転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。 作:texiatto
好きなんだろぉ?こういうヒロインがさぁ?(カリおっさん並感)
※追記:コイツ投稿遅せぇな失踪か?と思った方、是非とも活動報告を見てみてください。次話の進捗状況などを発狂しながら書いてます()。
◆
途轍もない力を持ち、誰かのために戦い、老若男女から拍手喝采を浴び、そして歴史に名を残すという一種の不死性を獲得する。
ケルトに育つ人間なら誰しもが一度は望む、英雄。
────英雄になりたい。
例に漏れず、僕も英雄願望を抱いた。
だが、現実は残酷で、英雄になれるのは生まれ持った器のような、後天的には得ることのできないモノを持った人のみがなれる。
僕にはそれがなかった。いや、ないのが普通なのかもしれないが、僕にはその『普通』すらも欠如していた。
過酷な鍛錬を積んでも僕の身体は細身のままで、ケルトらしい肉体とは無縁だった。剣術や槍術を学んだが、そもそもからして基礎である肉体が出来上がっていないために、半年足らずで無力を突き付けられた。
それでも、と。諦めきれなかった僕は魔術にも手を出した。勤勉に取り組んだおかげで姿を不可視にする魔術を習得できたが、それ以外は杜撰なものだった。
ならば、と。双方を織り交ぜた立ち回りをすれば、少なからず僕にも戦えるはずだと意気込んだ。が、歴戦の戦士には通じる訳がない、と訓練を通して身を以って理解させられた。
そこまでして、やっと僕は気が付いた。
僕には英雄どころか、戦士の素質の欠片もないんだ、と。
◆
挫折から数年。僕はコンホヴォル王の所有する赤枝の騎士団に所属し、そこで使われる武具の管理や馬の世話などをしていた。
僕自身が英雄になることは諦めたが、しかし未練が残っているのか、戦士達に関わる仕事を積極的に担ったのだ。
毎日のように、ひしゃげた鎧や折れた武器を加工屋に持っていき修理を依頼する。手合わせで使われる物だからこそ、管理は徹底しなければならない。
だとしても、彼らがあまりに暴力的な扱い方をするものだから、毎回のように加工屋に「作った者の身にもなりやがれってんだ」と愚痴をこぼされる。その度にすいません、と頭を下げるのも慣れたものだ。
馬の世話は初めこそ苦労が絶えなかった。何故なら戦車を轢く程の強力な馬達だからだったからだ。聞いた話では、前任者は馬に頭を蹴られたのが死因だとか。恐怖でしかない。だからこそ馬の機嫌を損ねないよう慎重に世話を焼いた。
中でも問題児であるセングレンとマッハという白黒の馬達は、言うことを全く聞いてくれずにお手上げだった。
仕事をする中で、僕は一体何をしたいのだろうか、と自問を繰り返すが、一向に答えは返ってこない。実に色褪せた日々を送っていた。
そんな時、彼────クー・フーリンという戦士のことを耳にした。
曰く、誰よりも英雄の素質を備えた将来有望な若者で、あのフェルグスしか互角に打ち合えない実力を持っている。
曰く、猛犬のような凶暴性に加え、表情ひとつ変えずに力を振るう。その攻撃速度は神速の如し。
曰く、有する力は己のためではなく、常に誰かのために振るわれ、それは正しく英雄の姿。
聞いた途端、僕の足は騎士団の修練所へと向いていた。噂の真偽をこの目で確かめたくなったのもそうだが、それ以上に、英雄という存在がどれ程なのかを、この目に焼き付けたかったからだ。
だが生憎なことに、件の彼は今朝アルスターから出て行ったばかりだったらしい。何でも、更なる高みへ上り詰めるためだとか。
流石は英雄と呼ばれるだけの戦士。アルスターに収まる器ではなかったということなのだろう。
しかし、そんな彼を見ることが叶わず、まして見送りさえもできなかったのは、非常に残念に感じた。
……それはそれとして、今日は修練所で一人の女性が暴れ散らしていたが、あれは何だったのだろう。
◆
今日も今日とて、女傑騎士団の皆が魔獣狩りに出かけて行った。
……彼女らは凄い。
僕とあまり年が変わらず、去年までは戦いの「た」の字すらなかった女性らが、今では赤枝の騎士団に所属する戦士達に勝るとも劣らない力を持ち、精力的に魔獣を間引いてくれている。
そこには努力という対価があったのは明白だが、それでも目を見張る程の成長速度だ。
こういう人達こそ、才能があるってことなんだと思う。本当に……僕とは比べ物にならない。
◆
唐突に、コンホヴォル王から異動を言い渡された。クー・フーリンの乗る戦車、その御者をやれ、と。
………………………………………………へっ?
