アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
今も昔も情熱は変わらない!豪華なコラボがココにある!!
STAGE11 傷跡
昨日の湾岸線での事故から一夜が明けた。
約4時間に渡っての通行止めは今は解除されている。
この事故はニュースに出る事はなかった。
何故ニュースにならなかったかは誰にもわからない。
しかし、これは幸運だったかもしれない。アイドルが事故を起こしたという事が知られれば騒ぎになるだろう。ニュースになってないため、ファン達には知られないだろう。
ここは内藤自動車工場。
工場の正面にある大扉の前にはセルフローダーが止まっている。その荷台には無残に壊れた元の姿とはかけ離れた白いFC3Sが載っていた。
時間を遡ってAM1:00。
事故発生後の現場では大破したFCをローダーに載せようとしてる内藤と美世がいた。
「こりゃあひどいナ……」
車を整備するのが仕事の内藤。整備のベテランである内藤をしてこう言わせる程のFCの破損状態。
致命的なダメージを受けているのは誰もがわかる。
内藤が右側のリトラクタブルライトが無くなっていたり、ツブれたラジエーターなどが見えるフロント部分からエンジンを覗き込む。エンジン回りのパーツが衝突の衝撃で無くなってるか壊れているのがわかるが、一番大きいのはパーツが無くなってる部分から見えるエンジン本体。
外からでもわかるエンジンの状態。ローターハウジングにクラックがあり、中のローターがハウジングを傷つけていたのである。
エキセントリックシャフトが折れており、これによりローターが暴れた事がエンジンブローの原因である事がわかった。
「健さん、早く載せよう」
美世が内藤に呼びかける。
「だな……」
2人は協力してFCをローダーに載せていく。
やがてFCを積み終わり、内藤が運転するローダーは現場を後にした。
美世も蓮のFDに乗り込み、この場を後にする。
それから数時間後のAM7:30。
今日美世はオフなので内藤と共にFCのチェックをする。
「と言ってもね……」
ぐしゃぐしゃになったFC3Sをどうしようと言うのか。
美穂本人に聞こうにも彼女はこの場にいない。
蓮によれば美穂の怪我は軽いものだったという。しかし、様子を見る為に1週間は入院するとの事。
あの時蓮のFD3Sが出していたスピードは時速300km。これに並んでいたFCもほとんど変わらないスピードが出ていたはずだ。にも関わらず軽傷で済んだのは奇跡と言っていいだろう。
とはいえ美穂の選択は決まってるだろう。
「さてと……」
ローダーからFCを降ろし、工場奥に運び込む。
場所は変わってある病院。
病室に入っている患者の名前に「小日向美穂」の名前はあった。
彼女1人だけが入る病室にいたのは蓮。
「……」
目を覚まさない美穂を見る蓮。
「本当にごめんね……」
蓮は美穂に言う。
彼女を1週間休ませるという事を蓮自身が事務所に知らせている。
なぜかと聞かれたが、蓮は家族の都合で病院にいるとだけ告げている。真っ赤な嘘だ。美穂の家族は元気だ。ただ、美穂が怪我した事は伝えている。
「……蓮さん」
「美穂ちゃん……!!」
美穂が目を覚まし、蓮を見る。
「痛……」
「あんまり激しく動いちゃダメだよ」
怪我が軽いとはいえ、やはり体に痛みがある。
2人は話し始めた。
「美穂ちゃんはあのFC……いやあの車をどこで買ったの?」
「中古車店で。蓮さんの車と同じ名前だったので」
「……いつ買ったの?」
「先週の月曜日に契約して車は金曜日に来たんです。ちょうど蓮さん達がいなかった時に」
蓮と美世は金曜日に東京を出てそれぞれサーキットに向かっていた。そのため美穂がFCを納車した事を知らないのである。
「そっか……」
「美穂ちゃんはあの車をどうするの」
蓮は聞く。
