転生クー・フーリンは本家クー・フーリンになりたかっただけなのに。   作:texiatto

34 / 37
久しぶりの投稿なので初投稿です。


星の欠片:三人称視点

 ◆

 

 

 

 藤丸達がフィン、ディルムッドと戦闘を繰り広げていた頃、北米にある、とある街に場面は移る。

 

「グリーン、弾切れ。援護お願い」

 

 "名も無き戦士たち"の侵攻によって廃墟と化した街で、その外敵に抗う人影がふたつ。

 

 片や、小柄で青い瞳を持った金髪の青年。西部劇のガンマンのような格好をし、右手にはトレードマークのリボルバーが握られている。

 片や、橙色の髪と翡翠のような瞳を持った痩躯の男性。深緑のマントと服装に身を包んでおり、右腕に備えたボウガンを構えている。

 

「あいよ。……ところでオタク。グリーンはないんじゃないの、グリーンは」

 

「だって僕も君もアーチャーじゃないか。だとしたら、真名で呼び合うかコードネームでなきゃ。でも、真名はお互いに嫌だろ? 何となく、アウトロー的にさ」

 

 圧倒的な数の差がありながら、たった二人で戦う。その戦法は言うまでもなく、ゲリラ戦。

 遮蔽物に身を隠し、銃や弓で狙い撃ち、爆薬などで豪快に吹き飛ばす。奇襲、罠、騙し討ち何でもござれ。

 

「俺はアウトローじゃねえですよ。結果的にそうなっただけで、基本はナマケモノみたいなモンなんだけどねぇ」

 

「あれ、動物に例えるならゴリラじゃないの? ドルイドって森の賢人なんでしょ? ならゴリ「グリーンでいい、いやグリーンがいい」」

 

 一見すると絶望的な戦力差だが、それを感じさせぬ二人のやり取り。緊迫感の欠片も感じられない談笑。その傍らで、迫り来る敵を正確に撃ち抜いていた。

 

「で、オタクは何でサンダーなの?」

 

「え、だって格好いいじゃん。サンダー、雷、それに僕の銃だし」

 

 慣れた手つきでリボルバーに弾を込める"サンダー"は、持ち前の笑みを浮かべながら"グリーン"に返答した。

 

「……というかね、この土地とアンタの格好とその銃。真名、大体分かっちまうんだが……それはいいの?」

 

「やだなあ、それはお互い様だよ。ゲリラ戦に特化した、顔なき森の支配者」

 

 互いに苦笑するアーチャー。彼らの真名は非常に有名なものであった。

 

 アメリカ、ウェスタン、リボルバー、サンダー。ここから導き出されるガンマン────ビリー・ザ・キッド。

 ドルイド、顔なき森の支配者。イギリスから世界に広まった伝説の義賊────ロビンフッド。

 

 弓兵のクラスを依代に現界した二人は現在、アメリカ軍でもケルト勢でもない、第三陣営であるレジスタンスに身を置いていた。

 

「顔がないのはいいコトじゃあねぇけどなあ。さて、世間話も済んだところで」

 

「そうだね、済んだところで────どうしよっか、コレ」

 

 ロビンフッドの言葉を引き継いだビリーは、遮蔽物から外へと目を向ける。視界に入ってくるのは、"名も無き戦士たち"の姿。

 

 二人は数の差で勝る相手に対し、見事と称するに値する抗いを見せた。が、それは長くは続かず。

 ロビンフッドとビリーの立て籠っていた建物は、"名も無き戦士たち"に包囲されていた。

 

「前に作っておいた脱出口はどうよ?」

 

「大丈夫、まだ使えるよ。ただ、やっぱり勿体ないよね。かき集めた武器弾薬とか、色々あるのに。……うーん、やっぱり僕達やり過ぎたかな?」

 

「ま、あんだけ派手に破壊工作すれば多少はね。あちらさんにはサーヴァントこそいないようだが、こっちは接近戦に持ち込まれるとお手上げだし? ……や、コイツはもう運任せ案件ですなあ。旦那が応援に駆けつけてるくることを祈るとしますか」

 

