アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
そして進化したエボⅨはどんな車になったのか!?
ここは高木の工場。
1台の蒼い車が運びこまれていた。岩崎のR34GT-Rだ。
美世は高木にR34のボディ修復を依頼するために来たのだ。
だが高木はRを見た途端驚きを浮かべてた。
「コイツは……あの時の……」
「知ってるんですか!?」
「ああ……。前にやったんだ」
高木が語った事。今から10年程前に当時の岩崎がこのRのボディを加工してほしいと来たという。
当初高木は拒否していたが、毎日のように頼みに来る岩崎の姿勢に折れてR34のボディを加工したという。
あの悪魔のZのボディを作り上げた時のように高木はRのボディを加工したと。
「ではお願いします」
「ああ、できたら連絡する」
高木にRを預けた美世。
「……本当に色んな物に繋がってるね。Z」
「懐かしいな。……こんな歪み方はZでも見なかった」
高木はRの歪んだピラーを見る。
悪魔のZすら上回るパワー。Zのさらに上を行く存在。
あの時やった車がZのような大きな存在になった。
加工した時を懐かしみながら作業に取り掛かった。
9月。
咲耶はいつも乗っている黒いエボⅨ……ではなく銀色のエボⅩに乗っていた。
何故かと言うと以前夢斗にエボのチューンを依頼していた咲耶だが、夢斗がしばらくエボⅨを借りると言ってきた。その間咲耶は車がないため夢斗が自身のエボⅩを貸しているのだ。ざっくり言えばお互いの車を交換している。
「乗り手に応えるのが上手な車だ」
夢斗のエボⅩの
このエボⅩを初めて運転した時、咲耶はエボの運動性についていけなかった。振り回されたのだ。
だが苦労したのは最初だけでコツを掴んだ咲耶は自身のエボⅨのようにエボⅩを操れるようになっていた。
しかしそれでも大きな違いがエボⅩとエボⅨにあった。空力面だ。
市販のエアロパーツで構成されている咲耶のエボⅨだが、夢斗のエボⅩは根本的に違う。
夢斗のエボⅩは自作のアンダーフロアなど多数のパーツを装着。チャージスピード製のバンパーに作ったパーツを合体させるなど市販パーツの面影を残しつつも別物に仕上がった。
その超高ダウンフォースが生み出す操作感はどう頑張ってもエボⅨでは作れない。
だから夢斗の走りは鋭くキレた走りなのである。
283プロに出社した咲耶。
甲高いエキゾーストノートが歩く通行人の注目を集める。
「あれ?さくやんこの車ゆうくんのだよね」
出てきた結華が咲耶に問う。
「そうだけど……」
「ゆうくんの車乗ってきて何かあったのかなーって」
「まあね」
283プロのアイドル達は11月に行われるアイドルフェスタに参加する事になった。
これには765プロや346プロなどのアイドルも参加する。
「先輩アイドルと共演する場面もあるので失礼のないようにお願いします」
「あと、もう一つお知らせがあります」
遥が部屋の入口の扉を開ける。部屋に入ってきた3人の少女達。
「新たに芹沢あさひさん、黛冬優子さん、和泉愛依さんの3人が本日から283プロの仲間になります!」
「3人は『
説明を終えた遥が部屋を出る。アイドル達はそれぞれ自己紹介をした。
「あの車ってなんて言うんすか?」
あさひが咲耶に質問する。
「マジかっこいいよねー」
愛依が言う。
「あさひ!先輩に馴れ馴れしい口調しない!……すみません!あさひが迷惑かけてませんか?」
冬優子が咲耶に謝る。
「そんな事ないさ。私の車に興味を持ってくれるのが嬉しくてね」
「三菱のランサーエボリューションさ。まあ、あれは借り物だけど。私が持ってる車もランサーエボリューションさ」
「おおー!」
「何なら乗ってみるかい?」
「いいっすか!?」
「ああ」
「乗りたいっす!」
「あさひ!……すみませんお願いします」
咲耶はワクワクしてるあさひと諦めムードの冬優子をエボⅩに連れていく。愛依は行かないらしい。
なお、リアシートが取り払われてる夢斗のエボⅩ。冬優子はロールバーが張り巡らされた後部に乗るはめになった……。
まだ昼間の湾岸線。
「さーて……行くか」
咲耶の目が変わる。その瞬間ステアリングを握る手に力が入る。
アクセルペダルを踏む右足にゆっくりと力が加わっていく。それに応えるようにタコメーターの針が高回転域を指す。
カン高く吠えるエボⅩ。自分を直接刺すような音が響く。
「音が……っ」
