アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
咲耶はどう立ち向かうか。
少しだけ外伝要素あり。
「空を目指した少女と地上に煌めく六連星」も読んでみてください。
「簡単には負けないっ」
咲耶の黒いエボⅨが環状線を突っ走る。1年前にあっさりと「悪魔」に敗れた咲耶にとって苦い記憶がある場所だ。
「やりますね……」
貴音をしてこう言わせる咲耶の走り。
1年前とは比べ物にならない程レベルが上がった咲耶の走りは貴音と互角に勝負できている。
「離せる!」
咲耶のエボはフルブーストに入る。
最大ブースト1.4kgに入り、かつエボの運動性もあって徐々にZを離していく。
「勝てる……!!」
しかし……。
「そんな、追いついてくるのか!?」
Zは
2台は湾岸線へ。神奈川方面に向かう。
「また、走りましょう」
貴音のZが咲耶のエボの前に出る。スピードの象徴であるその姿。Zは妖しげなオーラを咲耶に見せる。
「ーーーーーっ!!」
Zのテールランプが離れていく。咲耶は焦りからコンディションが悪化していたエボに気づかなかった。
ドシュッ、パパパパッ
エボから白煙が吹き出す。同時にエボのパワーがみるみる無くなっていく。
「そんな!?」
やがてエボⅨは完全に止まってしまった。
「まだ私は……あの車の足元にも届かないのか」
エボを壊してしまった咲耶は意気消沈。
翌日。
夢斗のスマホにメールが。
「突然すまないね。私の車を直す事はできるかい?」
「咲耶のエボが壊れたのか……?珍しくないか?」
夢斗はエボⅩに乗り咲耶の家に向かう。
「つか咲耶ん家行くの初めてなんだけど」
咲耶の家は教えてもらったが、用事がないため行く事がなかった。だが咲耶の頼みというのもあり、家に来たのだ。
咲耶の家は夢斗と同じくマンション。
インターホンを鳴らして少し待つと黒髪の美少女が出てきた。
「おはよう、夢斗。いきなりすまないね」
「いーや平気だ。エボは?」
「ガレージにあるさ。ついてきて」
咲耶に続いてガレージに来た夢斗。そこには黒いエボⅨが鎮座している。
「全然パワーが出なくなってね……。エンジンなんだろうけど私にはさっぱりでね」
「なーるほど。ま、俺はエボの整備は俺のエボⅩしかやった事ねえからな。自分以外のエボやるのはるんって来てるし」
「頼むよ」
夢斗はエボのエンジンルームを見る。
数分後。
「うーん……こりゃ降ろさないとムリだわ」
「そうか……」
「つーわけで持ってくぜ、エボ」
「えっ?」
10分後、夢斗が大学からローダーを持ってきた。
ちなみに美穂のFCを持っていく時も勝手に使った事が浩一にチクられて怒られた。だが夢斗は反省してない。
友也は倉庫にないローダーを探していた。
「またか」
夢斗がいつも予測できない行動をする為、こういった事には慣れていた。
やがてエンジン音が聞こえてきた。部のローダーだ。
「やっぱ……ってオイ」
ローダーには黒いエボⅨが載っていた。そして助手席に咲耶が。
「どういう事だよ……」
降りてきた夢斗に問う。
「何してんの」
「え?咲耶のエボ壊れたーって聞いて。家では詳しくわかんねーからこっちに持ってこれば、機材とか揃ってるし」
「つまり直すためにと」
「そうっす」
「白瀬さん?」
「はい?」
「後は夢斗に任せてください」
「ええ、そうさせてもらいます」
エンジンクレーンでエボⅨの心臓である4G63が降ろされる。
夢斗と友也がエンジンをチェック。
「あー……。これはバラすか」
「咲耶ー、予備のパーツとかないの?」
「持ってないな」
「しゃーねー、買うか」
「何だったんだ?」
浩一が聞く。