「私はななさんに乗りたいです。蓮さんを追いかけたくて」
「美穂ちゃん……もうやめてほしい」
蓮が美穂を諭そうとする。
「元はと言えば僕のせいなんだ。僕があんな事してなければ美穂ちゃんが怪我する事だってなかった……」
「だから……お願い」
しかし。
「ごめんなさい、蓮さん。私は辞めたくないです」
「あの時は私がななさんをちゃんと分かってなかったんです。今度はちゃんとななさんを分かっていたい」
「それにもしも辞めてしまったら蓮さんがさらに離れるような気がして……」
美穂の言葉を聞いた蓮はしばらく考えた末に美穂に話す。
「わかった。美穂ちゃんは……降りないんだね」
「今度は僕が美穂ちゃんを精一杯守る。美穂ちゃんがみんなと会えるように」
「それに……美穂ちゃんは頑固だし。僕と同じだよ。決めた事は絶対曲げない」
「とはいえFC……美穂ちゃんの車はボロボロになってるんだ」
「行ってみる?車の所に」
「お願いします」
この後、外出手続きを済ませて蓮のFDは病院を後にする。美世が届けてくれたFDだ。
「蓮さんの車ってななさんとだいぶ違いますね」
「うん……」
FDで内藤の工場に向かう2人。美穂の頭には包帯が巻かれており、頬には絆創膏が貼られていた。
彼女は蓮の操作に注目してる。
「蓮さんってとても丁寧に運転してますよね」
「そうかな……」
「はい。優しいってわかります」
実際、蓮の運転は丁寧。車に負担を掛けるような乗り方をしていない。
FDはやがて工場に到着した。
「着いたよ」
「はい」
2人はFDを降りる。降りた2人を迎えたのは美世。
「蓮君!美穂ちゃん!!美穂ちゃん大丈夫!?」
「私は大丈夫です」
「よかった……。蓮君どうしてここに?」
「美穂ちゃんにFCを見せたくて」
「FC今あるよ。着いてきて」
2人は美世に連れられて工場の奥に進む。
工場の奥。
そこには様々な部品が無くなっており、痛々しい姿に変わったFCが鎮座していた。
「ななさん……」
美穂はFCに近づいていく。涙が頬を伝っていた。
美穂はぐしゃぐしゃになったFCの右フロントフェンダーを撫でる。
「ごめんなさい……」
その言葉はFCを傷つけてしまった事への謝罪なのか。それともFCを「理解」っていなかった事の謝罪なのか。それは美穂自身にしかわからない。
「蓮さん、美世さん。ななさんって直りますか」
気が済むまで泣いた後、蓮と美世に聞く。
美世が答えを言う。
「ななさんってFCの事か。美穂ちゃん、正直に言うと難しい」
「私達の力では難しいんだ……」
美世の言葉に愕然とする。
「でもね……。可能性はある」
美世の言葉を引き継いで蓮が言う。
「そういう事のプロの人と知り合いなんだ。その人達の力を借りればいけるかもしれない」
「それじゃあななさんは直せるんですか!?元に戻るんですか!?」
「うん。元通りになるさ」
「やった……!!」
美穂の表情に笑顔が戻った。
「とりあえず美穂ちゃんの体が治ってからだね」
「はいっ!」
「ありがとうございました。ななさんの事を考えていただいて」
「いーよいーよ。美穂ちゃん蓮君と似てるもん。頑固なトコが(笑)」
「えへへ……」
美穂は再び蓮と共に病院に戻っていった。
「事故……。大丈夫だったのか」
友也が夢斗に聞く。
先程夢斗が昨日の事を言ってきたのだ。
「小日向さんが言うには軽い怪我で済んだらしいっす」
「そうか……」
「夢斗、気をつけろよ」
「わかってますよ。夕美との約束もあるし」
「おいコラどういう事だ」
「浩一には関係ねーよ」
夢斗達はいつも通り部活していた。
「夕美ー、今日何もなかったのか?」
夢斗が夕美に声をかける。
「うん……。今はそれどころじゃなくてね」
「……昨日の事か?」
「ううん。プロデューサーがいなくて」
「小日向さんがいないのか?」
「うん」
「まあ、看病じゃね?」
「あっ……」
美穂の入院は蓮以外にはその場にいた人物しか知らない。