クー・フーリンって、一年前くらいにアルスターから出て行った、英雄と呼ばれていた、あのクー・フーリン?
彼が乗る戦車の御者を……僕が!? そ、そんな光栄な役割を、僕なんかが!?
それは正しく栄転だった。僕が英雄になることは不可能でも、英雄と呼ばれる人に仕えられるのは、やはり嬉しい。僕のこれまでを評価されたような気持ちになれるからだ。
激しい動悸。憧れの英雄と出会えるのだ。僕を満たす緊張感はこれまで感じたことの無い程に高まり、同程度の歓喜にも心身を揺さぶられる。
そして、彼────クー・フーリンさんを視界に収めた。
身長は僕よりも大きく、しかし肉体はフェルグスさんのような筋骨隆々なものではなく細身なもので、全身にびっしりとついた細かい筋肉が存在を主張する。
端正な顔立ちだが、見る者を射殺す鋭利な目付きはかなり威圧的で、それを備えた緋色の瞳は人外さを湛えていた。項の辺りで束ねられた青藍色の髪は、さながら猛獣の尾のよう。
そしてその身に宿す覇気は、歴戦の戦士のそれと遜色ない程に練磨されたものだった。一体、どれ程の修行を積み重ねれば、僕とほぼ変わらない年でありながら、あれ程の風格を身に付けられるのか。
万夫不当の豪傑という第一印象。これが英雄か、と視線を投げていると、彼と視線が交錯する。
「────お前の御者として、このレーグを連れて行くがいい」
そして、コンホヴォル王からの紹介。クー・フーリンさんの意識が完全にこちらに向く。
「じ、自分はっ、レーグといいます! ク、クー・フーリンさんの強さについては兼ね兼ね…………」
っ、緊張で言葉が上手く出なかった。恥ずかしい……とても恥ずかしい。うぅ。
「世辞はいらねぇよ。それよりもいいのか? 俺なんかの御者で」
少し粗野な言葉遣いではあるが、その顔には僕への配慮が感じられた。
「むしろ光栄なことです! クー・フーリンさんと言えば、ずば抜けた素早さと技を持ち、誰をも寄せ付けぬ強者。しかし、無用な暴力を嫌い、力を振るう時は必ず誰かのため。その姿は正しく英雄だ、と聞いてきたものですから! そんな方の脚となれるんですから、光栄と言わずしてなんとしましょうか!」
そうだ。誰もが憧れる英雄、いずれ歴史の人となるであろう相手に仕えられるのだ。それを光栄と思うのは必然!
それを抜きにしても、クー・フーリンさんは僕にとって憧憬の対象だ。会えただけでも嬉しく感じる。
「……そうかい。それでどうだ、本人を見た感想は?」
「正しく、噂通りだと! クー・フーリンさんから滲む雰囲気と言いますか、それから察することが出来る程には!」
僕は思ったままに言葉を連ねていく。と、露骨に目を逸らして頬を搔くクー・フーリンさん。もしかして恥ずかしがっているのかな。
第一印象とのギャップに、僕が思わず笑みを零していると、不意にそれが一変。心做しか瞳から光が消失する。
「なら、手合わせでもしてみるか?」
獰猛に……というか、やや引き攣った笑みで、そう口にしてくる。
ぼ、僕がクー・フーリンさんと、手合わせを……?
