転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。   作:texiatto

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 タイトルで察する人いそう(KONAMI)。それはそれとして、前回はストーリーがあんまし進まなかった分、今回はしっかりユクゾー!(デッデッデデデデッ)



愛狂、戦端

 ◆

 

 

 

 コンホヴォル王の手紙に従い、俺は影の国から出てアルスターに向かった。俺ひとりなら半日で到着する距離だが、道中襲い来る魔獣やらの相手をしつつレーグ君に技を教えていたせいか、かなりゆっくりとしたペースだった。

 

 それにしてもレーグ君、教えたことはしっかりモノにできてるし、熱意はアツゥイ! くらいにあるんだけど、それに反して伸びがあまり感じられない。

 ただ、そのことを本人も理解しており、しかしそれに対して「伸び代がなかったとしても、僕がやりたくてやっているだけなので、別にいいんですよ」と、いい笑顔で言われちゃあもう何も言えないわな。

 

 え? 図体がデカいエネミーを狩る方法がよく分からない? よし、なら特別な稽古付けてやるか! よく見とけよ〜(意気揚々)。

 

 丁度、俺達の眼前にいる巨大な竜に魔槍を構える。と、敵意に煽られた竜は振り上げた己の剛腕を俺へと振り下ろし、殺意をもって応えてみせる。よかろう!(梟並感)

 頭上から大地に影を差す剛腕、それが瞬時に迫ってきたため、俺は撃ち出された弾丸のように竜の懐へと潜り込む。

 振り下ろされた剛腕は大地を砕き、陥没と隆起を同時に引き起こすが、その中に俺の姿は既になく。

 

 ────ちょいさァ!

 

「GIGYAAAA────ッ!!?」

 

 腹部から首下にかけて魔槍で勢い良く斬り上げると、傷口から滝のように流血する竜が痛みで怒り狂う。が、反撃の隙なんてやる訳ねぇだろ!

 俺は懐から頭部に向かって跳躍し、魔槍で竜の顔面を殴り付けると、鈍い悲鳴と共に折れた牙が吐き出される。

 だが竜は仰け反りながらもこちらに顔を向けると、その口内に赤い光が灯り始め、直後に放たれるのは内閣総辞職ビーム()。

 

 ────しかし、退かぬ! 媚びぬ! 省みぬゥ!

 

 俺は空中で身を捻って力を溜め込み、弾けさせた力を委ねた魔槍を回転させながら投擲する。高速回転する魔槍は炎を裂きながら直進し、口内に突き刺さると同時に魔槍を手元に呼び寄せ、更に口内を斬り裂く。

 そうして痛みに悶える竜、それは隙だらけな訳で。ゲイ・ボルクを手元に戻した勢いを活かして空中で身を回し、竜の首を一閃。

 すると竜の身動きは停止し、首が水平に滑り地面に転げ落ちる。それに応じて巨体も脱力し、地鳴りを伴って地に伏した。

 

 ────首置いてけ! なぁ! 首置いてけ!

 

 戦闘開始から十秒にも満たない、終了。これでいっちょアガリってな。ポイントとしては、素早く立ち回ってさえすりゃあどうにかなるって点かな。あ、でも炎は俺と違って避けなきゃダメだぜ? じゃ、レーグ君もやってみよう!

 

 

 

 …………え、無理? あ、そう。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 四日かけてアルスターに到着した俺達は、朝一番にコンホヴォル王の元へと向かった。

 

「おぉ、随分と遅かったな、クー・フーリンよ」

 

 安定のドヤされだったので、俺が修行に集中していたと適当な理由を付けて返答してやった。その際、レーグ君が「何故僕のせいにしないんですか?」と視線を投げかけてきたので、雑に頭を撫でてやった。

 ふっ、俺はな、前世では上司にコキ使われていたから、もし俺が上司になったら部下を大切にするって決めてたんだ。あー、やば。結構恥ずかしいなオイ。

 

 何はともあれ、早速スポーンしまくっている魔獣共をサーチ・アンド・デストロイすることにしよう。俺ひとりでやっても良かったんだが、レーグ君が以前にも増して「僕にも手伝わせて下さい!」とアツゥイ! 眼差しを向けてきたので、まあいいいんじゃね? ということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔獣を狩る、狩る、狩る。

 

 魔猪やら狼やらがわんさかといる。コイツら頭数が多いせいか、数頭倒しただけじゃ怯みもしなかった。単体としては強くないが、戦いは数だよ兄貴! というヤツだった。

 

 まあ要するに────面倒くせぇ! 存分に狩り、存分に酔いたまえよ。と狩人プレイに興じるのも限界があったよ!

