転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。 作:texiatto
◆
「────さあ! 説明してもらうわよ!」
モリガンから逃げ切り、影の国を目指す道すがら、メイヴが声高々に事態の詳細を要求。現状について全く知らんのだとか。
知らんのに自分んトコの勇士達をはね飛ばしながら助けてくれたんか。これは間違いなく救いの女神……女神はもうやめてくれ……(自傷)。
とりあえず、メイヴに事の経緯を掻い摘んで伝える。
モリガンが『フフ……セッ──!』とか言ってきたんで、必要(?)としている人のところに行ったげて、と拒否。
次に、急いでいた際にまたもエンカウントしたため、必要ねえから他のところ行け! と声を大にして逃走。
その結果、ブチ切れモリガンがシャイニングのあのシーンばりに追い詰めてきた、と。
女神……コワイ……。ホントに何なの? 青〇島のコミュニケーションの如く即合体を求めてきて、それを拒否ったから殺しに来るとか、もう頭おかしなるで……。
「……ふふ、モリガンのヤツ、ざまぁないわね! クー・フーリンは私のモノになるから靡くはずもないのに!」
むふふ、と笑いを零しながら胸を張るメイヴ。待てや、一騎打ちは一応俺の勝ちやぞ。
「……前々から思っていましたが」
と、ここでエメルが話をぶった斬ってダイナミックエントリー。敵意マシマシの淀んだ瞳でメイヴを睨み付ける。
「『私の』クーに言い寄るのは止めてもらえます?」
「………………は? 誰よアナタ。それに『私の』?」
メイヴから笑みが完全消失し、瞬時に一触即発の雰囲気に包まれる。オーラだけで人を殺せそうな勢いだ。誰かッ、スーパーキタカゼを持ていッ!
「私はエメル、クーの女です」
「えっ!?」
したり顔で捏造爆弾発言やめろーッ! 色々と驚愕だわ!
「う、うう、嘘っ!? クー・フーリンの身辺は徹底して調べ上げたのよ!? そんなのがいるだなんて聞いたことないわ!」
「フフフ、それ、何処の誰が正しいと証明してくれるのですか?」
世界一カッコいい某デブのような言い回しをするエメル。
確かに情報なんてガセ九割ってレベルに疑心暗鬼になるのが、SNSもない時代の通念かもわからんけどさぁ。つか、その理論だとオウム返しでお前も詰むぞ。
「ですから、金輪際、クーに言い寄ることがないようにお願いしま────」
「よく考えたら特に問題なかったわね」
「────はぁ?」
「だって、私がクー・フーリンを本気でオトしたいって思っているんだもの。直ぐに彼を魅了して、アナタを捨てさせればいいんだわ!」
ビシッ! と効果音の付きそうな仕草でエメルを指差すメイヴ。
強いッ! 強過ぎるッ! そういやこいつメイヴだったわ! あまりにピュアッピュアやから忘れてたよ。
「それに、彼のオンナっていうのも嘘なんでしょ? クー・フーリンも目を見開いて驚いていたもの」
「…………淫売」
「どうとでも言いなさいな! 私は私に正直なの!」
何、この……言葉と視線のベタ足インファイト……。いやまあ、全部俺のせいなのはわかってるんだけどさ。俺、何かやったか……? リアルにnice boatしそうなんだが。
それからもずっと二人は戦車越しに口論を続け、キャットファイトは加熱していった。
止める術は俺にはなく、口を挟んでも「「貴方は黙っていて」」と突っぱねられる。助けを求めてレーグ君とフェルディアに視線を投げかけるものの、二人共が我関せずを貫くのだった。
>……そっとしておこう(諦観)。
姦しいエメルとメイヴをBGMにして数時間、ようやっと影の国へと辿り着く。モリガンの追手などの姿はなく、全員が無事に到着することが叶った。
ただ、二人の口論によって俺の精神はマッハで蜂の巣にされた。精神攻撃は基本。これには虐〇おじさんも「見ろよこの無残な姿をよォ!?」と怒鳴らざるを得ない。
具体的には、二人の「私の方がクー・フーリンをよーく知っている」自慢が開戦し、埒が明かないと見るやいなや実力行使(オナモミ化)である。
本音を言えば役得なんだが、エメルは物理的にヤベーイ力で俺に抱き着くし、メイヴは鍛え上げた手練手管で俺を誘惑してくるしで……うん、キッつい(理性摩耗)。
絵面だけ見たら、美女二人を侍らせたクソ野郎ですお疲れ様でした。いや、クー・フーリンだから絵になるんだろうけど……如何せん中身が伴ってないんだ……!
