アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
他作品が嫌いな方は注意。
明かされる夢斗の悲しい過去。夢斗が他人を嫌う理由とは。
浩一達は夢斗を助ける事ができるのか。
8月上旬。
夢斗は大学祭の準備のために夕美と浩一とでイ○ンに買い物に来ていた。
だいたい必要な物を買った夢斗達。ちなみに夢斗達のクラスは焼きそば屋をやる。
「夢斗君どこー?」
「あのやろ……またか」
浩一と夕美はいきなり消えた夢斗を探していた。
今思えば今日の夢斗はどこか様子がおかしかった。
ここに向かう途中、交差点を渡ろうとした時夕美の手を思い切り掴んでいた。
その時の夢斗の表情は何かを恐れるような表情だった。
「あっ!いた!!」
「夢斗ー!!」
2人が夢斗を見つけた。夢斗は誰かと話してる。
「ん?浩一じゃん」
「勝手にいなくなるな……って前の」
夢斗と話していたのは以前ここに来た時に夢斗と太鼓の達人で張り合った女の子だった。姉も一緒。
「っつーワケでやるか、太鼓の達人」
「今度は負けないよ?」
「日菜、やめなさい……ってもう!」
2人はゲーセンに走っていった。
太鼓の達人が終わったあと。
「くっそー、可があと一つ減れば勝ったのに」
「ふふーん」
……どうやら負けたらしい夢斗。
そんな2人を待っていたのはやはりというか当然というかお説教。
「いいよな……。姉妹って」
「どうした夢斗」
「あーやって話せるのっていいよな……」
「お前一人っ子か?」
「いや……。俺には妹が『いた』」
「『いた』……?」
「ああ。事故で死んじまったんだ……」
「事故……!?」
そう言った夢斗は悲しみや怒りがごちゃ混ぜになったような複雑な表情を浮かべていた。
「夢斗君……?」
「どうしたんですか?」
「俺には大切な妹がいたんだよ、ヒナのねーちゃん」
数年前。
星名夢斗には妹がいた。
彼女の名前は「星名
彼女は何をやるにしても非常に優れていた。スポーツ万能、学業優秀、そして習い事としてやっていたピアノは上達が非常に早く、講師が驚くほどの速さでメキメキと腕を上げて行った。
また、彼女は絵を描くことが好きだった。
学校の休み時間とかヒマがあればとにかく絵を描いていた。その絵は休み時間の約30分で描ける絵とは思えないクオリティだった。
彼女曰く「見た物が頭の中に映像として残る」らしい。
そのため風景なども覚えていればたとえその風景を直接見なくても描けるのだ。
これ程までに優れたモノを持つ彼女は兄の夢斗の事が大好きだった。
学校から帰ってくれば夢斗と話す。
「お兄ちゃーん!」
「カナ、おかえり。学校どうだった?」
「今日ねー!先生に褒められたよ!国語のテスト学年1位だって!!」
「よかったなー!」
とても仲のいい兄妹だった。
時は流れて夢斗18歳の夏。
奏夢は14歳になり、中学2年生になっていた。
夢斗は高校最後の年だった。
「お兄ちゃん、ただいま!」
「おー、おかえりカナ」
夢斗は部活には所属していない。
中学時代にバスケ部に入っていた夢斗。しかし夢斗の活躍を妬む周りの部員との対立、そして顧問にすら嫌われていた。やがて孤立した夢斗は部活に嫌気がさして退部。
そんな経験もあり、高校では部活に入っていなかった。
奏夢はこの頃アイドルに憧れていた。
少し前に346プロのアイドル達によるライブを初めて見た時に自分の夢が決まったらしい。「アイドルになる」と。
その際に見た相葉夕美に憧れてたという。
11月始め。
夢斗は車を納車する手続きをした。
その車こそ夢斗の愛機エボⅩだった。夢斗は新車でエボⅩを納車している。
エボⅩを納車した夢斗。
奏夢は夢斗のエボⅩに乗る事を楽しみにしていた。
エボⅩに乗って色々なところに出かけて風景をたくさん描きたいと言っていた。
「その日」は雨が降っていた。
明日エボⅩで出かけようと提案した夢斗。奏夢も楽しみにしていた。
2人で色々な事を話しながら、街中を歩いていた。
「天気いいといいなー!」
「今日がこの天気だからなー。明日はいい天気だといいな」
「うんっ!」
2人は交差点に入り横断歩道を渡る。
夢斗が渡り終える直前、奏夢が横断歩道の中で止まってしまう。彼女がいつも付けているブレスレットが切れて落ちたのだ。
慌てて拾おうとする奏夢。
夢斗が奏夢の元に行こうとしたその瞬間。
パアアアアアアアッ、グシャアッ!!
