これは、その当主を目指す麗しき青年の物語――――
テーマは、鬼畜系調教師の一族がラブライブ!時空にいたら
国立音ノ木坂学院
秋葉原近くにある伝統ある女子校だ。
国立でありながら、理事長の裁量が大きい私立的な側面がある。
そして、近々廃校を迎えようとしている。
理事長は美人で有名で、彼女をカタに資本を提供しても良いと言う資産家もいないわけでは無い。
確かに昔から美人だった。
ここらで私の話をしよう。
私は瀬源という資産家の家に生まれた。
せばらと読むが、その由来はせげん――――
身元を隠して数世代前に、名家たる園田家と縁続きになっても、その業はひっそりと続いている。
園田家と言えば海未には悪いことをしたと思う。
この度、瀬原を継ぐ試験として、私は音ノ木坂を手に入れ、そこにいる女達を横流しする。
海未の友人達を出荷するということになる。
発育の良い新しい三年生の数名には、既に予約が入っているものもいる。
あの、幼児性愛者共め。
「早く卸せ」。
彼らの薄汚い欲望が私に要求するのだ。
…その掃き溜め共に少女達を突き落とす私が言えたことでは無いのだが。
婚約者と語らいつつ、その友人を奈落へと墜とす。
それを為すだけの顔の良さと、手管、そして腐りきった魂は先祖から受け継いでいる。
海未は正義感溢れる娘だ。
「栞兄さん」なんて、真実を知ったらもう彼女は呼んでくれないだろう。
園田家の財産の多くを根回しにより、手に入れるその手前まで来ている。
後は園田の娘を墜としきれば、私の言いなりにすれば、園田は私の物だ。
そして、名家の名前を堂々と使える立場に立った、私と海未の子が、更に上の階層にいる女を墜とすのだ。
それが、父と祖父が期待した私の役割だ。
瀬原家では、次期当主候補である嫡男には、女性の名前が代々付けられる。
それは、喰らわれる女の名前を体感して、その上で女を売り払う事への昏い愉しみが故だ。
反吐が出る様な邪悪だが、それを受け入れる私もまた邪悪でしか無い。
実の母は病死したと聞いたが、本当のところは知るよしも無い。
母を名乗っていた女は祖父の妾で、私に小学生を終えたと同時に、手練手管を教え込んだ。
思うところはあるが、母として参観日にでてくれた事は感謝している。
それ以外の親族は、私に役目以外を求めなかった。
息子の担任教師を自分の女にしていた父は、息子には目もくれず、参観日に来ていたシングルマザーや他の教師を物色していた。
同級生の母親がその後失踪したという話を聞いて、ああやっぱりそうなったかと感じた。
我が父ながら、どうしようも無い男だった。
私と同じ、ゴミ人間だ。
そんな、どうでも良い過去を抱えながら、私は現理事長である南理事長に、融資と引き換えに経営権を移行することと、議員に根回しした事は伏せた上で国立から私立に変わる事も伝えた。
「不安が無いと言えば嘘になるけど、栞くんになら任せても良いかしら。
お願いするわね」
すまない南のお母さん。
この売却に絡んだ議員に、貴女と娘さんが出荷される事は予約済みだ。
…南の顔と、海未の顔が浮かぶが、今は気にするべきでは無い。
これは
全てが終わったときには、最早逃げ場は無く、瀬原という蜘蛛の糸を巻き付けられ、干からびるまで啜られる。
見知った顔の人生を台無しに出来る能力があり、それを拒む意思がない。
昔何度も貴女が出してくれたお茶の味は覚えている。
だけど、今飲んでいるお茶は、まるで味がしなかった。
「あー、やっぱり栞さんが来てるー。
お母さん、言ってくれればよかったのにー」
「ことり、此処では理事長よ。今、大事な話をしているの」
芯はあるが警戒心が無い娘だ。
私の技術をもってすれば、陥落は容易いだろう。
まさに鷹に襲われる前の小鳥だろう。
母親も、私を警戒していないところを見ると、それは親譲りだ。
「あっ、そうだ。栞さんが来てるって、海未ちゃんに教えてあげなきゃ」
私は昔から海未の、そして時折南の面倒を見ていた。
だから彼女はそう言ったのだろう。
だが、それは…
「止めてくれっ!!」
その声は、――――思ったよりも大きく出た。
「あ、ああ、悪かったよ。
今は大事な仕事の話をしているから、ね」
油で穢れた海鳥は、空へ飛び立つことは無く沈むだけだ。
空の青にも、海の青にも染まらず漂う鳥とは、戦前の若山牧水の詩だったか。
実に、下らない感傷だ。
何故今私が海未に会いたくないのか、自分でも理解できない。
私は既に、この学園の生徒の一人には接触を図っている。
無論、販売目的でだ。
関係があるとすれば、それか?
