オリジナルのテスト兼、設定が万人受けするのかのテスト。
些細な事でいいので感想ください。
この世界では男が孕む。
目が覚めて感じた違和感の正体はこれで大方の説明が出来るようだ。性別で言えば男という呼称が雌で、女という呼称が雄。しかし、身ごもるのが男でも、乳をあげるのは女であるらしい。女も男も子育てに必要で、争いに不向きな体だ。今はまだ、人類の歴史に関して深く調べはしなかったが、携帯の画面からの情報が此処が俺の知る男と女の役割とは逆さまな世界で尚且つ全てが真逆ではないと教えてくれた。
俺は、仁科正美は、大学の長期休暇を利用し三つ離れた県に住む友人を訪ねるべく乗った走る高速バスの中で、夢と思いたい現実に直面していた。
椅子に座った俺の太股の上にはソフトボール程にズボンが膨らんでいる。俺の常識で言う所のおっぱいの大きさとは、この世界で言う金玉の大きさだ。孕むのが女の子宮ではないのであろう事が分かった時に、理解出来た。思うに、こいつが男の孕み袋なのだ。
エロ漫画でしか見た事がないような、冗談のような愚息の大きさも納得がいく。何せ赤ん坊が通るのだ。女性の腰回りよりも細い事の方が、寧ろ奇跡だろう。
ガラガラの高速バス。でなければ、こんな恥ずかしがりもせずに性知識について、雌が調べるのもままならない。一方通行のバスの中で、家に帰る事としてもあと一時間の旅は我慢しなければならない惨状で、乗客が少ない事だけは嬉しかった。
履歴の消去と共にブラウザを閉じる。昨日の友人との連絡と、現在の状況を照らし合わせ無ければならない。正直な話、今日の俺は非常に危険な状況にある。簡単な話である。
俺が今日、女友達をぺろりと頂く予定だったからだ。
中学時代の同級生。メールは結構マメにするし、お互いに誕生日は祝い合う。近頃はどちらかの都合がつかず約三年は会っていないが、こうして会う約束を取り付けた。しかも泊まりでだ。昨日までの俺は、彼女は俺に気が有ると考え、口説き、こうして会う約定となっている。何せ、毎年誕生日を祝ってくれる上に、高校時代も毎年バレンタインはチョコをくれていた。今日の泊まりも彼女は許可している。
俺は、今日に告白して、勢いのままいけると確信していた。
今のいま、まではの話だ。
毎年に誕生日を祝い合い、バレンタインチョコを渡した仲であり、わざわざ高速バスに乗って会いに来る。そんな雌が今の俺なのだろう。
逆だ逆、ふざけやがって、俺が健気な女のようではないか。正直、滅茶苦茶焦っている。このままでは俺は美味しく食べられてしまう羊も同然なのだ。
しかもスケジュール帳によれば二泊三日だと、冗談じゃない。こちとら、この世界における化粧の仕方もろくに知らないのだ。そのままで過ごすとしたら、まるで無防備に安心しきった姿を晒してしまう。
じっと、景色を見るふりをして反射して映る自分の顔を見る。
こいつ、多分気合入れて来てやがる!
いや白状する。思い出せば俺自身が気合を入れていたのだ。前日に美容院に行き、全ての一張羅は下着も含めて新品だ。迂闊であった。浮かれすぎていたんだ。小分けにした荷物を見れば、俺が入れていた制汗スプレーやブレスケアなどは、加えて更に化粧セットも入っている。だというのにちゃっかり買って置いた避妊具は無くなっている。
この世界の俺は、多分色ボケしているか、まるで危機感のない奴である。
下らない事に思考を費やしている内に、目的地への到着は30分を切っていた。このままでは、非常にまずい事になる。早急に、この世界の俺、雌の俺の意識調査をしなければならない。これで勝負下着を用意していたのなら最早疑いようもない。そうした場合は諦める事も視野に入れる。仮に俺が惚れていて、その末に行動を起こしているのなら、彼女が信用に足る人物かを見極めればいいのだ。
そうだ、何も拒絶することは無い。優良物件ならば、遠距離恋愛になる程度の話なのだ。俺の知る友人の人物像は、決して悪意を持って人と接する人物ではない。
そう、この大きなカバンの中身に勝負下着が有った場合は、作戦をシフトする。
なんか、子供向けアニメの円盤が大量に入っていらっしゃるっ!!
えっなんで、おかしいだろ。馬鹿じゃねえのコイツ。異性の家に泊まるんだぞ?数年会っていなかった旧友だぞ?なんでアニメの上映会をする気満々なんだよおかしいだろ。正気じゃないだろ、ていうか落ち着け、俺。
本当に友達としてしか見ていない感じか?確かに俺だって男友達とは徹夜でゲームしたりアニメ見たりカラオケに行ったりするけど、異性として認識してない感じの旅行ですか?