 危機を目前にして、飄々とするロビンフッド。少なからず、廃墟を取り囲まれた段階で厳しい戦いを迫られている。

 それこそ、増援でもない限りは、これ以上の戦闘の勝機は薄い。故に、目的を撤退に切り替えていた。

 

「なんだい、それ。祈りが届いた試し、生前にあった?」

 

「そりゃあ、ありますよ。ただし、いい子にしていればの話だがね。生憎、大人になってからとんと縁が無かったな。その辺、お互い様だろバッドボーイ?」

 

「む、僕を一緒にされると困るよ! 母さんの教えで、僕はちゃんと祈っていたもの」

 

「へいへい、お前さんが心から祈っていれば救われるだろうよ」

 

「んー、片手間な祈りはやっぱダメか。いや、僕も────そうは思っていたんだけどね」

 

 溜息と同時に発砲、発砲、発砲。ビリーの射撃は、"名も無き戦士たち"三人の脳天を連続で撃ち抜いた。

 

「銃をバンバンブッ放しながら祈ってもなあ。銃声が邪魔をして神様には届かねぇ、ときた」

 

 言動が一致していないビリーを見たロビンフッドは、呆れるように肩を竦める。

 すると突然、付近で爆発音が谺した。僅かな大気の振動を伴ったそれに、ロビンフッドは口角を上げる。

 

「おっと、引っ掛かった連中がいたか。ちょっと火ぃ着けてくるわ」

 

 有り合わせで仕掛けて置いたトラップに、"名も無き戦士たち"が掛かったのだ。

 足止めを食らった彼らに対し、更なる追い打ちを仕掛けるべく、ロビンフッドは小走りでその場を後にする。

 

「はいはい、頑張ってねー」

 

 笑顔を浮かべるビリーは、何とも覇気のない声色で彼を見送った。

 そして、一転して眉を顰め、嘆くように一人ごちる。

 

「……しかしやれやれ、いつまで保つかなあ、レジスタンス活動。遅かれ早かれ限界が訪れる。それまでに、ジェロニモが"星"を見つけられればいいのだけど」

 

 ジェロニモ────レジスタンスのリーダーを務めるキャスターのサーヴァント。彼がこの時代の修正の要として呼称し、捜索している"星"。

 それが見つかって漸く、レジスタンス達は現状の打破が叶う。故に、"星"の発見を渇望していた。

 

 何度目かの溜息を吐き、ビリーは眼前の敵を見据えて思考を切り替え────目にも留まらぬ早撃ちで、即座に戦闘不能に追い込んだ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 藤丸達は、襲撃を受けた野戦病院に帰還していた。

 

 フィンとディルムッドによる陽動にまんまと嵌ってしまった彼らだが、駆け付けたレジスタンスのおかげで、最悪の事態は免れた。

 

「ナイチンゲールさん?」

 

「少々お待ち下さい。ドクター・ラッシュに患者に対する一通りの対処法を伝えている最中ですので」

 

 負傷者の治療を終えたナイチンゲールは、ここに派遣されたラッシュへ、自らの治療の知識と技術を説明していた。

 そのようなことをしている理由、それはナイチンゲールがここを離れるからであった。

 

 治せど、癒せど、それを容易に上回る死傷者が毎日のように運び込まれて来る。ナイチンゲールは、それでもと己が存在に賭けて治療を施し続けた。

 しかし、彼女の必死のそれを嘲笑うが如く、死傷者だけが山のように積み重なっていく。

 

 ────彼ら全てを救う手段があるんです。

 

 そのような中で、藤丸からもたらされた一筋の光。縋る、というほど絶望を感じてはいなかったにしろ、ナイチンゲールは当然飛び付いた。

 患部をいくら治療したとて、その原因に対処せねば幾度となく再発してしまう。だからこそ、病巣を取り除くという提案を断るなどある訳がなかったのだ。

 

 そのような経緯があって、ナイチンゲールは野戦病院から出立する────のだが、その前に、彼女には許容できないことがあった。

 