夢斗の眼前に血飛沫が飛び散る。
何が起こったかわからず、夢斗は奏夢を呼ぶ。
「……カナ?」
そう言った夢斗の眼前には血まみれで倒れてる奏夢が。彼女から血溜まりがどんどん広がっていく。周りの通行人が悲鳴を上げる。
「なあカナ……?しっかりしろ!?……カナ!!」
奏夢を轢いた車は消えていた。轢き逃げだ。
周りの通行人が救急車を呼び、警察も来た。
夢斗は母に連絡。信じたくない現実が夢斗の意識を支配していた。
大雨の中で夢斗は自分の何かが音を立てて壊れていくのがわかった。
数時間後、奏夢は亡くなった。
彼女はあまりにも多くの事を残して逝ってしまった。
夢斗との約束、アイドルになるという夢、何もかもを置いていってしまった。
結局彼女は一度も夢斗のエボⅩに乗ることなく死んでしまった。
奏夢が亡くなった後、毎日のように両親は喧嘩。家族の仲はボロボロになっていた。
夢斗はそれに耐えられなかった。
何より自分をわかってくれる存在を失った事が夢斗にとって大きかった。
唯一の味方だった彼女を失った夢斗は毎日を孤独の中で過ごす事になったのだ。
やがて両親は離婚。
夢斗は母親と共に暮らすことになった。
しかし奏夢を失った夢斗はまるで別人かと思う程変わり果ててしまった。
何をするにもやる気がない、生気を感じない。
また、極端に興味を失う事がありその時は興味があっても次の瞬間には興味が失せてしまってるなど夢斗の精神に大きな影響を及ぼした。
学校でもほとんど動かなくなり、元々誰からも見向きもされてなかった夢斗だがついには担任からも「いない」扱いされた。
気晴らしにならないかと夢斗はエボⅩでいろは坂までドライブ。
そうしたら
ソイツを負かすと何かなるかなと。夢斗はソイツを打ち負かした。
しかしそれでも自分の技術を疑われた。何故なのか。
何をやっても自分を認めてもらえない。
奏夢は夢斗の事をわかってくれていた。だがもう彼女はいない。
これがきっかけで夢斗は将来を考える事を放棄してしまった。
夢斗は目的もないまま進学。
大学受験後。
死んだ目の夢斗は自動車部に立ち寄った。
話を聞いて最初はくだらないと思っていた。所詮競技で競い合うだけ。どうせ自分が勝ったらまた妬まれる。
つまらなくなって帰ろうとした夢斗。しかし、
「首都高を走るんだよ」
「ただ」公道を走るだけのハズなのに、何故か夢斗の心を激しく揺らした。
何故。でも感じたモノは夢斗を強く揺らす。
「……キョーミあります」
こう言った夢斗。首都高なら自分の何かが変わるかもしれないと感じて。
今年4月。
「こんにちは!」
「うっす。……あ、アンタはなんて言ったっけ」
アイドルってのは知ってる。誰だっけと考える夢斗。
「……相葉夕美だよ。君は?」
相葉夕美。奏夢の憧れだった少女だ。
「星名夢斗」
「夢斗君か……。いい名前だよ」
「そうすか?地元では痛い言われましたけど」
「素敵な名前だよ!大切にしなきゃ!!」
「……そうすか」
夕美と話していたら、浩一が近づいてきた。
馴れ馴れしく話していた夢斗に怒りを顕にしている。
「気に入らないならさ、そっちが夕美と話せばいいんじゃね?なんでそれをやってないアンタに俺は怒られないといけねーの?」
「自分が行動してないくせになんで俺に怒るの?」
今まで自分が受けていた事への気持ちを吐き出すようにして浩一へ反抗する。
「てめ……!お前は立場をわかってんのか!?」
「立場?別に俺と夕美はここでは同じじゃね?」
「『アイドル』と『一般人』のお前が馴れ馴れしくしてるのがダメだろ!」
ああ、またか。何でも「区別」したがる。
「俺はさ、立場とかそーいうのはナイって考えるヤツなんで」
「この……!」
「もしさ……アンタが上級生だとしても俺はこんな態度なんで」
小学校からずっとそうだった。
上級生と喧嘩になる事はいつもの事だった夢斗。その時は完膚なきまでに上級生を叩き潰していた夢斗。
上級生でも遠慮なしにボコボコにするためにやがて夢斗に喧嘩をふっかける上級生すらいなくなった。
「てめえ!!」
