日向晶也LV1   作:@silky

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【Zwei】の情報をもっといろんな人に知ってもらってみんなで応援したいですが、あまり過剰にやりすぎるのはハーメルンに迷惑なので今日かぎりであらすじ欄でのみ、ひっそりと情報を載せておこうかと思います。

それはそうとコメントありがとう。
煽てられたので本日二話目の投稿です。


フレンドシップ

「びっくりしました。まさかまーちゃんが、コーチの名人だったなんて、わたし知らなかったです!」

 

 明日香は目をキラキラさせていた。

 確かに、明日香が知っているとすれば選手としての日向晶也だろう。

 それもだいぶ昔に活躍しているだけでここ最近は特にこれと言って目立った覚えはない。一部の掲示板やブログなどで去年の秋季大会、準優勝したみさきのセコンドをしていた俺を何者だと盛り上がっていたが生憎と名前を出していたのはみさきのみだったので特定されるには至らなかった。昔と今の俺を結びつけるのは難しいだろう。

 

 それに選手とコーチの能力はイコールではないので、明日香の反応も分からないわけではない。

 

「名人とかじゃないよ、慣れてるってだけで」

「そうなんですか? でもすごいです! すごすぎますっ!」

 

 明日香はいろいろなハードルの基準が低いみたいだ。

 

「久奈浜で生活するには、グラシュの扱いをマスターするのがとても重要だと聞きました」

 

 そういえば、公認指導員の話を持ちかけてきたのは先生だった。

 ということは明日香はクラスメイトになる確率が高くて、この話をしたのも先生だろう。

 ……あの人、余計なこと言ってないよな。

 

「なので、頑張って覚えますので、ご指導よろしくお願いしますっ!」

 

 長い髪ごと、ふぁさっとお辞儀をした。

 き、気の入りようが凄い。

 

「う、うん。俺に教えられることなら」

 

 まぁ、あれだけ興味を持っていたんだ。

 この食いつきようは当然でもあった。

 

「じゃあ、グラシュの基礎知識から教えていきます」

「はい、コーチ!」

 

 こうして今後定期的に開かれることになる俺と明日香の講習が始まった。

 

 

 

 

 £≡

 

 

 

 

「よし、基礎知識はここまでにして、それじゃ今度は実際に飛ぶ練習をしようか」

「待ってました、コーチ!」

「詳しい歴史についてはまた今度な」

「うっ……!」

「調子いいなぁ、もう」

 

 というわけで俺は明日香の横に回ると、シューズの踵にあるスイッチを入れた。スカートだと意識したかもしれないので、動きやすい服装にしてくれてありがたい。

 

「そういえばそのジャージって」

「前の高校の時の体操着です」

「へぇ」

「今も連絡を取り合ってる友達と交換したモノなんです」

「交換? 体操着を?」

「はい、お別れの時は色々と交換するみたいで、お友達といっぱい交換しました」

「お気に入りのマグカップとか、ハンカチとか、制服のボタンやシャツだったり、……あっ、でもこの髪飾りはちゃんと断りました。まーちゃんとの大切な思い出だったので」

 

 ……いい話なんだろうけど、明日香のお友達がちょっと怖い。

 本土では当たり前なのか? とりあえずこの話題は封印しておこう。

 

「……よし! じゃあ起動したからまずはさっきやったみたいに足を前後に軽く開いてみて」

「さっきと同じように……ですね」

「うん、そのまま、バランスを保ちつつ、軽くでいいから両足の踵を浮かせて」

「はいっ」

「よし、じゃあ後は自分のタイミングで、シューズに命令を出せばゆっくりと浮き上がるよ」

「え、ス、スピードとか大丈夫ですか、急に早くなったりとか」

「車と一緒で、最初はゆっくりだから、その心配はないよ」

「わ、わかりました!」

 

 明日香は深呼吸して姿勢を整えると、

 

「い、いっせーのーでー……」

 

 身体をキュッと上へと伸ばし、

 

「FLY!!!」

 

 ブゥンと機械音が微かに響き、ピインと涼やかな起動音と共に、明日香のグラシュに羽のオブジェが生えた。

 

