アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
それぞれのプライドにかけて争う!!
「よく来たな……」
美穂を褒める夢斗。
美穂は決意を固めて
「行くぜっ」
夢斗のエボが前を走る蓮のFDに襲いかかる。凄まじいトラクションでFDの前に出る。
「やはり……エボの加速はすごい」
前に出てきた銀色のエボⅩのテールランプ。
「行けるっ!!」
続いて咲耶のエボⅨが飛び出す。エボ2台がFDの前に並ぶ。
4台は湾岸線を出てぐるっと回って新環状左回りへ。
ここで夢斗のエボⅩは蓮を引き離す。
コーナリングマシンFDよりも速い速度で銀座区間を走るエボⅩ。咲耶はそれを追う。
「抜けるーーーーっ」
「!?」
咲耶のエボⅨの内側に突然白いFCが現れた。
「くっ……」
圧倒的なスピードで黒いエボⅨに迫るFCを見る蓮。
銀座区間に入った後にペースを上げた美穂のFCに離されたのだ。
「さすが夢斗君……!!」
夢斗が作り美穂のFCに付けられたアンダーフロアとリアディヒューザーの効果は絶大。
FCのコーナリングスピードは夢斗のエボⅩに匹敵していた。
コーナリング技術が武器の蓮もこれには負けてしまう。
FCがエボⅨの内側に潜り込む。
インに詰めれないため咲耶はスピードを落とせざるを得ない。
「何て速度だ!」
エボⅨをオーバーテイクしたFCが前のエボⅩに近づく。
「俺が作ったとはいえ……こりゃやべー」
230kmで銀座エリアを抜けたエボとほぼ同じくらいのスピードで通過してきたFC。
自身が作ったパーツの効果を身をもって体験するはめになった。
一般車が前に見えた。避けるために咲耶と夢斗は右の車線へ移る。
咲耶は軽くブレーキを踏み、右へ。その前にいた夢斗のエボもちょんブレで減速と同時にアクセルオフ。その瞬間だった。
ボッボボボボ、パアッ
銃声のような爆音が響く。
「アンチラグシステムか……!」
蓮は爆音について思い当たるモノを言う。
アンチラグシステムを知らない方のために説明しよう。
そもそもターボチャージャーは、エンジンから排出される排気のエネルギーにより排気タービンを回転させ、タービンと接続されているコンプレッサーを駆動することで、空気をエンジンへ送る。それが一般的に「過給」と呼ばれるのである。そのため、減速のためにアクセルペダルを戻すと排気エネルギーが減少し、タービン回転数が徐々に下がる。その後再加速のためにアクセルペダルを踏み込んだ際、タービン回転数が再び上昇しコンプレッサーが機能するまで
その対策として、タービン直前のエキゾーストマニホールド内で未燃焼ガスを燃焼させて排気ガスのエネルギー不足を補いタービン回転の低下を防ぐのが目的の「アンチラグシステム」である。
使用例としては、中低速での加速力や運動性を重要視するWRC等のラリーやダートラ、ジムカーナ。静止状態から加速するドラッグレース。
車重が重いル・マンに参戦する車両やスーパーGTなどのGT車両……といったように競技車両に搭載されるのがほとんど。
ただし、その性質上ガソリンの消費が激しい。減速時にフューエルカットしないため燃費の悪化が著しく、スーパーGTでは予選だけ使用し決勝では作動させない例もある。
また、火を噴くのがアンチラグシステムと勘違いする人が多いが、それは誤り。
ソレが起きてるときは車にダメージが発生しているのだ。火が発生しタービンやエンジン、配管が損傷している証拠だ。
アンチラグシステムが正常に作動しているのをどうやって判断するかと言うと「太鼓を叩いてるような音がして、火を噴かない」。
もし、音が銃声音だったら燃焼が不十分な状態でシステムが作動している事になる。
これがアンチラグシステムの説明だ。
ちなみに「アンチラグシステム」はトヨタでの呼び方である。(他にALS、フレッシュエアシステムとも言う)
ちょっとラリーに詳しい人は「ミスファイアリングシステム」とこれを呼ぶが、この名称はスバルでの呼び方。
某漫画で登場するエボⅢが搭載してるとしてコレをミスファイアリングシステムと呼んでいたがこれは間違い。
実際は三菱はこのシステムを「二次エア供給システム(PCCS)」と呼称する。
だが、その漫画での「ミスファイアリングシステム」があまりにも広く伝わったために間違って覚える人も多い。