「怪我は軽いって言ってたけどな」
「そっか……。早く退院するといいね」
「だな。仕事あるだろーし」
夢斗はいつものように夕美を送って家に帰る。
深夜。蓮はある事を考えている。
パソコンを見ていたら日をまたいでいた。見ていたのはヤ○オクのページだ。
ブローしたFCの13Bは再起不能と判断されていた。ハウジングなどが粉砕されていたのだ。
その為中古エンジンを探して新たにFCに載せる事を決断した。
その中で程度がイイFD3S用の13B-REWがあった。蓮はこれを即決購入。
ユーノスコスモ用の20B-REWも選択肢としてはあった。しかし、エンジン特性が13Bとはまるで違う。美穂がそのパワーを扱いきれるかを考慮した。それに13Bで無くなったらソレは美穂の知る「RX-7」ではなくなる。蓮もエンジン換装はあまり好きではない。
「とりあえずどんな感じにするかだよね……」
美穂は自分を追いかけるのが目的。当然湾岸での最高速バトルも考慮しないといけない。
「湾岸だけに絞れば……」
そうなれば高回転域を多用する。それにピッタリなのが「ペリフェラルポート加工」だ。
ペリフェラルポートは、吸排気の気流の方向がローターの回転方向と一致するため吸排気抵抗が少なく、特に高回転域でのフリクションが少なく、高出力が得られる。
高回転域までスムーズにブン回るフィーリングはロータリーエンジンの特徴をよりはっきりさせたと言えるのだ。そして高回転域でのパワーやトルクが向上し、パワー「だけ」を追及した正真正銘レース向けのエンジンへと姿を変える。
しかし、ソレはレースでの利点。
まず低回転域での圧倒的なトルク不足が目立つ。まず扱いにくい。そして鬼のようにガソリンを食う超高燃費エンジンへと化ける。排気音も爆音となり、普通に公道を走るようなエンジンにはならなくなる。
ガソリン代で美穂に負担を掛ける訳にはいかない。だからといってそれを捨てたら湾岸では勝ち目がない。美穂の目的は達成できない。
「難しいな……」
しかし美穂は「本気」でやろうとしている。
「……仕方ない」
蓮はFCの修復プランを考えていく。数時間後に一通り考え終わった。気がついたら朝6時。
「あ……っ。やばい」
慌てて出勤準備をしてFDに乗る。
結局蓮は一睡もせずに事務所に向かうのだった。
「プロデューサー大丈夫?」
蓮に聞くのは渋谷凛だ。
「なんとか……」
そう言う蓮は疲れが出ている。
一睡もせずに事務所に来てそのまま直ぐにデスクワーク。レースとはまた違う過酷な蓮の「仕事」だ。
「私がちひろさんに聞いてくるからプロデューサーは休んで」
「いやいや、まだ頑張れますから」
変な所で頑固な性格している蓮。無理にでも仕事をやろうとしていた。
「……未央、助けて」
「えっ、私!?」
「仕方ないじゃん、プロデューサーが休まないんだもん」
「休まないのはわかったけど何で私!?」
「未央ならどうにかなるかなーって」
「適当!!でもまあ、未央ちゃんが頑張るよ」
「プロデューサー、未央ちゃんとコーヒーでもどう?」
「あ、欲しいです。ちょうど眠気覚ましに欲しかった……」
「え、休憩どころか続けようとしてる〜!!」
蓮は結局コーヒーを飲みながら仕事を休まずやり続けたのだった。
「蓮君どうしたんでしょうか……」
ちひろが困り顔で武内Pに言う。
「わかりませんね……」
蓮は明らかに疲労が取れていない様子。しかし無理をしてやろうとしている。このままだと確実に体を壊すだろう。
「少し蓮君を休ませます」
ちひろは決断した。もし蓮が体調を崩したらここでの仕事はもちろん、レースでも支障が出る。
ちひろが仕事途中の蓮に声をかける。
「蓮君休みましょう?ね?」
しかし。
「すみませんちひろさん。まだやれます」
「みんながあなたを心配しているの!もしあなたがいなかったらみんな心配するの!だから……今だけ休んで」