「えっ、いやっ、ありがたいお話ですけど、僕は弱いので、そのっ…………」
「……いや、冗談だから気にすんな。それに割く時間もねえしな」
失礼とも取れる僕の返答に対し、クー・フーリンさんは一瞬だけ目を見開いたが、苦笑と共に流した。
やはり英雄と呼ばれる戦士は違う。僕はクー・フーリンさんの器の大きさを実感した。
クー・フーリンさんに与えられた2頭の馬は、僕もといコンホヴォル王が扱いに頭を悩ませていた問題児達だった。
日頃世話をしている僕にすら未だに心を開かず、初対面の相手には尚のこと。
……そのはず、なんだけど。
「「ヒヒン!」」
「なっ!? あの暴れ馬達がこんなにも……!? 流石、クー・フーリンさん!」
僕の目に映るのは、クー・フーリンさんの伸ばした手に自ら擦り寄る、問題児達の姿。しかも嬉しそうに。
そんな光景に目を丸くする僕。ふと、クー・フーリンさんの顔へと視線をずらせば、その口元が少しだけ吊り上がっていた。動物に懐かれれば誰だって笑いもする。彼もそうだった。
彼は英雄という、僕にとって手の届かない人間ではなく、一人の人間として、友人として親しみを持てる相手である。そんな直感がした。
◆
コノートへの旅路、その目的は付近の海岸にて目撃情報のあった2頭の海獣────クリードとコインヘンを討伐することだった。
いくら屈強な戦士だとしても、その海獣らと戦うのは躊躇われる。それどころか目視すれば遁走の一手をとるのが当然のはずだ。
そのような化け物相手に自ら戦いに赴く理由、それを聞けば、クー・フーリンさんの師匠に最終試練として2頭の討伐を言い渡されたのだとか。
……どんな鬼畜な師匠なんですかっ!?
といったような世間話(?)をする程度には、コノートへの旅路は長い。
その間、僕の不可視の魔術によって、ある程度の敵性生物との接触は回避することができていた。お陰で何事もなく安全な……とは、お世辞にも言い難いもので。
何故なら、血気盛ん且つ飢えた生物が、何度も襲いかかってきたからだった。
理由は単純明快。不可視とはいえ気配を遮断するまでの効果はなく、しかも戦車を走らせている都合上、かなりの轟音を響かせてしまっていたからだ。また、食料も積んでいるために、匂いを嗅ぎつけられた。
時には、魔獣や野獣が僕達を追いかけ、涎を滴らせながら牙を覗かせる。
時には、幾匹もの竜が空を飛び回り、群れを形成して頭上から襲い来る。
時には、それらの合わせ技。正直、勘弁して欲しい。
普段は人が滅多に通らないだけに、野生動物が縄張りを侵犯したと言わんばかりに襲来する。
だが、クー・フーリンさんはそれら全てを薙ぎ倒し、振り払い、斬り裂いていった。
傍観者に一切の不安を抱かせない安定した立ち回り。有する技術の高さも然る事乍ら、正面突破を可能とする力技も凄まじい。
「あの程度ならいくら来ようと問題ねえさ。それにすげぇってんならレーグの魔術だろ」
なのに、それを自慢げに語るでもなく、むしろ僕のことを褒めてくれる。姿を不可視にすることしかできない、僕を。
「っ、そう言っていただけたら、とてもありがたいです。僕にはクー・フーリンさんみたいな武芸はなくて、あるのはこの程度の魔術くらいなもので……」
そうは言ったものの、僕のこの魔術が姿以外も消せたのなら、それこそ『こっちしかなかった』と胸を張って言えるのだろうが。
「いや、武芸ってモンは習うより慣れろって感じだろ。やってればその内に身に付いて強くなれる」
「い、いえ、僕には向いてないと言いますか……」
身体と槍に付着した返り血を拭いながら、クー・フーリンさんは言う。
僕だって最初はそう思ったから、それに従って貪欲に学んで、知識や技術を使ってきた。でも結果には結びつかなかった。
「……わかってはいるんです。でも、周りが着実に力をつけていくのに、僕だけが取り残されていく疎外感を、もう味わいたくないんです」
同時期に始めた友人達、僕の後から鍛え始めた後輩達。その全員に追い抜かされ、辛酸を嘗めてきた。
そうとなれば諦めもするし卑屈にもなる。僕には向いていない。それでいい。それでいいと思うしかない。
「……そう深く考え込む必要もねぇだろ」
「え」
心中に黒い靄が立ち込めてきていた辺りで、クー・フーリンさんから紡がれた言葉。それに顔を上げる。
「レーグ、お前はどうなりてぇんだ?」
「……どうなりたいか、ですか?」
「あぁ」
唐突な質問。僕はどうなりたいのか。今更自問する必要はない。嫌という程に確かめたのだから。
「……僕は、クー・フーリンさんやフェルグスさんみたいな、名を馳せる戦士になりたい……なってみたいです」
