アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者   作:ヒロ@美穂担当P

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美穂のFCは形になっていく。美穂自身も技術を得ていく。
そして……夢斗激走!


STAGE12 目覚める天才(夢斗)、エースドライバー

湾岸での事故から2週間が経った。

美穂は退院して仕事に復帰。ただ、なぜ休んでいたかは聞かれて里帰りとだけ告げた。

今は前と変わらない生活を送っていた。ただ一つ、自分の車がない事を除いて。

「蓮さんどこだろう?」

美穂は蓮を探す。ここの所蓮は気がつくといなくなる。

特に休憩時間の1時間は必ずいない。そして帰ってくる蓮は疲れてるのだ。休憩してないようにしか見えない。たまに顔に汚れが付いてる事もある。

「……美穂ちゃん?」

「あ、すぐ行くよ!」

五十嵐響子に声をかけられて慌ててトレーニングルームに向かう美穂だった。

 

 

同時刻。

大学では明後日に向けて練習している夢斗がいた。明後日は全関東学生ジムカーナ選手権だ。それに向けて部員達は本番さながらの練習を繰り返していた。

夢斗が駆るハチロクレビンの叩き出すタイムは誰も破れなかった。しかも夢斗は走る度にタイムを短縮するというとんでもない進化をしていた。

その為、夢斗のライバルは夢斗自身と友也に言われたほど。

 

「トモさーん!ハチロクのタイヤもうダメっすわ!」

「あれ、さっきも交換してなかったか?」

「そうっすけど」

ハチロクのタイヤは約20分前に全部新品タイヤに交換している。その新品タイヤのグリップを使い切ったと言うのだ。

「……後で新品タイヤ買っとくから。とりあえずお前はコレでラストな」

「あざーす!!」

夢斗は新品タイヤをもらい、すぐさまハチロクのタイヤを交換し始める。

「誰よりもタイヤの使い方が上手いな……」

友也の言った事は本当だ。実際ブレーキングでは絶対にミスしない。

また、限られた状況の中で目一杯タイヤのグリップを使い切る事も上手い。夢斗のタイヤのグリップの使い方は誰も真似できないのである。

勝負所で確実に勝てるよう、グリップを残しておくなど夢斗のタイヤの使い方はレーシングドライバーに匹敵する。夢斗の走り方が蓮の影響を受けて高いレベルにステップアップしてるのだ。

「うっし!」

再び夢斗のハチロクが走り出し、本番のコースを模した練習広場を駆け抜ける。

 

 

 

夢斗のハチロクは豪快なドリフトで突っ込んできた。

パイロンをタッチするかしないかのギリギリで回り、スラローム。

ジムカーナは短時間で終わる。普通のレースなどよりは所要時間は圧倒的に短い。

しかし夢斗は他のメンバーとは約6秒という差をつけている。

そんな夢斗の走りに刺激された部員達のタイムも早くなるなど夢斗自身が周りにも影響を与えてるのだ。

実際、夢斗がメンバーになってからの団体でのタイムは最初のメンバー案の時より圧倒的に早くなっている。

 

 

「夢斗だけで3セット使ってるぞ、友也」

聖真が友也に言う。

「パワーがないハチロクでタイヤを使うとはな……」

レビンは150馬力。他の車でインテRとCR-Xがあったが夢斗は「ハチロクじゃないと合わない」と言う為、急遽エントリーしていた車両をハチロクに変更したのだ。その為、他の部員達もハチロクで練習するハメになった。友也達はタイヤをそれほど使わないと考えていたが、その考えは完全に外れた。夢斗の攻め方が別次元と言うべき。

 

 

 

帰宅した後も夢斗は過去大会の動画を見る。優勝したチームの走り方を分析していく。

一通り見終わった後、夢斗は目を瞑る。脳内に浮かぶコース、そしてハチロクの車内。浮かび上がるイメージに合わせて夢斗は手を動かし、足を動かす。正確に左手が動き、そこにないイメージ上のシフトレバーを動かしシフトアップ。

イメージトレーニング。夢斗のソレはグ○ンツーリスモをやるよりも効果があるのだ。

 

 

 