「……すみません、少しだけ休みます」
ちひろの説得に負けて蓮は仮眠室に行く。
仕事終了後。
蓮はある工場にいた。そこには美世の姿もあった。
工場の奥に運び込まれたのはあのぐしゃぐしゃになったFC3S。
「お願いします、高木さん」
蓮に高木と呼ばれた男が口を開く。
「いきなり北見さんから電話が来た時は何事かと思ったよ……。まあ、事情は聞いた。やってみるさ。今も首都高に情熱を燃やすヤツを見れるのがね、俺も手伝いたい」
「高木さん、僕もやります」
「えっ」
「ほう……?」
美世が驚いた顔で蓮を見る。
「この車を僕一人では直せない。けど、僕はこの車が直るのを自分は見ているだけっていうのが許せなくて。だからお願いします」
「お前のFDをざっと見たがお前はアレを1人で仕上げたんだろ?」
そう。蓮のFDは全て自分で仕上げたのだ。
ネットに頼らず、試行錯誤を繰り返して組み上げた。長い時間と金をかけて仕上げた愛機。
「あれほどの性能を発揮できるクルマを自分1人で作るのは難しいコトだ。大体のヤツは人任せだ。ショップだとかそういう所に。だがな、お前はクルマに向き合おうとする姿勢がある。ソレがないヤツはいつかクルマに裏切られる」
「深くクルマに向き合う姿勢があるお前はクルマを想う気持ちは強い。そしてそのクルマのドライバーのコトも思っているんだろう」
「手伝う以上、妥協はしないぞ。徹底的にやる」
「わかりました」
「お前のFDよりも高いレベルになるぞ」
「はい!」
美世が明日の仕事の為に帰った後も蓮と高木は作業を続けていた。
大きく歪んでいたボディはある程度は戻っている。歪んだ跡は残っているが、それでも事故直後と比べると綺麗になっている。
蓮は高木に質問する。
「高木さんは『悪魔のZ』のボディを作ったんですよね?」
「……ああ。懐かしいな」
悪魔のZ。首都高に存在する伝説のマシン。
かつて蓮は悪魔のZと首都高最速を争っている。Zのドライバーは蓮や美世も知っている。
「どんな気持ちであの車のボディを作ったんですか……?」
「希望……と言うべきか。あの車は」
「希望……。北見さんも言ってました」
「誰もが成し得なかった事をやろうとする為に生まれた存在。ソレを自分の手で生み出す挑戦ってトコか」
「だからこそあの車はアキオのパートナーだったんだろうな」
「……」
大体の作業が終わった頃には夜9時を回っていた。本来の営業時間を過ぎていた。
「すみません、こんな時間まで」
「いいさ。こうやってお前が手伝ってくれるからだいぶ早く進んでるさ」
蓮は工場を後にする。
蓮は家に帰ってきた後すぐにパソコンを起動。
ネットでFCのエアロを見ていた。しかし理想形のエアロはない。
「作って貰えるかな」
蓮はある人物に電話をかける。
やがて話し終わった後、蓮は教えられた店の名前を紙にメモする。
紙には「SSマッハ」と書かれていた。
これだけやって蓮は就寝。
次の日も仕事をみっちりとやってから教えて貰った店へ行く。
中に入った蓮を迎えたのはオヤジ。
「おおっ、お前か?北見が言ってたのは」
「北見さん話を回してたんだ……。はい、僕です」
「俺は佐々木元。まあ、ガッちゃんとでも呼んでくれ」
「それで何のエアロ欲しいって?」
「いえ、ワンオフで作っていただきたいんです」
「はっ!?」
「北見さんから聞きました。あなたはかつてワンオフエアロを作っていたと」
「あなたの力を借りたくて来ました。お願いします」
蓮は頭を下げる。
「いいね〜。ちょうど俺もヒマしてたトコだ。イイじゃん、ヤってやるぜ」
「クルマはなんだ?」
「FCです」
「FCか……。FCはドコに?」
「FCは今ココにないんです。事故で壊れて。今高木さんの所にあります」
「高木が……。ひょっとしてお前他にもいろんなとこに関わってんだろ」
「はい。FCを本物のマシンにするために」
