楽園の素敵な先代巫女   作:TS百合好きの名無し

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こいし(514)の日に彼女の回を投稿し、その日の夕方に日刊ランキング作品を読み漁ろうとハーメルンを開いたらこの作品がランキング(なんの偶然かその時ちょうど14位)に載ってて死ぬほど驚かされました(その時点でお気に入り登録数とUAが3倍くらいに増えててさらにビビる)
こいしちゃん好きの同志が多くて嬉しい。

その後もこの作品の日刊ランキングの変動を眺めていましたが、
14日 14位、11位
15日 5位 15位 44位
16日 51位
どれもこれも「514」関連の数字だったという事実に気付いてまた驚かされた作者です。

また、誤字報告をしてくださった方、素敵な感想をくださった方々もありがとうございました。励みになってます。


それでは、今回から地底編の開始となります。












巫女、地底へ

 

 

 

 こいしを探してやって来たという赤毛の猫耳少女。彼女は自らを火車の火焔猫燐(かえんびょう りん)と名乗った。

 

「気軽にお(りん)って呼んでおくれよ姐さん」

「ええ、よろしくねお燐」

 

 普段は地底にある地霊殿という場所で暮らしている彼女が何故このような場所にいるのか。その原因はどうやらこいしにあるようだった。

 お燐曰く、こいしはすでに一年近く実家であるはずの地霊殿に帰宅していないらしい。元々無意識で行動する彼女については、常にどこで何をしているのか分からないというのが普通なのだが、それでも数ヶ月に一度の頻度で地霊殿にその姿を見せていたとのこと。しかし今回、普段なら見かけるはずの姿を一度も見ないまま一年近くが経過。もしや彼女に何かあったのではないかと心配になった姉の古明地さとりはペットのお燐に妹の捜索を命じたらしい。

 

 捜索を命じられたお燐はすぐに地底中を駆け回りこいしの姿を探した。しかしそこで何の成果も得られなかったため、地上へ場所を移し再び捜索開始。主人のために必死で捜索を続けるお燐だったが、他者に認識されないことが最大の特徴の対象を見つけることなど当然困難であり、途方に暮れていたという。そんな時、人里の者に『本当に困っているならば博麗の巫女に頼ってみてはどうだろうか?』と博麗の巫女について教えられて……

 

「……ダメ元でここへやって来たらいきなりこいしを発見したわけね。……こいし、一年近くも戻っていないって本当なの?」

「うーん……無意識で行動してる時のことってあんまり覚えてないんだよね」

「お願いしますこいし様、一度地霊殿に戻ってさとり様に会ってあげてください。最近のさとり様は本当に元気がなくて……」

「お姉ちゃん……」

 

 心配をかけている自覚はきちんとあるらしく、姉の話を聞いてこいしの表情が暗くなる。それを見ながら私は彼女たちに声をかけた。

 

「それならすぐに帰ってあげなくちゃね。家族は大事にするべきだもの。こいし……あなたならよく分かっているはずでしょう?」

「……うん」

「大丈夫よ、私もついて行ってあげるから。一緒に謝りに行きましょう? ついでにこいしのお姉ちゃんにも会ってみたいし」

「「えっ?」」

 

 私の発言に揃って驚きの声を上げ、こちらを凝視してくる二人。

 

「つ、ついて行くって……正気かい姐さん? 地底は地上を嫌う妖怪や、忌み嫌われて封印された妖怪、地霊や怨霊が蔓延る場所。当然地上の者を良く思わないやつは少なくないし、人間が行くにはとてつもなく危険な場所だよ?」

 

 地底の危険性を語り、本気なのかと問うようにこちらを見てくるお燐に私はしっかりと頷きを返した。

 

「よく知ってるわ。その上でついて行くって言ったのよ。地上と地底には不可侵の条約が結ばれているけれど、それはあくまで妖怪同士の条約。人間の出入りは許されているからね」

 

 元々地底世界については私自身興味があった。それに彼女が地上にいる間、一番長く共にいたのはおそらく私だ。彼女が帰宅しなかった理由は私にもあるような気がする。例えば新しくできた友人と過ごすのが楽しくて家のことをすっかり忘れていた、とか。

 