 

「わぁ……す、すごい……」

 

 そして、ゆっくりと、その身体が宙へと浮かび始めた。

 

「う、浮きました、動きました!! や、やったっ、わたし、飛んでます、飛んでますよっ!」

 

 よほど嬉しかったのか、プールではしゃぐ小さな子のように、こちらに向けて手を振り回している。

 手をバタバタさせて見ていて微笑ましい光景だ。

 だが、そんな時間も長くはなかった。

 

「わ、わわわっ、きゅ、急にバランスがぁ……!?」

 

 明日香の身体がガクガクとプレはじめた。

 手足をバタつかせ、やがて明日香の身体は仰向けになり、そして。

 

「きゃああ、おっ、落ち、落ち、落ちます〜っ!!」

 

 そのまま、スピードを落としつつ、お尻から地面へと落下したのだった。

 

 

 

 

 

 £≡

 

 

 

 

 ふとスマホを取り出した。

 電源をつけて時間を確認。

 気がつけばもう夕方の5時を回っていて、あたりもそろそろ暗くなろうとしていた。

 そのままカメラを開いて、ビデオに切り替える。

 フレームに映すのは今日、再会した十年来のメル友である明日香だ。

 

 録画スタート。

 

「きゃあ、きゃああ、落ちる、落ちる〜!」

 

 明日香は地面に落下してもなお、両手でもがき、両足をバタバタさせていた。あたかも陸に揚げられた(トビウオ)のような姿だが、美少女は何をしても美少女だった。

 

「落ち……って、あ、あれ?」

 

 録画ストップ。

 スマホをしまい、尻餅をついたままの明日香に手を差し伸べる。

 

「いつの間にか地面に降りてただろ? これもグラシュの機能のひとつなんだよ」

 

 掴んだ手を持ち上げ、よいしょと立ち上がらせた。 

 

「さて、今日はこのあたりにしておこうか」

「まーちゃん今、何か撮ってましたよねっ!?」

「気のせいじゃないか?」

「ピコンって聞こえました!」

「ドウドウ。落ち着け明日香。あまり帰りが遅いと親も心配するんじゃないのか?」

「うぅうう、後で絶対に消してくださいね。……親にはまーちゃんと練習してくるって言ってあるのでまだ大丈夫です」

「……」

 

 俺は無言で首を縦に振り、頷きながら思った。

 もしかしてそれって、親もまーちゃんが女の子だと思っているんじゃないでしょうか、と。

 

「だから、その……」

 

 もじもじと、恥じらうようにして、上目遣いで明日香は言った。

 

「も、もう少しだけ、練習を手伝ってください」

「いいよ、もう少しだけやろうか」

 

 我ながら即答とはちょろいものだ。

 でも、それだけの価値があると、胸の内から湧き上がる思いが告げている。

 

 ただ、それだけ。

 

「ありがとうっ、まーちゃん!」

 

 その一言が、なによりも俺を狂わせる。

 

 

 ーーだからキミの笑顔は愛おしい、なんて。

 

 

 なにが「だから」なのか、俺は知らない。

 




日向晶也LV1
思春期。女子人気が高いが遠巻きに見られることが多いので色恋に耐性がない。普通に話せる異性の友達は、だいたいフライングサーカスが絡んだ話題なので大丈夫。悪友を名乗るみさきとだいたい一緒にいることも原因。

倉科明日香LV1
無自覚に百合ハーレムを作り上げ、転校する際には泣いて、謎のお別れの交換会をした。もらい泣きである。
原作ではただの講習会だったのに対して、今作ではプライベートレッスンのため成長加速フラグが立つ。



頑張ってみさきと真白のシーンを抜いて話題を追加。
原作改変ですがバタフライエフェクトが決定的になりそうなのは大会が始まる頃です。つまり共通ルートはだいたい同じ内容になるので、ご注意ください。
該当シーンと見比べると如何に原作が素晴らしいか理解できます。

需要調査:どちらのルート希望?

  • 原作イベント(全ルートのすべて)
  • 原作イベント(全ルートから厳選)
  • 原作イベント(一部ルート主軸)
  • オリジナル展開多め
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