楽園の素敵な先代巫女   作:TS百合好きの名無し

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先ほど確認したら一話目から評価を入れてくださった方が二人もいて、とても嬉しかったです。次回以降も頑張ります。

今回は妖精回。


妖精たちと巫女

 

 

 

 博麗霊華の朝は早い。

 

 日の出と共に起床し陽光を浴び、愛娘の寝顔を眺める。

 続いて衣服を紅白の巫女服に着替え、縁側で静かに始める瞑想。終われば再び愛娘の寝顔を癒しとばかりに眺め、崩れた毛布をかけ直してやる。

 その後は台所へ向かい朝食を作り出す。しばらくすると目を覚ました愛娘が寝間着のまま目をこすりながらふらふらと匂いに釣られて台所へやってくる。

 

「おあよぅ、おかあさん」

「おはよう霊夢。もう出来るから早く着替えてらっしゃい」

「はあーい」

 

 少しして出来上がった朝食を持って居間に向かえば霊夢はすでに母親と同じ巫女服に着替えて待っていた。

 

「ん」

「ふふ、ちょっと待っててね」

 

 ちゃぶ台に朝食を置いた霊華へと霊夢が大きな赤いリボンを差し出す。それを彼女は受け取り、霊夢の髪に結んでやる。霊夢は母親がくれたお気に入りのリボンを彼女に結んでもらうこの瞬間が大好きだった。

 

「これでよし。今日も似合ってるわよ霊夢」

「ん!」

 

 どや顔の愛娘の頭を軽く撫で、彼女たちは朝食を食べ始めるのだった。

 

 

 

 

「霊華ーーー!」

 

 神社内に響く元気いっぱいなおてんば娘の声。

 霊華が境内を掃いていた箒の手を止めて声の方を見れば青と緑の見知った顔の妖精二人の姿が目に入った。

 

「霊華! 今日も遊びに来たわ!」

「お、お邪魔します……」

「ああいらっしゃいチルノ、大ちゃん」

 

青いリボンを結んだ水色のショートヘアに青い瞳、背には六枚の氷の羽がついた元気っ娘が氷精チルノ。緑の髪を左側でサイドテールにまとめた大人しそうな娘が大妖精。二人とも今代の巫女と親しい間柄の妖精であった。

 

「私もいるぞー」

「ルーミアもいらっしゃい」

 

 遅れてルーミアも姿を見せた。集まったメンバーを見て霊華は考える。さて、今日は何をして遊んでやろうかと。

 

「……霊夢も誘って『だるまさんがころんだ』でもしましょうか」

「『だるまさんがころんだ』……ですか?」

「何それ?」

 

 疑問符を浮かべるチルノたち。どうやら『だるまさんがころんだ』を知らないらしい彼女たちにルールを説明し、霊夢も呼んで五人で遊ぶことになった。提案者の霊華は鬼役である。

 

「始める前にもう一度聞くけど、みんなルールは大丈夫?」

「問題ないわ!」

「大丈夫です」

「わはー」

「ばっちり!」

 

 それぞれの返事を聞き、大丈夫だと判断した霊華は開始の声を上げる。

 

「それじゃ……始めの一歩!」

 

 

 

 

 大妖精にとって、博麗霊華という人間は姉のような母親のような不思議な存在だ。

 

 妖精とは「大自然の具現」「自然現象そのものの正体」であり、基本的に騒がしい場所を好むイタズラ好きな存在である。加えて、無垢な心と無限の再生を持つ妖精は知能が低く非常にか弱い存在だ。それこそ大人の人間に簡単に負けてしまうほどに。

 しかし何事にも例外は存在し、妖精でありながら強い力を持つのが彼女の友人のチルノだ。大妖精も妖精の中では若干大きい力を持つがチルノほどではない。そしてそれは人間側にとって好ましくない事実であった。

 幼くいたずら好きな妖精が力を持つというのは、それだけ被害を受ける人間側の危険が大きくなるということ。チルノが何気なく飛ばす氷の塊一つでも人間が当たればただでは済まないのだ。そのため人里でのチルノの扱いは、『可能な限り近づくな、癇癪を起こしたらすぐに逃げろ』とかなり警戒されたものになっており、彼女は子どもからも大人からも避けられていた。

 

 だからチルノが巫女の彼女になついたのはある意味必然だったのかもしれない。

 

 ある時見かけた空を飛ぶ珍しい人間に興味を持ち、大妖精の制止も聞かず危険ないたずらを仕掛けたチルノ。驚くことに飛んでくる無数の氷を涼しい顔で避け続けた巫女はいたずらを簡単にあしらい、その人柄であっという間にチルノと打ち解けてしまった。

 子どものいたずらや癇癪一つで死ぬほど博麗の巫女はやわじゃないと笑う彼女は、チルノたちを当たり前のように受け入れてくれた。

 

