作者の息抜き短編シリーズ第三弾、今回はリクエスト作品です。

 仮面ライダーオーズの世界に、転生者が介入し、同作品の悪役「メズール」と添い遂げるため、邪魔者どもを駆逐していく…というお話。

 ここで注意点。

1.「fateシリーズ」の要素が若干入っています。
2.他仮面ライダーネタも若干入ってます。
3.小説版オーズの設定が入っています(先代オーズの容姿とか?)TVドラマ版と食い違う部分があるかもしれません。
4.細かいことは気にしない☆

 以上を踏まえてご閲覧ください。

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 ○ちょっと長い前置き。

 ※このお話は「バンカー様」よりリクエストしていただき、構想を拝借しました。ありがとうございます。

 …といっても、リクエストに応えきれてるか自信はありませんが、こんな感じでよければ楽しんでいってください。

 オーズは僕も好きな作品のひとつで、小説も持っているぐらいです。(あとディケイドもある、なんでこんなラインナップかワシにも分からん…)

 いつかは全平成ライダーの小説を読んでみたいですね。

 …えっと、例によって転生モノなんですけど、少し心情を吐露させてください。

 皆さんにとって転生モノが需要があるのは理解していますし、僕も書いてて面白いとは感じています。ただ…僕が書いてていいのか? と考える時があります。

 いや…実は「SAO」や「REゼロ」に代表される転生モノ(小説、アニメなど)はほっとんど知らなくって。内容はうろ覚えなんですがね…アニメも未視聴でして、まぁ今更何でしょうが。

 リクエストは基本OKですが、作者の視野の狭い目により、その原作を知らない場合があります(偏食家なんです、すいません…)。その場合はリクエストにお応えすることが出来ません。

 この場を借りてご理解頂きますようお願いします。いや「そのぐらい見るか調べるかしろよw」という意見もあるでしょう、全くその通りです。私も日々精進させてもらいます、時間は…かかるかもですけど、あはは…;

 長文失礼しました、それでは本編をお楽しみ下さい…。


メズール様のために、転生者がやりたい放題するお話。

 俺の名前は水野 壮 (みずの そう)。

 

 元地上人の、現死人ダゼ☆

 

 サラリーマンだった社畜の俺は、ある日交通事故で死んでしまうのだった…と、どっかの艦これ作品(作者のとある自作品)と似たような感じ、ってかテンプレだ。

 

 突然だが俺が好きだったのは「仮面ライダー」特に平成ライダー、特にとくに「仮面ライダーオーズ」が好きだった!

 

 映司とアンクの一味違う友情に泣き。

 

 ドクター真木ィ! の「良い終末を…」に恐れ戦き。

 

 比奈ちゃんの「ふんにゅ〜」に癒された…。

 

 欲望がテーマ、って聞いてたから最初はどうなるかと思ったけど…敵味方問わず魅力的なキャラクターが多く「流石靖○にゃん!」って唸ったよねぇ〜いやぁ〜〜良かった。

 

 …ただ、一点を除いて。

 

 

 - "メズール様"が救われていない…!

 

 

 いや…確かにさ、悪役だし? 怪人だし? 頭シャチだし!? 最期まで欲望の権化だったけど。

 

 でも…その欲望の源は「愛」だと思うんだよね。

 

 つまりさ、救われても良かったわけじゃん。正義と愛はワンセットだよ! 何よりエロいんだよ! CVゆ○なさんだよ!! 因みに俺は怪人態が好き(異論は認める)。

 

 そう…俺は彼女を救いたい…もしその願いが…欲望が叶うなら…。

 

 

 - 俺は"何でも"する…!

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「というわけで、オーズ世界に転生で、よろ」

 

 そんなことを軽く言ってのける俺、とある空間にいて、一面真っ白で無限の広さを感じる。さっきの言葉が、コンサートホールのように虚空に響いて消えていった…。

 そして目の前には…。

 

『了解しまシタ。時代はいつごろにしまショウ?』

 

 白く光る球体がふわふわと浮いていた、そう神様だ、誰がなんと言おうと神様だ。

 死んで現世にオサラバした俺は、この空間に連れ込まれ「第二の人生を送れます」と言われた。そう…「転生」だ、いわゆる"なろう系"だ。

 

「んーそだな。とりあえず「原作終了後」で」

 

 オーズ世界の原作終了は「映司(主人公)がアンク(相棒)の形見である壊れたメダルを携えて、また旅に出る」…というもの。

 そう、お気づきの人もいよう。原作終了後は「全ての戦いが終わった後」なのだ、つまりメズール様はいない。まぁ待て、俺に考えがある。

 

『了解しまシタ。…"特典"が御座いますが、如何しまショウ?』

 

 来たっ! "特典"!