不味い、非常に不味い。異性として意識してないのは寧ろ致命傷だ。このままじゃぼんやりしている内に、後ろからバッサリだ。確実に喰われる。上映会による阻止で喰われなかったとしたら、それはそれでアイツが不憫すぎるだろ!
玉の上に置いていた携帯が震える。見るに、どうやらアイツは駅に着いたようだ。覚悟を決めるしかないだろう。兎に角、全ては、雌雄があべこべになった世界でのアイツがまともな奴なら問題はない。
その上で身体を許せないようだったら、アイツには悪いがアニメを三日間観れば済むだけの話だ。
「久しぶり、にっしー雰囲気変わった?」
「そういう葉山はがっつり変わったな、コンタクトにしたのか。」
「前みたいにノッポって呼んでいいよ。」
「人前で言ったら悪口みたいだろ、俺は大人になったんだ。」
「大人、ね。あだ名はさて置き、メールだとにっしーは丁寧語だからタメ口を聞いてるだけでちょっと安心するよ。」
パンツにポロシャツと手提げかばん。気合の入った格好ではないが、そこまで不快感の有る訳でもない。
性格がそこまで変わってない所も、俺にとっては安心できるポイントだ。
「取り合えず、私の家に荷物を置いてから何か適当に食べに行こうよ。」
「別に俺はこのまま行っても構わないが。」
「男の子に大荷物を持たせてそのままってのも肩身が狭いからさ。」
「そんなものか?」
「隣駅だからさっさと荷物を置きにいこうよ。」
着いていくままに、葉山希の家へと来た。
外観は思ったより質素。されど一人暮らしのマンション暮らし。俺が住んでいるところよりは少しばかり都会とは言い難いが、寧ろ安い家賃で広い部屋が借りられるのかもしれない。
荷物を置かせてもらって、向かい合うように床に座っても尚、随分と広い部屋である。
それに、ゲーム機もあるから円盤も再生には問題なさそうだ。
「昼飯を食べに行くのは、飲み物を飲んでからにしようか。にっしーは麦茶で大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと台所を見せてくれるか。」
「いいけどどうして?」
「備えによっては、晩飯は作った方が安上がりだろ。」
「にっしー料理出来るの!」
ずいっと俺に、近づいてきた葉山。どうやら異性の手料理への喰いつきは中々らしい。
中学時代のあだ名がノッポであったように、彼女は普通の女性と比べても十分に背が高い。見た目もそれなりに整っていて、容姿もカッコイイ系。元の世界で言えば、背が高いイケメンと同じような扱いなのだろう。
この世界になって、大分縮んでいるらしい俺の目線からすれば、見上げなければいけない程だ。元々、葉山の方が背が高いから、目線がどうのこうのでドキッとする事は無かった。
それでも顔が近いのは事実だ。
「俺一人で作らせるつもりか?」
「いやあ、家庭科では専ら洗い物ばかりだったから。」
「一人暮らしして何年だよ……。」
「味ご飯って安上がりなもんでね、へへっ。」
「オーブン付きのそれなりに良いキッチンなんだから、もったいないぞ。帰りにスーパー寄って材料を買おうな。」
「分かったよ。お昼は食べたいものとかある?近くだと、ラーメン屋とか定食屋とかチェーン店ならハンバーガー、牛丼ってところだけど。」
指折り数えて、行きつけの店を探しているんだろう。近くの美味しい店を探しながら携帯を操作している。今現在の俺は食文化でさえ信用ならないのだ。何が出てこようと気にする事も出来ないだろう。台所に調味料があるのかを探しながら、葉山の言葉は聞き流している。
冷蔵庫の中は冷凍食品とお酒だらけだ。ある意味では大学生として健全なのだろうか。
「あっ…………。にっしー、そう言えば私も行ったことないんだけど駅の近くに美味しいスパゲッティのカフェがあるんだ。ここにしようか。」
露骨に雌が食いつきそうな場所でポイントを稼ぎに来ている!
