ある日の星が見える夜、美竹蘭はバンド練から帰る途中の公園で氷川日菜の姿を見る。しかし、その様子はどこかいつもとは違うように感じられ、蘭は少しの心配を胸に日菜の元へと歩み寄った。

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日菜蘭なんていうマイナーカプ推しでssをしらべてもあまり出てこないものですから、それなら自分が書いたらいいやというなんとも簡易な気持ちで書いております。とはいえ書くからには真剣なのでよろしくお願いします。
日菜蘭を受け付けられない方はご遠慮下さい。


夜と星、それと花。

夜道、とは言っても午後7時のまだ夕の明るみが少し残る道を美竹蘭はバンド練の帰路として歩いていた。まだ少しのこる春の肌寒さを感じながら歩く。そんな時、小さな公園の滑り台の上、見覚えのある人を見つけた。

 

「あ、日菜さん…」

 

だが、どこか日菜さんもとい氷川日菜の様子がよろしくないようで、蘭もそれを察して公園の中へと進路を変更する。日菜もそれに気付いたのか蘭の姿を見つけると少し驚いた顔をした。

 

「蘭ちゃん、どうしたの?こんなとこで」

 

「今帰宅途中だったんですよ。バンド練が終わるの少し遅かったので」

 

「そっか」

 

「そうですね」

 

「日菜さんはどうしたんですか」

 

蘭は少し戸惑ったような声で聞いた。いつもの日菜のように元気が弾けるような様子ではなかったからだ。羽丘ではそれなりに奇人天才として知られ、しばしその言動も直で目の当たりにすることのある蘭だからこそ抱いた違和感なのかもしれない。

ただ、その違和感はどうやら正しかったのか、日菜はすぐに答えようとはしなかった。日菜がすぐに答えないということは何かしらあるのだろうと、なんとなく蘭にも分かった。

 

「…日菜さん?」

 

「うーん、蘭ちゃん」

 

「あ、はい」

 

「つぐちゃんに彼女がいるの知ってる?」

 

つぐちゃん、つまり羽沢つぐみにはどうやら彼女がいるらしい。というのも有名な話で、蘭もそのことは知っていた。当然、それが誰かもだ。

 

「紗夜さん、ですよね」

 

そしてここまで言って、一つ蘭は気が付いたことがある。日菜が悩んでいるのは恋愛のことであるということだ。しかも嫌な予感もしていた。

 

「そうなんだよね。あたしそれ知らなくってさ、無知にもお姉ちゃんに告白しちゃったんだよね」

 

「結果はもう、大丈夫です。なんとなく察しました」

 

「ありがと…」

 

蘭の予感は的中。しかも日菜は体育座りをして顔を腕に埋めてしまった。余程に心的ダメージが大きかったことが分かる。

そして、蘭は蘭でどうしようも出来ない。置いていくには冷たすぎるし、慰めるには無責任が過ぎる。

それでも蘭は優しかった。

 

「あの、慰めるとかそんなことは出来ないですけど、愚痴とかぐらいなら聞きますよ」

 

日菜はそれを聞いて蘭の方へと視線を寄せる。そして少しの微笑みの後、埋めていた顔を上げて空へと向ける。

 

「ねぇあの星見てよ」

 

「…どれ、ですか?」

 

蘭は戸惑いつつも日菜に従った。それが彼女の気持ちを楽にするなら、という少しの慈悲と共に。

 

「まぁどれでもいいんだけどさ、あの星たちってあたし達が100年歩き続けても辿り着かないような場所にあってさ」

 

「はい」

 

「だから、こんなことちっぽけに思えて、なんだかもうどうでもよくなってきちゃったや!」

 

日菜は持ち前の元気を取り戻したかのように振る舞う。しかし、その振りを蘭は見逃さなかった。というよりも見逃せなかった。

 

「じゃあ、日菜さんはなんで涙を流しているんですか?」

 

蘭は少し悲しそうな目で日菜を見た。日菜は当然笑って誤魔化そうとする。しかし、なぜか蘭にはそれが許せなかった。

 

「あたしに嘘をつこうが別に気にしません。というか日菜さんはそんなことするような人じゃないし。だけど、自分の気持ちには嘘をつこうとしないで下さい」

 

日菜は震えた。より一層に涙が溢れ出した。とうとう日菜には涙を堪える気力も空元気も失われてしまったようで、声を上げながら、夜の公園で泣きじゃくった。

 

「胸ぐらいなら貸しますよ」

 

そして、日菜は蘭の胸の中で調子も変わらずに泣いた。蘭はそんな日菜の背中をさすってただただ何も言わずに星を見上げた。そして、少なくとも五分はそれが続いた。

 

「日菜さん、すごい泣きましたね」

 

お陰で蘭の胸元辺りは日菜の涙で濡れていた。日菜はそれを見ると照れたように笑って謝った。

 

「けど、蘭ちゃんがいなかったらあたしきっと途方に暮れてたよ。ありがとね」

 

「べ、別にあたしじゃなくてもこうしてましたし、なんなら彩さんとかの方が」

 

「ううん、蘭ちゃんだから良かったんだよ。きっと」

 

「だから、照れなくていいよ。ありがとう」

 

日菜は蘭の頭を撫でた。一人っ子の蘭には頭を撫でて褒められる、なんてことは久しく、ただただ恥ずかしいはずだ。だが、蘭の顔に映るのは恥ずかしさだけではなかった。

 

「ありがとう、ございます…」

 

そこには嬉しさも映っていたのだ。それは蘭も自覚をしていた。しかし、きっと幼馴染達に同じことをされていたとしても嬉しがるのは稀であろう。だからこそ、蘭は自身の気持ちに気付く。

 

「日菜…さん」

 

「ん?なぁに?」

 

「いや、なんでもありません」

 

「あははっ、変なのー」

 

「それよりもう帰りませんか?」

 

「そっか、もう暗いもんね。帰ろっか」

 

日菜と蘭は立ち上がり、公園を出て、閑静な道を歩く。時折走る車の音を聞きながら、街灯で二つの影が伸びる。そして、片方の影から手が伸びて、そっと音もなく影が重なる。どちらの影かはわからない。ただその影は重なって、伸びて、やがて暗闇に溶けた。

街路樹の端、小さな名も知らぬ花が風で揺れた。

 

 

 




結構短く仕上がったと思います。書きたいことは書きつつ、みなさんにも読みやすいようにできたと思います。なんせ短編小説なので。
どうでしたか?日菜蘭は。マイナーカプではあると思いますが、それでも少しでもいいなと思ってくれた方がいたら幸いです。
また、百合ssは書こうと思います。多分さよつぐです。
ではまた。

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