転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。   作:texiatto

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クロニクルデッキ買えなかったので初投稿です(マジギレ)。


アバンタイトル:三人称視点

 ◆

 

 

 

 クー・フーリンがメイヴに召喚された頃まで時は遡る。

 

「────う、うわぁぁあッ!?」

 

 アメリカ西部の、とある場所に位置する街。歴史に名前すら残らないであろうそこは、閑静であることしか特徴がなかった。

 

 そんな街に、今は悲鳴が谺していた。

 

「変なヤツらが暴れてるって話は小耳に挟んではいたが……まさか、ここに来るなんてよ……!」

 

「──────ッ!」

 

「クソッ、何だよコイツら……ぁガっ!?」

 

 恐怖と困惑の渦中にいたとある男は、不意に、襲撃者の持つ槍の殴打によって吹き飛ばされた。

 地面を転がり、苦痛に悶える男。視線を上げれば、そこには己を痛め付けた元凶がいた。

 

 低い等身に鎧の如く纏われた筋肉、無骨な兜に胴鎧に槍を装備し、目隠れ無精髭という特徴を持った襲撃者────"名も無き戦士たち"。

 

 女王メイヴによって"製造"された彼らは、女王の意に従い、北米侵略のために目に付いた街を片っ端から襲っていた。

 そのために、この閑静な街は標的となり、何の罪もない男は危機に瀕している。

 

「は、はは……こんな、ワケわかんねぇ最期って、アリかよ……!」

 

 既に街の住民の大半が、群体で押し寄せてきた"名も無き戦士たち"によって鏖殺され、住居や店といった建築物も軒並みが破壊されている。

 

「──────ッ!」

 

「嫌だ、嫌だッ……!!」

 

 男に放たれた槍が、その穂先が、心臓を穿たんと迫る。侵略戦争の犠牲として積み上げられた骸に、男が参列する────その瞬間。

 

 

 

「こんな所に来てまで、コレを目にするなんて────最悪ですねぇ」

 

 

 

 男の耳に流れ込む、この場にそぐわぬ艶やかな女性の声。

 誰だ、と口にする前に、男の眼前にいる襲撃者の胸部から、槍の穂先が突き出る。

 

「──────ッ!?」

 

「あの淫売の駒なんて視界に入れておくことすら嫌なんですから、さっさと消えなさい」

 

 次の瞬間、"名も無き戦士たち"の頭部が真っ二つとなり、見るも無残なスプラッタに成り果てた。

 襲撃者が倒れ、物言わぬ肉塊となった。そして男の見上げる先に居たのは────女神であった。

 

「全く……来て早々にコレが虫のように湧いているなんて、本ッ当に気色が悪いですねぇ」

 

「……あ、貴女、は……?」

 

「ああ、そこに誰か居たのですね。なら、ちょうどいいです」

 

 壁にもたれかかった男に歩み寄る女神。手を伸ばせば触れ合う距離まで近寄ったところで、女神の眼が怪しく光る。

 

「私の質問に、全て答えなさい」

 

「────はい」

 

 安堵が浮かんでいた男の瞳から正気の光が消え失せ、瞬間、胡乱げに女神を見つめた。

 "名も無き戦士たち"によって負わされた痛みを堪える様子もなく、壊れた人形のように柔和な笑みを浮かべ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぐに会いに行きますから、待っていてください────私のクー」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ッ……はぁ、はぁ……!」

 

 地に膝を突き、肩で息をする赤きサーヴァント────ラーマ。

 セイバーという最優のクラスを依代に現界した彼ではあったが、その身体の至る所に真紅の線を刻み付けていた。

 

 痛みや疲労を堪えるように、端正な顔を苦々しく歪めるラーマ。

 彼の射殺さんばかりの視線の先には、己をこのように追い詰めた張本人がいた。

 

「まだやんのか、大した根性だな」

 

 青い戦装束を覆い隠すように展開された、赤黒く禍々しい鎧で身を包んだ男────クー・フーリン。

 右手にはトレードマークの緋色の魔槍を持ち、ラーマを睥睨するように見据える。

 

「おのれッ────ぐっ……!」

 

 吼えるラーマだったが、打ち出された魔槍により、その身体に新たな真紅を刻まれる。

 