浩一が掴みかかる。軽く体を動かして回避。
掴みかかってきた浩一を逆に掴み返して、背負い投げ。
「頼むからさ、関わんないでくれます?」
「俺はテキトーなんで。夕美といてもいなくても関わんないでくれ」
自分一人で生きていこう。誰とも関わらなければあんな思いをする事だってないから。
浩一との喧嘩で教師に説教された後。
「そーいやアンタ、名前なに?」
「……津上浩一。お前は?」
「俺は星名夢斗」
「星名ね……。お前高校で友達いなかっただろ」
「ま、いないね」
避けられたから。
「しょうがねえな。俺がお前の友達になるわ」
「結構です」
いらない。どうせ俺を捨てる。
「この……。あのな星名、お前1人だと絶対トラブル起こしまくりの常習犯になるぞ」
ああそうだよ。
「お前は、周りがわかってない。立場関係ないってお前言ったけど、それはアウトだぞ」
周りなんて興味無い。
「夕美はここにいる以上、同じじゃね?」
「それでも最低限のラインは守れ。普通はあんな事出来んわ」
「えー。夕美はあんな話してくれたのに?」
「ちょっとは遠慮しろ……」
「どっちにしろ、お前がなんかしないように俺が見る。そうしないとお前が心配だ。例えお前がウザがっても、付きまとうぞ」
「ストーカー……」
「断じて違う」
「……ま、わかったよ。浩一」
「……まあ呼び捨てはいい」
夢斗と浩一の関係は最初は監視のために結ばれた関係だったはず。
しかし今では親友のように話している。
駐車場に行く2人。
「コレがお前の車か?星名」
「そ。コレしか俺にとって大切なものはない」
本当は
「お前、中々すげえ車乗ってるんだな」
「全然。浩一は?」
「ふっふっふ。見て驚け」
「えー。どうなのよ」
「オイ」
自動車部入部の際。
「ジムカーナの大会が今度ある!出てくれないか!?」
「イヤっすよ」
「何故!?」
「俺は言いましたよ。そんなつまらなそうな事やりたくないって」
「俺はそっちが言った『首都高を攻める』って事に惹かれて
反抗する夢斗。その場の全員がざわめく。
「浩一……。もしお前までそうさせたいなら俺はこの学校辞める」
「俺は今まで自由なんて無かった……。ここに来たのも深い意味はない。目的が無かったんだよ……。とりあえず大学行けばいいって思ってな……」
「そんな中で唯一自由を感じれると思ったのは、『首都高を攻める』って事が出来る
「首都高を攻めるって言うアンタの言葉を信じて俺は来た!ソレがないんなら俺はココを辞める!!」
夢斗が自動車部の勧誘を受けた時に感じたモノ。
それは「自由」。首都高なら「同じ」走りは絶対にない。いつでもその時の走りだけだ。
そして限界がない走り。とにかく上を目指そうとする者達がたくさんいる。
友也が聞く。
「君は何故……そこまで『自由』にこだわるんだ?」
「俺は……ずっと一人だった。誰にも俺の考えをわかってもらえないし……。俺が何を言っても理解しようとさえしなかったんだ!!」
「理解しようとしないヤツらと関わるのがもう辛かった……。だから俺は地元を出てきた」
「自分が決めた『常識』で周りを縛る!ソレが違う奴を自分達のグループから追い出そうとする!俺の考え方に自由ってないのか!?」
「峠だって……周りの事を取り入れようとせず『遊び』しか出来ないくせに上手い奴には嫉妬する……。いろは坂を走ってたヤツはみんなそういう目で俺を見てた」
「でも……首都高ならそんな事ないと思った。同じ目的の為に人が繋がって走る……ソレが走り屋じゃないのかって」
「もしアンタ達が地元のヤツみたいな事をするなら……俺は出ていく」
そして友也が口を開いた。
「そして君が一番したい首都高を走る事が君のやる事のメインだ……。どうだ?」
「ソレなら俺はやりたいっすね」
「交渉成立だな」
「浩一君はどうする……?」
「俺もココに入ります。夢斗の技術はよくわかりました。でも夢斗はその技術の上手な使い方をわかってない……。もし俺がいないと夢斗は絶対にその技術をわかってもらえないから……」
初めて首都高を走った日に咲耶と遭遇した。