遮音材のないエボの車内は外の音がダイレクトに響く。耳を裂くような爆音。そして路面のギャップを拾って伝わる振動。
冬優子は耳を塞いでいる。しかしあさひと咲耶は表情を変えない。
「すごいっすねー」
「いや、この車は私では扱いこなせない。すごいのはこの車を操るドライバーなんだ」
「どういう事っすか?」
「この車は借り物だと言ったけど、この車は持ち主が全部作り上げた。そして……『この車』を速く走らせる事ができるただ一人の天才さ」
「……何あれ」
冬優子が2人にギリギリ聞こえる声で言う。後ろから何かが迫ってるらしい。
「……凄そうっす」
あさひが表情を僅かに変えた。
しかし咲耶はわかっている。迫る車が何か。そしてそのドライバーも。
迫る黒い機影。
銀色の騎兵と対になる存在の黒い騎兵。
悪魔に立ち向かう力を手に入れて。悪魔を討つ槍だ。
「来たーーーーーーーーッ」
銀色の
生まれ変わった姿を咲耶に見せつける。そして運転席に見えるいたずらっぽい笑いを浮かべた青年。
「仕上がったんだな……」
「これならやれるんじゃないか、咲耶」
夢斗は言う。悪魔のZに立ち向かうための咲耶の「翼」。
2台の騎兵は疾走する。
黒い騎兵が銀色の騎兵の前に出ている。
「なんてパワーだっ」
以前とは比較にならないようなパワーを得たエボⅨ。
エボⅩは4速以降の加速で完全にエボⅨに負けていた。
新生エボⅨのテールランプが咲耶の前に見える。
「あの車って……」
「私の車さ」
あさひがもう一回エボⅨを見る。
「あれが……?」
「そうだ」
そう言っている咲耶自身も驚きを隠せない。しかし同時に確信を持った。あの悪魔のZと「戦える」と。
パーキングエリアで2台が並ぶ。
「少し大きくなったかな?」
「フロントフェンダーを交換してる。20ミリくらい幅広げてな。だから構造変更しないといけないけど。めんどい」
咲耶と夢斗が話し合う中、あさひは聞く。
「なんで車に入れ込んでるんすか?」
「えっと、誰だ?」
「芹沢あさひ。新人アイドルさ」
「あさひね……じゃあ聞くぜ。あさひはさ、なんでアイドルになろうと思った?」
「面白いって思ったから!」
「面白い……なるほどな。今はそれでいいけどさ、そのおもしれー物を極めるってコトをやった事あるか?」
「んー……ないっすね」
「競技やってるヤツもそうだしアイドルもそうだけど興味本位で始めた事は長く続かない」
「『面白い』それはいい。楽しいって思えるのが一番だよそりゃ。でもな、苦しい事とかヤな事に直面すると逃げ出すって事ってあさひは経験した事……たぶんねえな。けどあさひが体験しなくても少なくとも周りのヤツはそんな経験をしていると思うぜ」
「楽しか体験してないとめんどくせー事を嫌う。とにかく自分に都合良ければいいってな……」
「俺と咲耶は目指してる物がある。そのためにめんどくさい事をわざわざやる。表面でしか物事を見てないヤツはそういう苦労を知らない」
「周りから見れば馬鹿くせェ事にマジになるバカがいるんだよ。主に俺」
「咲耶もそのバカに足を突っ込んでる。しかも俺よりもずーーっと前にな」
「だから目指す物のために少しずつ色んなコトを積み上げていくんだよ」
「えと、夢斗さんで合ってるっすかね?夢斗さんの目的って一体なんすか?」
「夢斗でいいぜ。俺の目的ね……今ははっきりとしたモンはない。でもな、曲げずに守ってるモノはある」
「コイツだ」
夢斗が指したのはエボⅩ。
「形見……っては言わないけど。コイツをずっと走らせないといけないワケがあってな」
今は亡き
「悪かったな、くだらねー話を長々としちまって」
「そんな事ないっす!頑張るワケにもいろいろあるんだなって思って。積み上げるってなんか響くなーって」
あさひは何かが決まったらしい。その何かは彼女自身にしかわからない。しかしその答えは夢斗と咲耶はわかってるだろう。
帰ってきた咲耶達。今度は黒いエボⅨに乗って。
「お、戻ってきてる」
結華がエボⅨを見て言う。
「変わってる……?」
エボⅨの変化に気づいたようだ。
しかし結華は不安を感じた。
(さくやんは……どこまでやろうとしているの)
同時刻。
高木の手によって仕上がった蒼いR34のボディが美世に引き取られていた。高木の説明を聞く美世の表情は真剣。
「一度歪んじまったモノは完璧に元の姿には戻らない……。わかるだろう」
「尽くせるだけの事はした。あとはそちら次第だ」
「わかりました……」
「あと、アイツに言っておいてくれ」
「?」
「『ケリつけろよ』って」
「どういう意味ですか……?」
