アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者   作:ヒロ@美穂担当P

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美世の憧れの存在「迅帝」。
蒼いGT-Rは彼女に決断をさせる。





STAGE25 首都高(戦場)に伝説は(はし)

8月中旬、夢斗達は2日間の大学祭。今日は最終日の2日目。

「麺が足りねえ!」

「ソースよこせ!!」

「野菜足りねえよ!肉多いって!」

殺人的な忙しさ。昨日は学内だけだったが、今日は一般の人もいる。その数はアイドルのライブに来るくらいとはいかなくても普段の学校とは思えない程の人数。

絶え間なく接客が続き、ストレスが溜まる。「客来んな」。この場の全員がそう思っている。だが客にキレる訳にはいかない。

「あざっしたーーー!!」

「焼きそば2つーーー!!」

「安くてウマい焼きそばはいかがっスかーーー!!」

キレないように大声で発散しているのだ。それは傍から見たら怒鳴ってるようにしか見えないのだが。

 

 

「焼きそばどうですかーー!?」

夕美が呼び込みをしているだけあって、人が多い。さすがアイドル。

「夕美ー、休憩回って大丈夫!?」

「大丈夫だよ!」

呼び込みも大変だ。並んでる人を列にまとめてるがトラブルも少なくない。

大学祭初日の昨日は割り込みがあって揉める事があった。

その時の仲裁(制裁)は夢斗がやった。手段が手段だったために担任にクソキレられたのは言うまでもない。

 

 

「焼きそば3つ貰えますか?」

「焼きそば3つーーー!!」

「あ、やべぇ!肉ねえよ!」

「値下げしろ!肉ねえの謝れ!」

「いやー、すんません。肉今切らしてて。50円引きの1個150円でどうすか」

「うん。買うよ」

「ありがとーございます!!」

買い出し班も大忙し。交代で買い出しに行くのだが休みがない。

 

 

 

「すみませーん!3つくださーい」

「ハイOK!!」

夢斗が屋台の奥から出てくる。

「ハイ焼きそば……って小日向さん」

「忙しそうだね、夢斗君」

蓮だ。美世と美穂も一緒。

「わりー、ちょっと抜ける」

「星名!?」

接客をサボって夢斗は出ていった。

 

 

 

「なるほどねー……」

蓮は仕事終わりに夕美が大学祭に出てるという事で見に来たらしい。

美世達も行きたいと言うため、2人を連れてきたとの事。

今夕美は呼び込みをしている。

「戻らなくて大丈夫なの?」

「へーきへーき。浩一がどうにかしてくれるし」

浩一はクラスの出し物を考えるのに関わってる。簡単に言えばリーダーみたいな物。全体の指揮を浩一が担当しているのだ。

理由はまず料理が上手。浩一が作った焼きそばはクラス全員が絶賛した程。一人暮らししているのもあるがそれだけでは出ない味。センスがある。そのため浩一の焼きそばのレシピをまとめて調理班に渡してある。

次に「マトモ」だから。クラストップの成績だが問題児の夢斗にツッコミを入れられるほぼ唯一に近い存在だからだ。

ちなみに夢斗にツッコミを入れられるのはあとは夕美だけだ。しかし夢斗のやる事がぶっ飛んでるのもあり、ツッコミができてもそれを止められないのである。

そのため浩一が選ばれた。……ほぼ後者の理由で選ばれた浩一は「納得いかない」と言っていたが。

 

 

 

「うん!美味しい!!」

美世が美味しそうに焼きそばを啜る。

「そーいや会えたんすか?『迅帝』ってのに」

それが聞こえた途端に美世は夢斗の方を向く。

「うん……。あたし全然相手にならなかったけどね」

「迅帝って?」

「すごい人ってだけ分かればいいかな。美穂ちゃん」

「あっ!夢斗君いたし!」

夕美に見つかった。

「もー!!こっち大変なのに!!」

「いやいやすんませんね……」

夕美に引きずられて夢斗は連行される。

「夕美ちゃんも大変だね……」

蓮もついて行く。

 

 

 

 

このあとは特にトラブルなく大学祭は終了。

強いて言うなら夢斗がエボを使ってパフォーマンスしようとして友也や浩一達に止められた事くらい。

 

 

 

