人間じゃないけど魔法学校に入学します!! 作:狛犬
○●○
いつもよりも少し遅い時間、寝ぼけ眼を覚ましたのは大量の教科書と荷物、白いフクロウ。
ぼやけた視界に映るそれを見てハリーは顔を明るくした。
「‥‥‥やっぱり夢じゃないんだ。」
噛みしめるようにそう呟くと、眼鏡をかけて伸びをする。カーテンの隙間からベッドに注がれる暖かな陽光が、外で跳ね踊る鳥たちの鳴き声が、今の彼にはちょっぴり優しく感じられた。
ダーズリ一家での一か月間は、ハリーとって楽しいものでは無いが、決して悪い事ばかりというわけでも無かった。
部屋の中に閉じこもっている間は教科書を夜遅くまで読みふけることができたし、何よりもホグワーツへの期待でダーズリー一家のことなど食事の時間まで忘れるほどだった。
そして、あの日であった彼女も一緒であるということも大きな理由の一つだった。誰か知り合った人と行けるということが、彼にとって嬉しかったのだ。
「あと一日…!」
毎晩壁に張った暦にバツ印が増えていく度彼はうずうずしながら瞼を閉じる。
フクロウにおやすみと告げ、眠りについた。
▽▼▽
「そーれ、着いたぞ小僧。九番線と‥‥‥ほれ、十番線だ。お前のプラットホームはその中間らしいが、まだできていないようだな。え?」
一体自分は何をしているのだろう、とハリーは思った。耳に聞こえるのは彼らの笑い声。ジロジロと自分を見る人々。繁く雑踏。
駅員に聞いてみてもそんなものはないと呆れたようないら立ちの表情をしてどこかに去って行ってしまった。
いよいよ列車があと十分で発車するという時間。しかし、ハリーにはどうしたらよいか分からない。いよいよ困り果てた。その時だった。
「‥‥‥マグルで混みあってるわね。当然だけど‥‥‥」
「――!」
その言葉を耳にした瞬間、ハリーは急いで振り返った。
そこでは、ふっくらとしたおばさんが息子兄弟と思わしき赤毛の四人に話しかけていた。
彼らはハリーと同じ様なところがあった。トランク、そして一羽のフクロウ。ハリーは期待を寄せながら、けれども少し緊張しながら一緒にくっついていった。
九番線と十番線の間。尚もそこは通行人で入り乱れている。一行がハリーが先程いたところまで戻ると、突然立ち止まった。ハリーも彼等に合わせて止まる。彼は彼女らの声に耳を傾けた。
「さて、何番線だったかしら。」
「九十四分の三番よ。」
一番小さいと思われる女の子が言った。その子は寂しそうに「ママ、私も行きたい‥‥‥」と手を握って言うが、まだ小さいからと母親になだめられた。女の子はまた顔をしゅんとさせる。
母親が左右を確認し、後ろを向く。
「はい、パーシー、先に行ってね。」
パーシーと呼ばれた一番上らしき男の子がプラットホームの「9」と「10」の間に向かっていく。ハリーは一生懸命目を凝らして、彼がどうするかを見ようとした。
しかし彼がその間へと差し掛かった時、ちょうどハリーの目の前に旅行者の集団が通って行った。密集しすぎていて、隙間から向こう側を覗こうとしても見えるのは色とりどりのリュックサックと服だけ。やっと通り抜けたと思ったら、ハリーの目の前には9番線と10番線の間にある柵しかなかった。
驚いて目を擦ってみても、先程の男の子の姿は見えない。
一体どうなっているんだろう、と狐につままれたような顔でハリーは首を傾げる。
「フレッド、次はあなたよ。」
おばさんがまた彼らに声をかける。それを聞いてそのフレッドと呼ばれた人物は呆れたような顔をする。
「僕フレッドじゃないよ。ジョージだよ。まったく、この人ときたら。これでも僕たちの母親だってよく言えたよな。十年ちょっとも見ているのに僕がジョージだって分からないの?」