 特典とは「一般人がスー○ーマンになれる方法」と覚えとけば良い、ってか俺はそう認識してる。

 対象の欲する能力、又はアイテムを入手することが出来る、つまり…ここでメズール様を…!

 

 

 - なんて言うわけないだろ?

 

 

 俺はメズール様に相応しい男になりたい、彼女を永遠に愛でるためには「悪」に堕ちるしかない。…つまり「王道より邪道」だ。

 

 フフフ…ここは。

 

「じゃあ「聖杯」寄越せ」

 

『了解しまシタ。』

 

 機械的なアナウンスが流れると、俺と神様(という名の球体)の間に光が差し込む…これが「聖杯」か。

 聖杯は「fateシリーズ」という作品における物語の要であり、なんでも願いが叶えられる願望機だ。これを奪い合うため血みどろの争いが起こるのだが…まぁ今回は省かせてもらうわ。

 形は…よし、小さめでオーソドックスな器だな。よくある「fgo系統の聖杯」みたいだ、これでムーンセルが来たらどうしようかと…。

 

『貴方の願望をスキャンし、可能な限りの要望をクリアし、そして出力以上の代物をご用意させていただきまシタ』

「おーすげぇな。ご苦労さん…っし!」

 

 手をかざし、聖杯を手に取ると、そのまま聖杯は俺の身体に吸収されていった…計画どおり、ってな?

 

「よぉし。…出でよ「オーズドライバー」!」

 

 今度は手を上にあげる、すると…光と共に「オーズドライバー」が俺の手に…!

 

「ッシャア! 先ずは変身ベルトだよな! 後メダルは…」

 

 仮面ライダーオーズに変身するためのアイテム、オーズドライバー。

 オーズドライバーに三つのメダルをセットし、スキャンして変身する。この場合あと必要なのは「メダル」だけだが?

 

「先ずはタカ、トラ、バッタ」

 

 メダルの名前を呼ぶと、光が現れ「赤、黄色、緑のメダル」が。オーズの基本フォームになるためには必要なメダルだ。で、お次が本命…。

 

「シャチ、ウナギ、タコ!」

 

 俺がメダルの名前を叫ぶと、またしても光と共に「青色のメダル」が出る。三種類×三の九枚分だ、メズール様を完全復活させるにはこれがなくてはならない。

 これでメズール様を蘇らせ、戦いが終わった平和な世界で悠々と…!

 

 

 

 

 

いいやまだ終わらねぇ

 

 

 

 

 

 これは「復讐」だ。

 

 メズール様をよく知りもせず、敵として斬って捨てた欲望の権化どもめ…この聖杯の力で、俺とメズール様の理想郷を構築する。そのためには…。

 

「ヤツらを「倒して」あの世界を俺の手中に収めてみせる。…フフフ、フハハハ……ハーッハッハッハ!!」

 

『お決まりの三段笑い、素晴らしいデス。それでは良い来世ヲ♪』

「…ありがと」

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 …気がつくと、そこは森の中。

 

 倒れた自分の身体を起こし、手を確認する。まさか…存在している? 私が…?

 

 私はあの時…確かに「消滅」したはず…?

 

『まだよ…こんなんじゃ全然足りない! もっと…もっと…っ!!』

 

 そう…私は自らの欲望…「愛」を求めて…親と子供を攫い…その怯えながらも気高い「愛」を愛でていた…そこへ現れた「オーズ」との戦いで、私は敗れた。

 

 …なのに、これは?