「貴様ッ、それだけの強さを持ちながら────何故、そちら側に与している!」

 

 心底解せんと口にするラーマ。彼がクー・フーリンと対峙したのはこれが初めてのことで、戦闘を開始してから大した時間も経過していない。

 だが、この僅かな打ち合いの中で、この青き戦士は侵略のため、虐殺のために力を振るうような男ではないと、ラーマは鋭敏に感じ取っていた。

 

 むしろ────誇り高きそれであるとまで。

 

「貴様の"武"は何かに授かったものではないッ……途方もない修練によるものだろう!」

 

 故に、彼は理解に苦しむ。感嘆の息を吐くほどに練り上げられた武術、好ましいと感じさせるだけの誉れ高い精神を持ちながら、何故、この地を脅かす者共に助力しているのかと。

 

「お前に俺の何が分かる……なんつう野暮なことは言わねえけどよ。俺には俺の立場ってモンがある。返さなきゃならねえ恩義もある。それが理由だ」

 

「その理由のためだけに、どれ程の人々が殺されたか分かっているのか!?」

 

 この惨状を見ろ、と声を上げるラーマ。今、この二人がいる荒野には、多くの骸が積み上げられていた。

 卑しきインベーダーから故郷を守らんとした北米の人間達、その死体である。

 

 クー・フーリンには「不殺」のゲッシュがあるため、彼らの死にクー・フーリンは直接的な関与はしていない。

 彼らを死に至らしめたは、メイヴがクー・フーリンに付けた"名も無き戦士たち"によるものである。

 

 しかし、クー・フーリンが"名も無き戦士たち"の戦闘行為を許容し、彼らの死を傍観していたのは紛れもない事実。

 そして、その"名も無き戦士たち"は今、戦闘を終了したため、彼の背後で隊列を組んで沈黙している。

 

 北米の人々と侵略者達の戦闘、否、一方的な殺戮に途中から介入したラーマからすれば、クー・フーリンこそがこの殺戮者の長として映るのは仕方がないことだった。

 

「確かに、俺ならコイツらを止められただろうし、助けられた命もあったろうさ。けどな、これは戦争だ。どう取り繕おうがな」

 

 ()()と分かっているからこそ、当のクー・フーリンは、役割を全うするように()()()()()()()()()

 

「戦場での理は"強き者"こそが敷くモンだ。何を成そうが、な。そして、俺はお前よりも強い。そういうことだ」

 

 冷たくあしらった彼は、己が武器に魔力を込め、直後、魔槍に緋色が迸る。

 

「蠢動しろ、死棘の魔槍」

 

「くっ……────全解放『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』!!」

 

 チャクラムさながらの円盤状の斬撃が煌めき、それがクー・フーリンへと襲い掛かる。

『羅刹を穿つ不滅』、それは魔王ラーヴァナをも倒す不滅の刃。だが、魔力も体力も限界に近いがために、放たれたそれは容易にクー・フーリンに弾かれた。

 

「今のお前じゃ、これが限度だ────『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』ッ!」

 

 カウンターに放たれたは、暴虐的な一投。腕一本の神経の全てが千切れる程の力で投擲される、魔槍の一撃。

 

「……がああああああああああああッ!!」

 

 必殺の破壊力を持った緋色は、寸分違わずラーマの胸部に命中し、心臓の実に八割を抉った。だというのに、彼は即死に至らず。

 

「────まだ耐えんのか。俺並みの往生際の悪さだな」

 

 面倒なモンだな、サーヴァントってやつは、などと口にするクー・フーリンだが、特に大きな驚きもなく。

 

「負け……て、たま……るか……。シータと……巡り……会う……までは……!」

 

 弱々しくも、熱の篭った呟き。それを耳にしたクー・フーリンは、ラーマにトドメをさすでもなく、己が前方に視線を向けた。

 

 そこには、この時代にそぐわぬモノがいた。

 

「サーヴァント反応を確認。対処します」

 

 金属の奏でる駆動音を響かせる体躯。青と黄を基調としたフレーム。右腕そのものがマシンガンに置き換えられた人型兵器"機械化歩兵"。それが複数。

 ケルトの"名も無き戦士たち"という無尽蔵のリソースに対抗すべく、とある獅子頭によって大量生産された機械の軍勢である。

 