同時刻。

ここは高木の工場。作業スペースには歪んだ跡が消えたFCのボディがウマに掛けられていた。

午前中に蓮がここにやって来て作業していったのだ。

ボディは綺麗になっておりボディ剛性アップが行われていた。車内にはクロモリ製ロールケージが入っている。

後は最後の仕上げを終えればFCのボディの修復は完了だ。

これにエアロやエンジン、メーター類を付けるとFCは形になる。

高木はFCの最後の仕上げに取り掛かった。

 

 

 

 

 

場所は変わってSSマッハ。

蓮はガッちゃんとエアロの制作を行っていた。話し合いの末、決まったデザイン。

FCの元のスタイリングを大きく崩すことなく、超高速域で車を安定して走らせられるようにデザインはシンプルだ。

フロントバンパー側に固定ライトを装備。リトラクタブルライトを排除し空力面でのアドバンテージを得る。

リアバンパーは空気を引き抜くため純正バンパーから僅かに変化がある程度といったくらいシンプルなバンパー。よくわからない人は純正品にしか見えないだろう。

リアウイングはFreeStyle製のGTウイング。

超高速域で「戦う」為のワンオフエアロ。本気の作り込みだ。

2人はまだ見ぬFCを想像しながら作り上げていく。

 

 

 

 

 

 

翌朝。

RGOの作業場では13Bがテスト中であった。

多少パーツを見直した。

また、少しでも燃費を改善しようと試みていた。だが、燃費が良くなればパワーが犠牲になる。パワーと燃費をバランスよく両立させるという高いハードルにぶち当たっていた。

パワーと燃費のバランスが崩れないギリギリのラインを模索中だったのだ。

リカコはテストの結果を見て呟く。

「ピークパワーは8200回転で発生か。……低速域をどうするかだよね……」

13Bの最大トルクは8200回転で発生する。13Bは9000回転まで回るようになってる。その為、かなり踏み込まないとまず前に進まない。また、エンジン特性上ガソリンをやはり食う。ペリ加工してさらに燃費が悪化しているのだが、この結果ではバトルどころではない。

低回転ではただでさえ扱いにくいロータリーペリの特徴が浮き彫りだ。

「そうだ……!小日向君も使ってるアレなら!」

リカコは蓮に電話をかける。

 

 

 

「蓮君、電話よ」

ちひろが蓮に知らせる。

ちひろから電話を引き継いで蓮が応答する。

「はい、小日向です」

「小日向君?」

「リカコさん、どうしました?」

「キミ、NOS持ってる?」

「NOSですか……。僕のFDにはありますけど……あっ、そういう事ですね!?」

「そ、あったり〜」

蓮はリカコの言いたい事が瞬時に理解出来た。

NOSはエンジンを冷却しつつ、パワーを引き上げる為の手段だ。アメリカではポピュラーなチューニング方法だ。

蓮のFD3Sにも装着されている。また、美世のBNR34にも。

 

リカコはNOSの搭載を提案したのである。

ロータリーエンジンは低回転域の燃焼安定性が悪く低回転域でのトルクとレスポンスは同出力のレシプロエンジンと比べて劣る傾向にある。街乗りなど主に低回転域で走る際には、燃費および運転性(ドライバビリティ)で不利である。

だが、NOSを使えば低回転域での燃焼率を向上させる事ができる。亜酸化窒素をエンジン内に噴射すると、エンジンの燃焼に伴う高温により乖離して、遊離した酸素がガソリンの燃焼を助ける。

気化する際は−60度程で周囲の熱を奪うため、エンジンの加熱を抑制でき、かつ吸気温度の低下により空気の圧縮率も向上するのだ。

NOSを低回転域で噴射すればロータリーエンジンが苦手とする立ち上がり勝負でもトルクをしっかり発揮できる。

蓮はリカコのアイデアを取り入れたエンジンの使い方を脳内でイメージ。

ロータリーエンジンが苦手な低回転域はNOSを噴射。NOS噴射により低回転域を補助してロータリーエンジンの真骨頂である高回転域に繋げる為のアシストとするのだ。

 

リカコの提案を把握した蓮は急いでヤ○オクなど様々なサイトを片っ端から探し回る。やがてNOSを見つけ、落札した。

 

 