「へぇ、こんな辺鄙なところに影の国があったのね。私、初めて知ったわ」
「ああ、ここにクーを誑かす女狐姉妹がいるのですね……」
二人が禍々しくも荘厳な影の門に畏敬の視線を送る。片や、珍しいものを目にして興奮し、片や、ここがあの女のハウスね……と言わんばかりに負の感情を練り上げる。
……さて、エメルとメイヴが影の国に入るために、入国許可をもらわねばならないわけだが……。
「影の国の門に着いた訳だが、 メイヴらの入国許可はクー・フーリンが取ってきてくれ」
……ふむ、フェルディア、わしにしねというんじゃな!
「いや、死んで欲しくはないが。ただ、お前と仲の良い女性二人を入れてくれ、と頼んだら最期。二度と日の目を拝むことは出来なさそうだからな……」
だから俺の問題は俺で解決してくれってか。ぐう正論過ぎて何も言えねぇ。まあ、既に多大な迷惑をかけているワケだし、これは俺がやらねば……(ケツイ)。
影の国に足を踏み入れ、師匠と師範を呼ぼうとした────途端、空から降り注ぐ魔槍と魔術の雨あられ。
親方ッ、空から槍と氷と炎が! と巫山戯る余裕もなく、俺は『噛み砕く死牙の獣』を展開し、虚空から無数の魔槍を射出して相殺させる。
すわ、モリガンの魔の手が……!? と思ったが、眼前に現れた二人の姿を見て、とりあえずそうではないと悟る。それはそれとしてハイライト先輩は死滅しているんですけどね。
「「……………………」」
……えっと、何で黙ってらっしゃるのでせうか? あの、二人して悠然と歩み寄ってくるのは、何?
「クー・フーリンよ」
はっ、はい。何ですか師匠。
「お主は儂が好かんのか……?」
……んえっ? どうして急にそんな話に?
「ここへ戻って来たと思えば、途端に出て行く。以前のような立ち会いも少なく。これではあまりにおざなりが過ぎるではないか」
あー、それは師匠が教えることは何もない的なことを言ったからであって……。考えてみてほしい、学校で全課程を修めて卒業したヤツが、何故か校舎に入り浸っていたら、何かこう……外聞が悪いじゃん?
「外聞など捨て置け。儂はお主との関係を糺しておるのだ。何が不満か口にしてみろ。さすればその元凶を魔槍で穿ち、この世に生まれ落ちたことを後悔させ、その後にゆっくりとお主の正しい在り方に戻してやる故な」
虚ろな眼で俺を射抜く師匠の、魔槍を握る手は目に見える程に力んで震えていた。こわいよぅ、たすけて、きあらさま……。
「なあ、クー・フーリン」
次は師範ですか。
「どうすれば、お前を染められるのだ?」
……んん? 染めるって何のことですか?
「何をしようにもお前は染まらず、お前のまま。ならばと自ら染まりに行こうと思えば、直ぐに遠くへ行ってしまう。もう我慢ならんのだ、クー・フーリン」
え、ちょっ……ちょっと待ってください! 何言ってんのかわからんけど徐々に脱衣しながら近寄って来ないでくれませんか!?