「西部の歩兵共か」

 

 事もなさげなクー・フーリンに対し、機械化歩兵達は一斉に銃口を向け、射撃、射撃、射撃。

 弾丸の雨に晒される彼だが、しかしサーヴァントは単なる銃撃でどうにかなる存在ではない。

 

「温ィな!」

 

 自身に迫る鉛玉を魔槍で的確に落とし、弾き、切り裂く。それを行いながら疾風の如く駆け、一体、また一体と機械化歩兵を破壊していくクー・フーリン。

 

 サーヴァントの前では機械化歩兵は無力に等しい。だったとしても、英霊一人の足止めにしては十分過ぎる。

 クー・フーリンが機械化歩兵を破壊している最中に、ライフルを担いだ人間の兵士達が続々と戦場に姿を現す。

 

 そうして機械化歩兵と人間の混成部隊は完成し、そしてそれはラーマを逃がすためのものであった。

 

「ン、増援か。戦力の逐次投入は愚策だって知らねえのか」

 

 嘲笑するように吐き捨てたクー・フーリンは、己がゲッシュに抵触しないよう機械化歩兵の破壊にのみ注力する。

 一方、戦場にエネミーが出現したことにより、クー・フーリンの背後に控えていた"名も無き戦士たち"が一斉に起動し、戦場に猛進していく。

 

「これは……一体……?」

 

「いいから来い! あいつらが争っている内に逃げるぞ……!」

 

「あなた、は……」

 

 いきなりの状況の変化に困惑するラーマ。そんな彼に肩を貸す色黒の男性。

 

「ジェロニモ、行け! ここは我々が食い止める!」

 

「……すまん!」

 

 ライフルを構える一人の兵士に声を掛けられた、その男性────キャスターのサーヴァント『ジェロニモ』は、死に行く勇敢な戦士達のためにもとラーマを連れて戦線を離脱していく。

 

「我々は……負けん……。この大地は……決して屈さない……!」

 

 ジェロニモの背を守るように、或いは鼓舞するように、構えたライフルで"名も無き戦士たち"を狙い撃ち続ける兵士達。

 死出の覚悟を持った彼らは、その命尽きる瞬間まで抵抗を続けた。が、彼らもまた荒野に積み上げられた骸と成った。

 

 

 

 然して、その想いは繋がり行く。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 北米の東部にある森林。そこに、唐突に眩い光が生じ、そして収まる。

 すると、数瞬前までは存在していなかった二つの人影が、そこにはあった。

 

「……ふう。レイシフト、無事完了ですね先輩。1783年のアメリカ────のどこかの森ですね」

 

 人影の一つである、薄紫色のショートヘアーで右目が隠れた、大盾を持つ少女────マシュ・キリエライトは、この特異点へ共にダイブしてきた己がマスターへと声をかける。

 

「アメリカのどこか、かぁ……。まあ、出会い頭にワイバーンがいるよりかはマシだね」

 

 彼女に対して苦笑を以って答えた、もう一人の影。空色の瞳に黒髪を持つ、平凡ながらも芯の通った青年────藤丸立香は、周囲に敵性生物がいないか、視線を巡らせていた。

 

 人理修復の旅路、それは熾烈なものであった。

 

 全ての始まり────炎上汚染都市冬木。

 

 事象に巻き込まれた藤丸立香と、デミ・サーヴァントと成ったマシュ・キリエライトは、未曾有の事実────人理焼却を突き付けられる。

 更に、同行していたカルデア所長オルガマリー・アニムスフィアが目の前で死に行く様を目にしてしまう。

 

 これを通じて、カルデアは人類唯一の生き残りとして人理焼却に抗い、藤丸立香という一般人は、世界を救うという膨大な使命を背負うこととなった。

 

 第一特異点────邪竜百年戦争オルレアン。

 

 舞台はフランス。そこには、二人のジャンヌ・ダルクが存在していた。

 自身を殺した国を滅ぼすべく、聖杯によって呼び出した英霊や竜種を統べし"竜の魔女"。

 そして、自身が処刑されて尚、国のため、人のために、もう一人のジャンヌの凶行を阻まんとする"聖処女"。

 

 このフランスでの凄惨な出来事は、たった一人の男が「そうあれかし」と願った結果であった。

 

