホームルーム中だぞ! 血気盛んなことは良いが行き過ぎるのはヒーロー志望としてはよろしくないぞ!」

「それは若さゆえの過ちというものさ」

「デクァああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 〇

 

「デクお前ほんとに雄英志望なんか?」

「ああ、きっとそこにはリーダー志望がたくさんいまくるだろう……。僕はまだ小さくふにゃふにゃの棒でしかない。だから、大勢のリーダー志望とその棒を揉んで揉まれて固く──」

「あぁ、もういいわかった。お前の強さも意味不明さも知ってる。だけど無個性でヒーローになるなんて、そんなんお前……腹下してるときに満員電車で女子高生に囲まれるようなもんだろ」

「ならおむつを履けばいい。問題に直面するとき、しそうなとき、それを的確に対処するのがリーダーのあるべき姿だ」

 

 力強くお尻を叩く出久。

 溢れんばかりのその揺るぎない自信はうんちカードをも凌駕する。

 

「っは……お前はそういうやつだよな。しょうもねえこと言ったな、忘れてくれ。まあ、そうだな……デク、お前は強ぇ、それも俺とタメ張るくらいな。だから、俺以外の誰にも負けんじゃねえぞ」

「センス……」

「今度は雄英でやり合おうぜ」

 

 少し気恥ずかしそうに自分の後頭部に手を当てる出久。

 

「朝、髪の毛切ったんだけど気付いてない?」

 

 〇

 

 そんでまあ色々あって帰路につく出久。

 

 爆豪の爆発により、いっそう天然パーマに磨きがかかっている出久はうんうんと唸っている。

 リーダーは常に考える。蟻のような小さいことから砂糖に群がる蟻の大群のようなことまで。

 

 ゆえに気が付かなかった。

 

「M……いやLサイズの……隠れみの……」

「ん?」

 

 思考の海に沈んでいた出久を飲み込むヘドロの生き物。

 

「──んん!! んぅ!!」

「だいじょーぶ、身体を乗っ取るだけさ。落ち着いて」

 

 リーダーとは常に冷静沈着で前を向いていなければならない。襲い来る危機に対して情報をまとめ、解決へ導くために誰よりも状況を正確に判断しなければならない。

 

 ならば、出久がいま求められる行動は。

 

 ──リーダー……待機!

 

 当然、助けを待つこと。

 喋れない、身動きが取れない、周りに人はいない。

 何もできないなら冷静に、慎重に、心を強く持つ。それだけでいい。

 

「助かるよ君は僕のヒーローだ」

「んんあああ! んんあんんあああ! んああああああァぁああ!」

「なんだ!? いきなり──」

「んんんんんんんんんんんんん!!」

 

 見過ごせない、訂正しなければならないことを聞いてしまった。

 だけど、声は出せない。息はできない。苦しい。暴れることすら困難で──

 

 

 

「もう大丈夫だ少年!!」

 

 その言葉は、彼の始まり。

 リーダーを目指す、そのキッカケ。

 

「私が来た!」

 

 かつて見たあの液晶の向こうの姿と変わらず、富士山5つ分くらいのカッコよさで、彼はそこに現れた。

 

 

 

「それはそれとして、僕はリーダーだ!」

 

 〇

 

「オールマイト、僕はあなたに憧れてリーダーを目指しています!」

「HAHAHA! そうかいそうかい、君のような真っ直ぐな少年は気持ちが良いね! そのタンクトップに半ズボン、健康優良児そのものじゃないか!」

「いやぁ〜そんなことないですよ! せいぜいチャンピオンです! そんなオールマイトこそグランプリものです!」

「君がチャンピオンで私がグランプリ! HAHAHA! グローバル!」

「ワールドワイド!」

 

 笑顔は人を笑顔にする。だからどんなときでもとりあえず笑っとけ。

 それもリーダーとしての務めである。

 

「──HA、っと……すまない少年。ヴィランは捕まえたが、時間があまりないんだ。少し急いでてね」

「急がば回れ、ですね」

「ん……? まあ、うん。てなわけで今後とも応援よろしくね!」

 

 そう言ってオールマイトは脚力だけで空へ飛んでいく。

 

「あの、オールマイト。1つ聞きたいことがありまして」

「──って、コラコラ! どこに乗ってるんだ!? というか危ない! 落ちたら大怪我じゃすまないぞ!?」

「ははは、そんなバカな」

 

 空を飛ぶオールマイトの背中に立つ出久。

 憧れの人物の背中に乗って見える世界は、初めてのAVを見たときのドキドキ感にも勝るとも劣らない。

 

