転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。   作:texiatto

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 ネタとモチベーションが続く限り書け!書き続けろ!

 あ、今回は魔改造済みのヒロイン(?)が登場します。

 基本的にクー・フーリンの史実を都合良く展開するために「これの方が辻褄合うかな?無理はないかな?」と考えているので、はい。


プロローグ:クー・フーリン (下)

 ◆

 

 最近思ったのは、本家クー・フーリンはコミュ力お化けだったということ。何で見知らぬ相手に喧嘩ふっかけて仲良くなれるの? マジで難易度ケルティックなんだが(謎)。

 お陰様で本家クー・フーリンのような人懐っこい雰囲気だとか、軽口を叩くような言動とかができなくて辛い。現代人の倫理観とコミュ力不足をここまで呪ったことは初めてだ。この時点で再現もあったもんじゃないな…………。

 

 であれば、方向転換だ。

 

 クー・フーリンとは言ったが、ランサーの、とは言っていない(目逸らし)。コミュ力お化けは俺には荷が重すぎたんだ…………。

 今の俺のポジションや言外に優しさを滲ませるあたり、どちらかと言えば【オルタ】に近い。ちなみに凶暴性はない。とすれば、俺は中身【オルタ】のクー・フーリンとなろう、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 視線を感じるようになってからというもの、騎士仲間やコンホヴォル王から「お前に女はいないのか?」と頻繁に聞かれるようになった。

 生憎と生前も今世も女性には疎く、そのような相手はいない。悲しいけどこれ、現実なのよね。

 

 いや、俺はあえて彼女をつくっていないだけだ! 俺はクー・フーリンとなるべく鍛錬に集中しなければならない、そのようなことに割く時間はないのだッ! 

 的な返答をすれば、何故か騎士仲間やコンホヴォル王は冷や汗を流して引き攣った笑みを浮かべる。

 

 な、何かおかしなことを言ったか? 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 邪視の正体が判明した。

 

 それはフォルガルという人物の娘であるエメルという少女だった。スタイルは良く、身なりも可愛らしく、咲いた花のような笑みは鍛錬に疲弊した騎士仲間を瞬時に回復させるという、中々に人気の少女だ。

 

 彼女は俺が鍛錬している最中も、休日に街へと出ている時も、何故か高頻度の遭遇率を誇っていた。

 そんな少女と仲良くなっていった俺。すわ、春の到来かっ! などと期待に焦がれるのは無理だった。

 

 理由はただひとつ────邪視だ。

 

 邪視といっても、別段、特別な何かをされているわけではなく、魔術や呪いの類などでもないのだが、ハイライト先輩が死んだ淀んだ瞳で毎日長時間、しかもどこからか見られているという恐怖である。

 どうやら、俺の気配察知能力の高さが逆効果となっているようだ。さながら、野生動物の索敵範囲内に堂々と居座って、しかしそちらに目を向ければ姿を消し、気を抜くと背後に現れている。そんなイメージ。

 

 エメルから向けられるやべー視線の心当たりがなさ過ぎる俺は、毎日をSAN値チェックしながら過ごすハメになったのだが、これ何て罰ゲーム? もしかしてエメルってニャr…………

 

 

 

 ◆

 

 

 

 も、もう無理だ────ッ! 限界だッ! 

 

 俺のやることなすこと全てをエメルに把握されていた。また、騎士になってからのことも事細かに知られており、「何でも、知っていますから(暗黒微笑)」と囁いてくるのだ。

 

 周囲の品々が頻繁に紛失すると思えば、後日に紛失したはずの物が甘ったるい香りを放ち、何故か部屋に置いてあったり。

 鍛錬を終えて部屋に戻ると、何故か布団から女性の香水のような香りや人の温かみが残っていたり。

 挙句、俺がエメル以外の女性と談笑した翌日、その女性が病で倒れ、エメルから「浮気はダメですよ?」と言われたり。

 

 これアレだ、やべーやつだ。

 

 清姫とか静謐とかは、見る分には羨ましいとか微笑ましいとか言っていられるが、そんな発言は当事者でもなければ現実でもないから言えたことだった。

 これを実際にやられると精神が削られるってレベルではない。得体の知れない野獣に、虎視眈々とターゲットを定められているようなものだ。即ち、ただ、ただ恐怖である。

 

 ……逃げよう、どこか遠くへ。辛い時は逃げていい、逃げるのも勇気なのだ! 

 

 ちなみに、コンホヴォル王には憐憫の眼差しと共に快諾された。マジで感謝感激狂喜乱舞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エメルから遠ざかりたい一心で、宛もなく歩いていたところ、一人の女性に「お主、弟子にならんか?」とスカウトされた。

 

 …………ん? あれ、この人どこかで見たような。

 

 見惚れる赤紫色の髪、叡智を湛えた真紅の瞳、すらっと長い脚に豊満な母性の象徴、しかし格好は紫色の全身タイツ。優雅さと気品さを兼ね備え、他者を魅了する容姿にはどことなく人ならざる儚さを感じさせる。

 そして全身に纏う武人の雰囲気、俺の培ってきた経験が「この人も戦闘狂のそれ」だと警鐘を鳴らす。紛うことなくケルト人のそれだ。

 

 

 

 

 

 

 あっ、スカサハ…………。

 

 

 

 




 とりあえずクー・フ―リン(偽)のプロローグはお終いです。

 次はSAN値レ〇プ!ヤンデレと化したエメル視点、その後にクー・フーリンの影の国奮闘記、スカサハ視点といった順で考えています。




 第5特異点でしっかりしたものを書く(予定)ので、それまではこんなカンジに話が進行します。お兄さん許して(懇願)

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