『何を好きになり、何を尊いと思い、何を邪悪と思うか。それは君が決めることだ』

 

『僕達は多くのものを知り、多くの景色を見る。そうやって君の人生は充実していく』

 

『いいかい? 君が世界を作るんじゃない、世界が君を作るんだ』

 

 人間とは何か。自らの人生観を語った音楽家の言葉は、胸の内に確かに刻まれた。

 

 第二特異点────永続狂気帝国セプテム。

 

 ローマの地で争う二つの軍勢があった。一つは、人間であるネロ・クラウディウスが率いるローマ軍。もう一つは、英霊となったカリギュラやカエサル、ロムルスが率いる連合帝国。

 ネロの側に味方した藤丸達は、共に過去のローマ皇帝達を打倒していく。その最中で葛藤するネロと接し、皇帝とはいえ、彼女も一人の人間であることを、藤丸達は理解した。

 

『連合の下にいる民を見よ。兵を見よ。皆、誰ひとり笑っていない! いかに完璧な統治であろうと、笑い声のない国があってたまるものか!』

 

 人に笑みがないことは間違いであると断じた薔薇の皇帝。その信条は、然とその心に根付いた。

 

 第三特異点────封鎖終局四海オケアノス。

 

 陸地がほとんど無い大海原。そこで出会ったのは、無敵艦隊を破った嵐の航海者フランシス・ドレイク。

 彼女の船に乗った藤丸達は、もう一人の海賊エドワード・ティーチや、イアソン率いるアルゴノーツらと戦闘を繰り広げた。

 

『悪人が善行を成し、善人が悪行を成すこともある。それが人間だ、それが私達だ。だから、望みは誰にでもあるんだよ』

 

 矛盾した人の在り方や願望を、嵐の航海者は示した。それに従って生きた彼女の姿が、瞼の裏に焼き付いた。

 

 第四特異点────死界魔霧都市ロンドン。

 

 1888年のイギリス、ロンドン。謎の霧に包まれた街で邂逅を果たしたは、叛逆の騎士モードレッド。

 更にアンデルセンやシェイクスピア、ジキルなどを仲間として率い、魔の霧が煙るロンドンを探索した。

 

 そして相見える────魔術王を名乗る存在。

 

『なぜ戦う。いずれ終わる命、もう終わった命と知ってなぜ、まだ生き続けようとする。お前達の未来には、何一つ救いはないと気付きながら』

 

 人理焼却を行った魔術王ソロモン。彼の圧倒的な力の前に、敗北を喫する藤丸達だったが、自分達が立ち向かう敵の存在を、明確に知ることとなった。

 

 そして、五回目になる今回のレイシフト先は、1783年のアメリカ。この時代のアメリカに、まだアメリカ合衆国という国は生まれていない。

 この年に終結するイギリスとの独立戦争を経て、アメリカは国家として成立し、その後は世界の覇権を握るべく、合理的に突き進む怪物的な国家となっていく。

 

 そのため、歴史的に見ても重要なポジションにある国だ。そのようなアメリカに特異点が観測された。

 如何なる変化がもたらされているのか、特異点に至らしめている原因は何なのか、此度の強敵はどのような存在なのか。

 

 五回目とはいえ決して慣れない緊張と不安に、藤丸の心臓の鼓動は僅かに早鐘を打っていた。

 

 不意に、藤丸の右手首に付けられた通信機から音が鳴り、青白いホログラムが映し出される。お馴染みのDr.ロマンことロマニ・アーキマンだ。

 

『すまない、着いてそうそう緊急事態だ! その先の荒野で、大規模な戦闘が発生している! 詳細はわからないが急いでくれ! これはちょっと、普通の戦いじゃないぞ!?』

 

 焦りを隠さずに告げるロマン。発せられた戦闘というフレーズが、否応なしに藤丸達の顔を強張らせる。

 

「────マシュ!」

 

「はい! 行きましょう、マスター!」

 

 そうして二人は駆け出し、ロマンの指示に従って荒野へと向かう。

 

 

 

 ◆

 

 

 

(────うぅん……あれ、オレ、何で寝て……えっと、あれからどうなったんだっけ)

 

 謎の倦怠感と頭痛に顔を歪めつつ、藤丸は今、自身の意識と記憶を水底からサルベージしていた。

 

 ロマンの指示に従い、戦場へと駆けた藤丸とマシュ。彼らが目にしたのは、銃を手にした人間、ミニバベッジ(違)、そして筋骨隆々な戦士が入り乱れて争う場面だった。

 

 状況を把握する前に、何故か双方の陣営から攻撃を仕掛けられる藤丸達。応戦するが、不意に藤丸はマシュの叫びを耳にし────

 

「患者ナンバー99、重傷。右腕の負傷は激しく、切断が望ましい」

 

(………………うん?)