 

「気がつかれましたか、メズール様」

 

 静かな夜の森の中、私は声のする方向を向く。

 

 そこに立っていたのは、人間で言うと二十代ぐらいの青年だった。

 なんとなくだが「顔が整っている」という印象を受ける、私は「グリード」だからあまりそういうことに着眼しない。私に「相応しいかどうか」ただそれだけ。

 

 それにこの男…出会って間もない私の名前を知っている、更に「メズール様」と呼んでいる、今の私は「どう見ても怪物」の姿をしている。魚の化け物と揶揄されたこともあった、どう考えてもこの男の反応はおかしい。

 

「貴方…どなたかしら?」

 

 そういう私の質問に答えず、彼は私の前に屈んだかと思うと、そのまま跪く。

 

「私は貴方の忠実な僕です」

 

 …面白いことを言う人間もいたものだ。

 

 私は「ふぅん?」と興味を示しつつ、謎の男を見つめる。この欲望の権化と称された怪人「グリード」その私に対して恐怖ではなく「忠誠」を覚えるなど…正気ではない、そう感じる。

 

「…ッフ!」

「ぅお!?」

 

 手をかざし、高圧水流で吹き飛ばす、水流を操るのが私の能力。

 

「…無様ね」

 

 そう言いつつ足で男の身体を踏み付ける。

 

「あふぅん」

「何が目的なの? 私がグリードだと知っててのこと? この私に忠誠だなんて…私の欲望、叶えてくれるってこと?」

 

 私の欲望は「愛」だが、それを人間如きに満足させられるとは思えない、私を愛し愛されることの出来る存在が…。

 

「叶えさせて欲しいです、私の第二の人生を貴女に捧げたいです。あと気持ちいいのでもっと踏んで下さい」

「…なんなの貴方? そもそも何故私の名前を知っているの? …何者なの?」

「疑問は最もです、事情を話させてください」

「…いいわ」

 

 とりあえず話を聞くため脚を退ける。

 彼は立ち上がると、私の前に向き直る。

 

「…私は転生者なんです」

「は?」

「貴女を蘇らせたのは僕です、貴女やオーズのことも知っています。TVで見ました、僕は貴女のことが好きで堪りません。僕こそ貴女の欲望を「満たせる」存在だと自負します!」

「…馬鹿じゃないの?」

 

 まさか法螺話をしてくるとは、しかも訳の分からないことをペラペラと。

 呆れた私はその場を立ち去ろうとする。

 

「待って下さい! 僕こそ貴女に相応しい男です!! 信じてください!」

「…グリードに「信頼」を求めようなんて。話にならないわ、出直して来なさい」

「…っ! ぅうおおお!!」

「はぁ、やっぱり貴方も裏切るの…」

 

 溜め息を吐きながら、私は纏わりつく彼の対処をするために振り返る。

 

 …瞬間、私は彼の「行為」に衝撃を受ける。

 

「…っ!!?」

 

 何と。

 

 …この怪物の顔に「接吻」して来たのだ。

 

「んむぅううう!!!」

「っ!? (この…!)」

 

 密着する彼の身体を「水圧」で吹き飛ばす。

 

「ぶっふぇっ!? …ぅおお!! やっぱ特撮じゃねーっ! マジに本物だあぁ! 舌入ったよ! あとなんかヌルヌルした、身体から粘液!? サイッコーーっ! ふぉおおお!!!」

 

 …また訳の分からないことを口走る男、興奮しているのかボディランゲージで腕を振り上げて喜びを露わにしていた。

 

 本当に分からない。この子…本当に私を…?

 

「貴方、どういうつもり? 私が見えないの? この身体は人間のものじゃないわ「怪物」よ、貴方は前に私を見たと言ったけど、私が人間にも変身出来るから? 擬態目当てに私を愛するというの?」

「違いますっ! 確かに可愛いけど…僕が愛しているのは「怪物」の貴女です! ヌルヌルOK! エロボディアンドエロ声サイコー!」

「…頭が痛くなって来たわ。ますます分からない、貴方…本当に人間なの?」

 

「貴女を愛することが出来るなら、僕はっ、人間を止めます!!」

 

「…っ!」

「その覚悟でここまで来ました。僕は貴女と添い遂げるために第二の人生を送ります!」

「…貴方、目的はなんなの? 私に愛を捧ぐということが最終目的なの?」

 

 目的を問われた彼は、又も立ち上がる。その姿は「かつてのオーズ」を彷彿とさせたが?