「……なら、どうすりゃなれる?」
「どうって……鍛錬をするとか、誰かから教わるとか、ですか?」
「それは当たり前だ。俺が聞いてんのはそうじゃねえ、それを踏まえた上でどうすんのかってことだ」
「…………………………」
わからない。いや、今までそんなこと考えたこともなかった。
目標は明確だったが、それを達成するための方法は、とにかく鍛錬を積み、誰かに師事することだと、それが当たり前だと思ってきたのだから。
しかし、それを踏まえた上でどうすればいいのか、という問い。その答えは持ち合わせていない。盲目的に取り組めば、自ずと結果が追従してくると考えていたからだ。
「……わからないか。答えは簡単だ。習ったこと、それが自分に向いているかどうかに振り分ければいい」
「……えっ、それだけでいいんですか?」
「これだけじゃ足らねぇよ。ただ、これを把握してるかどうかはデケェぞ? レーグ、お前はついさっき、自分には向いてねえって言ったがな、それを自覚しているだけでも大したモンなんだぜ?」
向いているかどうかを自覚する。それはとても大事なことらしい。
どういうことなのだろう。僕は目で疑問を投げかける。
「向いてねえってことは、要するにその分野で活躍することは難しいって事実が早々にわかるってことだ。だから別のことに手を出して、自分の向いている物事を探求する時間がある。悪く言やぁ継続力がねえってことかもしれねぇが、我慢して続けるのは何時か限界が来るってモンだ」
そう語るクー・フーリンさんは、目を伏せて過去を懐かしむような顔をし、哀愁を含んだ溜息を吐く。
過去にそのような経験をしたことがあるのだろうか? いや、クー・フーリンさんは僕と同い年くらいのはず。それはないだろう。
「レーグ、お前の目標は名を馳せる戦士になることで、向いてねえのは戦うこと、だな?」
「……はい、そうです」
クー・フーリンさんからの再確認。それを言われ、改めて僕の理想がどれだけ埒外を向いているのかを理解する。
戦う力がないというのに、戦士になりたいと願う。まるで正反対なものだ。
「なら、まずはレーグの得意なことを考えてみろ」
「と、得意なこと、ですか?」
「あぁ。文脈から言うなら、向いていることは何かってことだ」
うーん、僕に向いていること。何だろうか。
「………………御者、ですかね」
我ながら酷いものだと思った。戦士になりたいと言っておきながら、咄嗟に絞り出したものは御者。向いているというよりか、僕にできること、と言った方が正しい。
戦士志望の御者。言葉にすると尚更滑稽だった。流石にクー・フーリンさんも失笑するだろう。そう身構えていると、
「御者、か。いいじゃねえか」
飛んで来たのは、予想外にも朗らかな笑みを湛えた、優しげな声色だった。
「えっ、でも御者と戦士とでは、必要とされる能力に違いがあり過ぎませんか?」
「あのなぁ、戦士って言っても、前線に出て武器を振るうだけが戦士じゃねえんだぞ? 脳筋共が扱う馬の世話だとか武具の調達・修理、負傷兵の治療、物資の供給、情報収集────後方支援に従事する奴らも等しく戦士だと、俺は考えている」
戦うだけが戦士ではない、という言葉。それは僕を肯定するために咄嗟に吐いた嘘ではないと、クー・フーリンさんの語り口から理解できた。
なるほど、確かにそうだ。言われて納得する。武術や魔術を修めた強者とて、扱う武具などにも造詣が深い者は多くない。であれば、その戦士が使う武具を造る者、その戦士が駆る馬を世話する者、その戦士が戦線復帰を可能とするために治療を施す者────そういった者達が存在してこそなのだ、と。
「確かにケルトの風潮からすりゃ、武力こそが戦士の価値で、無双の活躍こそが戦士の華みてぇなモンだが────飽くまでも、それは今までの考え方だ。戦う力がねえ、才能もねえ、だから戦士にはなれない。そんな固定観念を打ち壊しちまえばいいのさ。お前がな」
瞬間、心臓が跳ねる。
「えっ! ぼ、僕がですか!? そんなの無理ですよ! 前例がないことを、僕が……僕なんかが始めるのは、そのっ、あまりに過酷ですよ!」
「あぁ、そうだな。前代未聞だ。艱難辛苦の道のりだろうさ。だからこそやる価値があるし、いずれは誰かが担わなきゃならんことでもあるんだよ」
到底、僕なんかが担えるはずもない大役。それを全うし、新たな戦士の在り方を創ることにより、僕は名を馳せる戦士になれると言う。
あぁ、だが、言われてみれば確かになれる気もする。しかし、具体的には何をどうすればいいのだろう?