「あら、ごめんなさい、ジョージちゃん。」
「冗談だよ、僕フレッドさ。」
「まあ!」と母親が言うと同時に、双子の片方が急げと声をかける。からから愉快そうに笑いながら彼はカートを走らせる。しかし、ハリーが瞬きをした後には何もなかったかのように消えていた。そのまた次に片方が行くが、柵に差し掛かったあたりでまた跡形もなく消えてしまう。
これじゃあ幾ら見ても分かりやしないと感じたハリーは、思いきって直接聞いてみることにした。
「すみません。」
その声におばさんは振り返るとハリーの持っているものを少し見て、もう一度彼の顔を見てにっこりと微笑む。
「あら、こんにちは。
坊や、ホグワーツは初めて?ロンもそうなのよ。」
おばさんは後ろにいる男の子を指さした。背が高く、やせてひょろっとした子で、そばかすがあってこれまた燃えるような赤毛をしていた。
「はい。でも、あの、その、僕‥‥‥分からないんです、えっと、どうやって‥‥」
「プラットホームにどうやって行くかってことね?」
おばさんが優しい笑顔で問いかけてくる。ハリーはコクリと頷いた。
「心配しなくていいのよ。九番と十番の間の策に向かってまっすぐに歩けばいいの。立ち止まったり、ぶつかったりするんじゃないかって怖がったりしないこと。これが大切よ。
怖かったら少し走るといいわ。さあ、ロンの前に行って。」
「うーん……はい。」
ハリーはカートをくるりと回してジッと柵を見据える。ぶつかったら衝撃で吹っ飛んでしまうかもしれない。もしかしたら自分は入れないのかも‥‥‥
でも、
(怖がっちゃだめだ。おばさんの言う通り小走りで行こう。大丈夫、大丈夫…)
自身を落ち着かせるように深呼吸をして、目を開いて覚悟を決める。
ハリーは怖さを押しこむようにぐっとカートを滑らせて少し歩くと、だんだんスピードを上げて小走りで柵に近づいていく。幸い人影は見当たらない。そのまま直進するだけだ。
瞬きよりも早く、距離は縮まっていく。いつのまにかスピードも小走りを超えていて、ハリーはもう止まることが出来なくなっていた。
柵にぶつかる瞬間、目の前の壁に自身が差し掛かる刹那。ハリーは目をギュッと目を瞑った。
‥‥だが、何かにぶつかった感触はなく、代わりに足裏から程よいリズムで振動が伝わってくる。
まだ、彼は走っていたのだ。
ハリーは一度止まり、そっと目を開ける。
――――そこには、大きな紅色をした蒸気機関車が、がやがやと集まる人々の中でモクモクと煙をふかしながら堂々と鎮座していた。
ホームの上には『ホグワーツ特急11時発』の文字。
目を少し見開いて、でも驚きより安心が勝ったのかハリーは脱力感と共にほっと胸を撫で下ろす。
そういえばと彼が振り返ると、改札口だったところには九と四分の三と書かれた鉄のアーチがあった。その先は壁で、これも魔法なのかと改めて驚かされる。
全てが全て鮮やかで朧気な、けれども確かに在る夢幻の様に期待と夢の詰まったものにハリーは見えてきた。
(これからどんな未来が待っているのだろう。)
機関車のそばの人ごみはそれぞれ別れの挨拶をしあう。各々動物を見せ合ったり、何かを探しているような声も聞こえてくる。席の取り合いの喧嘩を通り抜け、ハリーはすでに席の埋まった先頭車両からカートを押し続けた。人ごみも多く進むのが大変だったが、なんとか開いているコンパートメントを見つけることが出来た。
ヘドウィグを先に入れてからトランクを列車の戸口から入れようとする。だが、片側すら持ち上がらない。
何回も挑戦してみるが、一向に持ち上がる気配がない。何とか持ち上げてみたが、手から滑り落ちて二回もつま先にぶつけてしまった。
痛みに顔を顰めつつハリーがしばらくトランクと格闘していると、上の方から声がかかった。