「何故だ……お前は私を肯定してくれたではないか。拒絶するのか? ありえん、ありえんよな、クー・フーリン?」
俺が師範の肩を掴んで脱衣を止めさせると、師範は師匠と同等以上の闇を湛えた瞳で、カルナさんばりのビーム(比喩)を照射してくる。目で殺そうとしないで。
「これ、誰の許しを得て儂以外と言葉を交わしている? はよう此方を向け」
「クー・フーリン、私を受け入れてくれるのだろう?」
……どうしてこうなったッ! 何が原因だ。いや、十中八九俺のせいなんだろうが、俺何かやらかしましたかねえ……。
俺が頭を抱えて苦悩していると、その反応をどう捉えたのか、師匠と師範が静かに思考を垂れ流す。
「やはり影の国から出したのが最大の失敗。ならば今からでも外界との接触を絶たせ、共に影の国で悠久の時を過ごさせるしかあるまいか……」
「……手始めにクー・フーリンと関わってきた者らを氷柱に閉じ込め、それを念入りに砕いて回る他ないか。うぅむ、となれば外界に干渉する術を編み出さねばなるまいな」
何かヤバいこと口走ってるんですけど……。何、監禁されるの俺? モリガンが滅茶苦茶にしないでもケルトが消滅しそうな勢いなんですがそれは……(困惑)。
このままではマズい……! 二人ならやりかねんぞコレ! ぐぎぎ……軽率に口にしたくはなかったがッ、言うしかないかッ!
莫大なソウルや血の遺志を抱えたまま、初見ボスに突っ込んでしまった時と酷似した、独特な緊張感に襲われる俺。高揚感は皆無だけどな!
師匠ッ! 師範ッ!
「「クー・フーリン……?」」
何を勘違いしているのかわかりませんが、少なくとも二人を嫌うなんてありえないですよ!
「「………………ッ!!」」
二人は瞠目し、身動ぎひとつすることなく、俺の続く言葉に耳を傾ける。眼力が強過ぎる。
ぐっ、重圧と羞恥心が凄まじい……! 俺の精神が殺人的な速度で削られていくッ! だが耐えろ! 日頃の感謝を言葉にするだけでいいんだ……!
師匠に拾われなかったら、俺は今ここにいることはないでしょうし、戦う術を教えられなければとっくに死んでたと思います! だから感謝の念が絶えませんとも! 俺の命は師匠に生かされているといっても過言ではないでしょう!
師範に魔術の心得を教え説かれなければ、外に出て戦った時に勝ち筋が薄かったでしょう! 師範の教えは常に実践に則していて、既にその知識は俺の血肉として生きています!
そんな二人を嫌うなんてありえない! むしろ好ましいと思ってます!
「「〜〜〜〜ッ!!」」
……羞恥が過ぎて即死レベル。精神こわれる。胃がキリキリ痛い。歯が浮くセリフって実際に口にすると発狂しそうになるのな。お陰様で今の俺へのダメージは致命+短剣+メバチ指輪の域にまで達した。コントローラーをぶん投げて暴言と賞賛の嵐である。
俺が内心で暴れ狂っていると、眼前の師匠と師範の肩が小刻みに震えているのを視認する。すわ、バッドコミュニケーションかと戦々恐々。
すると突然、二人が弾かれたような哄笑を響かせる。
「……ふふっ、ははは! 好き……好きとな! うむ、心地好いな。昂る……昂って仕方がない」
「よかった……本当に、よかった。決して一方通行ではなかったのだな。全く、これまでの遇う行為が愛情の裏返しであったのなら、そうであると口にしてさえくれれば、何であれ受け入れたというに」
好きって言葉は口にしてないんですけど、まあ、うん。楽しそうで何よりです()。あ、それと外に待たせてる人いるんで、入れてもいいですかね?
