アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
おじさん世代が憧れたレースで活躍するR。時代を超えて走り続ける「魂」。
第二部スタート!!
伝説を追う者の物語はこれからが本当のスタートライン!!
STAGE21 GT-R
7月下旬。美世は横浜にいた。
最近GT-Rのメンテを任せる事が多くなった美世。
アイドルであり、プロレーサーである事もあって自分のGT-Rのメンテに時間が割けないためだ。
そのためセパンでのレース後に岩崎から教えて貰った「FUJIRacing」でRのメンテをしてもらっていた。
そこの経営者「藤巻直樹」とはここに初めて来た時に意気投合。
聞けば彼自身もGT-Rに乗っているそうで彼の所有している紫色のR32GT-Rは各地のサーキットでコースレコードを樹立しまくっているのだ。
美世もそのR32を一度目にした事がある。
筑波サーキットで雑誌の企画でイベントがあった時にスーパーラップに参加していたのを目撃している。その時にR32をドライブしていた人物こそ藤巻だった。
その際美世は売り子としての参加だったが。
咆哮と錯覚するようなRBサウンドが美世の印象に残ってるのである。
今日はオイル交換などの日常的なメンテに加えて新パーツ導入の相談に来たのだ。
Rを知り尽くしていると言っても過言ではない藤巻なら自身のRをどうチューンしていけばイイか教えてくれる。
作業を行っている藤巻達。それを横目に美世は工場奥に鎮座する紫色のR32に近づく。
「……すごい」
改めて見るとチューンのレベルが違う。自身のR34がまだ可愛く見える。実際は美世のR34もストリートマシンとしてはオーバースペックなのだが。RB26DETT改2.8リッター仕様約600馬力、加えてNOSも使って700馬力に迫る美世のR34。
しかし「首都高」では美世のR34すらまだちょっとしたチューンドカーとして見られるのだ。
首都高全盛期には700から800馬力クラスのモンスターマシンがゴロゴロいた。中には1000馬力オーバーすら存在。
そう考えると美世のR34は「まだ」常識の範囲内だ。
くどいようだが、その「常識」は首都高ランナーとしての「常識」だ。一般人から見たら何でもスーパーカーだとかレーシングカーに思えるだろう。
「原田さんは首都高を走ってるだろう」
いきなり声をかけられてびっくりする美世。振り向くと藤巻が立っていた。
「あー……いえ」
しどろもどろになって答える美世。美世を見て苦笑いする藤巻。
「隠しきれてないさ……。原田さんは気づいてないかもしれないけどオーラが並じゃない。本気で走り込んでるのがよーくわかる」
「俺も隠してたけど……。俺も首都高を走ってた。そのRでな」
「なっ……」
告げられた衝撃の事実に固まる美世。
メンテ終了後、美世は内藤自動車工場へ。
内藤に話を聞くためだ。
藤巻の事を話すと案の定、藤巻について内藤が知ってる限りの情報が返ってきた。
かつて藤巻は首都高最速となり、大暴れしていた事。
その時に付いた通り名が「パープルメテオ」である事。
そして、ある時に「迅帝」に敗れたのだと。
「迅帝と
「えっ」
「アイツはな……」
「美世さーん!」
美世を呼ぶ声に遮られる。そこに立っていたのは蓮。
「美世さん書類書くの忘れてますよ!ちひろさん怒ってます」
「え……っ?」
蓮が見せたのは数日後の仕事の誓約書などたくさんの書類。
「ああああああああーーーーーーっ!!」
慌てて蓮と事務所に向かった美世。
「藤巻……。お前はなんでアイツをまた走らせた」
内藤は誰もいない工場でこぼす。
事務所に到着した直後にちひろに怒られた美世。
「あううう……っ」
「今回は美世さん悪いですよ」
2人が廊下を歩く。美世だけでなく、蓮も美世に書類を出すのを促してなかったとして怒られた。
「プロデューサー?」
渋谷凛だ。蓮に用があるようだ。
「どうしたんですか?」
「プロデューサーいないかって言う人がいて」
「ほら……前イベントで一緒にいた」
「あっ」
「小日向さん忙しそうだなー」
夢斗だ。エボⅩの
「夢斗のクルマってカッコいいなー!何かハイテクって感じだな!!」
「だろー!?」
夢斗が
エボをカッコいいと言われて珍しくご機嫌な夢斗。
「いた、夢斗くーん!」
「おっ、小日向さん来た」
「プロデューサー!」
光がエボを降りる。夢斗と話す蓮。
「光ちゃんを送ってくれてありがとう」
「イイっすよ全然。日課の後だったし」
「そーだ小日向さん。小日向さんって次のレースいつですか?」
「来月半ばに」
「見に行きたいッスね」
「誰?」
「イケメンだー」
「大きいねー。楓さんくらいありそう」
アイドル達が夢斗に注目。
「ごめんネ、そろそろ会議があるんだ」
「何のですか?」
「合同ライブの打ち合わせがね。もう少しで来るって言ってたけど……」
少しすると低く腹に響くようなエンジン音が聞こえてきた。