「やらせてもらうよ……」
咲耶の黒いエボⅨを追う夢斗のエボⅩ。
パワーの差を帳消しにするコーナリングスピードでエボⅨに迫る。
「……!?なんだこの車!?」
「離れないっ」
咲耶のエボⅨを追い詰める。
最後こそ自分のミスで負けたとはいえ、夢斗は今まで感じたことがなかった高揚感を感じた。
咲耶と顔を合わせて言う。
「俺、星名夢斗。咲耶、あの技術俺に教えてくれ!」
他人にこう言うのは初めてだった。
その後神谷エイジとの出会いを経て、エボは進化。
しばらく後に蓮のFD3Sとのバトルで完敗した夢斗。
その際に夕美にこう言われた。
「……夢斗君」
「なんだ?」
「私と約束して」
「?何を」
「『絶対に無事で帰ってきて私と会う』って」
「無事に帰ってきて。それだけ守ってほしい」
夕美は悲しげな表情を浮かべていた。それが亡き奏夢と被った夢斗。
「……わかってる。夕美と会わなきゃ俺はヒマだもん」
「それに夕美みたいに俺を待ってる人はいる。浩一とかトモさんとか……。1人だけもう待てなくなった人はいるけどさ……」
「俺は絶対に死なねえ。これが俺が夕美に守る約束だ」
夢斗は目的を作った。一つ目は蓮に勝つ事。
そしてもう一つは奏夢の分まで生きていく。
亡くなった彼女の分まで精一杯生きる。それが自分が奏夢にしてやれるたった一つの約束だから。
この出来事の後、蓮達と再びバトル。美穂のFCも交えて。
しかしその最中に美穂のFCが大クラッシュ。
目の前で起きた惨劇。
「マジか!?死ぬなよ……!!」
路面にオイルなどが混ざった液体が残り、所々にFCの部品が散乱する現場。
その凄惨な光景はあの日を思い起こしそうになった。
(もう……俺の前で誰も死ぬなっ!!)
そんな夢斗の願いも届いたのか、美穂は怪我をしながらも生還。
そして蓮の働きで美穂のFCは蘇っていった。
夢斗の過去はあまりにも重い。
今でも「ソレ」を乗り越えられておらず、今でもたまに夢でうなされて苦しんでいる……。
「そんな事が……」
「そーいう事だ、浩一」
「じゃあ、轢き逃げ犯は」
「捕まったよ。1ヶ月後に」
「え」
「ライブの日だよ」
そのライブこそ、蓮や美世達が狙われた「渋谷駅前交差点発砲事件」が起きた日の事だったのだ。
「ヤツは逮捕されたヤクザ共のメンバーだった……。事件の準備のために移動していたアイツらがカナを……っ!!」
拳を握り締める夢斗。その目は本気で怒りを表していた。
「プロデューサーが撃たれた時の事……!?」
「小日向さんが撃たれた?」
「うん。プロデューサーは銃で撃たれて意識不明になっていたの」
「嘘だと言ってくれよ夕美……!!小日向さんがソイツと関わったせいでカナが殺されたみたいじゃんか!!」
蓮に怒りの矛先が向こうとしている。夢斗は涙が溢れだしていた。感情を抑えきれなくなっていた。
「なんでだよ!!なんでカナが死ななきゃいけなかったんだよ!!カナはこんな俺よりもずっといい奴だった!カナは生きていれば絶対に夢を叶えてアイドルにだってなれていた!!カナは俺よりもずっと『天才』だった!!カナが幸せに生きて欲しかったっ!!」
胸の内を吐き出した夢斗。
「なのに……っ」
「夢斗……」
「夢斗君……」
「そんなくよくよしてたらるんってしないよ」
「ヒナ……。そりゃわかってるさっ!!」
壁を怒りのままに殴る夢斗。
「辛い事があったって事はあたしもわかった。けどね……そんな前の向き方じゃダメだよ」
「じゃあどうするんだ!?」
「みんなを見て……。そうすればそれだけでも違うよ」
「その『みんな』が俺を避けてるんだよ!!」
「んーん。周りを見て」
言われるがまま夢斗は周りを見る。視界に夕美と浩一が映る。
「夢斗君は人一倍周りを気遣う事ができてるよ。そしてみんなと繋がってる」
「夢斗……俺はお前がすごいって思ってるさ。お前は周囲をひっくり返せるヤツじゃんか。前も言ったろ?」
「でもな、お前はもっと他人を頼れ。何もかも1人で抱えるな」