「ふふ、構わんぞ。何人だろうがな」
口元をだらしなく歪める師匠の了承。普段の師匠からは想像できない笑みの破壊力。危うく回生しなきゃいけなくなるところだった。
ちょいちょい思ってたんだけどさ、師匠もといスカサハってこんなキャラだったっけ? 何かこう、誇り高くて何者にも靡かない王者ってカンジじゃなかった?
……やっぱ、本来のクー・フーリンじゃないから色々と捻れちまってるんかな。神話知識ゼロなりに頑張ってきたつもりなんだけども。
甘く見ていた。
何をかって? そりゃ────
「ほほう、こやつの女という妄言を吐くか。これは重篤だ。いっそ殺して楽にしてやる故、そこに跪け」
「全くもって姉上の言う通りだ。お前などクー・フーリンには不釣り合い。身の程を知れ。そしてそれ以前に、クー・フーリンの女は私なのでな」
「……聞き捨てならんな、アイフェ。誰がクー・フーリンの女だと? 貴様も妄言を吐くのか。いやはや、全く度し難い」
「お二人共? 妄言とか不釣り合いとか訳のわからないことを言う前に、師弟関係にありながら弟子に手を出した師というのは、そもそもからして人格に難がありませんかぁ?」
「人格がどうこう言うなら貴女もでしょ。というか皆が妄想癖とか笑えないわね。私と張り合うようなマトモなのがいないのなら、私の一人勝ちかしら」
「ハッ! 男に跨るしか能のない淫乱風情が、自身を健常者と語るか! これは傑作だ! ……余程冥府に誘われたいのだな」
「あら、私に図星を突かれて焦っちゃったかしら? でも仕方ないわよね、ホントのことなんだもの!」
「あまり熱くなるな。そも、結果がわかり切っているというに、随分と心血を注ぐのだな。ああ、哀れ、憐れ」
「ええ、そうですねぇ。私が勝って、貴女達が負けるという結果ですもの。確かに憐憫さえ抱いてしまいます」
────四人の噛み合わなさを、だな。
エメルとメイヴを連れて影の国へと足を踏み入れたところ、二人の姿を目にした師匠と師範がフリーズ。先程までハートを幻視するまでに喜びに溢れていたというのに、瞬時に空気が死んだ。
一方のエメルとメイヴはというと、影の国の薄暗い風景を見回した後に師匠と師範を視界に捉え、何かを察したのか、俺の腕へと抱きついてきた。
その後は言葉という名の刃物での激しい斬り合いだ。かれこれ十分は口論を繰り広げているだろうか。よく罵詈雑言と煽り合いが尽きねえよ(戦々恐々)。
師匠、師範、エメル、メイヴ────全員が俺もといクー・フーリンに好意を寄せてくれているのは、眼前でシュラバヤ沖開戦を見せられれば流石にわかる。
いや、何で好かれてんのかはさっぱりわからんのだけどね? もうホント、本家兄貴じゃないんだから心臓と胃が持たないぞクォレハ。
だが、まさかこんなに殺伐とした犬猿の仲だとは思わなんだ……。水と油とか、そういう域じゃない。一人ひとりが火と油だ。自分の言動は相手を燃やし、相手の言動は自分を燃やす。これが怨嗟の炎ちゃんですか(違)。
要するに、取り扱い注意&混ぜるな危険、である。
どう対処すればいいかと思考巡らせ、必然的に傍観してしまっていた俺。そこへ慈愛に満ちた声をかけてくる師匠。
「安心して待っておれ、クー・フーリン。今からこやつらを血祭りにあげてやる故な」
おう、伝説の超サ〇ヤ人並の感想やめろや。まさかの身内争いで全滅とか笑えねえぞ!
