転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。   作:texiatto

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おまたせ、アイスティーすらないけどいいかな?(準備不足)

……はい。第五特異点の構想はまだできていませんが、Fate/GO編の導入部分だけは考えていたので、とりあえず。
本編の注意点ですが、Fate/GOをプレイ済、或いは年末アニメ特番Fate/GO視聴済を前提として物語を描いていますので、設定の細かい説明や経緯は大幅にカットしています。その点はご留意下さい。


北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナム
プロローグ:人理焼却、特異点、召喚


 ◆

 

 

 

 ────人理継続保障機関フィニス・カルデア

 

 標高6,000メートルの雪山の地下に作られたその地下工房は、時計塔天体科の貴族マリスビリー・アニムスフィアが創立した、未来を保障するための機関である。

 

 だが、唐突にカルデアスの光が消え失せ、未来の保障ができなくなり、2016年には人類が滅亡するという結末を観測する。

 そして、2015年までには存在しなかった"観測できない領域"である過去を発見したカルデアは、これを人類滅亡の原因と仮定。

 過去へと介入し、問題の解決を目的とする霊子転移による、未来の修正という作戦を開始する。

 

 霊子転移を行う48人のマスター、その内10人は一般人枠が設けられており、魔術とは無縁な青年────藤丸立香は、その10人の枠としてカルデアに招かれた。

 

 マシュやフォウ、レフ、オルガマリー、ロマニといったカルデア主要人物達との邂逅を果たした立香は、その後の爆発事故、霊子転移に巻き込まれることとなる。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ────炎上汚染都市冬木

 

 

 

「マシュ……!」

 

 焦りを多分に含んだ立香の声。彼の視線の先には、己がサーヴァントであるマシュ・キリエライトと、彼女へと襲いかかるランサーのシャドウ・サーヴァントの姿があった。

 

「はぁッ!」

 

 自身の身長よりも大きな盾で必死に攻撃をするマシュ。

 その馬力は常人より凄まじく、しかしデミ・サーヴァントに成ったばかり故に、ランサーに容易にあしらわれている。

 

「初々し過ぎるのも、癪に障りますね」

 

「くッ……!」

 

 マシュを吹き飛ばすと同時に鎖の上に立ったランサーは、長髪をかき上げる仕草をする。と、立香達の逃げ道を塞ぐように鎖が周囲に張り巡らされた。

 

「まとめて私の髪で絡め取ってあげましょう……!」

 

 ランサーことメドゥーサは、愉悦に満ちた顔で立香達を見下ろす。眼前にいるのは敵ではなく、獲物。

 サーヴァントに馴染んでいない少女、魔術師ですらない一般人、そして怯えの色が濃く映る魔術師。

 誰が見ても立香達が戦い慣れしていないのは明白。彼女にとって脅威に値しないのもまた、明らかであった。

 

 メドゥーサの余裕を感じ取ったからこそ、マシュは油断なく盾を構えたまま、彼女から視線をずらさずに訴える。

 

「私では敵いません。逃げてください、先輩!」

 

 立香とオルガマリーに嫌な汗が流れる。

 

 原因不明の事故に見舞われたとはいえ、この霊子転移は世界を救うためのもの。サーヴァントなしに解決など不可能だろう。

 ここでの逃走は、一時的に生き長らえるだけで、根本の解決にはならない。

 

 更にいえば、この汚染都市を人間の力のみで生き延びれる可能性は限りなく低い。

 

 だが、それ以前に、自分達のために恐怖を押し殺して戦うマシュを見捨てるなど、彼女のマスターである立香には絶対に出来はしなかった。

 

 焦燥と恐怖が同居する立香の目に、僅かではあるが、覚悟が宿る。

 

 

 

「────愚かだな。だが、好ましい愚かさだ」

 

 

 

 不意に響き渡る、女王の如き冷厳な声。立香達だけでなく、メドゥーサまでもが声の主を探して視線を巡らせる。

 

「何処を見ている、馬鹿者めが」

 

「ッあァ……!?」

 

 メドゥーサは、眼前に突然出現した火炎の弾丸に撃たれ、その身を炎に包む。

 

 立香達の周囲に張り巡らされていた鎖が消滅すると同時に、背を向けてマシュの前にふわりと降り立つ女。

 

「貴女は……」

 