 

「復讐です。貴女は愛を手に入れようとしただけ、その愛おしく優しい性質を知らずに、この世界の欲望の塊ドモは! 貴女を淘汰した! …僕はそれが許せない。貴女と共に歩める世界に! この手で作り変えてみせる。…そのためには、邪魔者どもを「消さねばならない」…ックックック」

 

 …あぁ、私はおかしくなったのだろうか。

 

 目の前の男は、この世界のどんな欲望の権化よりも深く、黒く、悍ましい感情を秘めている。

 だがして、彼には人を欺く知性や、自らの願いを優先するエゴイスティックな面は感じない、存在しない。ただただ子供のように純粋な「欲望」にまみれていた。

 それを証言するように、彼の顔は歪み、同時に瞳に無垢な光を宿している…ガメルとはまた違う子供みたいな、そして彼にはなかったギラギラした欲望。

 

 ぁあ、なんて……!

 

「素敵…!」

「気に入って頂けましたか?」

「ええ、とても。…私は貴方の欲望が気に入ったわ」

「…僕が、じゃないんだ…」

「しょげないの。私のことを本当に愛するというなら、私を満足させるほどの「無限の愛情」を捧げる気でいなさい?」

「勿論です! 何度でも捧げましょうとも!」

「うふふ…! それてアナタ? これからどうするつもり?」

「っわ、坊や呼びじゃないんだ」

「貴方はもう私のモノだもの、他人行儀なのは嫌でしょう? …そういえば、名前聞いてなかったわね?」

「…僕は水野 壮。貴女に全てを捧げる者です」

 

 その自信に満ちた発言に、私はニヤリと笑う。

 

「いいわ、ソウ。貴方の欲望は面白い、でもその強大な欲望は私でも制御出来るか怪しい。だから…私のためにじゃなく、貴方自身の欲望を満たすために戦いなさい?」

「…? それってどういう意味ですか?」

「分からない? 貴方が欲望の限りを尽くせば、私は貴方の欲望からセルメダルを抽出出来る、更に貴方の言う私への「愛」が、私自身の欲望を満たせるほどの大きなものになれば…もちろん貴方次第だけど、貴方の欲望も「果たせる」かもしれない」

「それは…遠回しのプロポーズですか!」

「もう、気が早いわね? …まだ足りないわ、でも「将来性」はある。その時が来るまで、貴方の傍で私が見届けてあげる」

「ぉお! やったー! …ふむ、なら僕の好きにしていいので?」

「えぇ、私が見守ってあげるから、存分に楽しみなさい?」

「なら…お言葉に甘えて」

 

 ほくそ笑む彼が手のひらをかざすと、光が視界を支配する…真っ白な光は…盃の形に変わる。

 

「これは?」

「聖杯と言われる、この世界にはない力です。この力は使用者の欲望を叶える「願望機」であると言われています」

「…っ! そんなものが…」

「この力で、僕は貴女に相応しい男になってみせる! …ックック! 待っていろよ…オーズ、そして欲望の権化共! 最早貴様らには…欲望すら抱かせない、ハッハッハッハ!!」

 

 彼の悪意に満ちた表情は、とてもイキイキして、それでいて残忍だと一目で理解出来る。

 

 そんな彼の顔に、私はどこか満たされた気持ちになることを感じていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 警視庁に「何者か」が暴れている、と通報が入った。

 

 それも、暴漢や酔っぱらいの類ではない。怪物なのだという…その怪物は「ミイラのような」ものと、それらを操る「魚の化け物」が確認されている。

 警察は怪物の被害者の病院搬送、及び街の人々の避難を優先する…が、そんな中怪物たちの中心に急ぐ、一つの影が…?

 

「…これは」

 

 彼の名は「後藤 慎太郎 (ごとう しんたろう)」かつて世界を守るため、仮面の戦士として戦った者。現在は警視庁の刑事に復帰している。

 後藤の眼前には、人々を襲うミイラの怪物「屑ヤミー」の姿。

 

「っ、早く逃げて!」

 

 後藤は屑ヤミーの毒牙に襲われそうになった人々を助ける、蹴りを入れて怯ませると逃げる事を催促、お礼を言いながら背を向け走り出す人々。

 

「どうなっている…? グリードは完全に消滅したはず…?」

 

 後藤が訝しんでいると、どこからともなくヒールの音が聞こえる。

 

「お久しぶり、バースの坊や」

「っ! メズール!? 馬鹿な…お前は確かに火野が」

「復活したの。彼のおかげでね?」

 