夕方。

仕事が終わった蓮はスマホにメールが入ってる事に気がつく。

「俺、明日大会っす。良かったら見に来てくれますか?」

夢斗からのメールだ。

「夢斗君大会か……。明日はオフだし行けるか」

蓮は返信。

「蓮さーん!」

美穂だ。レッスン終わりだったようだ。

「美穂ちゃんお疲れ様。ボーカルレッスンどうだった?」

「まだ、表現が上手くできてないって言われて……」

「頑張って!美穂ちゃんは誰よりも努力してるんだから。自信を持って!」

「はいっ!」

「美穂ちゃん、車乗ってく?」

「乗ります!」

2人が乗ったFDは事務所の駐車場から出る。

 

 

「蓮さん?寮はこっちじゃないですよ?」

美穂は蓮がいつも通り寮に送ってくれると思っていた。しかし、寮に行くルートから外れた。

ちなみに美穂はFCがない間だけ蓮に迎えに来てもらっているのである。

やがて、無人の広い駐車場に到着。

「美穂ちゃん。僕の車を運転してみて」

「ええっ!?」

「美穂ちゃんがななさんを運転した時に困らないようにね。ななさんをちゃんと乗れるように」

「ななさんを……。やってみます!」

 

 

黄色い蓮のFD3Sがゆっくり動き出す。

運転席に美穂が身を預ける。助手席には蓮。蓮が美穂に乗り方を教えていく。

「ゆっくりと繋いで……。そう!」

蓮に教えて貰いながら美穂は蓮のFDを操る。

40分もやっていたら美穂は基本をマスターしていた。

「よくできたね、美穂ちゃん。あとはコレを首都高で使えるかだね」

再び蓮が運転席に移る。蓮は慣れた様子でFDを運転。首都高へ入っていく。

 

 

 

「……!は、早い!」

美穂は環状線をスイスイと走るFDに驚きを隠せない。そして初めて体験する蓮の「首都高」での走り方。

蓮は無駄のないスムーズな動きで一般車を回避しつつ、FDを前に進ませる。

 

「あれは……この間の」

蓮は前を走る咲耶のエボⅨを見つける。だが今バトルをする気ではない。蓮は一旦パーキングエリアに入る。

 

 

「上手い……」

咲耶はパーキングエリアに入っていった蓮のFDを見て言う。「首都高最速」は伊達ではない。

この後も咲耶はしばらく流すことにした。

 

 

 

 

パーキングエリアから出てきたFD3S。だが今FDを運転しているのは美穂。

140kmを超えたあたりから美穂の視界の見え方が変わり始める。

前にいる車が自分に向かって飛んでくるかのような錯覚。実際は300km出したことあるが。

美穂は恐怖と焦りで体が強張る。

「ーーーっ!!」

「落ち着いて!自分が固くなったら心も固くなる!心が固くなったら悪い流れになってしまう!」

「すぅー……はぁー……」

美穂は深呼吸。するとさっきまでと視界が変わって見える。

「だ、大丈夫。大丈夫……!」

美穂は落ち着きを取り戻した。

するとさっきまで若干ぎこちなかったFDの動きに軽快さが現れ始めた。

「わかった……!!」

美穂は少しずつ踏み込んでいく。ゆっくりとFDが速度を上げていく。

「美穂ちゃん乗れてるよ!車を『理解」ってる!」

蓮の言う通り、美穂はFDを把握していた。今の美穂はさっきまでの恐怖感などはもう無く、絶大な安心感を持って運転できていた。

 

「さっきの車……」

再び咲耶のエボⅨと合流。エボⅨが隣に並ぶ。

「なるほど……」

咲耶は状況を把握。エボⅨを加速させた。

「わっ!?」

ビックリしてる美穂を見て、蓮は咲耶の意図を汲み取る。

「美穂ちゃん、追いかけてみて」

「えぇ〜っ!?」

 

「上手い……。この間とは大違いだ」

咲耶は後ろにいる美穂が運転するFDを見る。この間湾岸で見た時と別人かと思うくらいに動きが変わった美穂。

「いつか本気でやろう」

咲耶のエボⅨは降りる。

 

 