 バイオレットを基調としたドレスのような全身タイツに身を包み、ディープパープルの長髪はポニーテールのように束ねられている。

 しなやかな右手には緋色の槍、左手には魔術を綴る杖を持ち、それらの武器と彼女自身から発せられる重圧が、彼女が絶対的な強者であることを象徴していた。

 

「後にせよ。今は集中しないか」

 

「ガぁァあぁッ……!!」

 

 炎から抜け出すように姿を見せたメドゥーサは、肩で息をしながら叫ぶ。

 

「貴様ッ……キャスター! 私の邪魔をするなッ!」

 

「邪魔も何も、これは聖杯戦争というやつなのだろう。如何に紛い物に変質していようと、自分以外の者共を消し去ることに変わりはあるまい」

 

 そう言うと、女────キャスターは右足で一歩前へ踏み出す。と、地面から氷の杭が走り、メドゥーサに迫る。

 

「くッ」

 

 鎖の上から飛び退き、回避するメドゥーサだが、空中に既に射出待機状態にあった複数の氷塊の存在に気付く。

 

「そら」

 

 キャスターの声と共に静止が解凍され、複数の氷塊はミサイルの如く放たれる。

 

「舐めるなッ!」

 

 身を捻り、空中でハルペーを振るう。迫る氷塊を砕いたらまたも身を捻って振るい、砕く、砕く、砕く。

 独楽のように回転し乱舞することで氷塊の全てを粉砕したメドゥーサ。しかし、着地を待たずして、キャスターはメドゥーサの眼前に現れ、緋色の槍の一撃によって彼女を地面に叩き落とす。

 

「ガッ!? ……何故、漂流者などの肩を持つ……!?」

 

「肩など持ってはいない。これは単なる────八つ当たりだ」

 

 キャスターは自身の足下に巨大な氷の杭を形成し、そのまま地面へと落下。その落下地点には、メドゥーサがいた。

 当然、メドゥーサは回避行動に移ろうとしたが、その身体はいつの間にか氷によって地面に縫い付けられており、それが命取りとなった。

 

「ッ──────!!」

 

 断末魔はコンクリートと氷塊の破砕音によって掻き消され。

 メドゥーサの肉体は瞬く間に金色の粒子となって消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして藤丸立香は、人理修復という長い旅路における、初めての味方と出会った。ピンチを颯爽と救ってみせた、女王のようなキャスター。その名を────アイフェ。

 

 この特異点を経て彼女との縁は結ばれ、汚染都市の後にアイフェはカルデアに召喚されることとなる。

 

 数年前にケルト神話を読み込んだ経験のある立香は、アイフェから様々な話を聞き、彼の英雄らが如何なる人物であるかと想像を膨らませるのだが、それは余談である。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 言い知れぬ浮遊感に、男の目が覚める。

 

「………………………………」

 

 眼に映るは見慣れぬ景色。晴天の空、見渡す限りの水平線。空模様が水面に反射しているおかげで、ウユニ塩湖のような神秘的な景色が生まれていた。

 

 男は愕然とした。神秘的な景色になどではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()に対して。

 

 混乱する男の傍には────地面に突き刺さった緋色の魔槍。自身の半身とも呼ぶべき武器だ。

 手足には扱い慣れた、コンパクトになっている黒々とした海獣の鎧が装着されており、力を込めれば"あの"ように展開できるだろう。

 ふと、先程までのことを思い出し、自らの左胸部に手を当て、風穴が空いていないかを確認する。無傷。

 

 そして最後に、水面に映る自身の姿を、たっぷり三十秒間眺めて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(────え、これ……座じゃね?)

 

 内心で発狂寸前に陥った贋作の槍兵が、何の間違いか、英霊の座に登録されてしまっていた。

 この一瞬で多くを悟った男────クー・フーリンは、orz状態になって数分、一周回って冷静な思考に落ち着く。

 

(……てことは、俺、やっぱ死んだのか)

 

 彼は自らの記憶をサルベージする。

 

 影の国での激戦────モリガンとの死闘。師匠であるスカサハとの連携によって攻め立てたが、真の姿を晒したモリガンことバイヴ・カハに蹂躙された。

 スカサハすらも歯牙に掛けない圧倒的な強さを誇るバイヴ・カハに対し、遂にクー・フーリンは致命傷を負わされる。

 だが、それを逆手に取り、クー・フーリンは自らの命を対価として成長の前借りを行った。その結果、バイヴ・カハは死に絶え、彼もまた死に至った。

 

(勝てたのは良かった、けど……皆には悪いことしたよな)

 

 溜息を吐く。彼の心に残る燻り、それは皆に対して報いること。

 打倒モリガンのために助力してくれたスカサハ、アイフェ、メイヴ、エメル、フェルディア、レーグ────皆に感謝の言葉のひとつも贈れずに没してしまった。

 

 それが、クー・フーリンの心残りとして刻まれていた。

 

「……っ?」

 

 不意に、またも言い知れぬ浮遊感に襲われ、更に眩い光が視界に満ちる。

 

(何の光ィ……!?)