いや、どう関係があるのかがわからない、保留だ。
しくじった。
南は理事長の娘。
娘の小鳥に対して怒鳴ったことは良い印象を与えないだろう。
それに弱い小鳥は、大抵臆病なもので、一度警戒されてしまえば捕らえるのは困難になる。
南は少し驚いた顔をして、理事長も似たような顔をしている。
仕方ない、手札を切るか。
「いや、この際言っておくのが良いかも知れません。
私、瀬原栞は、――――――園田海未の婚約者なのです。
ああ…、これは、家が決めたことで、私も彼女も、未だ受け止められていないので、少し会うのは気まずいと言いますか…」
嘘では無い。
海未に確認されればバレる嘘を、この商談の最中に相手に聞かせて信頼を失う意味が無いからだ。
若干俯きがちに照れた苦笑を顔に貼り付けたまま、二人の顔を視界の端で観察する。
先程以上にショックを受けた南と、その様子に何かを察した南の母。
それが何に起因しているか、気が付かない程、私は鈍感でも無い。
それが、私の生業だからだ。
「はは、真逆この時代に家が婚姻を決めるとは私も信じられませんよ」
「そうね、私も結婚は当人同士の合意があっての事だとは思うわ。
良くないと思うのよ、そういうのは」
それは、泣きそうな貴女の娘の為ですか、南理事長。
やはり、この人達は
私が思うように、縛られてくれる。
瀬原という蜘蛛の糸に絡まった蝶のようだ。
実に哀れな女達だ。
私という呪いに気が付かないまま身を浸す。
こんな簡単すぎる試験など、私に相応しくない。
そう言ってしまいたいが、既に音ノ木坂の女性を予約している顧客達がいる。
それに逆らうことは出来ない。
瀬原自体が呼び込んだ闇に、私が喰われてしまうだろう。
それ程までに業は深いのだ。
「ですよねぇ。
海未ちゃんも未だ未だ恋愛を楽しんだりしたいでしょうし、五歳も年が離れた相手というのは厳しいでしょう。
まあ、この話はこれくらいにして、来週には伝手がある弁護士と契約書を持ってきますね。
それでは」
「え、ええ」
逃げるように場を去ったが、来週に契約を終える言質は取った。
それに、今日はこれくらいが潮時だろう。
未だ、院長の妻とその娘や、元アイドル候補生の母とその娘など、金になりそうなラインアップは多くある。
私がこの学院を支配した暁には、いずれ…
最近はスクールアイドルなるものがあるそうだ。
例え成功しないにしても、スクールアイドルという肩書きがあれば商品価値は跳ね上がる。
奇麗所を集めてやってみさせるのも良いだろう。
また、芸能関係の権力者に女を宛がう伝手も出来る。
確か、商品リストの中に大家族の者が居たな。
余裕が無いのは良いことだ。逃げ道が少なければ追い詰めやすくなる。
私が瀬原らしい思考を深めていたところで、私の後ろから何者かが目隠しをしてきた。
「だーれや」
「こんなことを私にするのは、君しかいないだろう希」
「正解♪」
この少女は東條希。
――――――――――最も、出荷予定時期が早い女。
この多感な時期に、独り暮らし。
寂しさを拗らせて、危険を諫めて護ってくれる大人がそばにいない。
心の隙間に入り込み、信用させて依存させるのは難しいことでも無かった。
そもそも、この発育の良い肉体で、独り暮らしなどと、男にとっては良いエサだ。
正直、何時でも食える状態には持ってきている自信はある。
今日辺り、そろそろ調教を開始して、他の女どもを引き込む手駒にするのが良いだろう。
「タロットが今日はラッキーデーってでたんやけどな、栞さんに学園で逢えるなんて、うち本当にハッピーや」
……来週くらいでも良いか。
…別に、情が出たわけでは無い。
東條を優しく振りほどいて、私は今度こそ帰ることにした。
事務所の人間と早く話を付けたい。
全員瀬原の分家であり、私側の人間だ。
話していて、思考が鈍ることも無い。
父が事故死して、祖父も危うい中、私が当主になれなければ、その空いた枠を分家達は狙いに来るだろう。
そういった、悪意と害意が前提の関係の方が余程手を進めやすい。
それにしても、今の時点で、東條が学院でも分別を付けれないほど私に入れ込んでいるのは成果だ。
しかし、女子校で新しい男性理事長が特定の女子生徒と距離が近いのは、対外的に良くないな。
先程の光景、見られてはいないだろうか――――――
「何、してるんですか栞さん」
「……海未」
別にやましいことはしていない――――いや、やましいことしかしていないが、私は取り敢えず未だ童貞だ。
育ての母から学んだ手練手管は全て座学であったし、清い身体だ。魂とか血とかが腐ってるだけだ。
だがしかし、婚約者が入る身で、別の女性から後ろから「だーれだ」とかされていて、やましくないのだろうか?