翌日。

美世は藤巻に呼び出され横浜にいた。

「なんだろ……」

藤巻に呼び出されるのは今までなかった。

「こんにちはー」

工場に入る美世。

「どうも、原田さん」

美世を迎えたのは藤巻だ。

「あの、話ってなんですか……?」

「おお、聞きたいんだね。ついてきて」

藤巻に続き、工場の奥へ。そこにはブルーシートが掛けられた車が。

藤巻がブルーシートを取り、現れたその車。

「え……っ。このR!!」

それは『迅帝』のR34GT-Rだったのだ。

「原田さん、こう思っただろう。『なんで迅帝のRがあるんだ』って」

「そうです。何故……」

「俺が昔首都高を走っていたのは多分知ってると思う。どうだい?」

「知ってます。健さんが教えてくれました」

「内藤か……懐かしい。そこはまあ置いといて。俺はRで首都高を走ってた。当時は『悪魔のZ』や『ブラックバード』が現役だった時代さ」

「今はどうなのか知らないけど……。その辺は原田さんが詳しいはずさ(笑)」

「ですね……(笑)」

「その時に1台のRが俺の前に現れた。蒼いRがな。そのRのドライバーこそ……」

「『迅帝』……」

「その時から中々速かった。でも俺を超えられなかった」

「だから俺を『師匠』と呼んで弟子入りしたのさ。アイツは俺の後をいつも追っていた」

「だが……。アイツはある時首都高に姿を現さなくなった時期があった。そして戻ってきたアイツは初めて見た時とは違うRに乗っていた。俺はこのR34に敗れたんだ……」

「アイツはそのまま首都高最速の座を俺から奪い取った。そして首都高の伝説として君臨し続けた」

「でも……それは長く続かなかった。アイツはある日突然首都高から姿を消した。そのまま俺との関係も消えた……」

「アイツはプロレーサーとしてデビューしたからって言ってたが、もう1つ何かを隠しているようだった……。でも俺にはわからなかった」

「この車はアイツから直してほしいと頼まれてね。でも俺はこのRの修理を原田さんにやってもらいたい」

「へっ!?」

「俺は原田さんの事をアイツを超えられるドライバーだと思っている。原田さんもこのRに何か思う事があるだろう」

藤巻の言葉は的確に美世の心を動かす。

「あたしに……あたしにっ!!やらせてください!!」

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「えっ!?えええ!?」

現れた人物は岩崎だったのである。

「俺の車なんだ、そのR」

その言葉を聞いた美世は頭の中でバラバラになっていたピースが一つになるのがわかった。

「俺がこの車の面倒を見ないといけないのは分かってる。でも、このRに俺はもう手を入れられない」

「でも……原田さんはRの事をよく知ってる。ドラテクもあってチューンもできる。原田さんのRだって自分で手がけてると聞いたし」

美世が藤巻を見ると藤巻は笑っていた。藤巻が岩崎に教えたと確信した美世。

「原田さんは俺のRを見たんだろう?」

「はい。この間も」

「そして数年前に走っていたこのRを見ました」

その時こそ迅帝が現役だった時。今から6年も前になる。

「あたしはそのRを見て決めたんです。同じRに乗っていつか追いたいと」

美世を見た岩崎は少し考えて言う。

「わかった。原田さんに俺のRを託す」

「Rのセッティングは原田さんが出してくれ。なあに、俺はどんな車でも乗る。パワーを落とすとか足を別物にするとか何でもいい。原田さんが手を入れた最高のRで俺は最高の走りをする」

「そして……いつかやろう。原田さんが見た俺がどんな走りをしていたのか知りたい」

R()に手を入れるのは原田さんだ。だから俺のRの事は全部筒抜けさ。長所から短所、そして弱点とかも全部知り尽くすだろう。でもそれがいいさ」

岩崎は絶対的な技術を持つ。しかしチューニングカーに理解が深いのは美世。

走りの岩崎と技術の美世。お互いの長所が見えている。だからそれぞれに足りないモノがわかる。だが岩崎は美世が勝る「技術」面をさらに伸ばしてるのだ。要するに岩崎が背負う「ハンデ」だ。

「俺のRを参考にして自分のRをチューンするも良し。とにかく最高の勝負にしよう」

「わからない事は藤巻さんに聞けばいい。この人は俺のRをよく知ってる」

首都高最速と呼ばれた「パープルメテオ」こと藤巻直樹。そして「迅帝」こと岩崎基矢。

首都高最速を本気で成し遂げた2人。その愛機はGT-R。Rを本気で走らせる事に関してはこの2人を超えるドライバーはまずいないだろう。

「……わかりました。やってみます」

美世がこれほどまで責任感を感じて物事をやるのは初めて。

憧れの存在に自分が手を入れる。プレッシャーもあるし、そしてワクワクもあった。

「一度乗ってみるかい?」

岩崎が聞く。『迅帝』の走りを間近で見るチャンス。

「お願いします!」

 