ちなみに「ミスファイアリングシステム」は日本でしか通用しない呼び方らしい。世界でこのシステムがわかる名称は「アンチラグシステム」だそうだ。
「失速しない……!!」
蓮は爆音を響かせて駆けるエボⅩを見る。エボⅩはコーナーから立ち上がるスピードが以前と違った。
何故夢斗は今になって二次エア供給システムを作動させたのか。
それは首都高のコーナーだ。
ただでさえコーナーを抜ける速度が速い夢斗のエボⅩ。
しかしアクセルオフしないと曲がりきれないコーナーも当然ある。いくら空力面に優れても立ち上がり自体は普通なのだ。
それを解消するために今回二次エア供給システムの作動に踏み切った。
何故早くからやらなかったかと言うと……。
「ガソリン食うじゃん」
「配管類のトラブルやだ」
……何とも夢斗らしい理由。
爆音のワケは今まで使ったことがない二次エア供給システムの調整が不十分なために不完全燃焼が起きているのだ。
しかしシステム自体はちゃんと作動している。
「加速が途切れねえ……。いいなこれ」
それほどまでに立ち上がりのスピードの違いが顕著なのだ。
美穂のFCはあと少しの所でエボⅩを抜けない。
「何で……?」
もうちょっとなのに前に出られない。それが何故かわからない。
変わらない状況に息苦しさを感じていた。
「うう……」
夢斗のエボⅩがFC、エボⅨ、FDをリードして環状線を走り抜けていく。
「どこで仕掛ける……?」
咲耶は美穂のFCのテールランプを睨む。環状でのコーナリング勝負はまず勝ち目がないに等しい。
夢斗のエボと変わらないスピードで曲がるという狂った性能してるFC。
だったら
「粘るしかないか」
咲耶はFCの背後に潜り込む。オーバーテイクのチャンスを狙うために機会を待つ。
4台はC1エリア外回りへ。
変わらず夢斗のエボⅩが先頭、これにFC、エボⅨ、FDが続く。
「あー……仕掛けるだろうな……」
先程から大きな動きを見せない蓮のFD。あまりにもアクションが全くない事が不気味に見える。
なにか仕掛けるために今ペースを上げずにいるのかと夢斗は推測する。
「何故来ない……」
後ろの黄色いFDは自分を抜こうとする気配はない。
咲耶のエボⅨに一定のペースで追従するFD。背後霊のようだ。
「やるならもう抜いているだろう……?」
バックミラーに入り込むヘッドライトの光。
芝公園ランプに来た4台。
咲耶がペースを上げてFCを抜こうと動く。
「……!!」
咲耶のエボⅨはスリップストリームを抜けて一気にFCに並ぶ。
「わ……っ」
真横に並んだエボⅨに驚く美穂。負けじとアクセルを踏む。
狭いC1を並走するFCとエボⅨ。
「ーーーーーーーっ!」
美穂は恐怖からアクセルを抜いた。
突然エボⅩの右ウインカーが点滅した。
「八重洲線に!?」
蓮は夢斗の選んだルートに驚く。八重洲線ならある意味C1以上にテクニカルなエリア。しかしそれでは首都高のバトルと言いにくい。
咲耶は夢斗の考えがわからない。
「何を考えてる……?夢斗」
4台は八重洲線外回りに。
京橋
咲耶のエボⅨがブレーキランプから光を伸ばしてコーナーの奥まで突っ込んでいく。
「曲がった!?」
美穂は咲耶のテクニックに驚く。
見ていた蓮も度肝を抜かれた程だ。
「なんて……ブレーキング」
ギリギリまでブレーキングを遅らせていた。
少しでもタイミングを誤れば曲がりきれずに壁に刺さる。
蓮ですら「曲がれない」と判断するレベルでのレイトブレーキだったのである。
「……まだ『ココ』じゃない」
蓮は一気にアタックする突破口を見つけようとしていた。
神田橋JCTから八重洲トンネルへ。
夢斗のエボⅩはペースダウン。
「水温だろうな」
蓮は先程までのハイペースを失ったエボⅩを見る。
「オーバーヒートは避けたいけどな」
水温計が指す温度を見てこう漏らす夢斗。水温計が表してる水温は95度。油温も少し高い。
「調整不足ってホントヤダ」
調整をしっかりやっていなかったのは自分だが。
二次エア供給システムの影響もあり、水温油温の上昇が早い。アクセルオフする回数が多い八重洲では尚更だ。
「でも踏まねえとナ」
「耐えろよ……。俺のエボっ!!」
夢斗のエボⅩは水温油温の上昇に苦しみながらもなんとか八重洲エリアで首位を死守。
横羽線を通過して湾岸線へ入った。
このバトルのゴールにしてエボの最大の泣き所である。
「前にーーーーーっ」
美穂のFCはフルスロットルで前に出ようとする。