「あ……」

「美穂ちゃん。大丈夫?」

「大丈夫です。あの人上手だなーって」

「うん。上手い」

蓮は咲耶の技術の高さを評価していた。蓮も認める程の「速さ」を持つ咲耶はトップクラスの首都高ランナーだ。

FDもその先のランプで降りた。

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

「いやいや、美穂ちゃんがしっかりと聞いてくれる事が嬉しかったんだ。こっちがお礼を言いたいな」

「蓮さんはどうやって上手になったんですか?」

「……ずっと繰り返してたから、かな」

「私も頑張って蓮さんを追いかけます!」

「そっか……。そうだ、美穂ちゃん」

「なんですか?」

「明日美穂ちゃんはオフだっけ?」

「はい。どうしたんですか」

「明日ちょっと行きたい所があってね、美穂ちゃんも一緒に行かないかなって」

「行きたいです」

蓮は美穂に明日の朝に迎えに来る事を伝える。美穂を寮に送り蓮は帰宅した。

 

 

 

 

翌日。

富士スピードウェイ内の全関東学生ジムカーナ選手権大会会場。

友也達はチームのテントを立てていた。そこにはハチロクレビンが。ロールケージなど保安装備が付けられているレビンは戦闘的。ただ、友也達のチーム以外でFR車はS14だけ。他はほとんどホンダのFF車ばかり。

浩一が夢斗に聞く。

「お前、こういう大会ってどうなのよ」

「俺はコレで初体験だぞ」

「マジか。入部前のお前はこんな感じの事を嫌ってたが……」

「ぶっちゃけ今もヤだ。けどな、負けられないし」

言うまでもなく蓮の事だ。

「負けられない言う割にリラックスしてるな」

「どうにでもなる」

「ええ……」

いつも通りの夢斗の様子に困惑する浩一。

やがて開会式が始まり、説明の後に競技開始。

夢斗は「そんな詳しく言わんでも」と言っていたけど。

 

 

 

それぞれの大学の車が攻めていく。シビックやインテRなど様々な車がコースを走る。

エンジントラブルなどでリタイアする大学もあったが、ほとんどの大学は完走する。

 

「ここはガッ!ってやるだろ」

「スゲーなお前」

浩一にツッコまれる夢斗。他の大学の車の動きを見て改善点を述べていく。

見ただけでわかる夢斗だからできる事だ。

「……勝算は」

「100パー」

「ズバって言えるお前がすげえよ」

100パーセントと断言してみせる夢斗。

「おい、もう少ししたら準備しろよ」

友也に呼ばれる夢斗達ドライバー。

いつもの様子で準備し始める夢斗。表情こそ普段通りだが目は本気モードになっていた。

 

 

「車が軽く動いてる……!」

美穂が軽快に動き回る車を見て言う。

「ななさんもあんな動きができるんだよ」

「そうなんですか!?」

驚く美穂を横目に蓮は競技を見てた。

自分もレーシングドライバーだ。だが、ジムカーナはやった事がない。でも、蓮の峠上がりの技術はあの場にいても十分に通用するだろう。

「やあ、こんにちは。……大丈夫かい?」

蓮と美穂が振り向くと咲耶がいた。

「こんにちは、白瀬さん」

「平気ですっ」

咲耶は美穂と病院で顔を合わせている。その為、お互いがアイドルである事も知っている。また、蓮にもその際に会っている。

「白瀬さんは何故ここに?」

蓮の質問と同時に咲耶を呼ぶ声が。

「さくやーん!待ってよー!」

「咲耶さーん!」

L'Anticaのメンバー達と遥だ。

「さくやんはこれを見たかったの?」

「ああ。ちょっとね」

咲耶は続けて蓮に話す。

「私達はロケで来てたんだ。ロケが終わって近くを回っていたらこれがやっててね、見たくなった」

「お兄さんは誰?」

結華が怪しがる。ムリもない。

蓮は私服に伊達メガネをかけて変装、美穂もお忍びコーデだったのだ。

「僕は君に会ってるよ。結華さん」

「えっ、ファン!?」

「アイドルに関係する事をやってるよ。割と目立たないけど」

「え、何だろ!?」

「あなたは……」

遥が蓮に質問しようとするが。

「続いてナンバー16!T大学!!」

夢斗達が呼ばれたのだ。蓮達がそちらに注目したため質問しそびれる遥。

スタート地点にはハチロクレビンが見えた。

 