 

 また同行者としてレーグ君もいるが、それ以外にセングレンとマッハもいる。パワフルにフ〇ム戦車をひいてくれた二頭の馬だ。

 初め、魔獣狩りに馬を連れて行ったら餌にされるかもじゃん。とか思っていたのだが、このお馬さんズ、襲って来た狼に強烈な蹴りをお見舞いして、狼の頭部をスプラッターにしてしまった。レーグ君より強いと思いました。

 

 そういう経緯で馬が魔獣共にとっての即死トラップと化していたため、存分に脚として使わせてもらった。森でも安心してパカラできるの強い(確信)。

 なので気分は無双ゲー。馬上から魔槍やルーンで攻撃し、豆腐なエネミーを追いかける。

 

 あ、駄目だ。発作が抑えきれんッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────我、鬼庭刑部雅孝なり!(音声:マイネエェェェム!イズ!ギョウブマサタカ!!オニワァァァア!!!)

 

 

 

 ふぅ、まさかリアルで鬼刑部ごっこができるとは。…………レーグ君、そんな好奇の目で見ないでくれ! ただ、フ〇ム欲を抑えきれなかっただけなんだ!

 

 そんなこんなで巫山戯つつもしっかりと魔獣共を駆逐していき、気が付けば、空は黄金色に染まっていた。

 俺のスタミナは無尽蔵なのか、疲れを全くと言っていい程に感じなかったが、対するレーグ君は目に見えて疲労困憊だった。そういやマトモに休憩時間も取ってなかったな。よし、今日のところはここまでにしようか。そんな俺の発言を聞き、レーグ君は力を抜き切ってマッハの上で項垂れる。はは、まあそうなるわな。

 

 そうしてアルスターに戻る俺達。街が見えだした辺りで何故か、俺は形容し難い不安感に駆り立てられていた。虫の知らせというか、防衛本能というか、そういう類の何かが警鐘を鳴らしまくっている。

 何だ…………この気持ち悪ぃ感じは!? 全身に纏わり付く嫌悪感、身の毛のよだつ恐怖感、久しく忘れていたSAN値チェック────ん? 久しく? SAN値チェック?

 

 

 

 瞬間────ゾワり。

 

 

 

 全身を舐め回すかのような視線────邪視を感じ取る。

 

 

 思い、出したッ! あぁ…………! そんなっ、そんな馬鹿なッ!

 

 

 邪視の送り主が接近してくる。

 

 

 まさか…………まさか! アイツなのかッ!? う、嘘だ、う「あはぁあ…………っ! やあぁぁっと、会えましたね。…………私の、私のクー?」

 

 蕩けきった声色のした方へと、錆び付いた身体を向けてみれば、そこにいたのは、数十人の女騎士を率いている黒髪の美女。

 腰にまで届く長髪、誰もが羨む純白の肌、師匠や師範に負けず劣らずのスタイル。以前までの可愛らしさという魅力は身を潜め、代わりに美しいという印象をこれでもかと放つ女性────名をエメル。

 気品溢れる服装のあの頃とは異なり、今はファンタジーゲームに出てきそうなバトルドレスに身を包み、手脚に軽装の鎧を身に付け、手には長い双槍を携えていた。その姿は正しく戦乙女。

 だが、誰もが認める美貌を持つ顔は狂気を孕んだ蕩け顔へと変貌しており、そしてその瞳は以前にも増して深淵の如き闇を湛えていた。

 

 

 

 あっ、じゃあ俺アイデアロールを振りますね(諦)。

 

 

 

 エメルと再会(遭遇)した俺達もとい俺は、コンホヴォル王に狩猟数を報告して「明日も頼むぞ」と言われた直後、待ち構えていたエメルに捕獲された。

 

「分かっていましたよ、クーがここに帰ってくるって。だって、私はクーのこと何でも知っているんですから。ふふっ」

 

「でも、私が待っているだけなのは不公平でしょう? だから、私もクーを探そうと思ったの。それには武力を身に付ける必要があって、私、とっても、とおおぉっっっても頑張ったんですよぉ?」

 

「大変だったけど、途中で気が付いたの。貴方がここを出て行ったのは、更なる強さを求めるため。なら、そんな貴方の隣に居続ける私もまた、強さを得なくちゃいけないって、ね? そうでしょう?」

 

「そんな中で貴方が帰って来た! ということは、私が強くなれたことを貴方が認めてくれたってことだと思うの。だって、貴方が私の元に帰って来てくれたんですもの!」

 