「お前は気づいてないだろうけどな、お前は皆を動かす原動力だ。お前が迷ったら皆も止まる」
「だから迷うな。いつもズバって決めるお前でいろ」
「お前って『生きるのに不器用』って言われるだろーな、社会に出たら。でもさ、友達となら少しは考えを変えたっていいんじゃないか?」
「夢斗……やっぱりお前はすげえよ。……けどよ、もう……いいんじゃないか?自分で自分を縛るのを」
「……」
夕美も言葉をかける。
「夢斗君にはたくさん助けてくれる人がいるじゃない!プロデューサーや津上君、部長さんに!それに私だって助ける事はできる!」
「誰もお前を『見捨てる』って言ってねえよ。むしろ、俺達はお前を『助ける』って言ったさ」
「奏夢ちゃんの分まで生きようよ!」
「妹が乗りたかったお前のエボを走らせ続けるのがお前ができることじゃないのか?」
「走らせ続ける……?」
「今だけ辛いって事はいくらでもある!けどその後に必ずるんってくる事がある事だって知ってるから!」
日菜が夢斗に言う。
「だからさ……。お前は自由に生きろ。縛られるのは嫌じゃなかったのか?」
浩一が夢斗を励ます。
「……そっか」
夢斗の声が先程までとは違う声になった。
「浩一達は俺を捨てないのか?」
「ああ。お前はほっとけねえし」
「夢斗君だって人だし弱いトコとかあるもん。弱いトコがない人なんていないよ」
日菜が続ける。
「みんなそれぞれの『個性』ってあるじゃん?あたしの友達はね!ドジだけど誰よりも努力してる子にみんなを大切にして武士道に憧れてる子、周りをよく見ていて面倒見がいい子に誰よりも音楽の知識がある子だったりで一人一人違う!!」
「あたしも最初はみんなとは足並みが揃えられなくて大変だった……。あたしができる事がみんなはできない。『なんで?』って何回も思ったよ。それであたしとおねーちゃんはギクシャクしてた時があったし」
そう言われた姉が目を逸らすが日菜は続ける。
「みんなできる事は違う。あたしもできない事はある。おねーちゃんと別々に過ごすとか」
「ソレは関係なくね?」
夢斗のツッコミを聞き流して続ける。
「できない事があるのは当たり前。たまにできない事すらできるって人はいるけどね。できる人ができない人と同じ見方をすればイイと思うんだ。もちろんその逆もそう。できない人はできる人の気持ちを思いやる事だって忘れちゃダメだよ」
「見方……」
「夢斗の考え方はド直球だからさ、夢斗に合わせた考え方しないとやってられないし」
「俺に合わせて……」
夢斗は浩一達が「自身に合わせていた」という事を初めて知った。栃木でそんな事をされた事がないために浩一達の配慮に気づいていなかった。
「お前は突っ走るけどさ、想定外の返しに弱いじゃん。俺らがフォローしなきゃお前一人でどうにかなりゃいいけどさ、『できなかったら』って考えないだろ」
浩一の指摘は実際その通り。「できない」と考えない夢斗。「できる」事しか考えてない。
「それでもお前は一直線だろ。お前の信じて進んだとこがいつも何か起きる場所だ」
浩一が夢斗に出会ってから夢斗と行動するといつも何かがあった。クラスメイトとの喧嘩、超有名首都高ランナーと知り合う、大会で優勝……。他にも挙げたらキリがない程。毎日が飽きない。最も、だいたい自分が貧乏くじを引くのだが。
「俺はいつからかお前が引き起こす事に慣れちまった。悔しい事にな」
苦笑しながらも浩一は夢斗のやる事を肯定している。
「お前の無茶は俺らが拾ってやる。お前のぶっ飛んだ発想で周りを動かしてみろ」
「サンキュー……浩一」
夢斗の声にはいつもの調子が戻っていた。
「俺はるんってくる事をいつも見つけたい!俺が死んだあと
「だからさー!みんな俺を手伝ってくれ!!」
「……復活だな」
浩一は笑う。夕美も微笑んでいた。
「じゃーもっとるんってくる事しよーよ!」
「だなー!!」
夢斗と日菜は駆け出して行った。
「あ、コラ待てや……ったくよ。とんでもねえヤツと会っちまったよ、ホント」
やれやれと首を振りながら浩一は夢斗達を追う。
「よかった、夢斗君の笑顔が戻って……」