「霊華が一緒に来てくれるのは嬉しいけれど……本当に大丈夫? 私、霊華が傷つくところなんて見たくないよ」

「こいしは心配性ねえ。腕に覚えがなきゃこんなこと言わないわよ」

「……絶対に大丈夫?」

「もちろん」

 

 不安そうな表情で見つめてくるこいしに向けて微笑み、くしゃりとその頭を撫でてやる。私は大丈夫だと安心させるように。それで彼女はようやく納得してくれた。

 

「……姐さんはずいぶんとこいし様になつかれているんだねえ。こんなこいし様はあたい初めて見たよ」

 

 そんな私たちをお燐は心底驚いたような顔で見ていた。

 

 

 

 

 こうして地底に行くことになった私たちだったが、今から行くにはもう時間も遅いので出発は明日ということになり、私は『こちらの姿でいる方が楽』なのだと二又の尻尾を持つ黒猫に変身したお燐とこいしと共に室内に入っていた。

 

「ネコさんだ!」

 

 今のは猫状態のお燐を見た霊夢の第一声。実は彼女、大の猫好きなのである。

 

「わあ、わあー!」

 

 目を輝かせてお燐を見る霊夢を見て私は小声で膝の上に声をかける。

 

「お燐、申し訳ないのだけど私の娘と少し遊んでもらってもいいかしら?」

「……にゃあー」

「ありがとう」

 

 私の膝で丸くなっていたお燐を優しく持ち上げ、そっと霊夢に渡す。

 

「優しく扱ってあげてね」

「うん!」

 

 お燐を笑顔で受け取った霊夢は彼女へと顔を近づけて話しかける。

 

「にゃー」

「……にゃー?」

「にゃーにゃー♪」

「にゃーにゃー」

「やだ、うちの娘めっちゃ可愛い」

 

 にゃんこ語霊夢可愛すぎか! ……チリ紙どこにやったっけ? 鼻血でそう。

 

「ぎゅー」

「にゃあん」

「かわいいっ!」

 

 おまかわ。お燐に頬擦りしつつ歓声をあげる霊夢が尊い。

 

「……ふぅ」

 

 さて、霊夢&お燐のじゃれあいで癒されたことだし、今のうちに明日のための準備を終わらせておこうか。

 

「こいし、ちょっと外すから霊夢たちを見ていてくれる?」

「いいよー」

 

 こいしにそう言い残して向かったのは神社の本殿前。そこで私は数枚のお札を用いて転移陣を設置する。これは私が神社を留守にする際に必ず設置するもので、緊急時の呼び出しがあればすぐさまこれを利用してこの場所に戻ってくることができるのだ。ちなみに呼び出し方法については、事前に人里の人間に配ってあるお札を持った状態で神社の鳥居をくぐると私の持つお札が反応するという仕組みである。

 陣の設置後、私は誰もいない空間に向かって呼びかけた。

 

「紫ー! ちょっといいかしら」

 

 やや間が空き、目の前で唐突にスキマが開き彼女が顔を出す。彼女のことだ、おそらくすでにこちらの事情はある程度把握しているとみていいだろう。

 

「何かしら霊華」

「明日地底に行くことになったから、いつも通り霊夢のことをお願いしたいの」

「あなたが地底にねえ……」

 

 手に持った扇子で口元を隠して呟く紫。どことなく面白がっているような声色だった。

 

「本来なら妖怪同士の問題にあまり深く関わるのは……と言いたいところだけど、今回に限ってはちょうどいい機会ね」

「ちょうどいい機会?」

「こっちの話よ。気にしなくていいわ」

 

 そう言われると気になるんですが。

 

「明日は大変な1日になるでしょうけれど、きっとあなたなら死にはしないわね」

「……私は友人を家に送り届けに行くだけなんだけど」

「ええそうね。でも、本当はあなたも分かっているのでしょう?」

 

 ──彼らがのこのことやって来た地上人、それも人間をただで見逃してくれるわけがないものね……そう言って紫が楽しげに目を細める。

 最後に霊夢のことはいつも通り見守っておくわと言い残し、彼女はスキマを閉じて消えるのだった。

 

 

 ……彼女は明言こそしなかったが、あの様子だと何故か私が地底で戦う状況を望んでいるような気がした。

 

 

 

 