 甘えられる心の拠り所が増えたおかげか、これまでよりも落ち着きを見せるようになったチルノを見て、巫女に感謝した大妖精。そんな彼女もまた巫女に対して、子どもが母親に抱くような深い親愛の情を抱いていた。これまでずっとチルノの友人兼保護者的な立場であった彼女は常に甘やかす側で、自分が甘えられる相手がいなかったのだ。そこに現れた巫女が彼女にとっても特別な存在となるのにそれほど時間はかからなかった。

 

「──だーるまさんがころんだっ!」

 

 言ってすぐさま後方を振り返った巫女に妖精たちは慌てて動きを止める。それを確認して再び前を向いた巫女に大妖精はほっと一息つく。

 

(い、今のはちょっと危なかったかも。でもセーフ)

 

 今も、こうして子どもらしく彼女と遊ぶことに大妖精は心地良さのようなものを感じていた。

 

 やりとりの回数を重ねるごとに近づく彼女との距離。口には出さないが、鬼である彼女に最初に触れるのは自分がいいなと思いつつ真剣に歩みを進めていく。

 

「だるまさんがー」

 

 あと少しだ。あと少しで彼女にこの手が届……

 

「ころんだっ!」

 

 次の瞬間、大妖精の目に映ったのは爆笑不可避の巫女必殺の変顔であった

 

「ぶふぉおっ!?」

 

 妖精たちは残らず全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 私の渾身の顔芸が炸裂しまくったチルノたちとのだるまさんがころんだ(あの後も何度か私が鬼でリベンジを申し込まれたがすべて顔芸で全滅させた)を終え、私は彼女たちに人里で買った金平糖を振る舞い、共に室内で寛いでいた。すでに霊夢とルーミアの二人は仲良く並んで夢の国へと旅立っており、大ちゃんが毛布をかけてあげていた。

 

「あー気持ちいい。チルノはひやっこいわねー」

「とーぜんよ! あたいはさいきょーなんだから!」

 

 私の膝上に腰かけ背中を預けてくるチルノを軽く抱き締めるとひんやりとした冷気が肌に触れた。さすがに氷の羽根については邪魔なので今は引っ込めてもらっている。ああ、ひんやりして気持ちいい……暑い日には重宝するわねえ。

 

「んー?」

「……」

 

 チルノを抱き締めたまま、ふと大ちゃんの方を見るとどこか羨ましそうな顔でチルノを見ており、時折チラチラと私に視線を向けては恥ずかしそうに俯いてもじもじとしていた。おそらくは自分も甘えたいが、チルノがいるので遠慮して悶々としているのだろう。なんだこの可愛い生き物。愛でなきゃ(使命感)。

 

「チルノ、一旦降りてもらってもいい?」

「……? うん、いいよー」

 

 チルノを降ろした私は空いた膝をぽんぽんと叩きながら大ちゃんへ手招きをする。

 

「大ちゃんカモン!」

「えっ!? わ、私はその……」

「来てくれると私は嬉しいかなー」

「……し、失礼します」

 

 口では遠慮しつつも、嬉しそうな顔で寄って来た大ちゃんを膝に乗せ、そのまま背後からぎゅっと抱き締めれば二つのたわわな果実が腕に当たる。私の腕の中にすっぽりと収まるほど小柄な妖精の身でありながらこのボリューム……胸が大ちゃんとはよく言ったものだ。

 

「いや本当に、なんでこんなにおっきいのかしらね?」

 

 もみっ。

 

「んんっ!? れ、霊華さん!?」

「弾力もあって揉み心地も完璧。相変わらず良いものを持ってるわね大ちゃん。ずっと揉んでても飽きないわ」

 

 もみもみもみもみ。

 

「ひゃ、あっ、んん! んあっ……!」

 

 ……名残惜しいがこの辺でもうやめておこう。感度が高いのか大ちゃんの息がすでに荒いし。セクハラにも限度というものがある。そう思い手を止めようとした時だった。

 

「も、もう少し優しく……お願いします」

 

 大ちゃんがそう言って私の手に触れる。その頬は上気し、潤んだ瞳が切なげにこちらを見つめていた。

 

 …………はっ!?

 

 やばい。今のは少しムラっときてしまった。だがしかし、鋼の精神で私は手を止める。……いや大ちゃん、なんでちょっぴり残念そうな顔してるの? 続きとかないからね? あなたそんな娘だったっけ?

 

 なんだか妙な空気になってしまったのでひたすら大ちゃんの頭を撫でて誤魔化すことに。結果、長年の経験で培った撫でスキルのおかげで瞬く間に大ちゃんを落ち着かせることに成功した。

 

「んぅ……」

「よしよし、いいこいいこ……このまま寝てしまいなさい」

「うー! 大ちゃんばっかりずるい!」

「え、ちょっ」

 

 大ちゃんが落ち着いた頃になって今度は再びチルノが飛び付いてくる。それを慌てて受け止め、大ちゃんと同時に可愛がる……いつも通りの騒がしくも楽しい日常の一コマ。

 

 幻想郷は今日も平和だ。

 

 

 ……願わくはこの幸せがいつまでも続きますように。撫で続けられ、あっという間に寝息を立て始めたチルノたちを見ながら、私は静かに微笑んだ。




妖精たちは可愛い。

次回はこいしのターン。
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