 怪人メズールの示す方から、大股歩きで近づいてくる謎の男。

 

「お前は?」

「僕は「水野 壮」…お前たちの敵だ」

「っ、何のつもりだ! どうやったかは知らないが、グリードを復活させるなんて!」

「何をしようと僕の勝手…じゃないのかな? 君のかつての上司は「欲深くあれ」とかほざきそうだけど?」

「…っ!」

 

 後藤の視線は、壮と名乗る男の近くをうろうろする屑ヤミーを捉えている。

 

「…このヤミーはお前が?」

「そう、メズール様のお力を借りてね? 適当に暴れたら必ずお前らは姿を見せるだろうと踏んだわけ」

「俺をおびき寄せるため? 何が目的だ! 無関係の人間を巻き込んで…」

 

「黙れ5103」

 

「…っ!?」

「お前はあくまで前菜、メインディッシュを彩るパセリでしかない。お前を倒せば…必ず「ヤツら」が来る。せいぜい派手にやられてくれよ?」

「あん、いいわよ。ワルモノって感じのセリフ、やれば出来るじゃなぁい?」

 

 メズールが壮に近づくと、頭を優しく撫でた。

 

「でへへ、もっと褒めて〜♪」

「んふ…♪」

「お前たち…ふざけるな! 今すぐこの騒ぎを止めろ!!」

 

 怒り心頭の後藤は、騒ぎの張本人たちの「まるでお遊び」な態度を崩すため、勢いよく走り出しと壮にめがけて拳を食らわせる。

 

「はぁ! …っ!?」

 

 …が、何者かがその拳を遮り防御した。

 それは壮ではない、後方でメズールと共に成り行きを見守っていた。…では誰が止めたか?

 

「…フン、踏み込みが甘いぞ青年。その程度で我がマスターに刃向かうとは」

「っ! 黒い甲冑…? 誰だお前は!」

「口の利き方がなってないな。…矯正してやる、有り難く受け取れ」

 

 そう言うと、黒い甲冑ドレスを着た少年或いは少女は、後藤の拳を防いだ剣に光を注ぐ。

 

 聖なる光と対をなす「黒に染まる光」…。

 

「はぁっ!」

「っぐぁ!?」

 

 不気味に鳴動しながら黒き剣は邪光を放ち、後藤を吹き飛ばした。

 

「…っ! 何だコイツは? グリードではないことは確かだが」

「ソイツは伝説の英雄さ? 尤も…僕の欲望に感化されてか、黒いのしか呼べなかったけど?」

「何…?」

「さぁ改めて…この世界の強欲な馬鹿どもに鉄槌を下す。僕に力を貸せ、サーヴァント・セイバーオルタ!」

「…いいだろう。この暴虐の剣、せいぜい使いこなしてみせろ」

 

 セイバーオルタと呼ばれた年若い少女は、黒剣を構えながら後藤にジリジリと近づく。

 

「…マスターの願いは、この世界への復讐。お前で…一人目のようだな」

「っ…」

「…終わりだ!」

 

 セイバーオルタがその剣を振り上げた。…その時。

 

「(スキャニングチャージ!)セイヤーッ!」

 

「…っぬ!」

 

 セイバーオルタは何かを感じとると、すぐさまその場を飛び退いた。瞬間…三つの光輪を潜り、勢いよく降下ざまのキックをお見舞いする謎の影、その威力は尋常でなく地面のコンクリートに大穴を開ける。

 

「この技は…まさか!」

 

 土煙の向こうに、黒光りした姿が浮かび上がる。しかしセイバーオルタではない「身体のあちこちにカラフルな意匠」が凝らされていた。

 

「火野!」

 

 彼が火野と呼ぶ人物は、かつてのグリードとの戦いを終わらせた張本人。後藤の戦友…仮面ライダーオーズ「火野 映司 (ひの えいじ)」その人だった。

 

「後藤さん! 大丈夫ですか?」

「あぁ、でもお前旅は?」

「えへへ、ちょっと里帰りというか。皆を驚かせたくて…でも、帰って来て良かった」

 

 そう言いながら、黒い仮面の戦士オーズは同じく黒き騎士を見つめる。

 

「…フン」

「あれ? よく見たら女の子!? わぁ…怪我はないみたいだけど」

「言ってる場合か火野! あの黒甲冑はグリードより厄介かもしれない」

「…ん? 後ろにいるのはメズール? は良いとして…君は?」

 