「いいですか? 患部は清潔に、そしてベッドは敷き詰めなさい。本来ならば、絶対に彼らを不潔な地面に寝かせてはなりません。嘔吐剤や瀉血で毒素を吐き出すとか、塩化水銀を飲ませるとか、そういう時代遅れの治療をやったら貴方に治療が必要なほど殴り倒しますので、そのつもりで」

 

「いや、しかし、それは最新の治療で……」

 

 小さな爆発音と、地面に深く突き刺さる鉛玉。ラッシュの反論を、銃声で掻き消す、もとい黙らせるナイチンゲール。

 

「この銃とその治療、どっちが最新ですか? 二度と言わせないで下さい」

 

「わ、分かった! 分かった! 分かりました! ノー・モア・最新銃!」

 

 彼女が許容できないこと。それを端的に言えば、治療の正しい手法が、この時代ではまだ確立していないことだった。

 故に、後世ではタブーな治療法が、最新の医療だとして広まっていたりする。そのような事実は、クリミアの天使が許せるはずもなく。

 

「それから老若男女、人種や身分の区別なく治療するように。区別するべきは、治療が必要な順序だけです。それが守られていない場合、この銃弾は五千キロ離れていようが貴方の眉間を貫きます……いいですね、ベンジャミン・ラッシュ? 患者達はよろしくお願いします」

 

「わ、分かっている。安心したまえ!」

 

 一通りの対処法を教え込んだナイチンゲールは、僅かな微笑みと共にラッシュの前から立ち去った。

 

「行ったか。……しかし、過激だったが立派な看護師だった。この時代に人種の区別もなく、とはなかなか言える言葉ではない」

 

 額から汗を流し、安堵するように息を吐くラッシュ。あまりに一方的な看護師に辟易したものの、彼女の献身的な姿勢には心打たれるものがあった。

 

「ヨーロッパから来たようだが、さぞ名の有る御方なのだろう……拳銃はどうかと思うのだが」

 

 

 

 ◆

 

 

 

「あの……今、銃を撃ちませんでしたか?」

 

「気のせいです、行きましょう」

 

「いえ、気のせいじゃないですよね。今、思いっきり撃ってましたよね」

 

「峰打ちです」

 

「銃に峰とかあったっけ……」

 

 藤丸達へと合流したナイチンゲール。これでようやく特異点攻略の一歩を踏み出す。

 

「お待ちなさいなフローレンス。何処に行くつもりなの?」

 

 が、早々にそれを阻む人影。

 

「軍隊において勝手な行動はそれだけで銃殺ものって知っていて? 今すぐ治療に戻りなさい。さもないと────手荒い懲罰が待ってるかもよ?」

 

「……貴女こそ自分の職場に戻りなさい。私の仕事は何一つ変わりません。この兵士達の根幹治療の手段が見つかりそうなので、それを探りに行くだけです」

 

「そうなの。もっともな理由、ありがとう。でも────バーサーカーのあなたに行かせる訳にはいかないでしょ。戦線が混乱したらどうするのよ」

 

 ナイチンゲールに待ったをかけたのは、若紫のセミロングに、紫水晶のような瞳を持つ小柄な少女。

 

「王様は認めないわよ、絶対に」

 

「……王様? そんな人物に私を止める権利などありません。より効果的な根幹治療の提示があるのなら別ですが」

 

「うわお、やっぱりバーサーカーは話通じないわねえ。どうしたものかしら」

 

 外見からして少女と呼ぶに相応しいが、しかしその身に宿す神秘は規格外。

 

「これまで何度も思想的に衝突してきたし、いい機会だから片付けてしまおうかしら?」

 

「……その発想はエレガントではありませんが、同感です。この先の無駄話が省けます」

 

『あわわ……何か火花が散ってるぞぅ……。何で行動的な女性サーヴァントが揃うと、こう修羅場っぽくなっちゃうんだ!?』

 

「ドクター、落ち着いて! マシュ、仲介を頼む……!」

 

「了解です。自信はありませんが、頑張ります!」

 

 目線で激しく火花を散らす二人の間に割って入る、マシュ。射殺さんばかりの視線に貫かれ、僅かに冷や汗を流す。

 

