アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者   作:ヒロ@美穂担当P

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ついに美穂の手に戻るFC。
彼女は生まれ変わったFCを操れるのか!?



STAGE15 パートナー

蓮が大阪に行って数日が経った。

白いFCがRGOで最後の調整を受けていた。

「給排気が変わってだいぶ良くなってるね〜」

リカコがチェックの結果を見て言う。

「すごいです……とにかく音が自分の中に直接届くって言うか……」

「夢斗君のエボと同じ音がするんです」

シゲの作ったマフラーの音の事を伝える蓮。

リカコが話す。

「FCと同じエキゾーストノートだったわよ。ブラックバードは」

「……確かに」

蓮はブラックバードと戦った事がある。その際に聞いた高揚感を感じるハイトーンのエキゾーストノートが心に残っていたのである。

「……よしっ!」

リカコが調整を終えた。

「これでFCは本当に完成よ」

「ありがとうございました。何から何まで手伝っていただいて」

「いーのいーの。久しぶりに本気になってエンジンを組めた。常にどんなセッティングにしたらいいか、考えるの楽しかった」

「リカコさん、工賃は……」

蓮が工賃の事を切り出す。

「いや、いいわ。あなたが守りたいと願う人への手助けをしたまでよ」

「僕は工賃を受け取って頂きたいんです。そう言うの抜きにして。僕はあくまで『仕事』として皆さんにこのFCを手掛けて頂いたんです。だから……」

「……気持ちだけ貰っておくわ。小日向君」

この後もなかなか蓮が引き下がらず、結局は本来の工賃の約1割の金額をリカコが貰う事で解決した……。

ちなみにこの後蓮が訪れたSSマッハなどFCを手掛けた所の人物達もリカコのような応対になるのだった。

 

 


 

 

翌日。

美穂はインタビューを受けていた。蓮は用事があって一旦いなくなると言っていた。自分一人でインタビューを受けている。

アイドルになってそれなりになったが、やはり緊張する。あがり症は完全に克服できたわけではない。

「私はーーーー」

 

 

 

 

やがて一時休憩のためにインタビューは中断。休憩中にお茶を飲みながらスマホを見る美穂。新着メッセージがあったので見る。

「ごめん、もう少しで終わるから1人で待ってられる?」

蓮からのメッセージ。

「……待ってられますよ。蓮さん」

 


 

幼少期は蓮とよく一緒に行動していた美穂。蓮とはぐれたりした時、どんな所にいても蓮は必ず美穂の元に来た。いつも通りの笑顔で「大丈夫?」と声をかけてくれた蓮。

彼の存在が美穂の中では大きな物になっていたのは中学生になった辺りから。

彼を意識してしまう。小さい頃は「蓮くん」と呼んでいた。気がついたら「蓮さん」になっていた。親戚みたいな関係であったはずの彼との関係が美穂にとって「憧れの人」では済まないような事になっていた。

その頃に自分の夢を強く意識するようになった。テレビの中のアイドルに憧れた美穂。

自分もアイドルになって自分を変えたい。そして自分がもっと多くの人を変える事が出来たら。

美穂は夢を叶えた自分を見てほしくて蓮に1つの約束をする。

『私がアイドルになったら私がステージに立っている姿を見届けてくれますか』

蓮とこの約束を結んだ後、美穂は上京。地元熊本を出てきた。

蓮も一度自分の目指していた夢を諦めてまで美穂と346プロで出会う事になった。

自身が「壊れて」でも美穂との約束を守るために。

 

 

こうして今美穂と蓮は同じ場所で過ごせている。美穂の「約束」がなかったら今の2人はない。そもそも2人は別の道に進んでいたかもしれないし美世や夢斗にも関わらなかったかもしれない。

全ての始まりはこの2人の「約束」が元だ。

 


 

「お疲れ様でした」

インタビューを終えて美穂は待機部屋に向かう。

「お疲れ様、美穂ちゃん」

そこには用事を終わして戻った蓮がいた。

「蓮さん!」

「ごめんね、1人にさせて」

「私は平気でした!蓮さん」

「そっか……。後は明後日の確認しなきゃね」

「はいっ」

2人は明後日の仕事の詳細を聞いてビルを出る。

 

 

駐車場から黄色いFDが出てくる。

夕方で帰宅ラッシュの真っ最中である街中を進むFD。

「こうやって見ると都会だなーって」

「何回見ても……東京に住んでいる感じがしないや」

田舎から上京した2人。蓮は山形から、美穂は熊本から。

キラめくネオンが眩しく映る繁華街やライトアップされる東京タワーなど地元ではまず見ない光景。

キラキラした街中を抜けて蓮が運転するFDはある駐車場に着いた。

そこにあったのは初めて見た時と大きく姿が変わった白いFC。見た目が変わっているが、直感的にその車が「ななさん」とわかった美穂。

「ななさん……?ななさんですよね!?」

「うん。ななさんだよ」

FDから降りた美穂はまっすぐFCの元へ。

「ななさん……」

あの日ぐしゃぐしゃに壊れたFCが今目の前にある。

「蓮さん……ななさんが直ってる!」

「ちゃんと綺麗になったよ。そして……追えるように」

「美穂ちゃん。行ってみる?」

「……はい!」

2人の車は駐車場を出て首都高へ向かう。

 