「あっ」
夢斗が反応する。
「どうしたの?」
「イヤ、知り合いなんで」
すると青いインプレッサが駐車場に入ってきた。涙目のようなヘッドライトが目立つ。
ドライバーも夢斗に気づいた。
インプレッサから降りた遥と夢斗達が話す。
「星名さんが何故ここに……?」
「いや、俺はそっちがココに来たのが何でか聞きたい」
「私は打ち合わせのために」
「俺は小日向さんに用があってさ。ついでにアイドルの送迎」
「えっ」
「はじめまして、瀬戸遥さん」
「こちらこそ、小日向……蓮さん」
遥は気のせいか嬉しそうだ。
「あなたに会えて光栄です」
「いや、僕はまだまだ新米だよ……」
遥はFDを見て言う。
「これが首都高最速のマシン……」
「瀬戸さん、大げさですよ。僕はそんなに大きな事と思ってないですよ」
「ちょっと前に夢斗君に負けてるし……」
「えっ!?」
「俺としては不本意だったけどな」
蓮と遥が事務所へ入りこのまま会議に入るため、夢斗は346プロを出ようとする。そこに。
「待ってー!!」
「え、俺?」
美世だ。汗ダラダラの美世が夢斗に聞く。
「キミ、迅帝って知ってる!?」
「ナニソレわからん」
「蒼いR34!!」
「ますますわからん……あ、待って、見たかもしれない」
「ホント!?」
「うわ近い」
夢斗に話を聞いた後。
美世は数年前に見たあの蒼いGT-Rを思い出していた。
上京直後に見た蒼いそのボディ。美世はその蒼いGT-Rに憧れたのだ。昔見た赤いR。そして迅帝の蒼いR。
美世は憧れのマシンを追うために憧れの車に乗った。
PM8:50。
今どき首都高ではまず見ない車が横浜エリアを走っていた。
R30スカイラインだ。後期型の通称「鉄仮面」。
今の車とは一味違うエンジン音。FJ20というスカイラインではほぼ搭載されなかった直列4気筒エンジンを積む。スカイライン伝統の直列6気筒エンジンではない事を批判する声が上がる事がある。
しかし、当時としては最高クラスの性能を誇ったのだ。
実際にソレを証明するように発売当時のキャッチコピーは「史上最強のスカイライン」だった。
また、FJ20型は「ケンメリ」の愛称で親しまれるKPGC110型GT-Rに搭載されたS20型以来8年ぶりのDOHCエンジンであったため、GT-Rの名称を望む声も多かったそうだ。
その証拠に、スカイラインでは異例である4気筒モデルでの丸四灯テールランプが採用されたのだ。これ以外に4気筒モデルで丸四灯テールランプが採用されたのはR32型スカイラインのグレードの一種「GXI」のみ。
R30で「GT-R」がなかったのは開発主管の桜井眞一郎氏が「4気筒モデルである以上GT-Rとは命名できない」という考えからだそうだ。そのためR30は「RS(レーシングスポーツ)」というグレード名になったという。
FJ20はR30スカイライン以外にはS110型、S12型シルビア&ガゼールといった辺りに搭載された。
短命なエンジンだったが、エンジン自体の完成度は非常に高かった。
一般的な量産エンジンと違い、熟練の職人が経験に裏打ちされた技術でひとつひとつ手作業で組み立てていたのだ。
そのため市販車用エンジンとしては、かなり高い完成度を誇っており、日産のエンジンといえば名が上がるあのRB26DETTを超えると言われるほどである。
しかしかなり気難いエンジンで、販売していた日産すら調整しきれないと言われる程に神経質なエンジンだった。
メンテナンスフリーが進んでいた1980年代のエンジンでありながら、少しでも気を抜くとご機嫌斜めになったり、エンジンそのものと補助機の相性の悪さなどで、泣かされたユーザーも多いという。R30ではそれほど問題になってないが、同じFJ20を搭載したシルビアRS、ガゼールRSはインマニなどが変わったせいで極端にピーキーなクルマになった。
実際、FJエンジンを搭載した車のトラブルのほとんどがエンジンの補機類のトラブルだ。
エンジン自体がトラブルを起こすこと自体がまず稀だとか。
だが、完璧に調整されたFJ20エンジンはメカ好きには堪らない音を奏でる。
FJ20の荒々しいフィーリングを体験すると、後発であり、日産の直列4気筒エンジンの傑作ともいえるSR20エンジンでは満足できないと言う人もいるくらい。
このようにGTーRの再来と言われたR30だが、ヘッドランプにスカイラインの「S」マークがあったり、ドアインサイドハンドルは当時の流行りらしくメッキ仕立てであったり、ハンドルコラムの裏側に小さなランプがある、左側のスイッチを照らしていたりと、細部の一つ一つにまで気を使い、コストと手間を掛け、品質に拘って開発されたことがよく分かる。
現在はR35GT-Rのエンジンに手を入れる日産の特別なメカニック達を「匠」と呼ぶ。こういった職人達の血が今の「匠」に受け継がれている事がわかる。
「もっと踏んでも全然大丈夫ですよ」
「いやー怖くて」