「……レーグ、お前、考えていることが全部顔に出てるぜ? 確かにそうかも、でもどうすりゃいい、ってな」
「うっ」
「まあ、やり方はひとつじゃねえが、一番手っ取り早いのは、向いていることを伸ばして極めることだな」
「伸ばし、極める……ですか」
「何であれ突き詰めれば、それは勲章になる。誰にも勝る武器になる。俺やフェルグスが戦うことに向いていて、それを磨き上げたことで名を馳せたように、な」
不敵に頬を吊り上げ、槍を担ぐクー・フーリンさん。それは、俺の姿を見ろとでも言わんばかりだった。
「御者としての力を伸ばし、御者としてなら誰にも負けない。戦士を通り越して御者の王になってやる。そんくらいの心構えでいりゃあ、周囲の目や評価なんてどうでもよくなるぜ? だから、お前に向いていることに愚直に取り組めばいい。ほらな、何も深く考え込む必要なんてねえだろ?」
彼の言葉。それが心に浸透して行き、熱を帯びる。それはまるで、足元すら覚束無かった僕の視界を照らし、道標となる灯火のようだった。
こんな僕でも戦士になれる。無理だと思い、諦めていた夢が、もしかしたら、叶うかもしれない。
そう感じられただけで、僕の心は救われた。非常に単純なことかもしれないが、結局、僕はそれのみで満たされた。
「戦士の在り方は何も戦うことだけじゃない……僕の目標を達成するためにも何かひとつの物事を極める……うん……うん。なるほど」
彼の言葉をゆっくりと咀嚼し、飲み込み、自らの糧とする。新たな在り方、考え方、そういったものを創ることに意味があるのだと。
理解と共感。それと同時に溢れる自信。今の僕なら、何があっても挫けない。弱音も吐かない。卑屈にもならない。ただ、ただ愚直に御者としての力を高められる。
そして、僅かな合間で僕のこれからを示してくれたクー・フーリンさんに、僕は今後も付いて行きたいと、強く感じた。あわよくば、彼の相棒として共に駆け回りたい、と。
英雄として語り継がれるクー・フーリン、そんな彼の相棒として共に戦場を駆けた御者の王レーグ。うん、控えめに言って最高だ!
そのような妄想をしただけで、心に燻る熱は大火となり、全身を駆け巡り、活力へと変換される。
今回の最終試練が終わったら、僕はクー・フーリンさんに付いて行きたい。本気だ。であれば、彼の相棒を目指すためにも、やはり戦う技術は覚えるべきだろう。
「クー・フーリンさん! 僕には戦うことは向いていないかもしれませんが、やはり少しでも覚えておきたいです! なので、クー・フーリンさんに教えを乞うことは叶うでしょうか!?」
とうの昔に諦め、忘れ去っていた、学ぶことに対する貪欲な気持ち。それが完全に復活していた。
御者としての力を高めるのは勿論だが、少しでも彼と共に戦場を潜り抜けたい。その感情が僕を突き動かす。
「無理だな。俺も修行中の身だ。誰かに何かを授ける程の資格は持っちゃいねえよ」
が、クー・フーリンさんの返答。拒否。業火の如き衝動が瞬時に鎮火する。調子に乗り過ぎていた。
「あぅ……そ、そうですよね。いきなりすみませ「だが」」
僕の言葉に被せて発せられた接続詞に、ふと顔を上げる。
「俺が槍を振るっているのを見て、技を盗むのは勝手だ。授ける智慧はねえが、助言くらいならできるかもな」
態と視線を合わせず、呟くようにして出された、微笑み混じりのクー・フーリンさんの言葉。
断られた直後ということもあり、それを理解するのに少々の間が空いてしまったが、噛み砕くと同時に歓喜が込み上がる。
「〜〜〜〜っ! あ、ありがとうございますっ!」
「だが、己の武器を研磨すること。それを忘れんなよ?」
「はい!」
こうして僕は、コノートへの道すがらクー・フーリンさんの技を目で追い、休息時に見様見真似でやるようになった。
その傍ら、クー・フーリンさんが独り言のように技の要点を掻い摘んで説明してくれていた。そこまでやるなら直接教えてくれてもいいのに、と思いもしたが、何事も体裁が必要なのだとか。
実はクー・フーリンさんは、とても不器用な人なのかもしれない。だがそれは決して短所ではなく、むしろ接する人の心を温めてくれる。