「おお、その様子だとだいぶ痛い目に遭ったみたいだな。手伝おうか?」
「うん、お願い。」
ゼイゼイと息を切らしながらハリーは声を絞り出す。見てみると、彼は先程の集団の中にいた双子のどちらかの様だ。彼は双子のもう一人を呼ぶと、一緒に運ぶのを手伝った。
やっと客室の隅にトランクが収まると、ハリーは「ありがとう」と言いながら拭うように汗で引っ付いた前髪を掻き上げた。
返事をしようとした双子が同時にあっと声を上げる。
「それ、何だい?」
「驚いたな…君は…。」
「
君、違うかい?」
目を大きく開きながら、一人が稲妻型の傷を指さす。彼とは一体誰のことだろうか?ハリーは首を傾げる。
「なんのこと?」
「「ハリーポッターさ。」」
双子が同時に言った。一か月前の漏れ鍋でのことをハリーは思い出した。
(そういえば自分の名前は魔法界じゃ有名なんだっけ。)
やっと彼の中で合点がいった。ハリー「ああ、そのこと」と言って少し照れ臭くなりながら
「うん、そうだよ。僕がハリー・ポッターだ。」
と言った。
双子の呆気にとられたような目線が、キラキラとした目が、霞んだレンズ越しでも感じ取ることが出来る。ハリーは恥ずかしさで頬が熱くなるのを感じた。白い頬が熟れた林檎の様に赤く染まるのも時間の問題だった。
はやくこの目線から逃げたい。ハリーがそう感じ始めた、その時だった。
「フレッド?ジョージ?どこにいるの?」
開け放された窓から、さっきのおばさんの声が流れてくる。ハリーはナイスタイミング、と頬を緩ませた。
双子は返事を返すと、もう一度ハリーを見つめて列車から飛び降りた。先程の家族が気になってハリーは窓際に座って会話を見ていると、あっという間に汽車の笛が鳴り響く。
時刻は十一時。ホグワーツ特急が期待を乗せ、重々しい音を立てながら滑り出した。
●○●
一方少女は…
「‥‥わぁ、これがホグワーツ特急‥‥!物語にあった通り厳かで鮮やかで美しいですね!」
誰も居ないプラットホームで汽車を眺めていた。
時刻は八時半。まだ出発まで三時間もある。彼女がこの時間に来たのにこれといった理由はない。
ただ早い時間に目が覚めてしまったからだ。
ぐぐっとのびをして欠伸をする。
「‥‥さて、のんびりと席を取りますか♪」
少女は
見上げると、天窓に白みがかった青く澄んだ空が映っている。ぼやけていても周りとは確かに違う色を持ったそれは、彼女の青い瞳をうっすらと滲ませる。少しそれを眺めた、彼女はローブの裾から何やら笛を取り出し
ピィー
そっと吹いた。甲高く澄んだ音色が鳴り響き、それがどこまでも広がっていく。
すると、突如空に一つの黒い塊が通り過ぎていった。カラスの様に、けれども大きな影だ。
飛び去るそれを見た彼女はフフッと笑うと笛を袖に仕舞い、列車へと入って行った。
かつり、かつりと無機質な音が列車内を満たす。誰も居ない通路を少女は歩く。
「‥‥‥?」
ふと、彼女はなにとなしに足を止め、首をかしげる。
「‥‥」
しばらく見つめて扉に触れると、そっと開けた。
コンパートメントは意外にも広く、四人は座れそうなスペースがあった。
赤く座り心地のよさそうな座席にトランクを置き、隣に自分も座る。そして、おもむろにトランクを開いて杖を取り出した。
杖の細やかな細工は日の光を浴びて生き生きと呼吸をしているように煌めき、少し動かすだけで杖先から小さな光の粒が溢れてくる。
それを見た少女は少し考えこんだ。すると今度は、杖を横に倒して左手の人差し指でそっと触れる。目を瞑り、口をそっと開く。
「——————。」
謳うように紡がれたのは魔法の呪文。春の鳥たちの声の様に軽やかなその旋律は誰にも理解することはできない。かの有名なホグワーツ校長でさえも、だ。