「お、お話中、失礼しますっ! あなたもサーヴァント……なのですか?」

 

「あなたも? って……まあ! サーヴァントがこんなに! よくってよ!」

 

 ナイチンゲールに向けていたそれとは反対に、キャスターは弾むような笑みを見せる。

 

「ケルトの連中を撃退したと聞いて、まーたフローレンスが一人で暴れたのかと思ったけど……どうやらそうでもなかったようね。これは()()にとってグッドニュースかしら?」

 

 良い掘り出し物を見つけたと言わんばかりにほくほく顔のキャスター。

 一方、藤丸達は、彼女が口にした"王"という単語に疑問符を浮かべる。

 

「あら、アメリカの現状を知らないの? 今この国は二つに分離して絶賛内戦中なの。一つがただ滅ぼすしか能の無い野蛮人、つまり向こう側ね。そしてもう一つが────あたし達の王様が率いる、アメリカ西部合衆国。南北戦争ならぬ、東西戦争という訳よ」

 

「「なっ……!」」

 

 唐突にもたらされた情報に驚愕する藤丸とマシュ。それらが事実ならば、この特異点の原因は確定する。即ち、ケルトという侵略者の存在である。

 

『……なるほど。南北戦争で南部が勝利していれば、というどころではなく。まったく未知の軍勢同士がぶつかり合っている訳か』

 

「厳密に言えば、()()()()()()()()()()のもいるんだけどね」

 

「嵐、ですか?」

 

「ええ。目的も真名も分からなくて、何処からともなく戦場に湧いては暴れて、また何処かへ行くの。だから、嵐」

 

 キャスターは眉を顰めて頭を振る。その様から、実際に目にしたことがあると察することができた。

 そんな彼女の傍らで、マシュは先程から感じていた疑問を素直に口にする。

 

「……あの、失礼ですがレディ。あなたのお名前は、いったい……」

 

「あら。フローレンスは一目で分かって、あたしは分からないの?」

 

「す、すみません……っ! ナイチンゲール女史は、その、とにかく分かりやすかったので……!」

 

 態とらしく不機嫌オーラを醸すキャスターに、申し訳なさそうに弁明するマシュ。そんなマシュの様に満足したのか、キャスターは転じて顔を綻ばせた。

 

「うそうそ。イジワルしてごめんなさい。あたしはエレナ・ペロトヴナ・ブラヴァツキー。世間的にはブラヴァツキー夫人が有名なのかしら」

 

『エレナ・ブラヴァツキー! 十九世紀を代表する女性オカルティストだね! 魔術協会とはあまり関わらず、独自のスタンス、独自の力だけで神秘学を編纂した才女だとか』

 

 魔術師のサーヴァント────エレナ・ブラヴァツキー。概ねはロマニの言葉の通りである。

 特筆すべきことといえば、彼女の特徴的な思想"マハトマ"や"ハイアラキ"といったモノらだろう。

 

 エレナはレムリア大陸という、インド洋に存在したとされる仮想の大陸を信じ、神秘主義に没頭した。

 そして、高次の存在"マハトマ"や、その集合体"ハイアラキ"と接触し、多くの叡智を得たとされる。

 

 そんな彼女は現在、北米軍の副官として、前線で指揮官を務めていた。

 

 マシュの疑問に続けて、藤丸もまた、会話の中で出た情報について質問する。

 

「そういえば、王様とは?」

 

「あら、あなたが此度のマスターなのね。でも残念、あたし達は既に主を定めているの。それが王様」

 

 情報が未だにないため、藤丸は"王様"がマスター、或いはそれに近しい人物なのだろうと予測した。

 

 とにかく、藤丸達は特異点の修復のためにも、エレナと共闘したいという考えを抱く。だが、続くエレナの言葉で、その考えに亀裂が走る。

 

「彼が世界を制覇すれば、それはそれで問題ないわ。恐らく、どこの次元からも分離した失われた大陸(レムリア)となって、彷徨い続けるのでしょう。英霊の座みたいなものよ。これはこれで、救いがある結末だと思わない?」

 

 柔和な笑みを向けるエレナは、結末はそれなりに良いものだと語る。

 

