みんな笑うほのぼの世界。
徐々に原作乖離しつつありますね。
そして、文章が乱れつつありますね(笑えない)
「わぁ……」
初めての空中浮遊も明日香はしばらくすれば慣れた様子で、嬉々として遠ざかる地上を見下ろしていた。
適応能力の高い子だ。昔はあんなに気弱そうだったのに、人とは成長する生き物だということをまざまざと思い知らされる。
「見てください、まーちゃん! トビウオが! トビウオさんがいます!」
そして、興奮してはしゃいだ拍子に、ぎゅっと抱きしめられてギョッとする。
背中に感じる柔らかな感触に耳まで真っ赤になってしまう。人とは成長する生き物だったと実感した。
「すごいですね。この靴があったら、本当にどこへでも、一瞬で飛んでいけちゃいそうです。……昔、まーちゃんが約束してくれたみたいに」
「……覚えてたのか」
「もちろん。だから、これも大事にしてたんです」
そう言って明日香は髪飾りに手を伸ばした。よく見るとそれは、昔、明日香との別れ際に渡した当時の宝物、ゼフィリオの壊れた翼だった。
「それ、確か渡した時に明日香が壊したって勘違いした羽だよな」
「はい。形もなんだか可愛かったので髪飾りにしてみたんです。どうです? 似合ってますよね?」
「ああ、似合ってる」
むしろ、明日香ほどの美少女になればなんでも似合うだろう。でも、そんな無粋なことは言うつもりはない。
それよりも、頭の中にあるのは、子供の頃の記憶だ。
『この先お前が一人でどうしようもなくなったら、その時は、これをぎゅっとして、お願いしろ。空に向かってな』
『空に向かって、お願い……?』
『そしたら飛んでって助けてやるから』
その言葉は、泣いていた明日香を慰めようとしたものだった。
同時に、俺の心の弱さを現したものでもあった。
空に手を伸ばせば届くと、誰よりも空に近いのが自分だと信じれたあの頃。
俺はなにを思い、空と向き合っていたのだろう。
心締め付ける黒い感情が、今では当たり前のように胸の内にある。
「息苦しさの中で空を飛んで、まるで馬鹿みたいだ」と幼い頃の日向晶也は笑うのだろうか。
分からない。
でも、確かに言えることは一つある。
それは、俺が一歩踏み出すことができたということだ。
「まーちゃん?」
「ああ、ごめん。ぼーっとしてた」
「分かります。綺麗な景色ですもんね」
見下ろしながら明日香が言う。
思い馳せていたのは記憶の方だったのだけど、わざわざ否定はしない。
俺も好きだから。
空から見下ろす、この景色が。
=£
日本の南、南洋の更に南に位置する、四つの島からなる街、四島市──。
人口5万人の地方都市であるこの街は、一見すると、ただの田舎町に見える。
しかし、ここは現在、ある種『異世界』と言って差し支えないほど、変わった光景が広がる場所となっていた。
反重力子の発見により発明された、夢の空飛ぶ靴、アンチグラビトンシューズ、通称『グラシュ』。
羽も使わず、エンジンも使わず、身体能力のみで飛ぶことができるこの靴は、人間に新しい視界をもたらした。
空港法との兼ね合いにより、未だ民間レベルでの自由使用には制限が多かったが、一部の地方都市では、実験的に使用が解禁されていた。
そのうちの一つで、全国的にも最もグラシュの使用が多いと言われているのが、ここ四島市なのだった。
その利用は若年層を中心に、全世代に渡って広がっていった。
中でも学生の利用者は非常に多く、四島の中のひとつ、ここ久奈島においても、日常的に通学の手段として利用されていた。
「ん? あれは──」
空の旅もそこそこに学校が見えてきた。
「あそこの停留所に降りるから準備しといて」
学校横にある停留所を指差して着地の姿勢に入る。まだ着地には慣れていないだろうから、地面すれすれまで降下するつもりだ。
「はい、到着……と」
自動で速度を弱めてくれるシューズの力を利用し、俺たちは学校の停留所へ降り立った。
「ほら、明日香。もう手を離しても大丈夫だぞ」
「え、え? あ、はいっ」
言うと、おそるおそるという感じで、ようやく明日香の手が俺の手から離れた。
流石にしがみつきは至福だったが体裁が悪かったので、せめてということで手を繋いでいたのだった。
それだけでもよからぬ噂の原因になりそうだったので、早めに解消しておくのがいい。
「すごく、すごくすごく楽しかったです! 今までで一番わくわくして、なんだかもうっ、興奮が止まりません……っ! まーちゃん! 私に飛び方を教えてください!」
「ドウドウ。落ち着け明日香。気持ちは分かるけど、今は無理だ。これから手続きがあるんだろう?」
「ううっ、そうでした。忘れてました」
「まぁ、明日にでも教えてあげるから──」
「きょ、今日からとかってダメですかね?」
明日香は、もじもじとしながら、チラチラとこちらの様子を伺ってくる。
駄々をこねる子供みたいだと自覚があるのか、けれども羞恥しながらも、それでも「はやく空を飛びたい」という気持ちには嘘をつかなかったようだ。