指が杖先から持ち手の部分まで動かしていると、突如杖に変化が起きた。
杖先が淡く光ったと思うと、あっという間にそれが杖を包み込んだではないか。
薄い霧の様に杖を覆うそれは陽光の様に暖かく、月明かりの様に美しかった。彼女の口から言葉が発せられるごとにそれは空を舞う雲の様にゆらゆらと動き、踊る。
それは彼女が口を止めると同時に、杖を雨天の雲のように厚く包み込んだ。
―――――その瞬間、光は大きなシャボン玉のようにパッと弾けた。
彼女はそっと目を開く。
―――――しかし、
けれども彼女は、杖を振ってその変化に口角を上げる。
「‥‥‥よし、これで大丈夫ですね。」
彼女は杖を確かめるように何度も振る。その先には光の泡は見られない。至って普通の杖だった。
少女は満足そうにうんうん頷きながら手をそっと止める。彼女は杖をローブの中にしまい、トランクの中から一冊の本を取り出した。
『
彼女はダイアゴン横丁で以前購入したこの本を読んでいなかったことを思い出し、暇つぶしにと思って持ってきていたのだ。
ぱらぱらと本をめくりながら読んでいく。指を滑らせて送られるそのスピードは速い。傍から見ればただ眺めている様にしか見えないが、彼女は内容を認識し、しっかり頭の中で記憶している。
伊達に人外やってるわけではないのだ。
(ふむ。勇猛果敢なグリフィンドール、忍耐強いハッフルパフ。古き賢きレイブンクローに、鋭敏に満ちるスリザリン‥‥‥兄さんに聴いた通り獅子、穴熊、鷲、蛇とそれぞれの特徴をよく表したシンボルと文章だね。)
十分弱経過し、最後のページを読むと彼女は本を閉じる。最近できたこのホグワーツの歴史には興味深いところがたくさんあった。
秘密の部屋に隠し通路、謎の事件に偉人達。どんなに面白いのだろうと心を躍らせるものばかり。しかし、やはり気になるのがヴォルデモートなる人物のことだ。恐らくハリー・ポッターのことを殺そうと思っていることだろう。
(さて、どうしようかな。
だったらこの学校生活を謳歌してみようかな?)
尤も、そんなことで終わらせてくれるなんて期待外れなことなんてないだろうけど。
そう考え、彼女は
瞳を冷ややかな月の様に光らせ、微笑みながら考える少女は―――――
――――ただただ美しかった。
彼女は本をトランクの中に納めると、教科書を、今度もまた早いスピードで読む。一語一句を逃さぬよう大切に。青い瞳をビー玉のように転がし、時折横に落ちてくる白い髪の束を払いながら。
長い時間が過ぎたころ、彼女はすべての教科書を読み終えた。ふうと息をついて閉じた本を膝に乗せ、手を上に伸ばして大きく伸びをする。
そのとき視界の隅に写った太陽は、先程見たときよりも上へと移動していた。耳を澄ませてみればがやがやと色々な人間の声が鼓膜を震わせてくる。
「ああ、結構時間経ってますね。」
少女は懐中時計を取り出してポツリと呟いた。黒く細い短針は既に
蓋を閉じ、彼女はローブの裾から杖を取り出した。
「さて‥‥これからどう致しましょうか…」
杖をペンの様に指で滑らし回しうんうんと唸る少女。
ふと、彼女は手を止めた。遠くからこちらに向かうような気配を感じたからだ。
耳をすませばどこか強い足音が通路の方から近づき、扉の前で止まる。
コンコンと三回ノックが鳴り、ガチャリと扉が開いた。
「席が混んできたの。相席してもいい‥‥かし‥‥ら?」
扉から飛び込んできた声は、その主が扉を開けて少女を見たと同時に止まった。
栗色のふわふわとした髪の毛。小さな口から覗く前歯は少し大きくて、彫りの深いその綺麗な顔は、気が強そうにとれる。しかし今の彼女の表情は驚きに満ちていて、見開かれた