 

 

 

蓮のFDが先行し、美穂が運転するFCがその後を追う。

「すごい……」

生まれ変わったFCの動きに驚きを隠せない美穂。

自らと一体感を感じるFCの動き。FCを自分の手足のように動かせる。

「もう1人の私……」

今、FCは自分の分身と言うのがピッタリだろう。

美穂の感覚とFCがシンクロしていく。

「心に音が伝わる……」

ペリフェラルポート加工が施された13B。そしてシゲ特製マフラー。

ロータリー特有の甲高いエンジン音(ロータリーサウンド)とハイトーンのエキゾーストノートが美穂の心にダイレクトに届く。

モチベーションがアガる音。美穂の意識は前を走るFDに近づく事に集中していく。

 

 

「FCを乗りこなせてる……」

バックミラーに映るFCを見て呟いた蓮。

ちょくちょく美穂にドラテクを教えていたがソレは(自分)のFDでの事。美穂は自分のFC()に乗るのはほぼ1ヶ月ぶり。にも関わらず、大きく仕様変更されたFCを扱えてるあたり腕は確実に上達している。

 


 

数時間前。

美穂に引き渡す前の最後の実走。駐車場に待っていたのは赤いFCと男。

「出来上がったか」

「はい」

内藤だ。蓮の頼みを聞き工場の奥に眠っていた自身のFCを引っ張り出してきたのだ。

「お嬢ちゃんのために……という目的でお前さんはたくさんの人に関わった。RGOだとか普通なら個人があそこまで関わる事はまずできない。でもな……その肩書きがあるんだ。それがあってこうやってコネがあるわけだ」

「首都高最速」という称号を背負う蓮。そんな彼の「頼み」だからこそ、伝説のマシンに関われた。「伝説」を見てきた者達が蓮を信じてる。

「そうですね……。僕はその時代を見てきた訳じゃない……けど」

「そういう『伝説』をいつの時代にも残したいって言うコトもあるんじゃないか、と」

どんな時にも周りとは違う、それが有名になってやがて「伝説」と呼ばれるようになる者が必ずいた。

「悪魔」も「迅帝」も。そうやって。

 

 

湾岸線。

白と赤のFCが突っ走る。

「迅帝」を追いかけ続けた内藤が駆る赤いFCは蓮が駆る白いFCをブチ抜こうとしていた。

 

「速い……!!」

歴戦の首都高ランナー内藤を前に思わず音を上げそうになる蓮。

性能差がある現役マシンを旧型の(FC)で撃墜していく。

鬼気迫るFCがテールに迫り、撃墜(おと)すまで絶対に離れない事から付いた通り名が「追撃のテイルガンナー」。

「まだまだ……っ!」

蓮のFCが5速にシフトアップ。スピードメーターが300kmを指した。タコメーターが7500回転を突破。

 

「……行けるか」

内藤のFCが一瞬だけの全開に入る。FCの前には一般車ナシ。オールクリア。

アクセルを踏み抜いてFCを前に走らせる。蓮のFCと内藤のFCが並ぶ。

「負けないっ!!」

蓮が本気で踏んでいく。蓮の気合いに答えるようにFCの13B(エンジン)が吠える。

ロータリーペリ独特の甲高いエキゾーストノートを太陽が照らす湾岸線に轟かせていく。

 

 

隣の白いFCが爆音を上げて自分を離そうとしている。

「少し……ツラいか」

内藤のFCは先程からペースが僅かに落ちている。

何しろ、このFCがバトルするのは数年ぶり。本気で走る事がなかったのもあり、エンジンはタレていた。

むしろこんなコンディションで蓮が操るFCと互角(タメ)で走れていた事が驚異的だ。

内藤のFCはやがて大きくペースを落とす。その瞬間、白いFCが内藤のFCを突き放す。

白いFCからは黄色い(オーラ)が立ち上るのが見えた。

 

 

 

「アンタは上手くやっていけるさ。美世を頼むよ」

「もちろんですよ、内藤さん」

大黒ふ頭で話す2人。蓮が立ち去ろうとすると。

「アンタがこのFC()を直した理由……。アンタが大切にしてるお嬢ちゃんをしっかりと守って見せろよ。もし、それができなかったら俺はアンタを許さない」

「もちろんです。僕は美穂ちゃんを巻き込んでしまった責任があるから。だから絶対に守るって決めたから!」

 

 