 噛み砕いて言えば、"王様"がケルトを駆逐したのなら、この北米の地は修正されるのではなく、全く別の世界となる。

 これまでの歴史とは分離し、何処にも属さぬ大陸と化す。そうなれば、その世界こそが新たな歪みとして観測されることだろう。

 

 それでは駄目だ。何の解決にもならない。その場凌ぎにしかなり得ない。

 焼却された人理を取り戻すという目的を持つカルデアにとって、この事実は許容できるものではなかった。

 

「────そんなもの、治療とは認めません。悪い部分を切断してそれで済まそうなど、言語道断です」

 

「……まあ、あなたはそう言うと思ったけど。そちらはどうかしら?」

 

「……それは、根本的な解決にはならないと思います」

 

「あら、そう」

 

 兵力が慢性的に不足している西部合衆国側としては、サーヴァントを複数抱えている藤丸達を欲していた。

 だからこそ、藤丸から勧誘を拒否されたエレナは、隠すことなく口惜しそうにする。

 

「……コホン。じゃあ、あなた達はフローレンスを連れてどこへ行くの?」

 

 勧誘から詰問に変質したエレナの言葉に、マシュが答える。

 

「……この世界の崩壊を防ぐために、その原因を取り除くつもりです」

 

「そう。それじゃ、あなた達はあたしの敵ということになるかしら」

 

「違います、そうと決まった訳ではありません。ですから、ここは引いて頂けないでしょうか……? ナイチンゲールさんは、味方としてこの場を離れるだけなのです」

 

「ふーん。ちゃんとフローレンスの意図を汲める子なんだ。そこはちょっと安心したけど、そういう訳にもいかないのが困りものよねぇ」

 

 何とか敵対を避けたい。そんな思いでマシュは説得を試みるも、エレナは理解を表さず。

 

 会話に空白が生まれる。それを見計らったナイチンゲールは、藤丸とマシュの腕を掴んで引き摺る。

 

「話は終わりましたね。では出発しましょう、ミスター・藤丸。一刻も早く、一秒でも早く、この戦争を治療するのです」

 

「えっ、あのっ」

 

「ちょっ、ちょっと待って……!」

 

 耳を傾けず、エレナに背を向けて歩き出すナイチンゲール。そんな彼女の行く手を、ミニバベッジこと機械化歩兵が立ち塞がった。

 藤丸達は機械化歩兵を見やり、そしてエレナへと視線を移す。と、彼女は溜息を吐き、遺憾の意を示した。

 

「あーあ、仕方ないか。こちらも虎の子を呼び出さないといけないわ────機械化歩兵、前に出なさい!」

 

 指示に呼応して三十体の機械化歩兵達が駆動し、藤丸達の眼前に立ち並ぶ。

 

「先程の量産型バベッジさん……!」

 

「あら、ミスタ・バベッジに遭遇したの? ……ああ、そっか。彼は敗れたのね。でも、こちらは敗北などしないわ。だって王様が()()()()()()()()()()()()んだもの」

 

 バベッジは宝具と聖杯の力を借り、己が分身を生み出した。だが、北米にいるそれらは科学の力で大量生産を可能とした。

 生産の過程の違い。その結果として、機械化歩兵はサーヴァント相手でも、一方的に破壊されるデコイには成り果てなかった。正しく魔改造である。

 

 これを行った"王様"曰く、『蒸気より電動の方がいいに決まっているだろ、馬鹿者!』とのこと。

 

「……やるしかありません! マスター!」

 

「うん、強引にでも押し通る!」

 

 藤丸の素早い決断力、否、胆力。幾度もの経験により、こればかりが一人前に身に付いてしまった。

 それを用い、即座に指示を飛ばす。戦いにおける刹那が命取りになると、経験則に基づいて理解していたからだった。

 

「────ターゲット指定、完了。対処します」

 

「マシュ……!」

 

 無機質な音声と共に、機械化歩兵達がその銃口を目標に向け────間髪入れずに射撃、射撃、射撃。

 瞬間、マシュは藤丸とナイチンゲールの前へと躍り出、大盾で鉛色の雨を防ぐ。

 