「あ…えっと、あの、」
「どうぞお掛けになってください。」
「え、あっ、はい。」
見かねたように少女が微笑んで述べると、その女の子は戸惑いながら席に着いた。
少女は首を傾げる。
座った彼女は自分を落ち着かせようとするも、青色の瞳を静かに光らせ、こちらをじっと見つめてくる少女を見てすこし慌てる。
「あ、あの、その手に持ってるの杖、よね?今から魔法を使うの?」
「ええ。そうです。」
「えっと、それじゃあ、見せてもらってもいいかしら?」
「私のでよければ喜んで。」
微笑みながら言う彼女の瞳に吸い込まれそうになりつつも、女の子は少女がどんな魔法を使うのかを見ようと視線を杖先に集中させた。
「では、『ラカーナム・
少女の杖先に
「『イン
「『アグアメ
今度は杖先に銀色の光が現れる。光がそっと溢れたかと思うとそれは透明な水の帯となり、瞬く間に炎を包み込んだ。
水は命を吹き込まれたかのように躍動し、帯の中では火が水のレンズの中で蝋燭の炎の如く怪しげに、悠々と揺らめいている。しかし、それらが消え入るようなことはなかった。
女の子がその光景に「わぁ…」と感嘆の息を漏らした刹那、またもやそれは姿を変える。
「『グ
彼女が言うと水はぴたりと動きを止め、小波すら立てない凪の水面がその透明さをそのまま、内にある炎を閉じ込めた。まるでその中でだけ時間が止まっている様に水も炎も動きはしない。
―――――それは、精巧な飴細工を丸いショーケースにそっと入れたような透き通った美しさを持っていた。
光に照らされたそれは水晶のように輝く。
ハッと、女の子は息を呑む。表情に写るのは驚愕、感動。しかし少女はそれを気に留めはしなかった。ただその静寂に浸っているだけだった。外も列車内も賑わっているというのに、この空間だけは息をするのも忘れてしまうほど静かだった。
そのコンパートメント内を満たす凛とした静寂を肌で感じ、少女は目を瞑り、肺で深く息を吸う。
「‥‥‥」
ゆっくりと目を開き、目の前の物体を見据える。青色の瞳は海の藍色の様に深くなり、陽光に照らされた水面のごとくきらりと煌めく。すると共鳴するように氷の中に在る竜胆色もその色を淡くした。
その瞬間を待っていたかのように少女は口を開き、優し気に笑う唇でそっと言葉を紡ぐ。手にもった杖を躍らせて。
「――――『
その言葉と共に水晶にピシリという音を立てて白い亀裂が水晶全体に走った。透明な光が割れ動き、飛び散った小さな飛沫が光を反射して空中に溶ける。しかしそれも一瞬のこと。
――――その刹那、水晶が粉々に砕け散った。
「えっ‥‥!」
その声はその変化についてではなかった。驚くべきことは彼女の目線の先。先ほどまで水晶が存在していたところにある。
――――その中から現れたのは、竜胆の
散らされる氷の破片の隙間から滑るように青が溢れる。青色が次第に青紫となり、瞬く間にパッと広がり燃え上がる。力強く、威風堂々と。満開に咲く花火の様に華やかに、雪の様に儚げに光る氷の粉に包まれながら。
「『フ
その言葉で、竜胆は
淡い青色の火の粉を艶やかに、静かに散らして。
少女の唇がゆるりと弧を描く。満足げに、嗚呼と感嘆するように目を細める。
一方女の子は先程の現象の驚きが残っているのか、目を見開いたまま呆然としていた。
少女はクスクスと口に手を当てて笑う。
その声にハッと我に返ると、女の子は少女の方を向いて話し始めた。
「さっきの魔法、まさかあなたもう上級生で習う魔法を覚えているの?」
「ええ。これから先付いていくための予習を兼ねて。」
