クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン   作:じゃすてぃすり~ぐ

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ドーモ、読者=サン、じゃすてぃすり~ぐです。
今回のエピソードはしんちゃんスパイディがどうやって誕生したか?について語りたいと思います。
とは言っても、今回はまだ導入部分だけですのでご了承を・・・。
それでは、ドーゾ。


『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #1

―カスカベ・シティ、野原家。

 

「信之介ー、起きなさーい。学校始まるわよー!」

 

 朝、誰も彼もが目覚め、朝食を食べる時間。

 二階に続く階段で、信之介の名を呼ぶ女性がいた。

 ボリュームのあるパーマヘアの妙齢の女性である。その胸は平坦であった。

 彼女の名は、『野原 みさえ』。信之介の母であり、専業主婦である。朝食を作った後なのであろう、手にはお玉を持っていた。

 

「ん~・・・後十分」

 

 ナムサン!信之介から返ってきたのはまだ、寝ると言う返事だ。今日は平日、学校も勿論ある。しかも時刻は二度寝をすれば遅刻は確実な時刻である!それを聞いたみさえは、はぁ。と深くため息をつくと、大きく叫んだ。

 

「ザッケンナオラー!早く起きろッコラー!遅刻スッゾコラー!!!」

 

 コワイ!ヤクザスラングめいた怒号が野原家に木霊する。普通のティーンエイジャーなら「アイエエ!?」と叫びながら大慌てで起きてしまう程の怒号だ。

 

「んー、分かったよ。ファーア・・・」

 

 そんな怒号に、大して驚く事も無く欠伸をしながら起き上がる。信之介にとっては、こう言う風に彼女の怒号はチャメシ・インシデントなのだ。

 

「ひまとパパはもう朝御飯食べて、家を出たわよ!早くご飯食べて学校行きなさい」

「ほーい・・・」

 

 欠伸をしながらみさえにそう返し、食卓につく。ゴハンにミソスープ、タマゴ焼きと言った典型的な献立だ。

 

「イタダキマス」

 

 両手を合わせてそう言うと、ハシに手をつけてゴハンを食べ始めた。

 

「アー、ウマーイ・・・。やっぱニホンの朝食はゴハンとミソスープに限りますな」

「イディオットな事言ってないで早く食べちゃいなさい。スクールバスが来ちゃうわよ」

「ホーイ」

 

 他愛の無い会話をかわしながら、信之介は朝食を食べる。そして朝食を食べ終え、皿やチャワンなどを片付ける。それから洗面所に行き、歯磨き、洗顔を済ませ、学校の制服に着替えた。

 

「あっそうだ、母ちゃん。オラ今日も友達と勉強会やるから、帰りは遅くなるゾ」

「あら、そうなの?なら晩御飯はいらないわね」

 

 学校のカバンにスパイダーマンスーツを仕込みながら、信之介はみさえに言う。勿論、それは欺瞞だ。本当は、『仲間達』と共にスパイダーマンの活動をするためである。

 スパイダーマンとしての戦いに、自分の家族を巻き込ませる訳にはいかない為でもあった。

 

((母ちゃん達にばれないようにしないとね))

 

 家族に自分がニンジャヒーロー『スパイダーマン』だと明かしてはいないからだ。

 NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)を恐れての事ではない。と言うか、過去に色々と信之介と共に超常的な経験をした彼らだ。NRSなんか引き起こすかどうかも怪しいものだ。

 だが、ニンジャの強さは過去に戦ってきた敵達とは桁違いに強い。実際にその戦いに巻き込まれニンジャの強さを目の当たりにしたことがあるからわかるのだ。

 あの時、『彼』からニンジャソウルを託されなければ今頃自分はサンズ・リバーを渡っていたかもしれない。

 自分がスパイダーマンだと知られ、家族が戦いに巻き込まれる。それだけは避けなければならない。

 

「それじゃあ、行って来ます」

「いってらっしゃい」

 

 みさえにそう言って、信之介は家を出た。

 

 

◆クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン◆

 

 

 

◆クレヨンしんちゃん:トルネードコール・スパイダーマン◆

 

「オハヨ、皆」

 