「ゴホっ……shit! あのビルで降りるから君も降りなさい!」

「コンビネーション技ですね、わかりました」

 

 そんなこんなでビルの屋上へ着陸した2人。

 

「──124点。満点ですね」

「全く、危ないじゃないか! 落ちてたらほんとに洒落にならなかったぞ! 次からは気を付けて……いや、次こういったことしないように!」

「わかりました」

「急に物分りのいい……。あと、私マジで時間ないからガチでね!」

 

 手をビシッと空へ高く挙げる出久。

 

「待ってください、1つだけ! 個性がなくても、立派なリーダーになれますか?」

「──」

「個性のない人間でも、あなたみたいなリーダーになれますか?」

 

 ちら、と出久を見るオールマイトは何かを思い出すような、誰かを思い出すような、そんな表情を一瞬だけ浮かばせた。

 

「個性が──! ゴフッ!」

「リーダーは優しくてみんなを守っていつも先頭に立って導いていく、そんな存在です。個性がないからって努力を怠ったこともないし、無個性じゃリーダーになるには力不足だなんて思ったこともありません」

 

 オールマイトからもくもくと煙が発生するが、下を向く出久は気付かない。

 

「個性のあるなしでリーダーになれるなれないが定まってるなんて嫌だ。個性がないから助けられなかったのは仕方ないなんて言い訳はしたくない。無個性の1が個性持ちの10なら僕は100努力すればいい、個性持ちが100努力するなら僕は1000頑張ればいい。ハハハハハハ! 簡単じゃないか、僕はリーダーになれる!」

「えぇ……」

「ん?」

 

 自己解決した出久が見たのは、今にも折れそうな枝のような男。

 

「オールマイトの友達ですね」

「なんで友達? 私はオールマイト本人さ」

「なるほど……。過去に敵から傷を受けて全力を出せなくなったが、今はそれを世間には公表せず昔と変わらず正義の象徴として君臨し続けているということですね? しかし、いつですか? 2年前のボスゴリラゴンゾウでしょうか」

「いや、まだなんも言ってないんだが。てか詳しいな……あんなアフロ野郎には傷1つ負わされてないよ」

 

 それもそうだ。と納得する出久と、目の前のよくわからない少年にどう対応するか迷うオールマイト。

 

「まあ個性がなくてもリーダーになれるかどうかって話だけど、君のその肉体やさっき君自身が言ったことを鑑みたら──君はリーダーになれる。ちょっとよくわからないところもあるけど、性格は明るく、そして努力と怠らない。間違いなくどこででもリーダーを張れる存在だ」

 

 オールマイトは拳を握り、力強く宣言する。

 

「──それは貴方のような正義の象徴でありヒーローのリーダー的存在、としてもでしょうか?」

「……ああ、いや撤回させてもらうよ。なれない──とは断言はしない。だけどなれる、なんて無責任なことも言えない。ヒーローって言うのは絶対に、人を守り通さなくてはならない、悪に屈してはならないんだ」

「……」

 

 それは憧れからの死刑宣告。

 命に関わる手術を迎える少年にホームランを打つと宣言したプロ野球選手が、試合前に飲酒運転で捕まるくらいの。

 

「人を守りたい、人を導きたい。リーダーはヒーローでなくともなれる存在だ。サラリーマン、警察官、政治家、なんでもいい。どれも立派で素晴らしい仕事だ。別にヒーローに固執することはないんだ少年」

 

 だけど、出久はオールマイトのようなリーダーになりたかった。

 オールマイトを見てリーダーになると誓った。

 オールマイトと肩を並べるようなリーダーを夢見た。

 オールマイト──富士山5つ分くらいを超えるようなリーダーを目指していた。だいたいエベレスト3つ分。

 

 出久が顔を上げた頃、すでにオールマイトはいなくなっていた。

 日は落ち始めて、タンクトップと半ズボンには少し肌寒かったけれど、出久は体を擦ることはしなかった。

 

 〇

 

「おおおおおオオぉおお!!!!」

 

 場所は変わって商店街。

 そこらかしこに爆炎散らかすのは、ヘドロに飲まれた爆豪。

 

 そう、先程オールマイトのペットボトルに捕まえたヘドロのヴィランが、出久との空中でのいざこざのときに落っこちて逃げてしまっていた。

 そこで運悪く爆豪に取り憑かれたのだ。

 

 ──クソクソクソクソクソがあああああああ! こんなクソみてえなドブ男に呑まれっかよ!