「ほらぁ! クー・フーリンが困ってるじゃないの! アンタらが暴走してるからよ!」
せやぞ! と言いたいが、場を更なる混迷に落とした原因の一端はお前もだ、メイヴ。控えめに言って煽らないでいただきたい。
「暴走ではない、これは掃除だ。姦しく群がる虫共を払うためのな」
師匠は虚空から持ち出した魔槍を高速回転させ、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きを魅せる。
「ふむ、姉上がそのつもりならば仕方がないか。今ここで雌雄を決するとしよう」
師範もまた杖と槍を握り締め、ハイライトの介在しない瞳で師匠を見据える。メイヴとエメルは眼中にないと言わんばかりの行動だった。
当然、こうまでされて黙っていられるほど二人は優しくなく。
「相手にされないのはイラつくわね……ならいいわよ、私は私のやり方でクー・フーリンを奪うだけだから」
「揃いも揃って盗人猛々しいにも程があるでしょう……!」
メイヴは露骨に怒りを滲ませつつも一歩身を引いたクールな姿勢を貫く。
エメルは敵意を募らせ姉妹を睨み付ける。
あー、もう滅茶苦茶だよ(発狂)。命からがら逃げてきたのにここで壊滅エンドですか。あー、やばい! ケルトも俺の胃も壊れちゃう!
と、ならないためにも、ここは俺が身を切る必要があると見た。正直、これを口にしたら最後、俺は色々な意味で死ぬかもしれない、いや死ぬ。絶対死ぬ。アゾット剣滅多刺しからのnice boatが確約されてしまうだろう。
それでも、やるっきゃねえわな。っしゃオラァ! 覚悟決めろォ……!
一触即発の雰囲気の中で、俺は口を開いた。モリガンのヤツをどうにかするためにここに逃げて来たってのに、言い争いばっかじゃねえか、と。
「止めてくれるな、クー・フーリン」
「ここで姉上と衝突することこそ、クー・フーリンのためなのだ」
「私は悪くないわよ。向こうが一方的に突っかかってきたんだから」
「これはクーのためなんですよぉ?」
誰も頼んじゃいないんだけどさぁ……。でも、お前らの気持ちはよぉーく伝わった。背後が怖くなる程度には。だから、耳かっぽじってよく聞けよ。
「何を……」
俺達が協力してモリガンに対処し、事が丸く収まった暁には────
「「「「………………」」」」
────俺の出来うること且つ良識の範囲内で、何でも一つ言うことを聞いてやる。
「「「「──────ッ!!!」」」」
呉越同舟だろうが、今は互いに互いを支え合う時だ。じゃねえと本当にケルト丸ごと沈んじまうぞ、と。
とりあえず、俺の死亡フラグが乱立したところで、先程までの喧騒は静謐へと姿を変えた。しかしまあ、四人共から野獣の眼光を向けられるとは……(予定調和)。
「ま、まあクー・フーリンがそう言うなら仕方ないわね……! やった! これでクー・フーリンをオトしてやるわ!」
「……えぇ、そうですねぇ。やっと名実ともに添い遂げられるのですね……ふふふっ」
「そうさな、少々大人気なかったか。子供を何人こさえようか、悩ましいな」
「ああ、少しばかり熱くなっていたようだ。許せ、クー・フーリン。互いに染め合う……あぁ、好い……」
恐ろしく小さい呟き……オレでなきゃ聴き逃しちゃうね。これでいざこざが終息したら俺が爆散するのは確定事項になった訳だな!
……うん、これからどうするかを考えようか、皆!