「迷いにな。アイツは悩みながら走り続けた。このRを走らせるなら迷いを断ち切れってな」
「はい」
美世はRを引き取って内藤自動車工場へ持っていく。
ラチェットを使って作業する音が響く工場。
「美世、これ食っとけ」
内藤が差し出したのはコンビニ弁当。
「体壊すなよ。お前は一応アイドルって立場だろうが。そしてレーサーだ」
「はーい」
内藤から貰った弁当を素早く食べ終わってから再び作業に入る美世。
アイドルとレーサー2つの仕事の合間に行う作業。時間があまりない分少しでも作業をしたい。
美世は手馴れた手つきでRのパーツを取り付けたりと作業を進める。
そして夜は自身のR34で首都高へ。
岩崎の走りをイメージしながら走る。
(ここでっ)
アクセルオフ。アクセルが抜けたRは
(ーーーーーーダメだ)
同じタイミングで同じ事をやっても差がある。コンマ数秒の差。
たかがと思うのは命取り。たとえコンマ数秒という差でも首都高ランナーにとっては大きな差である。
埋められない差。美世はその差に打ちひしがれる。
「どうしようか……」
美世は愛機に悩みを打ち明けるように言う。
同じ
迷いを抱えたまま美世は自宅へ向かう。明日からレースのために移動するのだ。悩む暇はない。
仮眠を取るべく美世は自宅へとRを走らせる。
「ずっとパワーがある……。力強く前へ走れる!!」
黒いエボⅨが環状線を駆け抜ける。
(どこからでも追従できるレスポンス)
以前よりトルクが太くなり、かつ瞬時に対応する。
(何故ーーーーこんなにも上手く仕上げられる!?)
夢斗がチューンしたエボⅨは咲耶と最大限シンクロしていく。
まるで自分の血がエボに流れてるように。「車」という無機物であるエボⅨが「生き物」という有機物になる。
ストレートをフル加速で抜けていくエボⅨ。
エボが苦手とする中速域が気にならない。そのまま超高速域に突入する。
(200kmからのふらつきもない)
ランエボに限らず、インプレッサなどセダンベースの車は200kmを超えると腰高感が顕著になる。安定感が失われているという事だ。
しかしエボⅨはどっしりと構えてるような安定感を生み出している。
どの
咲耶のエボⅨは夢斗のエボⅩ……とは行かなくても非常に高い安定性を持っている。比べるのが夢斗のエボⅩだから差がハッキリしすぎなだけで実際咲耶のエボⅨもかなり高いダウンフォースを発揮している。夢斗のエボⅩが異常なだけだが……。
性能が向上したエボⅨだが、それを操る咲耶の技術向上もある。
少しの間とはいえ非常にピーキーな夢斗のエボⅩに乗り、操れるようになった咲耶。
丁寧に操る技術が要求されるがある程度大胆な動きも実現可能な夢斗のエボⅩ。
今のエボⅨが夢斗のエボⅩに近い特性になったのも大きい。
改修されたエボⅨにすぐに慣れたのも夢斗のエボⅩと操縦感覚が似てるのだ。
(行けるーーーー!限界のその先までーーーーっ)
咲耶の技術とエボの技術がベストマッチして生まれる速さ。
インプレッサの強さの「ドライバーが発揮する技術の引き出し」とランサーエボリューションの「車の技術」が一つになった形だ。
ライバル同士の長所が
「これなら……」
咲耶はイメージの中でも離れていく悪魔のZのテールランプを思い描く。
この生まれ変わったエボⅨならやれると確信する。
夢斗の手で生まれ変わったエボⅨ。
そしてエボⅨを駆るのは悪魔のZを狙う白瀬咲耶。
一方美世は迅帝の走りとの差に打ちひしがれる。
彼女の走りは憧れを超えられるのか。
より高いレベルの走りができるようになったエボⅨ。
咲耶は悪魔を追えるか。
ネタ解説です。
・岩崎のR
ここでは「湾岸ミッドナイト」に登場する高木がボディを加工した事になってます。せっかく湾岸ミッドナイトと首都高バトルをコラボさせてるのだからこれくらいやりたい!と思って。
・ストレイライト登場
「芹沢あさひ」「黛冬優子」「和泉愛依」の3人が登場。ちなみにここでの冬優子は本性を表す前。
・進化したエボⅨ
夢斗のエボⅩを凌ぐパワーを手に入れたエボⅨ。
改修後のエボⅨのモチーフは「オリジナルランデュース」のエボ。当時筑波サーキットでエボ最速だったJUNオートのエボを超えるタイムを出すために持ち込まれた車両を参考にしました。
そのため咲耶のエボⅨもフェンダーを変更しています。
私情で申し訳ないですが来週は恐らく更新できません。
行事が重なってキツいです……。
次回美世が再び岩崎とバトル!!
負けられない勝負を制するのは!?