 連行された先は、俺が騎士団に所属していた頃に自室として使用していた部屋。今ではエメルの自室と化しているが。そこで小一時間程抱き枕にされつつ、エメルによるマシンガントークが繰り広げられていた。

 つーか抱き着くのやめろォ! エメルてめぇ外見は誰もが振り向く美女やぞ自覚しろや! 俺の鋼の如き理性にも限度ってモンががががががが…………ッ!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 アルスター滞在一週間目、精神崩壊を引き起こしそうです(FX顔)。

 

 連日の魔獣狩りのおかげで、魔獣共はアルスターから着実に駆逐されつつあるが、それ以上にエメルの精神攻撃が以前のそれより進化したものとなっており、俺の平穏もしっかりと失くなりつつあった。

 

 何かを求めれば────例えば、喉が渇いたから水が欲しい、など────俺の気配察知に引っ掛かることなく隣に現れ、「これ、ですよね?」と微笑みながら手渡してくる。怖い。

 

 街へ出て女性と会話をしたのみだというのに、後日その女性が失踪し、エメルから「貴方に言い寄る虫は駆除しておきましたよ?」と囁かれる。…………怖い。

 

 エメルから逃れよう、という試みを実行した日の夜には彼女に発見され、いつも以上に淀んだ瞳に貫かれながら「何処へ行っていたんですか? 私の視界に入らないで何をしていたんですか? 黙ってないで早く答えてください。早く、早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く────」と詰め寄られ、脂汗が滝のように吹き出るという初めての体験をした。…………こわい、こわいよぅ。

 

 遂には俺の私物を俺の目の前で堂々と回収するようになり、何してんだ、と問いかければ「これ、壊れていたので取り替えておきますね?」と返答される。あっ、そっかぁ。と納得した直後「ふふふふ、今日でクーの香りが完全になくなるから、補充しなくちゃね」と聞こえた。恐ろしく小さい呟き、俺でなきゃ聞き逃しちゃうね。…………こわいよぅ、たすけて、きあらさま。

 

 他にも多くのことをやられているのだが、当然のように邪視も健在だった。変態に技術を与えた結果がこれだよ!

 

 …………エメルの話はよそう(SAN値直葬済)。

 

 コンホヴォル王に頼まれた魔獣狩りは順調だ。当初は、俺とレーグ君のみの増員だと人員が足りないのでは、と考えていたのだが、そもそもアルスターで魔獣狩りを担当していたのは、何とエメル率いる女傑騎士団だったらしい。

 …………そういや、海獣共を倒す前にココに立ち寄った時、そんな感じの話を聞いた気がする。まさか事実だったとは。

 

 という訳で、俺達は女傑騎士団と合同で魔獣狩りを行なっていた。彼女らが女だからと侮るなかれ。単純な力こそ赤枝の騎士団の輩に劣るものの、ヤツらにはない技量という面で秀でていた。

 例えば魔獣が眼前にいるとして、赤枝なら「殺られる前に殺れ」の精神で突っ込み、負傷してでも仕留めるまで止まらないだろう。

 しかし彼女らは必ず二人一組で行動し、互いにフォローし合った連携でエネミーを仕留めるのだ。しかも無傷で。

 この時点で野郎のそれとは比べ物にならない程に鍛えられていると理解できる。もし仮に赤枝の連中がタッグを組んだとしても、互いに互いの動きを阻害し合って、挙句に敵前で喧嘩をおっ始めるに違いない。

 

 森林での魔獣狩り、その最中の女傑騎士団のチームプレイに感嘆していると、誰とも組んでいない女────エメルを見つけた。

 俺が単独で大丈夫かよ、という視線を向けると同時にエメルの首が可動領域を超えて回り、俺を視界に捉えて「見ていてくださいね」と口にしたのを、読唇術で読み取る。びっくりするからやめて。

 

 直後、エメルの正面から二頭の魔猪が猛進して来る。レーグ君では苦戦する相手だが、果たして。

 

 魔猪A&Bの猪突猛進、エメルをストレートに狙う。あまりに愚直なルートだったため、エメルは右手に浅く持った槍を掲げ、魔猪へと振り下ろす。斬る、刺すというよりかは、叩き潰すモーションだった。

 対し、魔猪A&Bは持ち前の敏捷性を活かして回避しつつ、振り下ろした直後のエメルへと突き進む。そうして鼻先までエメルに接近すると、下顎から生えた牙で攻撃を開始する。

