「初流乃・汐華・×××。1985年4月16日生まれの15歳、ネアポリスの全寮制中等部に在籍する日系イタリア人。父親はイタリア人で母親は日本人。172cm、AB型、好きな物語はレ・ミゼラブル、好きな食べものはチョコレート、プリン、タコのサラダ、嫌いな食べ物は鶏肉」
17世紀の神学者フラーは言った。見えないところで、友人のことをよく言っている人こそ信頼できると。人間は言っていることとやっている事は違うことがある。そこが人間の良さであり、悪しき所でもある。だからこそ、人が人を選ぶにあたって、一番大切なことは信頼である。最も忌むべきことは侮辱することであると男は考えていた。侮辱するという行為に対しては、命を賭けるに値する。
下っ端のチンピラを再起不能にした犯人は消息不明だと直属の部下は報告したが、かつて幹部にのし上がろうと闘志を燃やしていた瞳を思い出した男の戯言を一辺倒に信じるほど男は脳筋な男ではなかった。いずれは寝首をかかれることは知っている。
そうでなければボスから入団試験を任される幹部にのし上がれるわけがないのだ。ほこりは叩けばわいてくる。目撃証言は腐るほどある。証拠もある。少なくても、構成員を再起不能にしておきながら、その手品の正体(たとえばバックに有能はカモッラがいるとか)を自己申告しないで、堂々と一般人の面をしてパッショーネの入団試験に臨もうとする恥知らずに、まともな試験を受けさせてやる気は毛頭なかった
パッショーネには血の掟というものがある。金で買えるとはいえ、信頼がどれほど大切かこの少年に分からせる必要があると男は思った。
「少しばかり君のことを調べさせてもらったよ、ジョルノ・ジョバァーナ君」
ぱさりと落とされた写真を拾い上げたジョルノは、大きく目を見開いた。
「推薦する人間がやるべきことなんだがねえ、どうも君の推薦者はずいぶんと君のことを気に入っているらしい。ずいぶんと小奇麗な身分証明書を寄越してきたよ。これじゃあ試験にならないからなあ」
ずんぐりむっくりとした巨体でジョルノを見下ろす男は鼻を鳴らした。
「パッショーネにとって、いちばん大切なことは信頼なんだよ、ジョルノ・ジョバァーナ君。君の信頼が忠誠に値するかどうか見せてもらおうじゃあないか。スタンド使いであること、能力を開示しない時点で組織にとっての忠誠度は皆無に等しいことはわかってるだろうねえ?まして、パッショーネと敵対する組織の構成員と交友関係がある人間なんてのはもっての他なんだよ」
拾い上げた写真には、ジョルノにとって命の恩人ともいえる男がうつっている。
「君の忠誠を見せてくれ、ジョルノ・ジョバァーナ君。この男を殺して来い。それが君の入団試験だ」
こいつでな、とおかれた武器で命を絶つことになるなど、この時の男は知る訳がない。
「......頭が痛くなってくるな。これがこの世界のぼくのボスになるまでのきっかけ、だって?まるでディアボロの焼き増しじゃあないか」
ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムが能力を発動したとき、僕はいつだってあとから知ることになる。スタンドの矢が飛んでくるまではわかっても、外れるまではほんの一瞬だ。スタンドのようでスタンドでないそいつのために、僕はなにが起こったのか、この10年で成長した結果、記憶やらなんやらを渡してくるようになったのだ。
「ぼくがスタンド使いの汐華初流乃じゃあなくなったら、たしかにお前は死ぬだろう。だからって死にそうだったから平行世界に世界で1人だけ移動したことを自覚してるってのもどうなんだ......?」
スタンドの矢はすでにカメの中だ。自分の存在を有益にするものだけを移転させたらしいスタンドは既に姿を消している。
山のような記憶の塊。一見するとレンタルビデオを大量に借りた若者に見えるだろうか。なにせ激動の25年間だ。これくらいにでもなるだろうか。仕方ない。ぼくは諦めてビデオを鑑賞することにした。
だいたいの人生はタチの悪い模倣だった。パッショーネを乗っ取って10年、ゴッドファーザー真っ青の血で血を洗う抗争の末に、超能力を得ることができる奇妙な矢をもつぼくがボスの座を勝ち得た。生まれながらの超能力者だったボスに、超能力を増やしていくことで仲間を増やしたぼくが仲間の数で押し切ったことになっていた。
ミスタたちはそのままなのだが死んだ仲間にブチャラティたちの姿がなかった。毎年の墓参りも彼らのためだ。
どうやら死んだ人間は新たに人生を始めているようだ。今どうしているのか好奇心に駆られたぼくは、アメリカから帰国したら調べてみようと考えた。その矢先に税関職員となったアバッキオとブチャラティにお前は本当に汐華初流乃なのかと疑われたのだからぼくは笑うしかなかった。
人生の模倣をほんの少しだけズレて過ごしているブチャラティだが麻薬はないから真っ当な道にいったのだろう。アバッキオはよく知らなかったが汚職に嫌気がさして転職したらしい。ぼくがパッショーネのボスと知るのは勘違いから誘拐されて死にかけたトリッシュなど一部だけだ。
税関と揉めているアメリカ人は友人にアタッシュケースを運ぶよう言われただけだと喧嘩になっている。ぼくは空条アイリンと名乗った少女のアタッシュケースを蝶々にしてポケットにいれてしまった。どうやら麻薬の運び屋にさせられるところだったらしい。突然消えた証拠によりアイリンは開放された。
「ちょうど良かった、これで手ぶらでネアポリスに帰らなくても証拠が手に入ったぞ。ありがとう」
これから父親に結婚の承諾をしに行くのだと張り切る彼氏をひきつれてアイリンはジョルノのつぶやきに気づかないまますれ違う。アイリンのカバンから蝶々が飛んできた。
「これは手数料だよ。チャオ」