「お前はスゴいヤツってわかるよ。俺はこーいうヤツに力を貸すヤツだからナ」
「おっしゃ!デザインは俺が考える!イイか!?」
「はい!お願いします!」
2人はアイデアを出し合いながらFCのエアロデザインを練り上げていく。
あまりにも熱中しすぎて奥さんに怒られたが。
翌日。
蓮は今日はオフだ。いや、オフにされた。
この数日間の蓮の様子を見かねたちひろ達に強制的に休みにされたのである。
蓮はいつもの時間通りに起きる。昨日は深夜までエアロを考えていた。その為蓮は良くて5時間程しか寝ていない。
ここの所ロクに休めていなかった蓮。当然体調にその影響が出ている。体は重いし、頭痛もする。
蓮は頭痛薬を飲み、リポビタンDを流し込む。
万全とは言えない体調で蓮はFDに乗り込み、あるショップへ向かう。
蓮のFDが止まる。
そのショップには「RGO」とあった。
店に入った蓮を迎えたのは女性。
「こんにちは、あなたが小日向サンね」
「ええ。こんにちは、大田リカコさん」
リカコと呼ばれた女性。
彼女はかつて悪魔のZに挑んだ「神谷エイジ」が駆るランサーエボリューションⅤをチューンした。その後、悪魔のZのエンジンに手を入れた事がある。
今は引退した父、大田和夫の跡を継いでRGOの代表を務めている。
「もう用意はできてるわよ」
「ええ」
蓮はあらかじめここに置くように依頼していた木箱を開ける。
その中には13B-REWが入っていた。エンジンとは別に、補機類やスペアパーツ一式が袋に入れられていた。
木箱の中身を運び出し、奥の作業場に置く。
そこにはRGO関係者ではない男の姿が。
「待ってたぜ。こうやって再びロータリーを組む事になるとはな」
「すみません、無理を聞いていただいて」
「FCは俺がよく知ってる。アンタの手伝いをしたくてな」
内藤健二だ。かつて「追撃のテイルガンナー」と呼ばれたトップクラスの首都高ランナー。美世の師匠でもある。
彼はかつて、赤いFC3Sで最前線を走ってきた。一線を退いた後に内藤は当時の美世を隣に乗せたこともある。
美世はその時の事がきっかけで首都高を走りたい、と思ったそうだ。
ロータリー車に強いRGO、しかもRGO代表で「悪魔のZ」にも手を入れた事がある太田リカコ。
かつて最前線を走ってきた首都高ランナーであり「追撃のテイルガンナー」と呼ばれたロータリーマスター内藤健二。
ロータリーエンジンを知り尽くした2人が手がけるというだけでも期待は大きい。
そして、エンジンの仕様を考えるのは現「首都高最速」であり、現役レーサーの小日向蓮。
このメンバーでハンパなエンジンを作るなんて誰も思ってない。やるからには絶対に妥協を許さない。
ロータリーにこだわる者達の情熱が注がれようとしていた。
カチャカチャとメガネレンチを動かす音が聞こえる。
この場には3人しかいない。
今日は代表自らが出るという事もあり、従業員達は蓮達が作業できるように場所を空けていた。
内藤は蓮の考案通りにペリフェラルポート加工を行っていた。
蓮はパーツの組み付け。内藤が加工したパーツを組み合わせていく。
リカコは蓮が組み付けたエンジンをチェック。コレがしっかり出来ていないとロータリーエンジンの精度はガラリと変わる。その為、細心の注意が必要だ。
1mmの誤差も許さない非常に精密な作業。たかが1mmと言う人は本物のチューンドロータリーがわからない。
非常にデリケートなエンジンであるロータリーエンジン。だからこそ、組み上げる人の技量が問われる。言い換えれば自分の車への知識がそのままエンジンの精度に繋がると言っていいだろう。その為、ロータリーエンジンを載せた車に乗る人は車を「理解」っている事が前提なのだ。夢や憧れだけで乗るのは難しい。
ロータリーエンジンはコンディション次第で最大限パフォーマンスを発揮できるし、最悪エンジンを壊しかねない。