 オーズはメズールの隣で、オーズを睨みつける男を指差す。

 

「…ふ」

 

「ふはははは!」

 

「…っ!?」

「まさかいきなり出てきやがるとはな? 会えて嬉しいぜ、仮面ライダーオーズ、火野 映司!」

「…俺のことを知ってる?」

「知り合いじゃないのか、火野?」

「いえ。でも…どうやら彼の狙いは俺みたいですね」

「ご明察。僕はメズール様を砕いたお前を許さない、必ず倒す…そして、メズール様との理想郷を創り上げるのだ」

 

 壮の言い分に、映司はどこか腑に落ちない様子。

 

「んー? メズールと一緒にいたいんなら、俺を倒す必要ないんじゃない? 寧ろ応援するよ」

「火野! こんな時に何言ってる!?」

「でも後藤さん、彼はなんとなくアンクに似てるというか…悪いヤツには見えないんです。だから…」

「いいや火野 映司。お前はそうやって油断させて、いざという時に邪魔をする食えない男。僕の覇道を垣間見た時に同じセリフが言えるとは思えない。…今ここで、決着をつけなきゃ気が済まない」

「…っ!」

「(ふぅん、そこまで見抜いているのね? 確かにこの男は油断ならないわ。…うふ、前世だとか私には分からないけど、やっぱりこの子…面白いわ!)」

 

 メズールは改めて、壮の目敏さに満たされた気持ちになる。

 

「いくぞ…オーズドライバー!」

 

 壮が叫ぶと、ひとりでにドライバーが腰回りにセッティングされる。その形状は、映司たちにとって見慣れたものだった。

 

「オーズドライバー!?」

「何故だ!? オーズドライバーはこの世で一つのはず…!」

「よし、メダルセット」

 

 映司たちの驚きをよそに、壮はどこか楽しそうに「赤、黄、緑」のメダルをドライバーにはめていく。そして…スキャナーを構えて、ドライバーのメダルをスキャンしていく。

 

「…変身!」

 

 彼の世界では誰もが憧れるであろう「変身」。だが…?

 

タカ! トラ! バッタ!』(重低音)

 

「…っ!?」

 

タトバッ、タトバ、タットッバ!』(超重低音)

 

 何事が起こったか、壮のドライバーからいつもの掛け声が「ワントーン下がった状態」で発せられる、そして稲妻が走ると、突然黒いオーラに包まれる。

 

「わああっ!?」

 

 その場の全員が目を伏せた。

 …そして、静寂に包まれた瞬間。目を開けると…?

 

「…ん? なんか、違う…??」

 

 映司が目の前の「壮版オーズ」を見て呟いた。

 

 後頭部は鳥を連想する赤い翼。

 

 顔には嘴を思わせる鷲鼻と、歯を剥き出しにした口。

 

 首の周りは、元のオーズには無い白い毛が生えている。

 

 腕部にはトラクローらしきものがあるが、むしろ虎の爪そのものといった具合か、身体の一部として一体化している。

 

 肩はトゲの付いた肩鎧のような見た目。

 

 脚部はバッタの要素が強まって屈折し、本物の昆虫に近い見た目となっている。

 

「…あるぇ〜〜???」

 

 壮も異変に気付いた。周りはまるで歪なオーズを不思議がっていたが、壮自身はこの形態に心当たりがあった。

 

「これ「ジオウのアナザーオーズ」じゃーん!? ぅーわ、ベルトも中のメダルも変わってる…そんなに欲深いか俺? 檀黎斗神みたくなっちゃう?!」

「ふぅん? よく分からないけど…オーズの坊やはオーズの力を使いこなせてないと思うの。だからその姿は…オーズの力を「最大限に引き出した」姿なんじゃない?」

「…え、そうなんですか?」

「えぇ…(忌々しいけど似てるもの、800年前のあのオーズに…!)」

 

 メズールの太鼓判に気を良くしたのか、壮は自信たっぷりに言ってのける。

 

「だそうだ! 僕の方がオーズに相応しいってことだな? えぇ? 火野くぅん?」

「あはは…良かったんじゃない?」

「負け惜しみで言うつもりじゃないんだが…そのオーズ「典型的な悪役」という感じがするぞ」

 