 

 意識が覚醒する前に、藤丸の耳に流れ込んでくる、女性の物騒な言葉。

 明らかに彼へと向けられたソレの内容に、藤丸は、まさかそんな大怪我をしたのかと戦慄する。

 

「ここも……駄目でしょうね。左大腿部損壊。生きているのが奇跡的です。やはり切断しかないでしょう」

 

(────!?)

 

「右脇腹が抉れていますが、これは負傷した臓器を摘出して、縫合すれば問題ないはず」

 

(────!?!?!?!?)

 

 初手、困惑の極みである。

 

「大丈夫です、それでも生きられます。少なくとも、他の負傷者よりは遥かにマシです。あと二百年もすれば、高性能の義手も出てきます……気長すぎますか────さて、では切断のお時間です」

 

「ちょっと待って待って待って!」

 

 身の危険を感じ取り、即座に起床する藤丸。だが、そんなこと関係ないとばかりに、赤い衣服に身を包んだ女性は治療を施そうとする。

 

「本来なら医者の仕事ですが、何しろ軍医が絶望的に足りないので私が代行します。歯を食い縛って下さい、多分ちょっと痛いです。そうですね、例えるなら……腕をズバッとやってしまうくらいに痛いです」

 

「そのまんまじゃないですかっ!?」

 

「我が侭を言ってはダメです。少なくとも、死ぬよりはマシでしょう?」

 

 目付きがマジな女性に物理的に迫られ、たじろぐ藤丸。そこまで自分は重傷なのかと自らの身体を確認するが、特に目立った負傷は見当たらず。

 

「大丈夫、貴方はまだ若い。これくらいなら耐えられるはずです……いえ、訂正します。何としても耐えなさい」

 

「もう何が何でも切りたいんですね!?」

 

 聞く耳持たずの自称軍医の女性に、藤丸は隠すことなく焦り散らしていた。

 

「……そこ。治療中に不衛生な状態で割り込まないで下さい!」

 

 万事休すと嘆きかけたその時、助けに現れたは頼れる後輩。

 女性と藤丸との間に割り込んで来たマシュは、制止するよう呼びかける。

 

「待ってくださーい! ストップ! その人は違うんです!」

 

「患者は平等です。二等兵だろうが大佐だろうが、負傷者は負傷者。誰であろうと、可能な限り救います。そのためには、衛生観念を正すことが必要なのです。いいですね? そこを一歩でも踏み込めば撃ちますから」

 

「ふ、踏み込んではいませんが!?」

 

「踏み込みそうな目をしました」

 

 言っていることは正しいが、やってることが滅茶苦茶な女性に対し、「あ、この人たぶんバーサーカーの英霊だ」と察する藤丸だった。

 

 少し間を置いて、藤丸達は現状の把握に努めていた。

 

 まず、藤丸が気を失った理由についてだが、それは、砲弾と榴弾の直撃を食らったからであった。

 戦場へと駆けた藤丸達は、訳も分からないままに応戦していたが、戦場で混乱している者などいい的でしかない。

 その結果、着弾に巻き込まれた藤丸は吹き飛んだ。それを叫びとともに目にしたマシュ曰く、実に見事なきりもみ回転だったそうな。

 

 そうして、藤丸は野戦病院に連れ込まれた。そこで患者達に治療を施していたのは、赤い衣服に身を包んだ女性────クリミアの天使こと、フローレンス・ナイチンゲールであった。

 ナイチンゲールは、殺してでも治療する、という滅茶苦茶な信念の下に、負傷者に全力で治療を施していた。

 

 件の争い、その情報も断片的ながら得た。人間と機械の歩兵の軍勢は、この時代のアメリカ軍であるが、その相手方の正体は不明。少なくとも、イギリス軍でないことだけは確かだ。