「婦長ッ!」

 

 瞬間、大盾の影からナイチンゲールが駆け出す。直前に藤丸から強化を受けた彼女の脚は即座に距離を詰め、一体の機械化歩兵に拳を振り上げる。

 

「処置します!」

 

 単なる拳だが、サーヴァントのスペックで繰り出されたそれは、容易に機械化歩兵の鋼鉄の胴体をひしゃげさせ、吹き飛ばした。

 そして、ナイチンゲールに殴り飛ばされた機械化歩兵は、後方にいた三体を巻き込んで倒れ込む。

 

 ターゲットが分散したことに反応した機械化歩兵は半数に別れ、各個撃破を狙う。

 

「阻むのなら、力ずくで進むのみです!」

 

 ナイチンゲールは銃口が自身へ向く前に、結束手榴弾を取り出し、倒れた機械化歩兵に投げつけた。即座に爆発が巻き起こり、四体の機械化歩兵が残骸と化す。

 それを背後に彼女は地を蹴り、機械化歩兵の懐へと飛び込む。武器腕という取り回しの悪い武装ならば、接近戦を仕掛けた方が有利だ。

 

「切除ッ!」

 

 ナイチンゲールは機械化歩兵の武器腕を両手で掴むと、掛け声と共に捻り切った。

 

『ええっ!? 機械を捻り切るとか、トンデモないことをしてるぞ!?』

 

 驚愕を露わにするロマニの傍らで、彼女は腕を奪った機械化歩兵を盾として活用し、銃撃の最中を更に突き進む。

 そうして、銃弾に晒された機械化歩兵が爆発四散する頃には、ナイチンゲールは既に別のエネミーの懐に潜り込んでいた。

 

 接敵と同時に攻撃手段を奪い、機械化歩兵を盾として利用し、また接敵。

 これを繰り返すことにより、ナイチンゲールは無傷で次々と機械化歩兵を破壊していく。

 

(婦長は大丈夫そうだ……! でも、気は抜かないッ)

 

 彼女の無双ぶりを確認した藤丸は、自身が戦闘の足枷にならないよう距離を取り、そしてマシュへのサポートに注力する。

 

「はぁぁ……!」

 

 一方のマシュもまた、大盾で銃弾を受けつつ突貫する。ただし、ナイチンゲールほどの筋力はないため、主に大盾で機械化歩兵を叩き潰すことで対処していた。

 

 機械化歩兵の一体に接近したマシュは、そのまま大盾でバッシュを見舞い、体勢が崩れたのを視認してから跳躍。

 空中にいる間も銃撃に晒されるが、大盾を重心に置いて器用に身を捻り躱す。落下と同時に大盾で叩き付け、機械化歩兵を粉砕する。

 

 マシュの着地を狙った機械化歩兵達が、装填した榴弾を一斉に撃ち出す。

 刹那の硬直により回避が困難なそれを、マシュは大盾から手を放し、弾丸を掠めながら地を蹴って離脱。

 爆風でバランスを崩しつつも機械化歩兵へと接近し、全体重を乗せた蹴りで吹き飛ばす。

 

「マシュ!」

 

 再び銃口を向けられたマシュ。今は大盾を手放していることから、撃たれればただでは済まない。

 それを視界に収めた藤丸は、治癒と共に強化の魔術を行使した。

 

「っ! 感謝します、マスター!」

 

 強化された脚力により、マシュは一度の跳躍のみで大盾まで戻り、すぐさま構えた。

 

 そこからは、藤丸とマシュの阿吽の呼吸によって、巧みに機械化歩兵を破壊していく。

 目立った動きや珍妙な策は一切介在していない、互いの純粋な信頼によって成立しているコンビネーションであった。

 

 そうして、五分と経たずに三十体の機械化歩兵は全滅した。藤丸達は互いの無事を確認し、脱出を図る。

 

「あら、結構頑張るじゃない」

 

 そんな彼らの背後で、エレナは余裕を包含した笑みを浮かべ。機械化歩兵を破壊されたというのに、焦りは微塵も見せず。

 