「ヘッドやってるカンジだな。腰下まではイってなかったけど」
「ヘッド周りの消耗品がないっぽいんだわ。だから買う」
夢斗がエンジンをバラしてる時に何気なく聞く。
「ヘッドやったみたいだけどさ、何か追ってたのか?」
その瞬間咲耶の顔に変化が現れた。
「ああ……。『悪魔』だ」
それを聞いた友也達は皆驚く。
「『悪魔』!?」
「?」
……夢斗除いて。
「1年前に負けたんだ……。手も足も出なかった。そして再び負けた」
部員達にどよめきが広がる。
「『悪魔』って何だ?」
「夢斗……。知らないのか!?」
友也がびっくり。
「首都高の伝説のマシンだぞ!?」
「わかんねーっす」
「マジか……。ま、簡単に言うとヤバい車だ。事故でオーナーを何回も変えた車。意志を持つように走るらしい」
「聞いただけでヤバそうッスね」
「これは事実だ」
「でも、俺わかんないし……。あっ、小日向さんに聞けば!」
夢斗はメールを打つ。送信から数分経って返事が。
「知ってる!?バトルした!?」
今度は夢斗がびっくり。
「小日向さんは知ってるだろ」
浩一が一言。
「だって『悪魔』と『ブラックバード』と戦って首都高最速になってるんだし」
「そーなの!?」
初めて知る事実に驚愕する夢斗。
「つか、『ブラックバード』ってどっかで聞いたような……。あ!思い出した!」
夢斗のエボⅩのマフラーを作りに大阪に行った時にシゲから少し話を聞いたのである。
「見たことないけどサ」
ある程度動けるまでに修理されたエボⅨ。ただ、バトルには耐えれない為飛ばすなと夢斗に言われた咲耶。
咲耶は待っていた間部員達に質問攻めされていた。
「パーツ届いたら連絡するからそん時にもう一回こっちに来てくれ」
「わかった。ありがとう」
「エボⅩ以外をやれるなんて思ってなかったからイイぜ」
本調子ではない物の、動けるようになったエボⅨで大学を後にした咲耶。
その日の夕方。
L'Anticaのメンバー達は感謝祭の事を決め終わり、ダンスレッスンに励んでいた。
「恋鐘、この動きがちょっと気になった」
「そうたい?」
「ああ。少し遅れてると言うか……」
「咲耶ー、恋鐘は私達に合ってたよ?」
摩美々だ。
「咲耶がズレてるように見えたケド」
「三峰も思った。さくやん何かあった?」
結華達に指摘されて咲耶は俯く。
「どうしたの咲耶」
「……悪い、少し休ませてくれないか」
咲耶はレッスンルームを飛び出す。
「咲耶!?」
慌てて咲耶を追いかけるメンバー達。
「プロデューサーさん、咲耶さんが……!」
霧子は遥に連絡。
街中に消えた咲耶を探すメンバー達。
「何があったんだろう……?」
「咲耶があれ程までに取り乱すの初めて見たー」
「咲耶ー!悩みがあったら聞くばい〜!」
「こがたん声抑えて!」
ゴオオッッ
後ろから青いインプレッサが来た。遥だ。
「咲耶さんはこっちに行ったんですか!?」
「そうばい〜!プロデューサー、咲耶を助けてほしいばい!」
「ですね。まず見つけないと……!!」
人混みの中を歩く咲耶。
勢いに任せて飛び出してきたが、どうしようとしたのだろう。
飛び出して何をしたかったのか。
「あり?咲耶じゃん。どした?」
振り向くと夢斗が立っていた。
「……夢斗」
「なに暗い顔してんだよ、普段通りじゃない咲耶見んの俺初めてだぜ?」
「……そうだね」
咲耶は夢斗に悩みを打ち明ける。
Zに再び負けた事で心に大きなモヤがあるという事。Zの存在が大きく、自分を支配しているという事。
「咲耶はさー、上手いじゃん。その『悪魔』を目指すのはいいと思う。俺は見たことねえけど」
「でもさ、自分の走り方を忘れたらダメじゃね?」
「……」