 

「ああああああああああァああああァァぁああああ!!」

 

 類まれなるタフネスで抗い続ける爆豪。

 

「大当たりなんだからよォ! 落ち着けって!!」

 

 爆豪の持つ個性により、その場にいたヒーローは誰にも近づけない。それだけでなく、下手に攻撃するのであれば囚われている爆豪もろともに被害が及ぶことを恐れ、近隣の一般人を避難させることしかできなかった。

 

 ゆえに、体の自由を奪われた爆豪の個性は猛威を振るい続ける。

 

 誰もそれを止めることは出来ないのか、市民は口々にそれをヒーローにぶつけるが、ヒーロー達はそれを歯噛みして被害を最小限に食い止めることしか出来ない。

 

 止められる存在。

 オールマイトはそこにいた。

 細い木のような体、今にも折れそうな枝のような腕、弱々しく握りしめる拳からは血が滴り落ちている。

 

 既に彼の発揮できる力の制限時間は来ており、今は変身が出来ない状況だった。

 

 つまり、現状誰も爆豪勝己を救える存在はいない。

 

 ──いや、いなかった。

 

 

 

「んなにさらしとんじゃあこらあああああおおおおああおおあぉぁぉああお!!!!」

 

 タンクトップに半ズボン。

 露出が多くそこから見受けられるのは、筋肉モリモリでちんこ丸出し彫刻を想起させる肉体。

 

 リーダーというものは常に誰かの前を走り、その存在感をもってみんなを先導する者。

 誰もはぐれないように、誰も迷わないように、その道標となるため彼は誰よりも高く手を挙げる。

 

 横断歩道を渡るとき。

 運動会の選手宣誓のとき。

 授業中に便意を催したとき

 歯医者に行ったとき。

 

 どんなときでも常に天を貫かんばかりに力強く。

 

 そう、ヘドロへ向かって走るのはたけし──いや、出久だった。

 

「何をやってるんだ! 止まれ!」

 

 避難誘導をしていたヒーロー達の静止の声を聞かず、100メートルをシャトルラン終盤ばりの速さで走る出久。

 

 ──デク!?

 ──少年!?

 

 誰もがびっくり仰天するなか、出久は全力疾走しながらも思考を止めない。

 

 ──直角は90度、180度は水平! つまり、満員電車の乗客は全て90度で立っているのに対して、電車は180度で走行している!

 

 そして、出久はヘドロに向かって()()を投げつける。

 

「ぬっ! ──何も見えん!」

 

 ()()を爆破した途端、大きく煙が広がりヘドロの視界を眩ませる。

 

「かっちゃん!」

 

 その隙に真正面から近付き、爆豪に纏わりついた泥を掬い出していく。

 しかし、手では上手く掴めず全く剥がすことはできない。

 

「何してんだデクっ! 早く逃げろ! てか臭え!」

「何言ってんだかっちゃん。救けを求める人がいるなら僕はそこに行く。それがリーダーだからさ! あとさっき言ったろ──()()()を履けばいいってさ」

 

 投げたのは()()()

 それもすでに有効活用した後のブツだ。

 

 先程の煙は、それを爆発させたことにより生じたものである。そもそも爆豪の爆発には煙が生じるものではあるが、それだけでは長時間の目くらましにはならないと考えた出久が、咄嗟の判断でそれを利用したのだ。

 

「糞がぁ! さっきのクソガキが邪魔すんじゃねえぞ!」

「なんで僕がうんこ漏らしたって知ってるんだ! もしかしてファンか!? サインなら後で」

「デクゥゥゥゥ!! いまアホ晒して場合じゃねえんだよ!」

「死ねクソガキィ!」

 

 出久に向かってヘドロの手が向けられる。

 

「──それを待ってた」

 

 冷静さを失ったヘドロの──爆豪の個性がヘドロに炸裂した。

 

「があああぁァァああああアアアぁ!!」

 

 その爆破は出久に当たることはなくヘドロだけにダメージを与えた。

 

 それはなぜか?

 答えは単純。

 

「かっちゃん平気か!?」

「誰に言ってんだデクゥ! てか降りろクソが!」

 

 ジャンプしてヘドロの上に乗っかっただけ。

 オールマイトが飛行中の背中に立っていたように、ただそれだけ。積み重ねてきた努力を持ってすれば彼にとってその程度の芸当、トカチェフより容易い。

 

「あぁあぁああぁあああ!!」

 

 自爆により、さらに冷静さを失ったヘドロは自らに被害を及ぼすことを考えず、文字通り頭上にいる出久へと攻撃を仕掛ける。

 

「リー」

 

 だが避けようとしない。

 

「ダー」

 

 目もくれない。

 見据えるのはただ一点。

 

「パ──」

 

 

 

DETROIT SMASH!