「でも、これで終わり────じゃ、()()()! ちゃっちゃとやっちゃってー!」

 

「え……?」

 

 まるで挨拶をするような気安さで、余裕の理由が開示される。途端、身の毛のよだつ重圧に襲われる藤丸達。

 

「……出番か。心得た」

 

 耳通りの良い男の声。それがこの重圧の発生源であることを感じ取る。

 

『サーヴァント反応、君達の直上! 強引に転移させるなんて、令呪なのか!? この霊基数値、トップクラスのサーヴァントだ!』

 

「そんな……!?」

 

 藤丸達は視線を上げ、空から鷹揚に舞い降りるサーヴァントを目にした。

 

 黄金の鎧を身に纏い、胸部に埋め込まれた赤い石が特徴的な絶世の美男子。鋭い目付きと幽鬼のような白い肌は、冷酷さを放つ。

 右手に持った得物────太陽を象った黄金の槍は、彼がランサーのクラスであることを示していた。

 

 その真名を────カルナ。インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する、施しの英雄である。人間の姫クンティーと太陽神スーリヤとの間に生を受け、多くの寵愛と誠実さを示されつつも無用の存在として川に流された。

 生まれた経緯は不幸であったが、しかし彼は弱き者達の生と価値を問う機会に恵まれたため、「父の威光を汚さず、報いてくれた人々に恥じる事なく生きる」という信念が形成されていき、成長するに連れて武芸の才を顕にしていった。

 そうして、生涯のライバルにして血を分けし兄弟と邂逅し、激闘を繰り広げ、自らの出自を知り、数々の策略によって破滅の運命を辿っていく。

 

 カルナは正しく半神半人の戦士であり、身に付し武芸、誠実な人格、何一つ取ったとしても英雄である。

 そのような彼が、今、藤丸達の眼前に降り立ち、敵としてその力を振るわんと見据えている。

 

「悪いけど、捕まえちゃってくれないかしらー? 一応ほら、敵に回るみたいだし」

 

「その不誠実な憶測に従おう。異邦からの客人よ、手荒い歓迎だが悪く思うな」

 

 カルナはエレナの指示に恭順の意を示した。藤丸達は、カルナという英雄中の英雄を相手に焦燥感に駆られる。

 戦闘能力は未知数、しかし練磨された武人特有の気配は、藤丸とマシュが感じてきたもののどれよりも強力であった。

 故に、どのような攻撃が来るのかと身構え、如何なるものであれ対応してみせようと精神を強く持つ。

 

「────『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』!」

 

 その初撃は、目から照射されたビーム。あまりに予想外のものであった。

 

 

 

 ◆




◆補足
Q.藤丸くん決断はやいっすね。
A.一般人なら経験しないはずの修羅場を何度も乗り越え、出会いと別れを繰り返し、やっと脚の震えを抑えることには慣れてきた。確かそんな感じのことを、藤丸くんを演じたガーチャーが言ってたと思うので、それを軸に置いた結果となります(オタク)。

Q.今回のお話の中でオリジナルの要素あった?
A.一応あった。エレナの勢力説明のところで新規さんがいらっしゃった。誰なんやろなぁ(白目)。


↓ここから雑談↓


お久しぶりです、texiattoです。最近はある程度時間の余裕ができてきて、小説を書くぞー!とかいうケツイに満たされてたんですけど、兄者から誘われて始めた原神がもう面白くて時間泥棒なんですよねー(迫真)。クレー引けました(轟破天隙有自分語)。
今回は『第3節:星の欠片』をお送りしました。内容的には原作とほぼ変わりないのですが、一部分だけ異なってたりします。でも間違い探しレベルのアレなので、いやーキツいっす。やっぱりストーリーの序盤となると、大きな変化を出していくのが、中々、難しいねんな。なので、序盤は小さなオリジナル要素を所々に紛れ込ませる程度になると思います。許して(焼き土下座)。
次回は『第4節:キング・オブ・プレジデント』を投稿予定です。できるだけ早めに書くんで首を長くして待っていただければ幸いです。それでは、また次回!





















ヘブフォとバトライ死ね(純然たる殺意)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。