 相手が誰であれ、アメリカ合衆国という国家を成立させないよう動いているのに、間違いはなかった。

 

「やはり、情報不足が否めないですね」

 

「それは仕方ないよ。でも、オレたちのやる事に変わりはない。召喚されているであろうサーヴァントの皆に、協力を求める」

 

「はいっ、先輩」

 

 力強く頷く藤丸とマシュ。どのような特異点であれ、仲間を得て、解決に尽力する。それに変化はないのだから。

 

 今回の特異点の攻略のためにも、まず、目の前で淡々と治療を施しているナイチンゲールに助力を求める。

 

「私達に協力して下さい。特異点を修正しなければ────」

 

「愚かなことを仰らないで下さい。目の前に患者がいます。私が召喚され、働く理由はそれだけです」

 

 取り付く島もない。ナイチンゲールはマシュに見向きもせずに手を動かしていた。

 感触が悪い。助力は得られそうにないかと思い、藤丸も彼女の説得に乗り出す。

 

「彼ら全てを救う手段があるんです」

 

「……今、なんと?」

 

 まさかの即オチであった。

 

 

 

 ◆




◆補足
Q.最初のアレって、つまりアレよね?
A.あーあ、出会っちまったか(愉悦)。

Q.殺しを許容するとか(偽)ニキのキャラ変わりすぎちゃう?
A.意図してやってる。(偽)ニキは原作を歪めてしまった疲れからか、不幸にも第五特異点に召喚されてしまったので、せめてそこだけでも原作通りに行って欲しいと思ってます。その結果、ゲッシュで人殺しはできないけれど、対外的には人の死を何とも思ってない冷徹無慈悲な戦士、つまりは【オルタ】ほとでないにしろ、カルデアが打倒すべき悪を演じているんですね。はい。

Q.これからも(偽)ニキ視点とかはあるの?
A.あります。というか書かせてください(給水スポット並感)。基本的に、三人称視点では第五特異点を踏襲したストーリー進行、(偽)ニキ視点ではそのバックボーン的なストーリーを描くという構成を思案しています。ので、これからも思考停止脊椎反射トークで語録まみれにしてやるから覚悟しろ。


↓ここから雑談↓


お久しぶりです、texiattoです。最近のFateコンテンツの盛り上がりにウァァ!!オレモイッチャウゥゥゥ!!!ウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!イィィイィィィイイイィイイイイイイイイイイイイ!!となった私です。FGOのOP2ヤバない?新規鯖も然る事乍ら、言峰(デカチン)と士郎(村正)の共闘シーンで「エモッ!」ってなるでしょなるなる。そして水着イベでは『コンプライアンス』が『コンプライアンス』を着てるし、アビーおるし、紫式部おるし、とりあえず皆エッッッッッッ。キャストリアはぶっ壊れててあたおかだけど、ヴィッチの攻撃をレジストできる点が伏線過ぎる。更にHFⅢ章は早速観てきたんだけど……ウァァ!!オレモイッチャウゥゥゥ!!!ウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!イィィイィィィイイイィイイイイイイイイイイイイ!!(激情の発露)
はい。今回は、第五特異点のアバンタイトルに沿った内容となりました。冒頭にアイツ来ちゃったなぁ……(愉悦)。そして、アイツは更なる進化(?)を遂げているので、割とマジで台風の目になる予定です。パワーバランスやばすぎて頭おかしなるで。ストーリー進行としては、ケルト勢鯖の参加によって多少の変化はありますが、概ね、原作通りに進ませるつもりです。
次回の投稿は、早くとも一ヶ月後だと思いますので、気長に待っていただければ幸いです。というかマジで書くの時間かかるんすよね。私の場合、ネタ出し&構想(2〜3週間)、執筆(1〜2週間)、前書き&後書き(15分)みたいな配分なので、めちゃくちゃ時間かかるんすよね、はい。時間の使い方下手くそやなって思います。という訳で、次回もめちゃくちゃに首を長くして待ってて♡





















アンキア尊い……シグブリュ宝具カットイン尊い……水着巴の鼠径部エチチチチチ……やっぱ水着イベを……最高やな!

それはそれとして、はやくドラリンとクロニクル再販して(懇願)。

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