「クー・フーリンさん……」
「クー・フーリン……」
やめろ、そんな可哀想な人を見る目で俺を見ないでくれよ、レーグ君、フェルディア。ついでにセングレンとマッハも、俺を慰めようとして擦り寄らんでもいいのよ……。
◆
俺達は解決策を模索するべく、会議を始めた。師匠と師範に事の経緯を改めて説明すれば、
「……勝利の女神か。全く、厄介な存在に目をつけられたものだ」
と、師匠に呆れられる。師範もまたジト目で俺を見てくるあたり以下同文らしい。
「師匠。モリガンとは、師匠にそこまで言わせるだけの力を持つ神なのですか?」
「ふむ、フェルディアよ。お主は『勝利の権能に勝て』と言われたとして、如何する?」
「『勝利の権能に勝て』、ですか……」
師匠と問い掛けに苦い顔をするフェルディア。それも仕方がない。何せ、勝利という結果を強引に手にする相手に対し、如何にして勝利せよというのだろうか。
モリガンに挑むということは、つまりそういうことなのである。世界創造に等しい権能を前にして、どうすべきか。
それ以前に、神と戦おうということそれ自体が前提からして無謀だ。……まあ、実際にやった人が目の前にいるんだけどね。
「答えられんか」
「……はい。正直、どうすればいいか見当もつきません」
「それでよい」
「えっ?」
「意味が理解できるか、我が愛弟子?」
まあ、何となくは。そもそも権能持ちを倒そうとするには、此方も特別な何かが必要になる。権能を打ち破るだけの何かが。それは純粋な力かもしれないし、或いは戦略性かもしれない。それがあって初めて戦えるようになるものの、自力で勝とうなんてのは絶望的。自殺志願者と相違ない。
だからどうすりゃいいかわからんって線引きができているのが正しい判断。むしろ楽観的に捉えて突っ込むことこそしてはならない。俺も詳しくはないからニュアンスなんですけど、そんなところですかね?
「うむ。頭を撫でてやろう」
唐突にキャラ崩壊すんな。
「つまり、神殺しを成すには並大抵の力量では不可能ということ。まして権能やら概念やらを保有しているとなれば尚更な。それはそれとして姉上、狡いぞ。私にもやらせろ」
何この辱め。でも身長差があるせいで、若干背伸びをしている姉妹が可愛い。控えめに言って眼福。
「つまり、手詰まりってコト?」
「心臓を穿って死ぬ相手であれば悩まんで済むが、ああいう手合いはそれでは死なんだろう」
「ふぅん、思ってたよりスカサハって使えないのね」
「口だけの小娘が……」
うーんこの殺伐。トゲのある言い方はやめてくれよなぁ、頼むよぉ。
あ、そうだ。師匠と師範って神殺ししたことあるんでしたよね? なら、モリガンも殺れたりします?
「……そうさな、確かに我らは神を殺したことはある。数え切れん程にな。だがモリガンは格が違う。神の振るう権能となれば当然。彼奴の司る『勝利』が如何なるものとして現れ出でているかにもよるが、厳しいことには違いあるまい。負けるつもりは毛頭ないがな」
えぇ……師匠にここまで言わせるとか、モリガンってマジでやべえ奴やん。いやまあ、"山の翁"のような存在との一騎打ちとかになったら、そりゃあ戦うとか以前の問題だけども。モリガンもそういうヤツ認定ですか……。
「では、僕達はどうするべきなのでしょうか?」
これまで静観していたレーグ君が質問を投げかける。シンプル故に難解なそれ。これが中々、難しいねんな。
パッと思いつくのは四つくらいなもの。
プランA、モリガンを影の国に引きずり込んでゲイボる。ただし、心臓を穿って死ななかった場合はプランDへ移行。
プランB、影の国で籠城してモリガンの怒りが収まるまで待つ。欠点があるとすれば、向こうが俺を殺すまで止まらない可能性が高い点。それが現実となった場合はプランDへ移行。
プランC、諦めて俺の命を差し出す。これを選んだ瞬間にプランDへ移行。
プランD、所謂ピンチですね(リンクス並感)。
チキショウ! まともな案が思い浮かばねえ! はー、つっかえ俺の頭! そもそも権能とかいうチート相手に正攻法で攻略しようってのがおかしいんだよ(憤慨)。
うむむ、復讐法のように目には目を、歯には歯を、世に平穏のあらんことを(違)と言えればマシなんだが……って、待て。確か俺って微弱ながらも概念を持ってなかったか?