葉山、まさかワンチャン俺を喰おうとしているんだな。成程、油断させやがって。これはもうアニメ地獄決定だな。
しかし俺は、この体になる前からスパゲッティには目がない。牛丼とかハンバーガーよりは断然スパゲッティだ。出来ればたらこが良い。いや、麺類は好きなんだ。だからと言っていきなりラーメンにがっつくような事はしない。この体が雌だというのなら胃袋が小さかったり、脂っこいものが弱点かもしれない。
女性受けの良い体形は知らないが、もしこの世界の俺が体形維持に気を使っていた場合は申し訳が立たない。
最悪の場合はサラダに逃げられるレストランやカフェが無難だろう。
「その中ならスパゲッティがいいな。いや、一つ聞いて良いか?たらこソースのスパゲッティはあるのか。無いならカルボナーラでもいいのだが、いやペペロンチーノでも、いやちょっと待ってくれ。」
「カルボナーラかペペロンチーノを私が頼んで、少し分けようか。私はいっぱい食べるから両方頼んでも良いから。」
「そんな訳にはいかない。店に着くまでには考えを纏める。取り合えずカフェまでは行こうか。」
「いやはや、美味しかったな。帰る前にもう一度よりたいくらいだ。」
「本当だね。私も今度から外食の時は通うようにしようっと。」
ランチは概ね満足だった。スパゲッティは美味しかったし、葉山と近況の話もそれなりにした。殆どが昔の思い出とか、友人の進学先の話だったが、まだまだ時間はあるのだからお互いの話はゆっくりと葉山の家ですればいいだろう。
「外食は良いが、普段は自炊した方が良いんだぞ。栄養のバラつきが出るんだから、気休めでも野菜ジュースとか飲め。」
「おっしゃる通りで。スーパーは近いところで良かった?使ってるポイントカードとかあるなら探そうか。」
「大丈夫だ。二人分なら安く済むから、割り勘でも普段より安いくらいだからな。」
「作ってもらうのに割り勘は申し訳ないよ。せめて三分の二は出させて欲しいかな。」
「割り勘で構わないが、その代わり帰ったら一つお願いを聞いてくれ。」
「料理は手伝えないよ?」
「大丈夫だ、そんな事は頼まない。」
スーパーで確保するのは、鶏肉だろう。野菜は、葉山に何が食べたいかを聞く必要がある。後は色々の副菜も考えないとだな。
「それでさ、にっしー。何を作るの?」
「あれだけ立派なオーブンがあるんだぞ。使わないのはもったいない。今日はグラタンを作る。というか明日の朝食も見据えて買い物をするか。」
「朝なんて食べなくて大丈夫だよ。」
「駄目だ、生活リズムを崩すな。良く寝て、ちゃんと食べろ。」
「はいはい。あっ、私グラタンにはブロッコリー欲しいな!」
「じゃあ俺は野菜コーナーに居るから、マカロニと鶏肉を持って来てくれ。」
「はいはーい。」
そんなこんなで、夕食はグラタンを作った。副菜はベーコンとほうれん草の軽い炒め物。もう外は真っ暗である。二人とも風呂に既に入っている。
葉山は、もうビールを二本開けていた。
「まさか、にっしーがアニメを観ようなんて言い出すと思わなかったよ~。」
「変な映画とかを見るくらいなら自前でだ。暇つぶしにと思ったのに、ゲーム機があるのにコントローラーが一個しかないじゃないか。」
「だって普段は友達なんて呼ばないもん。一人用だよ。」
「言えば、コントローラーくらい持って来たんだぞ?」
「にっしーって、ゲームもするんだ。意外だね。昔から頭いいから勉強ばっかりしてるのかと思ってたよ。」
「葉山こそ、漫画の数は凄まじいが学術書とかも結構あるんだな。」
「まあね、運よく面白い研究テーマに巡り合えたから。」
話している間にも、葉山はぐびぐびと酒を飲み続ける。
そういえばいつの間に部屋着になっていて、だらしない格好だ。この世界の常識では咎められるようなものではないかもしれないが、俺には少々刺激が強い。
「大丈夫なのか?風呂に入った後で血流が良くなってるのにそんなにアルコールを入れて。」
「普段は飲んでないから大丈夫。」
「いや、そういう話ではなくてだな。」
「他の人って嫌なことがあった時に飲むんだって、楽しい時に飲んだ方がもっと心が晴れるのにもったいないよね。」
どんどんと、葉山の瞼が降りてくる。
俺は葉山の握っているビール缶を引き抜いて、倒さないように台所に置いた。
「毎年さ。皆に誕生日おめでとう、とか。明けましておめでとう、とか送ってたんだ。でも、ちゃんと返事してくれるのは数えられる程になっちゃった。」
「そうか。」
「だから、にっしーに会えて嬉しかったんだ。なんか、上手く言葉に出来ないけどね。」
「飲みすぎなんだよ。」
「にっしーは?私に感謝とかないの?」
「なんで俺が。」
「アニメ観るのを付き合ってあげてるでしょうが!何だよ、全51話って!」
「じゃあ明日は観るの止めるか?」
「続きが気になるから駄目だよ!」
まあ、やはりと言うべきか。アニメは俺の知るものとはそれなりに内容の変わっていた。変わったと言っても、タイトルから多分同一の作品だろうと予測していただけだったが。
面白いものは面白かった。
葉山が隣にいたからかもしれないが。
「…………。」
「寝ちまったのか。しょうがない奴だな。」
俺もバスの疲れがある。友人との泊まりである事を考えると随分早い就寝であるが、まあ明日はゆっくり過ごせばいい。
俺は、机を片づけて布団を敷けるだけのスペースを空けた。葉山が持ち上がらなければ、俺がベッドでいいだろう。
押入れを開けると、そこにはゲームソフトと本棚に入りきらなかったであろう漫画が積まれているだけだった。
異性とか問題じゃないだろ!友人を呼ぶんだったら、本当に最低限でもせめて毛布の一枚くらいは用意しておけよ!