 

 困惑も束の間、何かに引き揚げられる、否、引き寄せられるように、意識が漂白されていく。

 

 そうして、次に意識が覚醒し────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、クっ、クー・フーリンっ! あの、私とっ、国をつくってちょうだい……!」

 

 ────またも意識が飛びかける。

 

 クー・フーリンが目にしたもの────蒸気が放出していると幻視する程に顔を朱色に染めたメイヴが、両手で持った聖杯を自身へ差し出す姿だった。

 

 更にいえば、メイヴの背後に控える、槍を持った金髪ロングの二枚目、二条の魔槍と麗しい黒子が特徴的な槍兵、螺旋剣を担いだ糸目の叔父貴、好戦的な笑みを浮かべる好敵手────色々と見覚えのある戦士達が揃っていた。

 

 恋愛に胸を躍らす少女が、想い人に告白するシチュエーション。それを遠巻きに見守る男子共というような絵面ではあるが、瞬間的にクー・フーリンの脳裏に過ぎる予感。

 

 メイヴ、聖杯、クー・フーリンの召喚、別のサイクルに属するはずのケルト戦士達。

 

 それ即ち────北米神話大戦。

 

 

 

(あー…………なるほど…………)

 

 

 

 贋作者の胃に穴が空いた。

 

 

 

 

 

 

 ◆




◆補足
Q.アイフェの八つ当たりって?
A.聖杯をゲットできればクー・フーリンと出会えるはずだったのに、聖杯戦争が全くの別物に変わったせいで色々と御破算になった。そのため見敵必殺の師範が誕生した。余談だけど、藤丸達と合流する前にバサクレスさん葬りRTAしてたりする。

Q.座ってそんな風景なのん?
A.(公式からの言及は)ないです。ので、桜ルートのOPに出てきたあの景色を座として認識して描きました、はい。

Q.【オルタ】は?
A.(ぎ)にきはぼくのかんがえたさいきょうのくー・ふーりんだから、おるたもほうがんしてるんだ!(大罪)

Q.今回の文字数少なくない?手抜き?
A.今回はプロローグだし、設定解説を省いただけだし、書きたいことだけ書いたら文字数がくっっっそ少なくなっただけなので、決して手抜きではないです(迫真)。


↓ここから雑談↓


お久しぶりです、texiattoです。投稿がめっきり止んだので、失踪したとか死んだとか思われていたかもしれませんが、イキテマス(葵)。リアルでやることがあったりするので、まだ本格的♂更新はできなそうですが、とりあえず生存報告がてらに投下いたしました。
今回はFate/GO編のプロローグ、本編突入前の前座になります。冬木で藤丸君達を助けるポジションにアイフェが立ち、【オルタ】が召喚されるはずのポジションに(偽)ニキが立つという狂いです。ですが、第五特異点もまたかなり変化する予定ですので、原作をぐちゃぐちゃにしてやるからな(唐突な犯罪予告)。
さて、次回に関してですが、まだ本筋の構想すらない段階ですので、更新はまだまだ先のことになりそうです。が、完成次第、順次更新していくつもりですので、気長に付き合っていただけますと幸いです。






























僕「さあ、それでは!ここで次の更新日時について決めたいと思うんですよ!まずは30日後から!できる技は、ダクソはもちろん、SEKIRO、ブラボ、それから……デモソをやったり、アーマード・コアをやったりも、フロム脳に洗脳次第ではできるかもしれませんよ?まず、30日後から!さあ、お客さんどうぞ!」

オークション男もっと流行れ。

※追記
アンケート投票ありがとうございました。想像の114514倍は投票者がいて、たまげたなぁ。

三人称視点で一貫するか、それとも(偽)ニキ視点も欲しいか

  • 三人称視点で一貫してほしい
  • (偽)ニキの脳死脊椎反射トークも欲しい

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