 が、エメルは振り下ろした勢いで身を空中に浮かせて回避、魔猪Aのがら空きの背を左手の槍で刺し穿ち、即死に至らせる。

 次いで、エメルは跳躍の先にあった大木を蹴り、空中で方向転換する。その着地場所に居たのは、エメルを見失った魔猪B。エメルは容赦なく槍を魔猪Bの脳天へと突き刺し、華麗に着地してみせた。

 槍に付着した血を振り払い、俺へと微笑みを向けてくる。どうでしたか、私は強くなったでしょう、と言わんばかりに。

 

 確かにエメルの力量は、周囲と比較して頭一つ抜けていた。他の面々がタッグ前提の力量なのに対し、エメルは単独戦闘に特化していた。これならば、確かに心配は不要だな。

 

 …………でも、まあ。ひとつ言わせて欲しいのは────お前変わり過ぎだろ! いくら頑張ったからと言っても短期間で強くなり過ぎィ! 見ろ! レーグ君のこの微妙な顔を! レーグ君は数年かけても魔猪二頭に苦戦する力量なんだぞ!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 魔獣狩り一週間と五日目、早朝だというのに何やら街が騒がしかった。コンホヴォル王を見つけたので、何が始まるんです? と聞いてみたところ、物凄い渋い顔をしながら、

 

「コノートに宣戦布告されたのだ」

 

 と…………え、何故?? また何かやらかしたのかコンホヴォル王ェ!? そんな俺の疑惑の視線に気が付いたのか、コンホヴォル王は「今回はお前のせいだ」と口にする。

 

 …………は? 俺?

 

 

 

 ◆




◆補足

Q.コノートはどうして宣戦布告したん?
A.神話では「クーリーの牛争い」という戦争があり、これによってアルスターとコノートは戦争状態に入るのですが、この世界線では言うまでもなく発生しません。では何故コノートは宣戦布告したのかというと、

メイヴ「クー・フーリン欲しい!」

メイヴ「でも今どこにいるのかわからないわ!」

メイヴ「え、アルスターにいるの!?」

メイヴ「奪わなきゃ!(使命感)」

という、ね?(目逸らし)はえー、アリルさんカワイソス。

Q.エメルに戦闘能力ついてて草。
A.これぞ愛の力(愉悦)。

Q.女傑騎士団って構成員何人くらい?
A.数十人です←(決まってない)

Q.何で(偽)頑なにヤらないの?
A.この方が楽しく書きやすいから、という身勝手な理由だったりします。まあ、誰を選んでも地雷踏み抜き確定で、尚且つバッドエンドでは監禁か周囲殲滅か心中かになると思われるので、そんな中で誰かに手を出せっていうのは無理だと思うんですよね←


↓ここから雑談↓


 お久しぶりです、texiattoです。前回の後書きで母にバレた旨の記述をしたところ、感想の半分以上が「いぇ〜いマッマ見てるぅ〜(これ一番すこ)」だったので、何かもう色々と草。
 今回は魔改造エメルが再登場しました。知ってるか? エメルからは逃げられない。戦闘能力が身に付いたおかげで、ぼくのかんがえたさいきょうのエメル状態ですはい(白目)。そもそもこんな魔改造に至った理由は、イ・プルーリバス・ウナム編で明かされるのでしばらくお待ち下さい。
 ………え? 話進むって言っておいてあんまし進んでない? はえー、知らん。今回はただ鬼刑部ごっこをしたくて書いたので私は満足です。でもクソでかフォントとルビの設定がよぐわがんながっだので、括弧で音声を付けるという暴挙に出ました。仕方ないね。ともかく、次回も引き続き(偽)視点をお送りする予定ですが、その次か次あたりで一度レーグ君視点を挟み、尚且つ主要人物の視点の時系列の統合を行い、終局には第三者視点で書いていく予定です。なので今しばらくお待ち頂ければと思います。
























 最近友人から進められたゲームがありまして、それについて聞いたところ、面白いよ! 腹筋鍛えられるよ! 泣けるよ! と熱く語られました。それだけ聞いた私は「バカゲーか何かかな? でも泣けるってどういうことや(ガチ困惑)」となった訳で。
 直後、その友人からLINEに謎のURLが投下され、開いてみるとそのゲームの淫夢実況の動画でした。その時点で私の警戒度が跳ね上がり、同時に「これ面白いゲームなんやろな(純粋)」という気持ちが湧き上がったのですが、動画開始1秒で腹筋が部位破壊されました。








 「ぬ〇たし」って言うんですけど。

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