このまま床に転がしてやろうか。だけどコイツこんな薄着だと絶対風邪ひくだろ。そしたら看病しないといけないのが面倒だし、アニメを中途半端のまま帰るのも後味悪くなるだろう。
……本当に、仕方ない奴だ。
「やはり体格差が辛いなっ!」
脇に体をねじ込んで、無理矢理にベッドに乗せる。お姫様抱っこをしようにも、本当に筋力が足りない。葉山くらいに背が高い女に襲われたら、男の俺では勝てないのだろう。
ベッドに乗せ、布団をかける。俺もベッドに入るには、葉山を跨いでいかなければならない。床とベッドの段差で俺の股座の孕み袋が葉山の腕に当たる。筋力も、性差も、コイツをベッドに運ぶ過程で少しずつ学べた。良かったな葉山。お前の腕の感触は、性のシンボルの感触ではなく、補整下着の感触だ。貴様はおっぱいではなくブラジャーを触っているに過ぎないのだ。
しかし、ベッドは大きく感じる。俺が縦に縮んだのもそうだし、横に居るのがノッポの葉山だからというのもあるのだろう。
匂いは、女性特有のものだ――酒臭いのを除けば。起きる様子がないので、腕や足、頬などを触ってみる。本当に、きっと元の世界より二割増しくらい整った顔をしているように見える。綺麗さではなくカッコよさの方向でだ。
腹パンでもしようかと考えて、葉山のお腹の感触に違和感を感じた。
この世界の女性は、興奮すると子宮と卵巣がポッコリと膨らんで目視で分かるし、腹の上から触っても感触が分かる。
つまりは、寝ていて、意識が無いのにも関わらず、葉山は硬くなっているのだ。
女が孕ませ、男が孕むメカニズムについて、俺は知らない。そこまでは調べていない。多少は信用を置こうかと、無理矢理に襲わなかった事だけで心が傾きかけた俺の浅はかさを呪おう。
コイツに隙を与えてはならない。俺が帰るまでは、アニメ漬けにして手を出す暇は絶対に与えないぞ!
「……起きろ。」
「……起きろよ。」
「さっさと起きろよ、葉山ァ!」
「はい!何!何事なの!?」
全く、俺も熟睡していたが、葉山はそれ以上に爆睡していた。朝飯を作れば、匂いで起きるかとも思ったが、こうして耳元で叫ばなければ起きなかった。
上体を起こして俺の方を向きながらも右手で毛布を掴んで鳩尾の辺りまで上げている。胸元は隠していない。隠しているのは、きっと朝勃ちだろう。
「朝飯、出来たんだけど。」
「えっと、朝飯?」
「葉山が起きるの待ってたら、アニメを全部見終わらないだろ。」
「そうだっけ、結構余裕があったと思うよ?」
「じゃあ、今日葉山は床で寝てもらうぞ。来客用の布団くらい用意しておけよな。安いので良いから買いに行くぞ。」
「それは本当にごめんね。あれ?でも、にっしーはどうやって……。」
「田舎は大学が遠いから車通学だろ。買った布団は直接車に積み込むからな。酒は抜けたか、事故なんて御免だからな。」
「事故は絶対にしないよ。今回は悪いと思ってるから、布団のお金は私が出すよ。ところでにっしーは昨日――。」
「葉山。」
「はい、ごめんね。許してくれないよね。」
「腕は痺れてたりしてないか。」
「へっ?全然大丈夫だけど。」
「そうか。一晩、枕代わりにしたけど、何んとも無いなら安心した。」
「えっーーーーーー!ちょっと、嘘ぉ!私とにっしーが、同じベッド、で。」
どうにも、顔を赤くしたまま硬直してベッドから降りようとしない葉山を、放っておいて自分の分のトーストを食べる。昨日の余りのベーコンとグラタンには多すぎたとろけるチーズを食パンのせて焼いただけの簡単なものだ。
割り勘だからと食パンをちょっと高いやつにしておいて良かった。家電も、キッチンも良い設備なのに葉山は料理をしなくてもったいない。
俺がトーストに舌鼓をしていると、葉山は何故かもっと顔を赤くしていた。
しかし、これは性転換タグはつけるべきなのか。
何でもいいから感想頂けると助かります。設定の甘さとかもあるかもしれないので。