 

 

全21チーム中16番目のスタート。

出走順は小林→聖真→夢斗。

ラストに夢斗が走る。この順番は友也が決めた。

「エースはお前だ」という友也の言葉を聞き、夢斗は最後を選んだのだ。

 

 

ハチロクがスタート。

今の車から見たら軽量なボディを4A-Gが前に進ませる。ミスなくそれぞれのポイントをクリアしていく。

ハチロクが帰ってきた。タイムは1分16秒757。悪くないタイムだ。

2走目も無事に走り切った。タイムは1分14秒420。

 

 

次は聖真。

副部長のプライドがある。聖真は全力でプッシュしていく。

1走目は1分14秒398。早い。

2走目も順調かと思われた。しかし、ターン時にスピードが高すぎて僅かに体制が崩れて失速。タイムは1分15秒148。

「くそ、やっちまった……」

聖真はうなだれる。

 

 

聖真が乗るハチロクが帰ってきた。

「すまねえ、やらかした」

「いいっすよ。俺がどうにかするし」

「こういう時のお前が心強いな」

友也が夢斗の発言を聞いて言う。

「見てて相手は大して上手いとかじゃないし。フツーにやる」

夢斗はこう言ってるが、去年の個人順位1位もいた。それすら上手いわけじゃないと言ってるのだ。

「やべ、夢斗バケモンだわ」

「最初からですよ、工藤さん」

聖真に軽いツッコミを入れる浩一。

ハチロクに乗り込もうとする夢斗。その時夢斗は視線を観客席に移す。

ヘルメットを被ってるため自分の顔はあちらには見えてないだろうが、夢斗は見に来ている人物達をしっかりと見た。

 

 

「夢斗か……」

咲耶はこちらを見てきたドライバーを夢斗と直感的に判断した。

「え、ゆうくんなの!?」

結華が驚く。

「ああ、夢斗さ」

蓮はハチロクに乗り込む夢斗を見る。

「蓮さん?」

「美穂ちゃん、彼の走りをよーく見てね」

「?はい……」

ハチロクに乗った夢斗は友也からのアドバイスをもらってた。と言ってもアドバイスって言うものでもないが。

「とにかく無理せず無事に戻ってこい」

「え?俺とことん詰めてやりますよ」

「……はっはっは、やっぱり上を目指そうとするお前の姿勢には負けるな」

「行ってこい。お前の走りを見せつけてやれ」

「……ラジャー」

夢斗のハチロクは発進。……コール切りながら。

 

 

 

「なんだありゃ」

「アホだ」

「T大学1年暴走族説」

観客や他のチームのメンバーからの反応は様々。……悪い意味でだが。

実はこの大会に出場してる1年生は夢斗のみ。その為元々目立ってたのにコレだ。

「うるせえ!」

浩一が文句を言う。だが、友也だけは何も言わない。

「見せてやれ。天才ドライバーの走りを」

 

 

スタート地点にスタンバイしたハチロク。アクセルを煽り、回転数を上げてスタートの瞬間を待つ。

「スタート!」

スタッフが旗を振ると同時にハチロクが飛び出していく。

夢斗はアクセルを床まで踏みつける。

ルートを進んでいくと2つパイロンが見えた。その瞬間夢斗はクラッチを蹴る。ハチロクのリアタイヤが一気に流れ始める。豪快にハチロクをドリフトに持っていき、パイロンの間を抜けて片方のパイロンにピタリとついて元のルートを辿って再びパイロンを目印にターンして高速でスラロームなどをしていく。

最後はフルスロットルで駆け抜けていく。

ハチロクはゴール。1走目のタイムは1分10秒877。

暫定だがなんと個人順位トップ。

「まだだ……!!」

夢斗の目はキレていた。まだ全然自分の理想に届かない。

 

 

 

「おいおい嘘だろ!?」

「1年生か!?速すぎだろうが!」

「魅せるドリフトだろアレ」

他の大学のメンバー達に衝撃が走る。初参戦のハズ。なのにいきなり個人トップというバケモノじみたコトをやってるのだ。

だが……。

ウォン、ガアッァァァァ、バンッ!!