思わず微笑ましくなって笑う。
「いいよ、でも放課後な。明日香は手続きが終わったら先に帰るんだろ?」
「はいっ、小一時間で終わるみたいです」
「なら、学校が終わって準備ができたらメールするから。それまでお預けだな」
「先に飛んじゃうというのは」
「ダメだ。最初は指導員がいないと、思わぬ事故が起こるかもしれないからな」
俺も、初めての時は白瀬さんと葵さん──各務先生に見てもらった。
今思えばそれはとても幸運なことで、そして、あの時と同じことを今度は自分がするのだと思えば感慨深くなる。
とにかく、過保護過ぎると思うけど明日香には我慢してもらうように説得すると、「分かりました!」といい返事が返ってくる。
十年間、別に会いに行こうと思えば会えなかったわけじゃないけど、それでも会っていなかった明日香がこんなにも明るくなったことに少しの違和感がある。でも、それは成長したということで、なにより純粋に、こんなにも美少女に育ってくれたことが一人の友人として誇らしかった。
明日香と話しながら歩いて行くと、そのまま正門にたどり着いた。
そこに見知った人を見かけた俺は頭を小さく下げて挨拶した。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。なんだ晶也。ガールフレンドがいたのか?」
正門をくぐるとき、そこには旧知でもある各務先生が朝の挨拶のために立っていた。
「えっ、いや、その……っ」
「違いますよ。小さかった頃に一緒に遊んでた子です。からかわないでください」
「……まーちゃん」
顔を真っ赤にして慌てふためく明日香が可哀想だったので素早く訂正する。
心なしか明日香が残念そうな目で見てくるが、各務先生を相手に僅かにでも弱味を見せるのは危険だ。
「悪い、悪い。晶也が鳶沢以外の女の子と一緒にいるのが珍しくてな」
「その言い方もからかってるでしょ」
明日香が「鳶沢? さん?」と頭を傾げていたが、あまり突っ込んで欲しくなかったので正門をくぐり抜け、誤魔化すように教室棟を指差した。
「職員室は、こっちの教室棟の一階にある。入ってすぐ見えるところだから、迷わないとは思うけど……」
「はい、ありがとうございます。その時は誰かを頼ってみます」
「うん、それじゃ放課後」
「はいっ! 行ってきます!」
ペコッと頭を下げると、そのまま職員室のある教室棟へ。
「さて、と……」
明日香と別れて、俺は正門へ向かって振り向いてみると、各務先生と目が合い、その口元は面白いものを見たとでも言うように笑っていた。
嫌な予感を感じる。
具体的によく分からないが、あの人はたまに俺を追い詰めて楽しむ節があるからだ。
余計なことしないでくださいよ。
強い意志を込めてアイコンタクトを送るが、薄く笑って返されるだけだった。
結局俺はモヤモヤとした感情を抱きながら、教室へ足を運ぶことになった。
「大丈夫だ。ああ見えて各務先生は理不尽なことをさせない人だ。何も心配することはない」
自分に言い聞かせながら、教室へ入ると自分の席について息をつく。
「ねぇ、さっき手を繋いでたの……誰?」
「……出し抜けだな」
そこへ唐突にクラスメイトが現れた。
鳶沢みさき。クラスの女子でも呼び捨てにしているのはこいつくらいで、なんだかんだでよく喋る知人以上、友達以下。
そしてこいつは、こういった唐突な会話の入りを、特に朝方よくやらかす。
朝に弱く、それは毎朝後輩に起こしてもらわないと学校に遅刻するレベルの重症だ。
だが、今日はひと味違った。
剣呑そうな表情で、その瞳の奥には確かな理性を宿して射抜いてくる。
もはや朝と昼で別人のように成り果てていることが慣れているため、朝方でここまで低血圧でない姿は、逆に「誰だ」と思わせるほど ……なんというか怖かった。
「よく見えてたな」
「そりゃ見えますよ。真白とふたりで後ろにいたからね」
「えっ!?」
なにそれ怖い。
もしかして抱きつかれていたところも見られたのか?
どうにかはぐらかしたいと思案するが、それは許されなかった。
「それでぇ……あの子、誰?」
その笑顔には心なしか威圧感すら放ってくるみさきに、俺はとうとう屈して、全て吐かされる。
尋問は、ホームルームが始まるまで続いた。
お久しぶりです。
沢山の(?)アンケート回答ありがとうございます。
この作品に求める需要を見て真顔になった作者です。
あらすじ的に修羅場一強かなと思えば、真逆を行きましたね。
そんな需要に応えるために遅れましたと嘯いてみます。
とりあえず、期待に添えるよう頑張ります。
そして今気づいたんですけど、お気に入り20件達成してました。
そしてありがたいことに感想まで。
ありがとうございます!
原作はプレイした?
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した
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していない