「前に出られたら負けだっ」
夢斗が焦りを見せる。この4台の中で総合的な性能は美穂のFCが最も高い。FCが作られた目的である「湾岸線での最高速勝負」。
この湾岸線はFCの領域なのである。
FCが咲耶のエボⅨをパス。同時に蓮が飛び出してきた。
「このタイミングで!?」
咲耶のエボを抜いて夢斗のエボⅩに並ぶ。
ヒュアアアアアアアッ
咆哮のようなロータリーサウンドが4台の
夢斗エボⅩ、美穂FC、蓮FDが並ぶ。咲耶のエボⅨが夢斗のエボⅩの後ろに。
4台は超高速で湾岸を駆ける。
「行けるっ……」
周りから見たら明らかに「狂ってる」と見られる行為。
それでも今だけはそんな事を気にしない。いや、気にしていれない。少しでも迷いがあれば終わりだ。
「やるしかないか……!」
夢斗はブーストコントローラーを操作。モニターには「1.6」と表示された。エボⅩが耐えられる最大ブーストだ。
続いて夢斗はステアリングに取り付けられたボタンを押す。新たに装備したエボの秘密兵器であるNOSの噴射スイッチだ。
エボⅩは急加速し始めた。
「エボⅩが加速していく……!!」
蓮はスピードが上がったエボⅩを見る。
「僕も……やるっ!!」
蓮もステアリングのボタンを押し、NOSを噴射して加速する。
「ななさん、お願い!!」
美穂は超高回転域までエンジンを回す。滑らかに加速していくFC。
咲耶も3台に負けないように耐える。
「持ちこたえてみせる!!」
4台はつばさ橋へ。
4台の前には2台のタンクローリーが見えた。空いているレーンは中央のみ。通過できるのは1台だけ。
「踏み込めえっ」
夢斗はエボⅩが発揮できるありったけのパワーで前に出ようとする。
「行けるーーーーーーっ!!」
蓮はFDを前に走らせる。
「ーーーーーだめっ!!」
美穂が突如ブレーキ。FCは後退する。
「!?」
蓮が美穂のFCに気を取られる。
気を取られた蓮の眼前にタンクローリーのタンクが広がる。美穂のFCに気を取られた一瞬の間にタンクローリーが迫っていた。
ぶつかると判断して蓮は回避行動を取り、蓮のFDは完全に失速した。
夢斗の左右に並ぶ車がいなくなった。
2台のタンクローリーの間を2台のエボが通過する。
「ここで決める!!」
咲耶のエボⅨが夢斗のエボⅩに並ぶ。
全開で2台のエボが湾岸を突っ走る。2台は大黒ふ頭ランプへ差し掛かる。
バババッとエボⅩの二次エア供給システムの作動音が壁に反響する。
「貰ったっ!!」
咲耶が前に出ようとした瞬間、前の車が突然レーンチェンジ。咲耶の前に出た。
「しまった!!」
咲耶のエボⅨは急ブレーキをかけたが、それがきっかけで大きく体制を崩した。
エボⅨは夢斗のエボⅩに接触しそうになった。しかし……。
「なんだ、今のは!?」
夢斗のエボⅩは瞬間移動していたかのように咲耶の前に出ていたのである。
咲耶が体制を崩した瞬間には前にもう「いた」。
咲耶は今何が起こったのか説明できない。要するに某漫画のポ○ナレフ状態になった。
「すごいな、夢斗……」
咲耶は遠ざかる銀色のエボⅩを見る。その銀色の槍騎兵は燃えるような青いオーラを纏っていた……。
呆気にとられた咲耶がふと空を眺めると……
「流星群?」
無数の流れ星が夜空を切り裂いていく。星の雨のようだ。
流星はまるで夢斗のエボⅩに向かって降るよう。
「星か……。流星のように確かに見えて、でも一瞬で見えなくなる……。そうだろう、夢斗」
流星はこのあともしばらく流れ続けた。
各地でこの流星群を見た者達もいる。
「おー、綺麗だなー」
原田美世だ。彼女は自分の家から見ていた。
流星群を見るなんて小学校以来の美世。
「流星群……」
瀬戸遥は仕事帰りに。とても綺麗な空をいつまでも眺めていたいと思った。
「この空は……何かを呼んでいる」
四条貴音は星が降る夜空を見ていた。自身の故郷で見たような光景。その時見た景色は貴音の心を強く動かした。今起こってる事もきっと何か大きな事が起こるのかもしれないのだと貴音は考える事にした。
「今願い事をしたなら、叶うのかな?叶うかどうか知らないけど……」
男は願う。とびきりの相手と戦いたいと。
この流星群はニュースにもなった。
予想されてなかった突然の流星群。様々なメディアで取り付けられた。
ごく僅かな時間だけ、はっきりと存在して消えた……。そんな流星群。
呼んだとなったら夢斗は人間ではない。しかしあの流星群はあの場にいた者達が引き寄せたモノだということは明確。