だからこそ僕はこの人に付いて行きたいと、改めて思えた。
◆
コノートへと入り、海岸に接近する程に天候は悪化し、明らかに異常であると肌で感じた。
そして、クー・フーリンさんの標的達を視認する。海獣クリードと海獣コインヘンだ。
そこからは怒涛の展開だった。
2頭の海獣の激闘、その余波によって落命寸前だった女性を瞬時に助け出し────息をするように英雄らしい行動ができる辺り、やはりクー・フーリンさんは凄い────、その後は数時間にも及ぶ激戦を繰り広げてみせた。
己の得物である槍捌きも然る事乍ら、コンホヴォル王に持たされた剣や盾の数々を、予想外な用途で使い、クー・フーリンさんは巧みに立ち回っていた。
また魔術も多用し、氷や炎、身体強化などを行使していたようだったが、そのどれもの発動が尋常ではない程に素早く、また臨機応変に且つ効果的に使い分けている。
武術も魔術も、その全てが高い練度を誇り、それらを織り交ぜた彼の戦闘は、正しく神話の一頁にあっても遜色ないくらいのものだった。
その領域はもはや『才能』『努力』といった言葉のみで片付けることが烏滸がましく感じられた。
そして海獣達へと向けた、最後の一撃。それはあのクリードとコインヘンを軽々と屠った。少々危ないと感じた場面はあったものの、この結果をそうなると確信していた僕がいた。
不思議と、クー・フーリンさんが敗北する絵が浮かび上がらなかったのだ。いや、不思議ではないか。何せ、彼なのだから。
討伐直後、助けられた女性はクー・フーリンさんを睨み付けたり怒鳴ったりと、何やら剣呑な雰囲気を放っていたが、瞬時にそれは霧散し、彼女から色気を幻視する程に艶かしい雰囲気が漂い始めた。
その時に知ったことではあるが、その女性はコノートの女王メイヴその人であり、クー・フーリンさんは女王の御目に適ったのだそうな。
そのせいか、コノートを出るまでの間、女王は僕達もといクー・フーリンさんにべったりで、何度も誘惑を仕掛けているようだった。しかしクー・フーリンさんは鉄壁で、やり返しては逆に女王をオトしていた。
なるほど、これが英雄色を好む、ですね! と口にしてみれば、クー・フーリンさんから無言で蹴られた。
◆
◆補足
Q.レーグ君チョロくない?
A.憧れの人に言われたのなら、そりゃチョロくもなりますわ。なるよね?なる。
Q.レーグ君って男の娘?
A.決まってないんだなぁ、これが!(ゾルタン並感) なのでご想像にお任せします←は?
Q.(偽)結構語ってて草。
A.レーグ君は唯一の常識人枠やぞ!囲うのに必死になるに決まってんだろ!(白目)
↓ここから雑談↓
お久しぶりです、texiattoです。今回はレーグ君視点をお送りしましたが、まだ書きたいことの本筋というか、ほんへに追いついていません。なので次回も引き続きレーグ君視点の予定です。次回でレーグ君がガチヒロイン的な役回りしそうなので、とりあえず先手に、なんだァ?てめェ……(置き独歩)。
今回の投稿に時間がかかりまくった理由としましては、フワッとしていたレーグ君ネタをどうやって文章化しようかと試行錯誤していたことであったり、会話文を簡潔且つ深いものにするにはどうすればいいかと頭を抱えていたり、FGOフェスの中継を見ながらFGOの周回をしていたり、ぬ〇たし動画を漁っていたり、デッドダムドのデッキを考えていたり……つまり忙しかったせいですね!(迫真)
レーグ君視点をこれまで溜め込んでいた分だけ色々書き込もうとすると、如何せんダラダラとした文章になってしまう。これホント辛み。ということで、そういった点に考慮しつつ次回を書いていくので、時間がかかりすぎて「生きとったんかワレェ!」と言われかねない予感がします……。ですが失踪はしませんので、今しばらくお待ち下さい。ではまた!
zero大好き僕「よし、溜まってた事件簿見るぞぉ!」
1話視聴中僕「エモッ…エモッ…」
1話視聴後僕「エ"モ"ッッッッッッッッッッッッッ!!?」
感極まってマジで涙出て草。