 

 

PM4:00。

ここは湾岸線。横浜から大井方面へ向かうのは迅帝の蒼いR34スカイラインGT-R。

運転するのは岩崎。助手席(ナビシート)には美世が座る。

 

 


 

 

今の車と比べても古さを感じさせないシルエットのスカイライン。R35が出た今でもRB系GT-R最後のモデルとして非常に人気が高い。というよりRB系GT-Rの人気が急上昇しているのだ。

今から約10年前に生産を終えた「スカイラインとしての」GT-R。数年後にR35型GT-Rがデビューした。しかし当初の評価は低かった。その後何回かマイナーチェンジを施されて今日の評価を受けてるR35だが、R35のアンチはその理由にスカイライン伝統の直列6気筒を捨てた事をまず出す。

R35GT-Rのエンジンは排気量3.8L、V型6気筒の「VR38DETT」。「TT」という表記からわかるようにツインターボを装備。

これに対し第二世代GT-R通称「RB系GT-R」は排気量2.6L、直列6気筒の「RB26DETT」。こちらもツインターボ装備。

直列とV型。6気筒というのは同じだがその構造は根本的に違う。

古くからのGT-Rファンは直列6気筒を載せるGT-Rにこだわる。そのためV型になったR35を「邪道」と言う人もいる。

アンチがそれ以外の理由を出すとなれば「スカイライン」の名を外したからか。

やはりGT-Rはスカイラインがなければその名は存在しないようなモノ。

一応スカイライン以外にGT-Rの名を冠した車は存在する。ただし日産ではないのだが。

いすゞのベレットがGT-Rの名を冠してる。しかもスカイラインよりも先にGT-Rを名乗った(厳密にはGTR。マイナーチェンジ後はGTtypeR)。

だが「GT-Rといえばスカイライン」という人がほとんどだ。ベレットが先にGT-Rを名乗ったと今の人に言ってもまず信じてもらえないだろう。

それ程までに「スカイライン=GT-R」のイメージは大きいのである。

また以前も話したと思うがR30スカイラインは当時最高クラスの性能を持ちながらGT-Rを名乗る事が許されなかった。直列4気筒の「FJ20」を搭載していたからだ。

GT-Rファンは「『直列6気筒』『スカイライン』というのがGT-R」という決定事項みたいなイメージを持っている。

もちろんR35が好きなGT-Rファンもいる。しかしGT-Rはスカイラインでなければと主張する人もいる。

そしてR35のアンチ以外にもR35が嫌いという人が出す理由は「走るフィールドの変化」だ。

スカイライン時代のGT-Rはサーキットで戦うために開発された。これは「スカイラインGT-R」を初めて名乗ったPGC10型スカイラインから続くコンセプト。

R32型GT-RがグループAでの勝利を目指して開発、ケンメリことKPGC110型GT-Rの生産終了から実に16年振りの復活を遂げた。

R32GT-RがグループA規格で行われていた日本のツーリングカーレース最高峰であった「全日本ツーリングカー選手権」のレギュレーションに対応させるために作られてその結果、「GT-RにはGT-R」という図式が成り立つ程の活躍を見せた。GT-Rが速すぎたためにグループAが消滅するきっかけにもなったのだ。

その後はスーパーGTなど様々なレースで活躍を続けたGT-R。R34型GT-Rが2003年に撤退するまでスカイラインGT-Rは活躍した(スーパーGTからR34撤退後の日産のマシンはフェアレディZだった)。

スカイラインGT-Rの戦績は輝かしいがそれは「国内」のレースでの話だった。

R35GT-Rは「世界」を見据えて開発されたのである。

「新次元マルチパフォーマンス・スーパーカー」と言われたようにR35は「スポーツカー」だったスカイラインGT-Rとはジャンルが違った。

世界中のスーパーカーに対抗するために作られたR35。一般的に「スーパーカー」と言われる事が多いが日産側は「スポーツカー」という認識である。

しかしそんな事は普通に車に乗る人から見たら関係ない。

スカイライン時代はちょっと背伸びすれば一般人でも買える値段だった。

しかしR35はごく初期型は買う事はできるかもしれないが、現在のモデルは1000万円を超える値段だ。

これでは一般人に手が届く所ではない。値段設定からして「世界」のスーパーカーに対抗しているとも取られる。

 

