やっちゃったんだぜ感はあるのでスッキリしたが思いっきり後悔はしてる。
「ぐぁ!? 唐突に殴ってくるとは貴様は何だ!」
「くく、いやぁ金に困っていてよぉ。ちょっと貸してくれねぇか太一くぅん?」
「誰が無法者なんかに貸すものか!」
「おっと、いいのかなぁ。そんな事言うと君の大事なこの一升瓶が粉々になるぞぉ?」
「そ、それは俺が買った令和じゃないか、いつの間に……返せ!」
「金を貸してくれねぇんだったら割るしかねぇよなぁ」
「そこまでだ!」
暴力はびこる現場に正義の声がとどろき叫ぶ。
暗雲垂れ込める路地裏に神々しい光を背景に5人の勇者の影が伸びる。彼らの名は……!
「元号戦隊、レイワマン!!」
平成から令和へと譲位によって移り変わりし時、人々は希望と歓待を持ってそれを迎え入れた。
デパートはセールをし、日本は祝賀ムードに包まれ、一般参賀はそこらのアイドルなぞ目でもないほどの国民が集まった。
その時、彼らは意気揚々と世界に向けて自分たちの存在をアピールしたのだ。その名は、
「元号戦隊、レイワマン!!」
「二回も言わなくていい」
「馬鹿なぁ、レイワマンだとぅ? ただのYtuberではなかったというのか……」
無法者としてマッポーに生きる男は、驚き慄いた。まさか特撮ヒーロー風の地元のゆるキャラではなかったのかと。
各々特色のあるポーズを付けてスマイル&マッスル。背後では決めに合わせて5色の爆煙が飛んでいる。ところでそのポーズ、某国民的アニメで見たことあるんだけど。ついでに爆煙は平成中期ぐらいまでしか決めポーズに利用されてなかったのでは? 今どきCG全盛期ですけど?
「ふ、そのとおりだ。我々は令和の平和を守るため、遠い宇宙の彼方からやってきた、その名も……」
「ちょっと待て。そもそも日本人ですら無いのか?」
戦隊ヒーロー、沈黙。5人はお互いを見合いながらこの場をどうすべきか意思を交換した。宇宙人であればなんのその、視線を交わすだけでテレパスのように通じ合わせるなどお茶の子さいさいである。今5人の心は通じ合っている、故に即断即決、この場を乗り切るために口上を述べた!
「我々は日本を救うためにやってきた外国人労働者、レイワマンだ!」
「さすがに宇宙人を受け入れる法律ではないかな」
「ば、ばかなぁ。スケールが違いすぎる」
何故か奮える無法者。確かに国によっては日本の方が住心地がいいであろう。が、改めて言うが彼らは宇宙人である。
「というか働きに来たのならヒーローじゃないだろう」
「何を言う、我々とて食っていくためには金銭を必要とするのだ。それに日本は懐が深い。就活系ヒーローであろうときっと受け入れてくれる。令和だからな」
「無職じゃないか! 自慢できる話じゃないぞ、あと元号を都合よく使うな!」
本当に何しに来たんだこいつらは。
「ふ、では改めて紹介させてもらおう。時代を変える赤き熱意、メイジレッド!」
「いかなる状況でも平静貫く蒼き精神、ヘイセイブルー!」
「鉱石のようにがっしり沈着、ついた汚れが消えないショウワブラック!」
「紅一点の知識人、スイコピンク!」
「近代文化を発展させるロマンの原点、タイショウブラウン!」
「誰一人として令和がいないじゃないか! あと一人はスーツのシミを落とせ、みっともない! 昭和が悪く見えるだろ!」
「あ、あいつらぁ。法螺でも御大層な事を名乗れるとは……肝が座ってやがる」
「お前も雰囲気に飲まれるんじゃない!」
生み出された混沌によって最早敵も味方もわからない。何となくすごいチカラだ……と感じるが混じり合ったものから生まれるものは汚濁一点である。
「ふ、そうとも。我々は令和のために集った5人の戦士。それぞれが元号の力を授かり天より降臨した……。その名も、元号戦隊、レイッーー
「ところで私女なんだけど、マンってつけるのはひどくない?」
「………………」
再び5人、沈黙。ヒロイン、まさかの裏切りである。
「あまりに不敬すぎて天罰を食らいそうだな、あいつら」
「ふふ、いいぞぉ。仲間割れとはなぁ、こちらもつけ入るスキが出来るってもんだぁ」
「なんでお前はあれと張り合おうとしているんだ」
女性だから、マンじゃなくてウーマンでは? たまに字面だけ捉えてそういう文句をつける人間がいる世の中。わざわざカメラマンをカメラウーマンとかカメラレディとか言うやつがいるだろうか。そういう役職としての一つの単語とまるで理解してないやつは障害者をしょうがい者と書き換えろという、本質は変わらないのに字面だけ変えようとする意味不明なクレームを巻き起こすのである。そも障害者は本人が障害があるのではなくて一般的に生きるためには制限を受けた、当人の前に障害があるという意味なのであしからず。
そして長い沈黙の末、ようやく5人の心は再び一つになる。
「あぁ、そうだな。俺たちが間違っていた。だから改めて言おう。俺たちの名は……名はッ!!」
「男女共同参画社会! レイワ「ウー!」メン!」
「…………個人の尊重!!!!!!」
太一君渾身のツッコミ!! 聞こえはいいが都合が悪くなると逃げるための方便にしか聞こえなくなるアレ!! 戦隊として行動しようとするのにこの有様はいかがなものか、集団行動もまともにできない大人は見ていて見苦しいぞ!