いや、やましい。
けれど問題は無いだろう。
やましいことしか無い私にとって、やましいこととは正しいこと。
この程度、抜けられるのなら、園田家を手中に収めることなど出来ぬ。
「こんにちは、海未
海未もこの学院の生徒だったね」
「え、ええ。こんにちは――――じゃなくて」
園田海未は生真面目なツッコミ気質だ。
そして常識人だ。
故に、適当な相手には厳しく当たる。
それは昔から知っている。
ならば、此方も真っ当にしていれば良い。
「この学院を私が買い取ることになりそうだから、足を運んできたんだよ」
「えっ」
「それと、家が決めたことだけど、海未が望まないのなら破棄しても良い。
私は海未の意思を尊重するよ。
祖父のことは心配しなくて良いから」
「え――――」
その生真面目な正確から、全てのことを完璧に対処しようとする。
だからキャパシティを超える案件を幾つも放り投げてやれば、全てを受け止めようとして失敗して止まる。
彼女の強みも、彼女がどうすれば転ぶかも理解している。
そして、女性絡みのことで文句を言おうとしたスタートに被らせるように、締めの案件は再び私達の関係に引き戻す。
一杯一杯になった海未は可愛――――情けない姿だ。
この状況で、婚約者である事を盾に、他の女性との距離を指摘するという本来の最善手段は取れない。
特に、私の側が別に婚約を絶対にと求めていなくて、海未の側の意思次第では破棄できると示されたこの状況では。
実際には園田の家を喰らうことは、瀬原の家での確定事項で、私が海未との結婚を絶対に必要としているのだが、悟られなければ同じだ。
求めた側が足下を見られる。
故に、此方はどちらでも良いという余裕を見せ続けることで、相手だけを動かし続けることで主導権を取る。
他の女どもは、此方から動いても良い。
だが、園田海未だけは必ず海未自身に動いて貰わなければならない。
「私は――――――っ!!」
「海未、落ち着け、ここは学院の中だ。
新しい理事長になる私と、君が
誓ってその様な事はしないが、疑われないのなら、それがそもそも良いとは思わないか?」
海未の両肩に手を置いて宥める。
転ばせておいて、タダでは起こさない。信じる者の足下を掬う。
そんな私の裏の顔にも気が付かず、不安げに瞳を揺らす彼女に優しく諭す。
「賢い子だ、それで良い」
そして、これで希にも私達が
余計な嫉妬をされては、帰って焦って距離を詰められたり、独占欲を発揮されては困る。
海未の頭を撫でた後、私はそのまま彼女の横を通り過ぎて学院を出た
設定
瀬原栞
BISH●P、LI●UID、G●ILTY、FRI●L作品に出てきそうな調教師の一族の青年。
一族は調教と脅迫によって女性を牝奴隷に仕立てて出荷する事を生業としている。
その知識と血筋は女を落とす為の専用機械。
と言えば、それっぽいがペーパー調教師で童貞。
悪人を自負しているが、微妙になりきれていない。つまりは道化。
育ての母
今は亡き栞の実の母の妹。
瀬原の家に弄ばれたが、今では逆に実権を握りつつある。
保健の教科書を甥の美少年に教えるという羞恥プレイを楽しんで覚醒した。
祖父
瀬原家秘伝の毒を盛られたかのように、最近体調が悪い。
数百人の女性の人生を弄び狂わせた外道。
父
謎の交通事故で死亡。
思い当たる節は多すぎて、誰も事故とは疑っていない。
部下
童貞の坊ちゃんが、一流の調教師ぶる様を生暖かく見守っている集団。
善人では無い。