RE車に乗るからにはそれ相応の経済性、技術、そして知識がなければREの本当の領域に入れない。
金がなければ維持できない。運転がヘタなら車は壊れる。そして分かってなかったら走らせる意味がナイ。
それを承知でREを選ぶーーー。
大体の形になる頃には夕方になっていた。
昼食を食べた以外、蓮は休憩していない。
蓮の前にはとりあえずの形になった13Bがあった。タービンなども付いている。この後馬力の測定だ。
リカコがエンジンを始動させる。クランキングを始めたエンジン。エキセントリックシャフトが動き、ローターが回転し始める。
ひとまずエンジンの始動は成功。あとはどれだけ馬力が出ているか。
ゆっくりと回転数を上げていく13B。ロータリーエンジン特有の高いロータリーサウンドが作業場に響く。耳を塞がないと鼓膜が破れそうな程大きな音がする。その間にも計器の針は動き続ける。
数分後、針の動きが止まる。
「460馬力……!」
まだちゃんとした出来ではない。しかし一発目の測定でここまでパワーが出ている。
「まだまだ行けるね。どう?」
「ですね。さらに煮詰めていきたいです」
「扱いやすさも考慮して……。理想になるまで何回でもやるよ!」
「FCを象徴するモンだ。コレがしっかりしてなけりゃFCはポテンシャルを引き出せない」
3人は閉店までエンジンのセッティングを続けたのだった。
伝説のマシンに関わった者達の手でFCの再生が進む。
完成はまだ先だ。
「湾岸ミッドナイト」から多数の人物登場!
また、「首都高バトル」からも登場!
美穂のFCはどんなマシンになるのか。
ネタ解説です。
・「湾岸ミッドナイト」の人物達
今回、「湾岸ミッドナイト」から多数の人物達が登場。いずれも本編終了後と考えてください。
ちなみに何故蓮が彼らと知り合いかというと、蓮は「疾走のR」で「悪魔のZ」生みの親「北見淳」と面識を持っています。彼に相談した所、教えて貰ったのです。
まず、高木優一。
「悪魔のZ」のボディを作り上げた人物です。「湾岸ミッドナイト」本編でも大破炎上したZのボディを蘇らせました。また、「ブラックバード」のボディをパイプフレーム+カーボン外装という超軽量ボディに変えたりしてます。
本編終了後は長らくボディを手がける事がなかったものの今回、美穂のFCのボディを直す為という蓮の依頼を受けたのです。
次に佐々木元。
ガッちゃんと呼ばれる彼。「湾岸ミッドナイト」本編で「相沢圭一郎」ことケイのJZA80スープラのエアロを制作しています。ちなみに今でもセルシオのエアロが一番売れています。
今回FCのエアロ制作を依頼してきた蓮に全面的に協力してます。
最後に大田リカコ。
彼女は文中で触れているように「湾岸ミッドナイト」本編で「神谷エイジ」のエボⅤをチューンしてます。その後悪魔のZにアキオと北見以外で唯一Zのエンジンに手を入れた人物です。
この物語では「湾岸ミッドナイト」続編「C1ランナー」終了後に父である和夫の後を継いでRGO代表になっています。
ただし、「湾岸ミッドナイト」本編では山中に次期RGO代表にふさわしいと言われているが断っています。これは物語の都合上設定無視。
今回蓮の依頼に父譲りのチューニングセンスで後述の内藤と共にエンジンを組んでいくのです。
・内藤健二登場
「首都高バトル」から「追撃のテイルガンナー」でお馴染みの「内藤健二」が登場。
前作「疾走のR」でも登場してましたが、あまり深くは物語に関わりませんでした。ですが、今作で非常に大きな役割を持ちます。
前作「疾走のR」から読んでる人は美世との関係がよくわかると思います。
FCを駆る歴戦の走り屋が蓮に協力して完成する美穂のFCはどうなるか。
「湾岸ミッドナイト」「首都高バトル」の人物達も巻き込んで動く物語。蓮が美穂を思って形にしていくFCは首都高を変える車になるのか。
次回、夢斗激走!!