記憶を掘り起こした俺は、手探り感覚でそれを発動してみる。と、身体から黒ずんだ緋色が迸った。
……え、何コレ(驚愕)。
以前の感じられない程に微弱なそれとは異なり、濃厚な『死』。直感的に、並大抵の命なら容易に且つ一方的に奪うことが可能だと理解する。
「わっ!? クー・フーリンさん、何ですかそれ?」
「恐ろしくも身近な何かを感じるな……」
「はぅぅぅぅ……! 魂が震えるほどのクーの力ぁ……!」
「まだ見せたことのない力を隠し持ってたのね!? ますます欲しくなっちゃったわ!」
約一名ヤベー奴がいたが、ここはスルー。今のままでは神を殺すに足る『死』ではないが、少なくともコレがあればワンチャンくらいはあるんじゃねえかな。熟考する余地はある。
「………………」
「……姉上」
「……わかっておるわ」
んん? 師匠と師範、どうかしましたか?
「……いや、どうもせん。それを駆使すれば、蜘蛛糸程の細さだろうが、モリガンを仕留められるやもしれんな」
「ああ。だが神を屠るには遠い。故、私と姉上とで、クー・フーリンの最高の一撃を叩き込めるよう全力を尽くしてやろう」
そりゃ助かる! よっしゃ、光明が見えたかもしれねえ! 具体的な策を練っていこうか!
「……やはり、視た通りになってしまうのだな」
「私も視た結末だが、それは好かない。彼奴を死なせたくない」
「言わずともわかる。儂も同じだからな。……運命とはあまりに酷だ。それを捻じ曲げるべく、何としてでも我らでモリガンめを仕留めるぞ」
「……本当に、厄介な相手に目をつけられたものだな」
◆
◆補足
Q.影の国にいるスカサハの弟子達はどうなったん?
A.放してやった(帰国中)。師匠が(偽)ニキおらんくて荒れてたから仕方ないね。あ、でもアルスターとかコノートではないので、敵として立ちはだかることはないです。
Q.何で(偽)ニキの「死」が強化されてるん?
A.ゲッシュって知っt(殴
Q.師匠師範の「視た」って何のこと?
A.(偽)ニキの最期。
Q.剣トルフォ引けた?(無関係)
A.引けたよぉ!(ニチャァ…)
↓ここから雑談↓
お久しぶりです、texiattoです。皆様はボックスガチャをどのくらい開けましたか?私はほとんど開けてません(半ギレ)。苦行なんだもの(30箱目)。それよかアトランティス待機勢なので……サボタージュ許して。
今回は久しぶりの(偽)ニキ視点でした。もうホントに久しぶり過ぎて、脳死で書く感覚を取り戻すまでが困難で……(←は?)。それはさておき、今回はヒロインズ勢揃いということで(偽)ニキの胃をゲイボるつもりで書いていたのですが、これが中々、難しいねんな。一先ずは満足です(愉悦)。
モリガンのスペックについてですが、無難に強キャラです、はい。戦闘能力的な意味では圧倒的に本気スカサハの方が上ですが、モリガンの場合は加護の源流がありやがるので、とある条件に当てはまる限り「勝つ」ことはできません。これに関しては次回以降から明かしていく予定ですが、やはり賛否両論ありまくると思います……。
次回はモリガンとの決戦にする回だと思います。何故未確定なのかというと、普通に構想もクソもないせいだから仕方ないね(自白)。一人称視点なのか三人称視点なのかさえはっきりしてませんので、気長に待っていただければ幸いです。ワンチャンこれが年内最後の更新になる可能性がありますが、極力年内最後の更新がこんな駄文でないことを願います。頑張れよ明日の俺……!(自力本願寺)
ミッツァイル殿堂推しマン!!!!!!!!!