 家を出て暫く歩いた後、バスの乗り場に到着した。丁度スクールバスが来ていた為、そのまま乗り込む。そして、バスに乗っていた幼稚園の頃からの『友人』達に挨拶をした。

 

「「オハヨ、しんちゃん!」」

「しんちゃん、オハヨ」

「オハヨ、信之介」

 

 赤茶めいた色の髪の毛を二つ分けにした少女、『桜田 ネネ』。

 おにぎりめいたボンズヘアーの気弱そうな少年、『佐藤 マサオ』。

 藍色の少しはねた髪型の少年、『風間 トオル』。

 そして、ボーちゃん。

 それが4人の友人の名前である。彼らのユウジョウは、幼稚園の頃から続いており高校生になった今でも変わることは無い。

 挨拶をした後、他愛の無い話で談笑をする信之介達。

 

「そう言えば、昨日大活躍(・・・)だったよねしんちゃん!ほら、コレ見てよ!」

 

 唐突に、マサオが興奮交じりに信之介に今朝の新聞・・・カスカベ・シティでよく読まれている『デイリー・カスカベ』を見せる。

 それには見出しで『スパイダーマン活躍!ヤクザの魔の手からアベックを救う!』とショドーされていた。

 

「やっぱ凄いよなぁ、しんちゃんは・・・。他にも、銀行強盗退治や火災で取り残された人を救ったって記事もあるよ」

「ちょっとやめないか、マサオ=サン。スパイダーマンの正体は僕達『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』の秘密だろ?」

「あ・・・そうだった。ゴメンゴメン・・・」

 

 興奮しているマサオを、風間は小声で制止させる。恥ずかしさと申し訳なさで顔を真っ赤にしながら信之介に謝った。

 ちなみに『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』とは幼稚園の頃、信之介達が結成した自警団のことである。とは言っても、ゴミ拾いなどのボランティアをやっているだけだが。

 

「気にしなくていいゾ。幸い誰も聞いてる様子はないからね」

 

 さも気にしてないように信之介は言う。実際、彼らの周りの生徒は皆、談話をしていたり『ネコネコカワイイ』のCDを聞いていたりで先ほどのマサオの言葉は聞こえていなかったようである。

 さて、読者の皆様は気づいているようだが、彼ら『カスカベ防衛隊(ガーディアン・オブ・カスカベ)』の面々も信之介がスパイダーマンである事を知っている。

 ある事件で、信之介が『ある人物』からニンジャソウルを託されニンジャとなったのをその目で見ているのだ。

 

「そう言えば、もう3年になるんだよね。しんちゃんが『スパイダーマン』になってから」

「ン、そうだねぇ。・・・そっか、もうそんなになるんだな」

 

 ネネの言葉に、相槌を打つと懐かしそうに過去を振り返った。

 『彼』からニンジャソウルを託され、スパイダーマンとなって3年・・・色んな事があった。

 ヤクザやテロリスト、邪悪なニンジャから街を守ったり、交通事故や火災、災害などでも多くの人を救った。学校生活とスパイダーマンとしての活動と言う二重生活・・・、モータルの身だったのなら身が持たなかっただろう。下手すればカロウでオタッシャ間違い無しである。

 

「今日、学校が終わったら『おじさん』に会いに行かなきゃな・・・」

「ああ・・・」

「そうだね」

 

 信之介は、自分に『大いなる力』をくれた『彼』に感謝しつつ、学校が終わったら『彼』に会いに行くことを決意する。『彼』にこれからも、『大いなる責任』を全うしていくという事を伝える為に。

 

 

―一方、その頃・・・。

 

「ザッケンナコラー!スパイダーマン、あの忌々しいクモ野郎め!」

 

 カスカベシティにあるとあるオフィスにてヤクザのオヤブンらしきボンズヘアーのスモトリめいた中年男性が、ヤクザスラングを撒き散らしていた。

 彼の名は『ウィルソン・フィスク』、このカスカベシティを牛耳るキンググリズリー・ヤクザクランのオヤブンである。このヤクザクランはネオサイタマでも、5本指に入るほどのヤクザクランであった。・・・そう、あの『親愛なる隣人』と名乗る忌々しいニンジャヒーローが現れるまでは。