 

 

 

 ヘドロが弾け飛び、巻き起こる風圧に吹き飛ばされそうな中、出久と爆豪は1人の男に掴まれていた。

 

「オールマイト!」

 

 彼の登場に沸き上がる観衆と。

 

「オールマイト! オールマイト! オールマイト! うおおおおおおおおおおおおあああおおおお!!」

 

 出久。

 

 〇

 

 なんやかんやで怒られた出久はようやっと帰途につく。

 

「デク!」

「かっちゃん! もう大丈夫なのか、タフネスの化身……いやタフネスその──」

「負けてねえからな! おれぁ一人でもいけたんだよクソが! 助けなんて求めてねえぞ!」

「時と場合によるよ」

「あぁァ!? いいか? お前との勝負267勝267敗のままだかんな!」

「いやそれはおかしい。水泳のとき僕が勝ったじゃないか。かっちゃん爆発まで使ったのに」

「てめぇはリーダッシュとかなんだか言って水の上走ってたじゃねえか! あんなん無効だクソが!」

「ははっ、わけのわからんことを」

「死ね!」

 

 ツバを吐いて逆方向へ帰っていく爆豪。

 

「あぁ、よう……まあ、なんだ助かったわ死ね」

「タフネス……」

 

 最後までタフネスはタフネスであった。

 

「……ふぅ。リーダー的帰宅するとしますか」

「私が来た!!」

「リーダーパンチ!」

「ゲボォッ!」

 

 角から急に現れた枝のような男に、先程不発だったリーダーパンチが決まる。

 

「オールマイト! なんでここに!?」

「──元気かね少年」

 

 現れたのは──リーダーパンチでなのか、いつもの吐血なのかわからないが──血まみれのオールマイトだった。

 

「君は言ったな? リーダーになる、と。それもヒーローのリーダーに、平和の象徴に」

「それを語りだすと長くなる……」

「いまシリアスだから待ってくれ。……ともかくその道は険しく厳しいものだ」

 

 無個性。

 出久は強い。しかしそれは普通の人間であるならの話だ。

 志が立派であろうと、異常とも言える精神性を兼ね備えていようと、必ず、絶対に、彼では頂点に立つことは出来ない。

 どれだけ努力しようが個性というたった1つの異能の有無が全てをひっくり返す。

 

「そう、あれは十年前……」

「続けないで」

 

 しかし

 

 ──もし、その不可能を覆すことが可能であるなら?

 

 ──もし、それを覆した男がここにいるのなら?

 

「個性がなんだ無個性がなんだ」

 

 無個性だった男が言う。

 

「人の心を突き動かすのにそんなの関係ないだろ」

 

 人々の心を突き動かしてきた男が言う。

 

「あの場で誰よりも力のなかった君が、誰よりも早く走り出した」

 

 誰よりも力を持っていた男が言う。

 

「その君の行動が私を導いた」

 

 みんなを導いてきた男が言う。

 

「だから」

 

 だから。

 

「君はヒーローになれる」

 

 これはヒーローになる話ではない。

 

「僕は──」

 

 最高のリーダーになるまでの話だ。

 




 とあるバーでのこと

「なんだこいつは……?」
「気を付けてください、死柄木弔!」

 体中に手を付けた男──手マン。
 そして、なんか黒くてモヤモヤしてる人。

 彼らと相対するは──

「……」

 頭の耳部分から大きな足が生えている性別不明の謎の生き物──足マン。
 悪い目つき、分厚い唇、大きな鼻の穴、頭頂部には3本の毛、頬の斜め下あたりから生えている短い手。
 そして、なんと言っても足。大きな足。

 Mのこの真ん中の谷部分に顔付いてて残りは足みたいな感じ。

 この個性社会においても、その姿はあまりにも異形。これまでの人(?)生では排斥される側であったことは間違いない。

「いや、いい黒霧。なあお前、ここをなんだと思って来たんだ?」
「……」

 問に対して、彼(?)は何も答えない。
 返ってくるのはあまりにも悲哀に満ちた眼差しだけ。

「ハハハハハハ! 気に入ったよ! 今日からお前も──」
「死柄木弔! こいつはあまりにも得体が知れなさ過ぎる! せめて──」
「容姿で差別か黒霧? 偉くなったもんだな」
「……」

 足マンを快く迎えるかのように手を広げる手マン。

「あぁ、悪い。待たせたな」

「ここは、誰からも愛されずただこの世に生まれただけで排斥されたやつらの集まり」

「この世界に憎しみ怒り悲しみを覚えた社会不適合者のカス共の集まり」

「だから、歓迎するよ」

「ようこそ── (ヴィラン)連合へ」

足マン in 敵連合
あると思います。

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