「何だ!?」

音のした方を見るとハチロクが……。

ハチロクのエンジン音はまるで「イラつき」を表してるようだった。アフターファイアがマフラーから吹き出す。

「もっとだ……。もっと速くっ!!」

 

 

「!?」

咲耶はハチロクの異変に驚く。

「どうしたんだろうゆうくん」

結華は不思議がる。

「あれは一体……?」

遥が首を傾げる。

「蓮さん……?」

蓮はハチロクを見て思う。

(限界をさらに超えていこうとしているのか……。君ならできる。夢斗君、頑張れ!)

 

 

「夢斗どうした!?」

友也達が駆け寄ってきた。

「いやー……。ちょっと自分にキレそうで」

そう言った夢斗の目は本気でキレていた。目が「声掛けたらコロス」と告げていた。

「お、おう……」

夢斗のあまりの迫力に後ずさる友也達。

ハチロクは再びスタート地点へ。

「スタートっ!」

旗が振られ、ハチロクは走り出す。

 

 

「おい、アレどうなってる!?」

観客や大学のメンバー達が凝視する。

その先には先程よりもアングルが大きくなったドリフトでコースを走るハチロクが。

元々ドリフト多様のスタイルだった夢斗のハチロクの動きがさらにヤバいレベルになっていた。

エンジンは限界までブン回っており、エンジンブローするのではないかと思う程。夢斗はハチロクを限界まで酷使してタイムを削り取っていく。

「踏めええええっ」

ハチロクの動きは1走目より大きな動きなのに格段に速くなっている。キレが違う。

「なんでさらに速くなってるんだ!?」

見る者全員を沸かせている夢斗の走り。

 

 

「すごい……!」

美穂はハチロクの動きに釘付け。

「夢斗君……。彼は、さらに変わる」

蓮はまだ見ぬ夢斗の可能性を思い描く。

「……!!」

咲耶は衝撃を受ける。

「さくやん?」

「咲耶?」

結華と恋鐘が咲耶に声を掛けようとした。しかし、今まで見た事がない咲耶の驚きに満ちた表情に思わず息を呑む。

「やはり……彼はあの車に立ち向かえるかもしれないっ」

夢斗の技術はもはやただの「走り屋」では済まないレベル。

 

 

 

スキール音が響くコース。

ハチロクは破錠寸前ギリギリすら無視して猛プッシュを続ける。

「行けえっ!」

クラッチ蹴りで回転数を上げ、エンジンが苦しげな音をさせる中でもアクセルを緩めない。

「あの負けた時の俺はバカだった……。でもな……。俺は勝ちたい!俺がどこまでやれるか知りたいっ!」

最後のターン。ハチロクは誰が見ても明らかに速すぎるスピードで突っ込んできた。

「あいつ死ぬぞ!」

「壊れた!?」

 

 

 

「ああっ!?」

結華達は猛スピードで突っ込んでいくハチロクを見る。

「夢斗……!」

咲耶は不安を浮かべてる。

「夢斗君……!!」

蓮も夢斗のハチロクを見る事しかできない。

 

 

ハチロクは大きくリアを振り出す。直後に間髪入れずにクラッチ蹴り。

ハチロクはほぼ真横を向く。いや、90度以上の角度だ。

「ケツ進入!?」

友也は驚愕。

「初めてみた!」

浩一や聖真達も驚きを隠せない。

「なんて角度のドリフトなんだーーっ!?」

実況もハイテンションだ。

夢斗は0.1mm単位でアクセルペダルを踏む深さをコントロール。

常人では絶対にできないレベルのペダルワーク。

神業と言えるレベルでハチロクをコントロールし最後のターンを立ち上がる。

「すっげええ!!」

「あいつめちゃ上手い!!」

ハチロクはゴール。途端拍手が上がる。

 

 

 

「ゆうくんスゴい!!」

結華達が興奮した口調で話す。

「ああ。なんて技術だ」

咲耶は夢斗の進化し続ける技術に驚きを隠せない。

 