 彼が現れてからというもの、武器やメン・タイと言った麻薬・・・ありとあらゆる取引が彼の手によって潰された。それからと言うもの、キンググリズリー・ヤクザクランの経済状況は悪化。芳しくない状況に追い込まれていった。実際崖っぷちな。

 そして、昨日もまたキンググリズリー・ヤクザクランの者がスパイダーマンに叩きのめされ、マッポに逮捕された。フィスクの腸は煮えくり返っている。

 

「あ、アイエエエ・・・落ち着いてくださいボス」

「ウッセコラ、スッゾコラー!これが落ち着いていられるか!」

「アイエエエエ!?ゴメンナサイ!」

 

 そんなフィスクに、部下であるヤクザの一人が怯えながら諭すもかえってそれがフィスクの怒りの火に油を注いだ。バン!と机が壊れるほどに拳を叩きつけ恫喝するフィスクに、ヤクザは怯え失禁しながらドゲザした。

 

「ドーモ、フィスク=サン・・・ってありゃ、取り込み中でしたかね?」

 

 そんな中、このキンググリズリー・ヤクザクランの事務所にエントリーしてきたのは世紀末めいた服装に、目元にはドミノマスクを装着した男。その胸元には、クロスカタナのエンブレム!

 

「あ・・・これはドーモ、『コメディアン=サン』。いや、別に何でもない・・・」

 

 その男、コメディアンを見るや否や、フィスクは冷汗を浮かべ出迎える。一方、ドゲザしていたヤクザはと言うと・・・

 

「ア、アイエエエエエエエエエエ!!?」

 

 ナムアミダブツ!NRSを発症し、失禁。

 この弱肉強食ヒエラルキーの頂点たるヤクザが怯え、失禁するほどのアトモスフィア。

 このコメディアンなる男、ネオサイタマを牛耳る犯罪組織『ソウカイヤ・シンジケート』所属のニンジャである!コワイ!

 

「そう言えば昨日、お前の所のモンがスパイダーマンに叩きのめされたんだってなァ。ニュースで見たぜ?」

「・・・ッチ、早く用件を言え」

 

 触れて欲しくない自分のクランの汚点に、フィスクは顔をしかめながらコメディアンに問いかける。本来ならば、ヤクザスラングをまくし立て殴りかかっていたが、相手はニンジャだ。モータルであるフィスクには勝ち目はない。いくら、頭に来ようともフィスクはその事を充分理解していた。

 

「そこでだ、お前に提案を持ちかけてきたんだ。スパイダーマンを倒して、クランを持ち直させる。実際アブハチトラズな方法をな」

「詳しく聞かせてくれ」

 

 コメディアンの言葉に訝しみながらも、フィスクはコメディアンの案に賛同した。スパイダーマンを倒し、カスカベシティを再び自分達、キンググリズリー・ヤクザクランの勢いを取り戻し、再びカスカベシティを我が物とする為に・・・。実際、藁にも縋る思いな。

 

 

―そして、時間は流れ夕方。視点は信之介の方へ。

 

 学校が終わり、信之介達はカスカベシティのはずれにある丘に来ていた。

 

「やぁ、来たよ。『ガリアおじさん』」

 

 その丘にポツン。と建っているお墓、『ガリア、ここに眠る』と掘られたそれを撫でながら信之介は語りかける。

 

「久しぶり、今日は何の日か覚えてる?3年前、オラが貴方に助けられた日・・・そして、オラがこの道を歩むって誓った日だゾ」

 

 そう言いながら、信之介は3年前の出来事を思い出す。そう、自分達が『ガリア』とであった時の事を。

 

『ボーン・イン・ザ・スパイディ』 #2に続く。




 次回、本格的にスパイディ誕生秘話が語られます。
 ガリアとは一体何者なのか?どうやってしんちゃんがガリアから、ニンジャソウルを託され、スパイダーマンとなったのか?!
 そして、コメディアン=サンが持ちかけてきた提案とは!?
 乞うご期待!
 では、次回もお楽しみに。
 それでは~。
 

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