コメントも含めてありがとうの投稿です。
「送ってかなくて大丈夫か?」
「はい、家はすぐそこですし、こんな時間まで付き合ってもらいましたから」
「遠慮しなくていいのに」
「そこは、あれです。親しき仲にも礼儀あり、というやつです」
砂浜から家の近くの停留所まで、練習もかねて今朝と同じように手繋ぎで帰ってきた。
明日香の家は反対側へ向かうものの、それほど遠いわけではない。
男の子としては送っていきたいと思ってしまうが、明日香は別にいいと断っている。流石に、ただの友達がそこまでしゃしゃり出るのも何か違うだろう。
そういうわけで明日の朝、一緒に登校するために待ち合わせの約束をして今日のところは解散することになった。
「それじゃ、おやすみなさいコーチ」
「コーチ呼びが抜けてないぞ、明日香」
「あはは、本当ですね。うっかり他の人がいる前で言わないように気をつけないと」
「確かに、人前でコーチって呼ばれたら気恥ずかしいから、できれば二人きりの時だけにしてくれると助かるよ」
「はい、分かりました! 二人だけの秘密ですね!」
明日香は急にウキウキとし出した。秘密が大好きなんだろうか。こんな子どもっぽいところを見つけるたびに昔のことを思い出す。
気弱でおとなしい、まさにか弱い女の子そのものだった姿は、今の明日香からは想像できないだろう。
俺も変わってしまった自覚があるが、それと同じくらい明日香も変わっている。
「それじゃ、また明日。気をつけてな」
「はい!」
たーのしみっ、たーのしみー、と明日香は、本当に楽しみな様子で、ぴょんぴょん飛び跳ねるように帰っていった。
「早く、うまく飛べるようになればいいな」
去っていく明日香を見ながら、祈った。
どうか、彼女は俺と同じ道を歩みませんように。
楽しい気持ちを、忘れませんように。
£≡
今日は部活がないことを事前に知らせていたが、遅くに帰宅したことを親は特に気にもせず、おかえりー、と迎えてくれた。
ただいま、と一言だけ返して二階の自室へ向かう。
本土ではARを進化させたMRというものが流行っているらしく、それを聞きつけた母さんが取り寄せたデバイスが、階段を登ろうとしたところで鳴った。
機械に弱めの母さんは、最新のアプリを扱えることが嬉しいらしく、家の中で意味もなく通話を求めてくる。
四島で他にMRを使っている人は居ないからな。
どうせならさっき直接言えばと思ったが、これに付き合うくらい安い親孝行だ。
あたかも、宙へ浮かんでいるように見える着信マークをタップする。
「もしもし」
『そうそう、晶也、お隣さん今日引っ越してきたから」
「えっ、ついにお隣誰か引っ越してきたの?」
驚いた。二年前から空き家だったお隣だ。誰か住み始めるような気配がなかったのでいきなりだとは思うけど、そうとなれば隣の家に向かう窓のカーテンは閉めておかないといけない。
「昼間、業者さんが家具運び込んでいたからね。家主さんとはまだご挨拶できてないんだけど、その家の子がおソバを持って来てくれてね。晶也と同じ年くらいのしっかりした子で可愛いかったわよ。やったわね」
「……へぇ、そうなんだ」
通話中のアイコンをはじく。母さんの冗談はさておき。
引っ越しで俺と年の近い子ならこっちに転校してくることになる。明日香もそうだけど4月も半ばの中途半端な時期に転校生って、俺だったら耐えられそうにない。
「困ったことがあれば助けてあげないとな……」
自室の扉を開けて入ると、外から光が入っていた。
おそらく、お隣さんはこの部屋の存在を忘れているのだろう。
気まずいなぁとは思いながら、せめて一言だけ挨拶しようと思い至ったところで、フリーズ。
「え」
「へ?」
まるで時間停止の魔法にかけられたように、二人して微動だにせず、そのままの体勢を維持し続けていた。
視線が縫い付けられたようにお互いの顔を見つめ合う。
「………………」
「………………」
一言、挨拶するつもりだった。
こんばんは、と一言だけ言ってカーテン閉める。
たったそれだけのはずだったのに、目に映る光景の衝撃に、頭が一瞬真っ白になって混乱する。
「ど、どうも……」
なんで、目を逸らすだとか、後ろを向くだとかしなくて声をかけたんだろう。
やがて、破裂寸前の何かから溢れ出した声とともに、
「……………きっ、……」
決壊した。
「きゃああああああああああぁぁぁあああ!?」
「うわああああああああああぁぁぁあああ!?」
俺も釣られて悲鳴をハモらせる。
彼女の悲鳴が窓越しでも大きかったのもあるが、目のやり場のないあられもない姿に、覚えのない感情が止められなかった。
「わ、悪い! すぐにカーテン閉めるから!」
「ヤだ、来ないで! 近寄らないでください!」
「いや、そういうつもりじゃなくてっ」
不慮の事故なのに、まるで変質者になった気分だ。
このままじゃ拉致があかない。
「っていうかそっちがカーテンを閉めれば……」
「あ」
ちょっと間抜けな声を残して、シャッとカーテンが引かれる。
続いて俺もカーテンを引き、目に毒な光景が遮られた。
「はぁ……」
ようやく息をつく。けど、見てはいけなかったものを見てしまった感覚が消えてくれない。
今のはちゃんと事故だって分かってくれるのか?
最初から印象が最悪だなぁ、これは。
こんなはずじゃなかったのに。
結局、その日は謝罪も弁解もさせてもらえる機会は訪れなかった。
£≡
「顔赤いし、さっき大声で叫んでたけど、何かあったの?」
「なっ、何でもないから!」
日向晶也LV1
生まれて初めて同じ年頃の女の子の際どい姿を見た。たまに見る初恋の子のエッチな夢より興奮して小一時間ほど顔が真っ赤になっていた純情少年。事故の親バレはなんとか防ぐ。
市ノ瀬莉佳LV5
みんな大好きなヒロインみたいなヒロイン。ラッキースケベに愛されし者。
去年の全国大会準決勝、真白に惜敗するも、その能力の高さを知らしめた。
人気が低いのは……偶然、かもしれない、かもしれなくもないかもしれない。
因みに作者のストーリー攻略順序は莉佳→真白→みさき→明日香。
他意はない。
アンケートは満場一致の作られるようですね。
詳しくは公式Twitterを見ろ!
ツヴァイ(次回作)が制作されると思いますか?
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