「私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけどね、そこまでは思いつかなかったわ。私の家族に魔法族は誰も居ないの。だから、手紙をもらった時驚いたわ。もちろんうれしかった。だって最高の魔法学校だって聞いているもの‥‥‥教科書はもちろん、全部暗記したわ。でもあなたみたいにもっと先の予習もしておかないと。やっぱりこれだけじゃあ足りないみたいね。
‥‥‥私、 H
なんとこの言葉、驚きのことに一気に言ってのけているのだ。息一つ吸わずに強く、誰もが引いてしまうようなその言葉。
しかしこのマシンガントークを聞いても少女は表情を崩さない。
いやむしろ、先程よりもいっそう笑みを深めているようにも見えるだろう。
「S
柔らかな声色で、彼女は言った。白い睫毛の落ちた星のように煌めく青色の双眸は、ハーマイオニーの瞳をはっきりと捉える。その瞳は美しい星雲の様に何処までも吸い込まれてしまうような、晴天の空が何処までも透き通っているように、そこに映る天の川の一つ一つの星がぼやけているように曖昧だった。ハーマイオニーはその瞳を覗き込む。無意識に、そこに何かを見出そうとして。
「‥‥?私の顔に何か?」
「え、あっええ、何も、何でもないわ。」
「そうですか。」
慌てて目をそらした彼女に、少女はまたもやはて、と首を傾げる。
その顔から目を背けようと必死になったハーマイオニーはふと、彼女の膝上にある本に目を留めた。
「それ、もしかして教科書?」
「はい。魔法薬学のです。」
少女はそう言うと、自分の前にハーマイオニーが表紙を見れるようにして本を持ち上げた。
それは至って新品そのままで、まだ誰も触ってすらいないんじゃないかというほど綺麗だった。
ハーマイオニーはその本を何度も読んだ。幾通りからなる薬草の調合やその名称の隅々まで。さすがに実践したわけではないが、厚みのあるその本を彼女は丸暗記をしているためその分野の知識だけでもほかの者たちより優れている自信がある。
「あなた、もしかしてその本今日初めて読んだの?」
「ええ。」
お恥ずかしながら、と言って少女は眉を下げ、頬を掻いた。
――――すべての教科書も今日初めて読んだのだけどね。
彼女は心の中でそう溢す。
「私はもうその中にあるものは全部覚えたわ!大変だったけど…。それでも新しい世界のことだから、知るのが楽しくて苦じゃなかった!」
「そうですね。私もこうやって知っていくのは楽しいと思います。」
「でしょう!だからセレナもたくさん読むことをお勧めするわ!」
「ふふっ。はい、分かりました。」
少女はハーマイオニーの様子を見て笑う。
その花がほころんだような子供らしい笑顔を見て、ハーマイオニーは少し目を見開く。同い年の何人も自分に見せたことのなかったその親しげなあどけない笑み。それを見ることができたのが嬉しくて。
彼女は、少女の笑みに答えるように、目を細めてクスリと笑った。
「ああ、もうそろそろ発車しそうですよ。」
少女は懐中時計を開いてそう言った。
窓の外を覗けばもう太陽は真上へと近づいている。
ホグワーツ特急は駅から発車した。
遅くなってしまい申し訳ありません。
コンパートメントとか列車の構造ってどうなってるんでしょうね。いまいち分からず「ええい、こうだ!」とやってしまいました。
もし間違いがあれば、報告していただければありがたいです。
余談ですがこの小説、多分兄が出てきてからが本番です。現段階で決まっていないことは多いですが、意味わからない要素が多くなるのは確かです。
最後に、できれば一度この小説の評価をつけていただきたいなと思います。どうしても客観的な視点に欠けてしまうため、読者様からの評価が欲しいのです。
長くなってしまいましたが、ここまで御閲覧頂き、誠に感謝致します。
それではまた次回をお楽しみに。