 


 

 

 

(自分なりの走り方をしてみる)

美穂は蓮の走りをなぞっている。でも、今度は自分の走り方を見つけるために。

FCは蓮のFDに迫る。

「私が見つけるんだ……。追いかけるための走り方を!」

蓮のFDに引っ張られる美穂のFC。黄色いオーラを纏うFDにシンクロするかのように美穂のFCからも黄色いオーラが現れた。

「心地いい……」

蓮は気がついたらこんな事を言っていた。美穂と自分の走りの波長(リズム)が重なっていく。

 

 

 

 

 

 

ここは346プロ女子寮前駐車場。2台のRX-7が止まっていた。

「まるでもう1人の自分って感じです」

「乗れていたよ、美穂ちゃんはFC(ななさん)をちゃんと理解(わか)ってた!」

「私……やっとななさんを理解(わか)る事ができたんだ……」

再びFCに乗る事ができた喜びでいっぱいの美穂。そんな美穂を見て蓮も微笑む。

「そうだ……美穂ちゃん確か明日オフのはず」

「そうなんですか?」

「うん」

「私……ななさんとちょっとドライブ行こうかなーって思いました」

「いいね、ななさんと色んな所を見ておいで」

「はいっ」

「じゃあ、ま……た」

蓮がふらついたと思った瞬間蓮が倒れた。

「蓮さん!?しっかりしてください!!」

蓮を起こそうとするが反応しない。美穂は慌てて自分の部屋に蓮を連れていく。

 

 

 

「疲れてるんだろうな……」

目を覚まさない蓮を寝かせてる美穂。武内Pやちひろが言うように最近蓮の働く量があまりにも多い。普通なら2人から3人で分担して4日で終わらせる作業を蓮はたった1人で2日で終わらせて他の仕事に入るという。

蓮がどれだけ優秀でもこれでは体が先に壊れてしまう。そのために武内Pやアイドル達みんなで蓮を休ませようとしてた。だが、実際に蓮が休んだのはこの約1ヶ月の中で僅か2回だけだった。それも命令で。

「……まさかななさんを直すために?」

確信はないがそんな気がする。だが聞こうにも蓮が目を覚まさない。

「……」

蓮の寝顔を見る。蓮の寝顔は小さい頃から変わらない。

昔から全然変わらない。優しさも頼れる所も。

「いつもありがとう、蓮くん」

もう10年以上使っていなかった呼び方。

いざやったら照れた。恥ずかしい。

「ーーーーーっ!!」

顔が真っ赤になった。恥ずかしくなり布団に潜り込む。

 

 

 

 

 

 

翌朝。

廊下を歩くアイドルがいた。

「美穂ちゃん起きて来ないね〜」

城ヶ崎美嘉と小早川紗枝だ。

「いつもならとっくに起きてるはずやけど……。どうしたんやろ?」

2人が起床時間になっても起きてこない美穂を起こすために美穂の部屋に行こうとしていた。

「あれ?」

美嘉が駐車場にある2台の車に気づく。

「プロデューサーの車と……あれは?」

蓮のFD()があるのはわかったが、隣にある白いFC()は初めて見る。

「美嘉はん、行こか」

「あっ、うん」

2人は美穂の部屋の扉をノックし入る。

「美穂ちゃーん、朝だよー……えっ!?」

「プロデューサーはん!?」

2人が見たのは向かい合って寝てる蓮と美穂だった。

「ププププ、プロデューサー!?」

「これは一体なんやろか……」

 

 

 

この後、他のアイドルがやってきて騒ぎが大きくなった。

結果2人はしばらくこの事でいじられ続ける事になった。特に2人が揃っていた時のいじられ方は346プロ内で語り継がれる事になった……。

 

 

 

 

 

伝説に関わった者達の手も借りて完成したFC。

そしてFCを操るのは美穂。

彼女とFCは今、舞台(ステージ)に立ったばかりだ。

 

 

 

 




ついに美穂の元に戻ったFC。
彼女が駆るFCからは憧れの人と同じ光が溢れていた……。


ネタ解説です。
・美穂のFC
ついに完成したFC。ベース車両は後期型GT-X。
モデルはRE雨宮のマシンである通称「風林火山号」が元。
ただし中身は全くの別物。
湾岸や頭文字Dでは再現できないため、今回はパーツなどを記載しません。
・美穂と蓮の約束
これは短編「小さい日向の少年と少女」から続く約束です。わからない人はぜひ見て(宣伝)



「首都高バトル」から登場する内藤のFCが蓮とバトルしましたが、皆さんは首都高バトルではどのライバルが好きですか?
私はユウウツな天使が好きです。
ラストが何かラブコメでありそうな状況になった……。
だが私は謝らない(キリッ)



次回、美世が異国の地でバトル!
美世にとって初めての海外戦はどうなる!?



「究極のFC編」完

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