「すごかったですね、蓮さん」

「うん。美穂ちゃん、彼は美穂ちゃんといずれ戦うよ」

「えっ?」

「彼も首都高を走ってる。上手いよ」

「私追いかけれるかな……」

美穂は彼と走る事をイメージする。

 

 

 

 

 

夢斗の2走目の結果が出た。

結果は……。

「1分8秒283…!嘘だろ、10秒突破したぞ!!」

「歴代新記録だ!」

「なんだこの1年!」

 

 

 

結果を見た友也達も興奮した口調。

「よくやったな!!」

「夢斗、アレどうやったんだ!?」

「いやー。フツーに」

「嘘つけ〜!本気出しただろ」

「あ、バレた?」

「お前目がスゴい事なってたしよ〜!!」

 

 

この後、全てのチームが走り終わった。

結果はT大学は団体順位1位。

そして個人順位は夢斗が2位を4秒も離しての圧巻の1位。

閉会式で賞状が渡されていく。

 

 

賞状を貰った後夢斗達は記念撮影。

歴代最速記録を更新した夢斗は他の大学からも注目されていた。

写真撮影にちゃっかり入ろうとしてる奴もいたくらい。

写真撮影後、撤収作業をしていた夢斗の元に来客が。

「おめでとう、夢斗君」

「すごかったですね!」

蓮と美穂だ。

「小日向さんどーもっす」

「夢斗君とてもいい走りができていたよ」

「小日向さんに言われるとちょっと嬉しいかも」

「あ、あのっ」

「どうした美穂」

「夢斗さんのように私、走れますか」

「走れるさ。小日向さんに教えてもらってるとか羨ましいし(笑)」

 

 

「誰だあれ?」

「さあ?」

「つか、隣の子可愛い」

夢斗と話している2人に注目する部員達。そこにL'Anticaのメンバー達が。浩一は駆け寄る。

「あれ、咲耶さん達どうしたの」

「ロケの終わりに寄ったんだ」

「へー」

その瞬間、強い風が吹いた。

「わ……っ」

「あっ」

蓮が被っていた帽子が風に持っていかれて地面に落ちる。美穂も帽子を飛ばされてしまった。

「小日向美穂ちゃん!!」

「え、マジで!?」

部員達が一斉に美穂達の方を向く。だが同時に表情が青ざめる。

「え……あれって小日向蓮じゃ」

「首都高最速の小日向蓮!?」

「『公道の流星』じゃねーか!!」

「プロレーサーじゃん!」

友也達ならず、他の大学のメンバー達も蓮に注目。

「あ……」

蓮は美穂を連れて少しずつ後ろに下がる。

「うっは、ヤバそう(笑)」

こんな状況でもやはりブレない夢斗。

「つーか、こっちにも美人がいる!」

今まで向けられなかった視線がL'Anticaのメンバー達にいきなり向けられる。

「待ってくれー!!」

蓮やL'Anticaのメンバー達は慌ててこの場を離れたのだった……。

 

 

 

 

 

「星名夢斗……。彼の走りをもっと多くの人に見てもらいたい」

そう呟く男は笑みを浮かべていた。

夢斗の走りはこんな所で終わらせるにはあまりにも勿体ない。この技術を多くの人に注目してもらいたいという個人的な願望。

男は愛車オデッセイに乗り込み会場を後にする。

 

 

 

 

 

美穂のFCは着実に形になっていく。

同時に美穂は蓮のレッスンを受け、実力をつけていく。

夢斗は大会初参加で個人順位1位。そしてチームを1位に導いた。

蓮を目指す夢斗の実力は確実に周囲に大きな動きを作り出していく。




美穂は蓮の教えを受けて技術を得る。
FCは首都高を知り尽くした者達の手で完成が近づいていく。


ネタ解説です。ネタは今回コレだけ。
・蓮のアドバイス
緊張した美穂に言っていることは「湾岸ミッドナイト」で登場する「ユウジ」が言っていた事が元。



ちなみに大会の結果は2016年度の結果を元にしています。
FR車で参加する所がほとんどないんだなーと。




夢斗は大会初参加にして個人順位1位&総合優勝という成績を残す。
夢斗の走りは蓮に近づいていた。
夢斗の技術に興味を持つ男は一体何者か?


次回、夢斗と蓮が魅せる走りで大暴れ!
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