話が少し逸れたが、本題に戻ると世界のレースで戦うために作られたR35。

2009年にFIAGT選手権のGT1クラスに参加した(ただしこの時はテスト参戦だったため賞典対象外車輌としてのエントリー)。その後も参加し続けてる。

他にも活躍はあるが、ここで終わる。

レース以外でも日常生活を見据えているR35。「誰でも、どこでも、いつでも」スーパーカーの魅力を味わうことができると評されてるようにスポーツ走行以外にも重点が置かれていた。それもあり、上のジャンルが振られたのだ。

 

 

新世代と旧世代。

それぞれに拘りがあるGT-Rファン。どちらを選ぶとなれば自分の好きな方に必然的に選択肢は向く。

そして美世と岩崎はそのどちらにも乗ったからわかる。

旧世代(R34)新世代(R35)。それぞれの長所も短所もハッキリと分かってる。

それでも選ぶのが難しいーーー。

 

 


 

 

「この時間も混んでるしなあ(笑)」

岩崎は全開で行きたそうだが、一般車が多く踏めない。

先程から全然スピードを上げていないのだ。

「岩崎さんは何故一旦走るのをヤメたんですか?」

美世が質問する。

「……俺は愚かなヤツだ。俺は走る事しか頭になくってね。当時の俺は本当に狂ってた」

「大切な人も守れなかった馬鹿野郎さ。俺は恋人を失った」

岩崎が語った事。当時彼には恋人がいたが彼女は病床に伏していた。彼は走りに没頭したために彼女と会わず、ある日彼女はこの世を去った。

自身の行為で彼女を助けれなかったという現実を突きつけられて岩崎は走る意味を失い、表舞台から去ったという。その際に藤巻との関係も消滅。

彼女を助けれなかった事を悔やみ、医者になるために勉強していたが挫折。

生きる意味を失いそうになっていた所、アマチュアレースでの活躍を聞きつけたレース関係者にスカウトされてスーパーGT入りしたとの事。

 

 

「そんな事が……」

「だから俺はもうRをチューンする資格はない。本当は乗るのも大きな罪だけどね……」

悲しみが見えるその横顔。

「だから誰かに負けたら俺はRを降りる。永遠に」

「俺を負かすかもしれないのが原田さん、君だ」

 

 

 

「おっ、やるかい」

R34の後ろにZ33とS15が。パッシングされた。

「このRの本気をナメるな」

グゥオオアアアアアアアア

R34は咆哮のようなRBサウンドを轟かせる。

数秒後にはS15の姿は見えなくなった。残るはZ33。

キュイイイイイイイイイイッ

シーケンシャルミッション特有のギアノイズが車内に響く。

岩崎は5速から6速にシフトアップしZを突き放す。その走り去る姿はまさに「壱撃離脱」の一言。

 

 

(すごい……)

運転する岩崎を横目に思う。

スーパーGTで見た「レース」の走りは美世が驚くような技術でいっぱいだった。しかし今の岩崎の走りは「ストリート」での走り。ストリートならではのレギュレーションなどに縛られない大胆な走りは純粋に速さを追求した無駄のない完璧な走りだった。

「どんな手段を使ってでも前に出る」そう言わんばかりの勢いで駆け抜けていった。

 

 

 

「本当にすごい車ですね」

「……コイツの凄さで取り返しのつかない事になってしまったけどな」

「あっ、ごめんなさい!」

「大丈夫さ。気持ちの整理はついてる」

岩崎のR34は今から10年以上前の車とは思えない性能を誇った。

これほどのモンスターマシンを美世は直していく事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『迅帝』が駆るBNR34スカイラインGT-R。

美世は迅帝こと岩崎基矢の頼みでこの伝説のマシンを修復する事になった。

そのRは自身の憧れの象徴でもあった。美世はこのRに何を思うのか。

 

 

 

 

そして……最後のピースがハマった。

時代を超えた伝説のマシン達が集うのはもう少し後の話である。

 

 




ついに明らかになった迅帝の正体。岩崎は自身の行為で大切な人を失っていた。
そんな彼が持つR34を託された美世は……。





ネタ解説です。今回これだけ。
・岩崎の過去
これは「首都高バトル(テン)」の設定が元。「医者を目指してた」というのはPSP版の職業が「医者」になっているためそれを利用しました。




今回迅帝を書くにあたり、大体は「首都高バトル01」辺りの迅帝が元になってますが一部は「首都高バトルⅩ」も入ってます。
01をあまり本気でやってなかったのもあってⅩの要素が目立つと思います……。ご了承ください。




次回、蓮の故郷山形へ!
夢を目指した彼が見る故郷は。



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