 地底への入口──それは妖怪の山にある。ただしその存在は隠蔽されており、詳しい場所は妖怪の賢者をはじめとするごく一部の者たちが知るのみ。実を言うと私も詳しくは知らないのだが、今回はお燐という案内人がいたおかげで迷うことなくその場所へ来ることができた。

 

「ここが地底への入口だよ」

 

 お燐が示した先には、底がまるで見えない大きな縦穴が広がっていた。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「あ、ちょいと待っておくれ。この先にいる知り合いに話を通した方がいいから姐さんたちはあたいの後ろをついてきて欲しいんだ」

「了解よ」

 

 お燐たちと共にいざ地底へ。私は躊躇うことなく穴へと身を踊らせ、下へ下へと一気に落ちていった。

 

「結構深いわね……」

「姐さん、そろそろ明かりを用意した方がいいよ」

 

 先を行くお燐に言われ、霊力で光源を作り出して自分の周囲へ飛ばす。そうして最初に目に入ったのはそこかしこに張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣だった。

 それらに触れないように気をつけながら少し降りるとようやく地面に足をつけることができた。

 

「……おお? こりゃ驚いた。お燐、あんたの後ろにいるのはもしかしなくとも人間かい?」

 

 奥の方から聞こえてきた謎の声。私はいつでも動けるように身構えつつ、暗闇に慣れてきた目でその声の主の方を見る。暗がりから現れたのは金髪を茶色のリボンでポニーテールにまとめ、黒い服の上からこげ茶色のジャンパースカートといった格好の少女だった。

 

 ヤマメですか(歓喜)

 

「姐さんは人間で合ってるよ。ただ、手を出すのはできればやめて欲しい。一応私らの客人なんだ」

「ふうん……」

 

 もの珍しそうにこちらを見てくるヤマメ。敵意などは感じられなかったので私も構えを解く。

 

「紹介するよ姐さん。彼女は黒谷ヤマメ。土蜘蛛の妖怪であたいの友人さ」

「よろしく。私は博麗霊華、見ての通り人間よ」

「やあよろしく人間。霊華って呼んでもいいかい?」

「構わないわよ」

「それじゃさっそく聞くけど……霊華は何しに地底へ?」

「この子を家に送り届けるついでに家へお邪魔させてもらおうと思ってね」

「この子? って、その子は……」

 

 ここで初めてヤマメの視線がこいしに向けられる。

 

「こんにちは、古明地こいしよ」

「古明地だって? ……ああ、あんたがお燐の探していた地霊殿の主の妹か」

 

 こいしの紹介を受けたヤマメの目にどこか警戒するような色が宿る。彼女の様子からどうやらこいしとは初対面のようだが、やはり人妖が覚妖怪へ持つ悪いイメージというものは大きいらしく、彼女の顔は強張っていた。これは少しまずい展開になってしまったかと不安になったが、ここでお燐が再び口を開いた。

 

「ヤマメ、そんなに警戒しなくてもこいし様に心を読む能力はないって前に説明したはずだけど」

「あ……そうだったね。ごめん。どうにも心を読まれるあの感覚が私は苦手でさ」

 

 横からかけられたお燐の言葉を聞き、ヤマメは決まり悪そうにこいしを見る。こいしの方はと言うと、特に気にした様子もなくヤマメを見ていた。

 

「悪かったね。気を悪くしたなら謝るよ」

「気にしないでいいよ、そういう反応には慣れてるもの。むしろ謝ってくれる分あなたはいい人なんだって思ったから」

「……そっか。私も、あんたが本当にあの妖怪の妹とは思えないほど良いやつに見えるよ」

「昔はお姉ちゃんも今よりずっと素直な性格だったんだけどね」

「あいつがかい? まるで想像できないねぇ」

 

 こいしの言葉をきっかけに、先ほどまでの空気が嘘のように笑い合う二人。いつの間にか彼女たちはお互いに打ち解けていた。うん、二人の雰囲気が良くなって私も安心である。これもまた、こいしの持つ明るい人柄のおかげなのかもしれない。

 そうして、心なしかすっきりしたような表情になったヤマメは快活な笑みを浮かべて私を見た。

 

「遅れちゃったけど、ようこそ地底へ! 命の保証はしないけど歓迎するよ!」

 

 

 

 

 

 

 




歓迎される(ただし命の保証はなし)
こいしちゃんはとってもいい子です。
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