「結局は『ソレ』に近づけても自分は自分だろ。完全にコピーしたらロボットじゃん、そんなの。俺はこえーよ」
「自分の走り方がまずあるだろ。それをないがしろにしたらダメだと思うぜ、俺は」
「なるほど……。夢斗の走り方ってどうやって身につけた?」
「ま、練習かな」
「夢斗らしいな……」
悩みが少しずつ晴れていくのを感じる咲耶。夢斗なら『悪魔』に普通に勝ってもおかしくない、そんな気すらしてきた。
「あ、いたばい!」
「ゆうくんもいるし」
「咲耶さん!」
L'Anticaのメンバー達と遥がこっちに来る。
「行ってこい」
「だね……。ありがとう、夢斗」
咲耶が合流した後、軽く遥と話す夢斗。
「咲耶はちょっと悩み抱えてんだ。ま、因縁みたいなモン」
「因縁……」
「『悪魔』って知ってるか?俺はあんまわかんね」
「知ってます。アイドルが乗ってるらしくって」
「へ?」
歩いてたら遥のインプレッサの前に着いた。
「インプ乗ってんだな」
「まあ……それなりに走れますけど。あなたは首都高を走ってますね」
「よくわかったな」
「咲耶さんも走ってるので。同じ感じがするんです」
「あんたも走ってんのな」
「はい。咲耶さんには届かないけど……」
「俺も咲耶のエボⅨにエボⅩで最初追いつけなかったし」
「エボⅩ……。多分どこかで見ましたよ」
2人は静かに戦闘態勢に入っていた。
世界ラリー選手権、通称「WRC」に参戦していた三菱とスバル。
日本のWRCカーと言えば三菱のランサーエボリューション、スバルのインプレッサと名が上がる。
インプレッサは世界的に見ても搭載してる車が少ない水平対向4気筒ターボエンジン「EJ20」を搭載し搭載位置からもたらされる低重心による運動性能が武器。
ランサーエボリューションは電子制御、大出力に耐えうる事ができる直列4気筒ターボエンジン「4G63」を搭載。メーカーが手を入れた技術が武器だ。
最も、夢斗のエボⅩは4G63ではなく、4G63に変わって新開発された直列4気筒ターボエンジン「4B11」を搭載しているが。そして6速DCTのツインクラッチSSTを新採用。これは日本車で初搭載された物だ。
なお、夢斗のエボⅩのミッションは従来のように5速MTである事を述べておく。
WRCという舞台で争った2台。WRCから三菱とスバルが撤退した後もそれぞれのファンからの人気は高い。
それ故に反りが合わない事が多いが……。
とは言え、それぞれの長所があるのもまた事実。
インプレッサは低重心から来る運動性を生かした走りで勝負する。
ランエボは電子制御を駆使した走りで勝負する。
「ドライバーの技術」と「車の技術」がそれぞれの武器だ。
「ストップ、2人とも!」
結華に止められる2人。
「Pたんもゆうくんも張り合わないの!」
「私は……少し星名さんと走ってみたくて」
「俺はインプに勝ちたくてね」
……スバリストとミツビリストは反発しあうのである。
283プロの業務終了後。
駐車場に銀色のエボはいた。隣には青いインプレッサが。
戻ってきた遥を待っていた夢斗。
「待ってたぜ……」
「待たせてすみません……。じゃあ、やりましょうか」
2人はそれぞれ愛機に乗り込む。
EJ特有の低く響くエンジン音と4Bの高めのエンジン音が駐車場を包む。
芝公園ランプを通り、銀色のエボⅩと青色のインプレッサが猛スピードで駆ける。
エボが先行している。千代田トンネルでオーバーテイクされたインプレッサが後ろに続く。
「速い……!同じ排気量なの!?」
遥は夢斗のエボに圧倒されていた。夢斗のエボⅩは排気量を変更しておらず、2Lのままだ。遥のインプレッサも排気量は2Lから変わってない。