「しかしな太一君」
「馴れ馴れしく名前で呼ばないでくれるかな、知り合いにはなりたくないんだ」
「つれないな、令和だよ?」
「付き合う相手くらいは選ばせてもらいたい」
「じゃぁ私とかどう?」
「スーツを着てる変人はノーサンキューで」
金が無いからってスキあらばヒモになろうとするんじゃない。好き者に見えるでしょうが。
「貴様ら、俺を無視して好き勝手しやがって……」
「会話に参加してたくせに何を言ってるんだ」
「そうだ、怪人は倒さなければならない。ここは俺に任せてくれ」
「ショウガブラック……」
「そのシミ生姜なの?」
どっしりとしたバリトンボイスを放ちながら腰を曲げたブラックが前に出る。おい、その中身まさか老人じゃあるまいな。
「というか怪人て。こいつはどう見ても人間だろう」
「わからぬか小僧。こやつの生み出す異様な気配を……今もこやつはふたつに分裂しておるように見えるわ……」
「耄碌してるんだよそれは!」
悪いことは言わないから早く病院へ行け! スーツの中で蒸し焼きになってるんじゃないか!?
「くく、まさか俺の正体を見破ってるとはなぁ。そうともぉ、俺はチャイナン星からやってきたコピー戦士の一人……貴様らを潰すために誘い込んだのだ」
「事あるごとに典拠を主張するやつ! ……じゃない異星人だった!? お前たち日本じゃなくて他の場所でやれよ!」
「まさか本当に怪人じゃったとは……」
「言いがかりだったのか!?」
「おじいちゃん若い子に混じりたいからって老人ホームから無理するから……」
「地球人混じってるじゃないか、誘拐しないで帰してさしあげろ!」
プルプル震えながら衝撃に耐える老人がとても可哀想だ。
「くっ、ブラックは戦えないか……ならば仕方ない、ここは私のでばーー」
「はい、ちょっとー。路上で危険行為をしてるってのは君たちかな? 通報あったんだけどちょーっと署まで同行願えるかい?」
「………………はい」
気合をむんと入れて怪人に立ち向かうレッドの肩を、後ろからがしっと掴み強制するその声は、まさしく日本の清き正しい警察官のものである。いかなヒーローとて、あるいは怪人とて、公共の場でわかりやすく危険行為を働けば息苦しくなってしまうのは当然の理。やはり令和にもなって爆煙など使うものではない。せめて採石場を利用すべきだ。
そうして俺は警察官に、「変なのに絡まれたね……」と同情の言葉をもらい連れ去られる6人の姿を見ながら、こうつぶやいた。
「やはり公権力は最強か……」
奪われかけた一升瓶を空に掲げて、ラベルを見る。そこには見事なまでの筆書体で「令和」と書かれている。そんな新しい時代に、外国人達にやっぱり日本は日本だったと、変態の代名詞みたいに使われてしまうような出来事にいきなり遭遇してしまったわけだが。果たしてこの先俺の日常は安全運行で回っていくのか、そればかり心配になる。
「令和か、平和な時代になるといいな」
その言葉には感慨深い何かが染み渡っている。先の出来事があったせいでなおさら。
視線を正面に戻すと、連れ去られていたブルーが何かを紙に書いて、俺に向かって投げかけてきた。
くしゃくしゃになってそれをキャッチすると彼はサムズアップを浮かべ、どこか満足したように警察に連れて行かれた。
平成、それは戦争こそ無かったものの、様々な困難に見舞われた激動の時代。それはきっと、いつだって新しい元号を迎えるたびにそういう感じだったと思いを馳せるのだろう。人はネガティブなもののことのほうが記憶に残るものだ。だからこそ、日本人はもっとポジティブで悪いことが思い出せなくなるくらい良い時代を作っていかなければならない。
ずっと黙っていたけど、彼ももしかして同じ気持ちだったのだろうか。しんみりと感動に浸るように、俺は丸まった紙を開いてみた。
『俺の出番なくない? —by ブルー』
「知らねぇよバカ!!!!」
—終
元号反対派なんているけど勿論賛成だよ俺は。いやそもそも文化なんだから賛成も反対もないんだけど、某氏いわく元号がないと明治維新が明治って言わなくなるからわけわかんないじゃん、大化の改新って年数で言えばいいの?と言ってるのを聞いて成程ッとしっくり来たのを覚えている。
ちなみに書いている間元号をネタにして書くってすごい不敬じゃない?と思いながら書いていたのでせめて天罰がくだらないように祈祷しておきます。
年を取ればとるほど陛下という存在が日本の支柱にあるんだなぁとありがたみを感じるようになったので、その記念に投稿しておきます。