 後藤の発言に、ショックを受ける壮。

 

「がーん!? 確かに悪役になりたいとは思ったけど…オーズの姿にまで影響することないじゃん…」

「良いじゃない? 悪に徹しなきゃ掴めない欲望だってあるわ。貴方はどんな姿になろうと、貴方であることに変わりないんだから」

「っ、メズール様!」

「うふふ。…さぁ、貴方の名前を。忌まわしきこの世界に叫んで、刻みつけるのよ!」

「はいっ!」

 

 壮は前に歩み出ると、勇ましい王のように胸を張り、高らかに叫び宣言する。

 

「我が名はメズール様に全てを捧げるために再誕した男! 水野 壮! またの名を…仮面ライダー、アナザーォオーーーズ!!」

 

 まるで雄叫びをあげるように、愛に生きる欲深き獣が産声を上げた。

 

「さぁ…覚悟を決めろ、仮面ライダーオーズ! 貴様に…メズール様を砕いたことを後悔させてやる!」

「うふ…そういうことだから、大人しくやられなさい? オーズの坊や」

「供物を捧げる時間だ。我が剣で貴様らの体を切り裂いてくれよう…!」

「っ、火野どうする?」

「俺は逃げませんよ、後藤さん。彼の怒りを鎮めるためには…俺が全力でぶつからないといけないみたいだ!」

 

 二人のオーズは戦闘態勢に入る、ここに「真の王」を決める戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「- 素晴らしいッ!」

 

 オーズたちの戦いを、秘密裏に観察する一人の人間がいた。

 彼は、ドローンからの撮影により映された映像を見て、満足そうに豪快に笑う。

 

「アレはこの世界に新たに生まれた「オーズ」だ。しかもっ! あのオーズは、800年前の我が先祖が変身した、初代オーズと形状が似ている。つまり彼の大きな「欲望」が、オーズの力に多大な影響を与えたということ。はっはっは! 実に面白い!!」

 

 ビルの最上階の大きく開いた窓、そこから映される都会の情景を眺めながら、少しだけ眉をひそめた。

 

「しかし愛か…愛は非常に厄介だぞ。双方に見えない信頼が確立できれば揺るぎないものになるが、相手はグリィードッ、そう言った感情は、逆に食われかねない。彼は果たして無事でいられるだろうか?」

 

 自身の敵になり得る相手に対し配慮を口にするも、それも一瞬だけだった。元の不敵な笑みを浮かべると、再び相手に対し祝福を送る。

 

「だが彼には「自信」がある! 火野君にはない「未来に対する自信」…その源が何なのか、あの黒い甲冑の少女と何かしらの関係があるに違いない! 実に面白い…私は君に興味が湧いたぞ!」

 

ハッピーバースディ!! 新しい君の誕生だ! 歓迎しよう、この世界にようこそ「アナザーオーズ」! 君の欲望をこの世界に、存分に開放したまえ!!」

 

 人の行き着く欲望の果て、無限の欲望を抱えた青年はその境地に辿り着くか、はたまた世界がその欲望に喰われるか。

 

 何れにしろ、この先の未来は欲にまみれた人の手に委ねられた。

 

「いくよ…!」

「来いっ! お前を倒して…僕が新しい「オーズ」になる!」

 

 転生者の新たな物語は、どのような結末を迎えるのか…?

 




○次回予告風あとがき

次回、仮面ライダー「アナザーオーズ」は…!

「ごめん! 君にひどいことしたみたいだ」

「僕の復讐相手は、他にもいる…」

いきなり和解か、二人のオーズ…?

「お前は…!」

「俺は「常盤 ソウゴ」未来からやってきた」

まさかの「ジオウ」介入…!?

「貴方が、我々にメッセージを送ったのですね?」

「私も「カルデア」にコネクションがあってね?」

まさかまさかの「カルデア」…!?

「なんで聖杯を!」

「僕の邪魔をするな…!」

転生者出現により、乱れに乱れるオーズ世界。

「何やってんだ映司ィ!」

「アンク!?」

更に…?

「私はかつて「王」と呼ばれていた」

「そんな…!」

「メズール様に…手を出すなあぁあああ!!!」

人とグリード、二人の愛、その先に待つものとは…?



仮面ライダー「アナザーオーズ」。



― 予定は未定☆

アンク「フザけんなっ!!」


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