それでもエボのスピードがインプレッサと違う。
コーナリングスピードはもはや根本的に違う。先程通った千代田トンネルで抜かれた時も遥のインプレッサより20km近く速いスピードでエボは曲がり、インプレッサを抜いた。
「くっ……」
狭いC1を舞うように走るエボⅩ。交通量が多いのが関係ないように銀色のエボは駆ける。
「ん……?」
夢斗は前に見える蒼い車を見る。妖しいオーラに包まれるその車。
「やべぇ、小日向さん並にヤバい!」
初めて蓮のFDを見た時と同じ感覚がした。
「あの車……!『悪魔』!!」
遥は夢斗のエボの前を走る蒼いZを見て言う。
「勝てるとは思ってないけどっ」
遥はインプレッサを加速させる。
「まさか……コイツ?」
夢斗は蒼い車を見て呟く。この旧車が咲耶を負かしたと言うのか。
「ヤベー雰囲気ありありだし……。ありえるな」
すると後ろからインプレッサが飛び出して行く。前の蒼い車をぶち抜いた。
「おっ、攻めるね〜」
夢斗は呑気に言う。が、次に起きた光景を見て夢斗の考えが変わる。
流していた蒼い車が加速し始める。その加速は
「……やべー」
夢斗の目が戦闘モードに入る。
本気じゃなければ負ける、そう判断した。
「小日向蓮達と同じ……」
Zを操る貴音は後ろの銀色の
あの銀色の車を操るのは何者なのか。
「待ちやがれー!」
エボⅩはアクセル全開でC1を攻める。
「見せてもらいましょうか……」
貴音がZを加速させ、夢斗のエボを離そうとする。しかしエボがコーナーでグイグイと差を詰めてくる。
「……!?初めて見る走り方!」
貴音は夢斗の走り方に驚いていた。
今まででこのZ以上のスピードでコーナーを曲がってみせたのは蓮と美世だけだった。
夢斗のエボはZよりも格段に速いスピードでギャップの激しいC1の路面を走っているのだ。
「面白いっ!!」
貴音が本気になった。久しく感じる「高揚感」。
「まだまだぁ!!」
遥がZから逃げる。しかしそれを嘲笑うかのようにZが前に出た。直後、銀色のエボが続く。
「『悪魔』と渡り合えてる!?」
夢斗のエボのテールランプが離れていく。
2台がもつれ合うようにして湾岸線へ。
「くっそー、最高速勝負苦手なんだよ」
そもそもが2Lクラスのエボ。L28改3.1Lツインターボ仕様のZとは分が悪い。
「ま、無理だわ」
夢斗はアクセルを抜いた。その瞬間エボは空気に押されて失速していく。
「くっそー、また会ったら今度は勝つ」
再び戦う事をもう考える夢斗。
「あの車……。素晴らしいですね」
貴音は銀色の車とそのドライバーに強い興味を持つ。
「あの……」
遥は完全に蚊帳の外だった……。
咲耶は悪魔のZと再び出会う。
結果はまたも完敗。再び敗北した事で自信を失いそうになるが夢斗の助言で再び立ち直る。
そして夢斗もZと遭遇。負けはしたが、貴音を圧倒する実力を見せた。
そして貴音も夢斗に興味を持つ……。
悪魔のZに敗れた咲耶は夢斗の助言で復活。
その夢斗自身も悪魔のZを見る……。結果は負けたが貴音は夢斗を蓮達と同じ「戦うべき相手」として見る……。
ネタ解説です。
・貴音とZ
これは前作「疾走のR」からの設定。
・ランエボとインプレッサ
これは昔からのライバル。詳しくすると長いので気になる方は調べてみてください。
スバルのファンが「スバリスト」と言われるなら三菱ファンだってあるんじゃ?と思い調べましたが、そういうのはないらしい……。
そのため三菱ファンの事をここでは「ミツビリスト」と呼んでます(センスねえな)
詳しい方教えてください!というよりコレよりいい呼び方あるって方教えてください!!
次回、夢斗の悲しい過去が明らかになる……。
夢斗の過去に何があったのか。