昔、奇跡のような事を起こして「常識」を覆す「革命者」が歴史の中に存在した。
周りを変える「才能」があった。自分の「運命」ならず、周りの「運命」すら動かす事が出来た。
現代の中で「革命者」と呼ばれるような存在はほとんどなくなったかもしれない。
しかし……。
「首都高」という場所でなら「革命者」と呼べるかもしれない者がいる。
「伝説」を超えるかもしれないような、想像がつかない「力」を持った青年。
彼が乗る鋼鉄の
周囲の空気を震わせるような本物の
銃声のような「咆哮」を上げて走る。その咆哮はどんな時も「止まらない」という意思表明のように。
そして「彼」は最初は周りの誰からも理解されなかった。
ずば抜けた「才能」を持ちながらそれを恐れられ、周りから距離を置かれた。
故郷で数少ない「理解者」を失い、彼は
そこでやっと自分を理解してくれる「仲間」と出会った。
時に「仲間」であり、そして争う「相手」。
決まった関係がない中で彼は周りと交わって変わった。
彼らは目的こそ違えど、同じ
ある者は憧れの人物を追いかけるために。
またある者は「伝説」を超えるために。
目的が違う者達をも惹きつける。
彼が関わって、あらゆるモノが変わる。
ある時は、「伝説」を再び「
またある時は、「伝説」を追った者を動かして、自らに協力してもらった。
直接の関わりがなくとも、彼が関わった出来事がきっかけで「伝説」に匹敵する「力」を持った車が生まれ、そしてそのドライバーも走る意思を持った。
このわずか数ヶ月の間にこれだけの事が起きている。
彼の及ぼした影響は大きい。
そしてこれからもそれが大きくなるだろう。
彼はいつもの軽い性格でいる。だがそれが周りの変化を起こすきっかけになる。
いつもはそんな素振りを見せない。しかし「本質」を見せたら必ず変わる。
彼の名は星名夢斗。
彼は周りを動かす大きな力を持つ。
彼が駆る愛機。それは「
そして……。もうひとつその名前に意味がある。
それは「
革命を起こす槍騎兵を駆る青年。その騎兵は眩しいような銀色の姿。
不可能を覆す「革命」を巻き起こす青年と彼の手足となって戦う騎兵。
人々は「銀色の革命者」と呼んだ……。
「何だか楽しみだな」
男は言う。根拠があるわけでもないのにワクワクが止まらない。
「どうした?」
男に問う。
「いやーよくわかんないけど。何かワクワクする」
「変なヤツだな」
「俺の車を超えるかい?」
男はまだ見ぬ強敵に問う。顔も見た事がない相手に。
蒼いR34GT-Rは走り出す。
「楽しそうなアイツを見るのは久しぶりだな……。アイツを止めるヤツは誰だろうな……」
男は嬉しそうな表情を浮かべる一方でその表情の奥に悲しみがどこか見えた。
「アイツは終わらせようとしている……。そこまでするか」
夢斗、蓮、美穂、咲耶の4人の激戦は夢斗の勝利で幕を閉じた。
若干不本意な形になるが蓮に勝った夢斗。
夢斗の通った後には流星群が降り注いだ。その流星群は4人が引き寄せたモノだろう。
そして夢斗が及ぼす影響は前も今も、そしてこれからも大きな物となる。
首都高を駆ける銀色のエボⅩ。
それを駆る青年は「銀色の革命者」と呼ばれた……。
新たな「伝説」が加速する。
そして「伝説」は再び首都高へ舞い戻る。
速いヤツが
深夜の夜空を流星群が埋め尽くす。
激戦を制したのは夢斗。その姿は「銀色の革命者」と呼ばれた……。
ネタ解説です。
・アンチラグシステム
夢斗が解いた「封印」はコレ。エボの場合は「二次エア供給システム」ですが。ラリーやスーパーGTで使われるのがほとんどです。ちなみに市販車では排出ガスの規制に引っかかるので普段は作動しません。ですが内蔵自体はされてるので作動させると機能します。
夢斗は首都高でのコーナーでの立ち上がりを考慮して作動させました。
余談ですがエボでも二次エア供給システムを搭載してない車両も存在します。エボⅦのグレードの一つ「GT-A」が装備してません。
・後半の語り
STAGE20までの出来事を簡潔に説明してます。どれがどれか調べるのもアリかも。
第一部完結!!
次回から第二部に突入です!!伝説を巡るバトルはさらに加速する!!
首都高バトルの人物達が物語に深く関わります。もちろんアイマス要素もたっぷりと!
次回、時代を超えて語り継がれる名機が首都高を駆ける!!
その勇姿は色褪せない!