夕美も続く。
「『天才』って何かしらね。周りを惹きつけることにかけては真似出来ない……」
努力をした自分を才能だけで追い抜いてしまう
でも、ぎくしゃくした関係をお互いに向き合って変えていった。
気がついたら自分が周りに変化をもたらそうとしていた。
ある時は自分が変わるべきか迷うバンドメンバーを導いた。
またある時はバラバラになったバンドに対して責任を感じたメンバーと共に解決策を探した。
今の自分が見たら過去の自分は精神的に余裕が無い、と見えるだろう。実際そうだった。
ひたすら自分が目指す目標のために努力を重ね、妥協を許さなかった。他人にも、そして自分にも厳しかった。
でも、周囲との交流を経て自分は成長した。それは自分だけでなく、
誰も理解できない、そして誰からも自分が理解されないという事実を見ても「寂しいとは思わない」「あたしじゃない人がいるから、あたしの存在が自分の中でより確かなものになる」と言った彼女。
バンドメンバーが自分の事を受け入れ、理解しようとしてくれている事に対しては純粋に嬉しいと感じている彼女。
「
辞書では生まれつき優れた才能を持った人間を「天才」というそうだ。
凡人と天才は決して相容れない。それは
『天才』は『普通』からは関心を寄せられない。
しかし、「出会い」によって変わることもある。
そして
「「るんってきたーーーー!!」」
『天才』は『凡人』から見れば別の次元の存在に見えているのかもしれない。
それでも『天才』だって人間だ。『凡人』と同じく悩み、時に傷つくことだってある。
周囲がその「悩み」を見抜く事ができるかで『天才』が抱えるモノは軽くもなるし重くなったりもする。
夢斗は
周りから理解されない苦しみを抱え続けていた。人生を放棄さえしていた。
それでも。
必死にもがき続けた夢斗。
たった一つのきっかけで自分を変える事が出来た。
時間はかかった。約20年近くの時間を必要とした。
しかしその価値はあったと言えよう。
今こうやって信頼出来る『友達』がいるのだから……。
場所は横浜某所。
「……」
蒼いR34が鎮座する工場。傷だらけのボディは年月の経過を物語る。
藤巻はある人物の依頼を受けてこのRを預かっている。自分ならこのRを修復する事は容易な事。
しかし藤巻は敢えてそれをしないつもりでいる。
(彼女に頼みたい……。彼女はこのRを修復できるだろう)
藤巻は蒼いRを修復するべき者を既に決めていた。
『伝説』のマシンを修復するべき人物は『伝説』を追う存在……。
実質バンドリ回じゃないか(困惑)
やっぱりシリアスは上手く書けない……。今後の課題かな。
ネタ解説です。
・「見た物が頭の中に映像として残る」
これは「MFゴースト」の登場人物「カナタ・リヴィントン」こと「片桐
・エボⅩの入手経緯
夢斗は新車でエボⅩを納車してますが、新車で自分の車を買ったのは夢斗のみ。蓮や咲耶は中古でそれぞれ入手してます。
・事件の発端
「渋谷駅前交差点発砲事件」が関係してます。あの日の事が様々な事に関係してるのです。
・一人一人の個性
日菜が説明しているのは「Pastel*Palettes」のメンバー達。
順に「丸山彩」、「若宮イヴ」、「白鷺千聖」、「大和麻弥」です。
・「ギクシャクしてた時があったし」
これはガルパのストーリーを見るとわかるのですが姉「氷川紗夜」と妹「氷川日菜」はぎこちない仲でした。深く言うとネタバレするので気になった人は「ガルパ」をやってみよう!(ダイマ)
夢斗の過去は同じような出来事を経験した「如月千早」の過去を元に書いています。
弟(妹)を交通事故で失った、両親が離婚など共通点が多いです。
ちなみに私はアニマスは「約束」回が一番好きです。(隙あれば自分語り)
また、「バンドリ」の人物「氷川紗夜」と「氷川日菜」を出したのは「天才」と「凡人」から見たモノの違いを明確に描写したかったため。夢斗の性格の元になってる日菜と合わせたかったからです。
次回、283プロ感謝祭!!
咲耶はどんな気持ちで感謝祭に臨むのか。