美世と鈴木一義だ。美世は鈴木の愛車R30に乗っていた。
歴代スカイライン全てに乗った事があり、プライベートではこのDR30スカイラインとR32GT-Rを所有している程スカイラインを愛する男、鈴木一義。
彼の愛車R30を運転しているのは美世。
25分前。
夢斗と話した後首都高を走っていた美世。パーキングエリアで休憩していたところ、シブいR30を見つけて思わず眺めていた。そこに鈴木が現れたという訳だ。
それまで鈴木がプライベートで何に乗ってるか知らなかった美世。
美世は鈴木に自身のR30に乗らないかと持ちかけられた。まずお目にかかれないのもあるため、この機会を逃すまいと美世が運転する事に。
「踏み切れないかも」
「原田さんのR34の方がよほどすごいですよ。このクルマもトシだからな(笑)」
鈴木はそう言うが美世から見たら普通に現役のマシン。
美世はパーキングエリアでこのR30を見た時に驚愕した。
見える範囲の改造だけで足回りはフロントがS14型シルビア用のパーツ、リアはBNR32型GT-R用の足回りをメンバーごと持ってきたのだ。
他にも相当なレベルで手が入っており、美世は軽く引いた。
鈴木に聞いてエンジンを見せてもらったが、エンジンも当時出ていたOS技研の2.4Lキットで排気量アップ。これにTRUSTのT88-33Dタービンを組み合わせ、設定ブーストは1.6kg。コンピュータはHKSなど本気の作り込みだった。
鈴木曰く新車でこのクルマを買ってから何年もかけてこのRをチューンしてきたとの事。
本人は冗談っぽく言うが当時はサーキットでは負けなしだったそうだ。
彼は現役時代にBNR32型スカイラインGT-Rを駆り全日本GT選手権などで数多くのチャンピオンを獲得した。
それもあり、ファンからは「日本一速い男」と呼ばれるようになった。
それはモチュールの監督になった今でも変わることは無い。
今度は鈴木が運転する。
人生の半分をRと生きてきた彼の走りを美世は体験する事になった。
「……凄いですね」
「いやいや全然(笑)。まだマージン残してますから」
「ちょっ……なあああああああ」
大胆に、しかし速い鈴木のドライブ。
このR30が自分のR34のご先祖さまという事を念じながらナビシートに座る美世。
しかし鈴木のドライブはもしかしたら自分がR34でバトルしても置いていかれる、そう思った。
コーナーから立ち上がるR30。
離陸する……そう錯覚するかのようなドッカンターボによる加速を見せる。
シフトチェンジするとアフターファイアを吐き、危なげな雰囲気を見せる。
しかしそんな危うい雰囲気溢れるR30を鈴木は完璧にねじ伏せていく。
その姿はまさしく職人のようだ。
「これが『日本一速い男』のドライブ……」
「本気は出してないですよ?」
パーキングエリアに戻ってきた2人。
美世の紅いR34と並ぶ赤黒のR30。そのデザインは今でも色褪せることは無い。
その頃FUJIRacingでは、蒼いGT-Rが置かれていた。
「また……頼みますよ」
「……」
藤巻は相談を受けていた。再びこのRを蘇らせてほしいと。
日本を代表するスポーツカーGT-R。
時代を超えて語り継がれるその活躍。初めてGT-Rを名乗ったスカイライン時代から変わらない。
今GT-Rはスカイラインの名を冠していない。それでも世界中にそのファンがいるのだ。
かつて首都高最速と呼ばれた男である藤巻。
美世は藤巻のR32になにかを感じた。
そしてスカイラインを愛する鈴木のR30を運転した美世は鈴木の高い技術を体験した。
同じ頃藤巻の元を訪れた男が一人……。
伝説のマシンと共に戦場に戻ろうとしていた。
今40歳くらいの方は一度は耳にしてるであろうその名前。
スカイラインの名が消えた今も「R」の魂は受け継がれている。
ネタ解説です。
・FUJIRacing
「藤巻直樹」が経営するショップ。彼についてはもうバレてそうですが。知ってる方は感想などでネタバレするのはご遠慮ください。
元ネタは電装系のパーツで有名な「BeeRacing」とGT-Rチューンで有名でドラッグレースでも活躍する「ガレージザウルス」。
・遥のインプレッサ
当初はそんなに設定を考えてなかったけど短編も書いてるので書こうかなと。文中にあるように涙目のようなヘッドライトが特徴的な通称「涙目」ことGDB型インプレッサ中期型。俗に言う「C型」です。
・R30の解説
非常に書くことが多かったために大きく書きたかったトコだけ文で書いてます。レースはどうだった?って知りたい方は「シルエットフォーミュラ」で検索!
熱狂的GT-Rファンが世界中にいる現在。
レースで戦うために生まれたクルマは今やあらゆるフィールドで戦う。ただのレースだけでなく、ドリフトもする今。
こうやって考えるとすごいですよね。
次回、夢斗の悲しい過去が明かされる。
大きな心の傷を持つ彼を浩一達は助ける事はできるか。