アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者   作:ヒロ@美穂担当P

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再び戦う美世と岩崎。
超高速バトルの勝者は!?


STAGE29 ぶつかり合うプライド

ここは富士スピードウェイのピット。

ミーティング中のメンバーの中に美世の姿はあった。

今日はスーパーGT第6戦。前回のスポーツランドSUGOでの結果は4位。

ランキング競争も終盤に入ってるため何がなんでもここで勝ちに行きたい所。

そのためモチュールのメンバー全員が表情を引き締めている。

 

 

「原田さんは今回セカンドドライバーを頼む。まず原田さんはココの攻め方を見てほしい」

「わかりました」

赤いGT-Rがピットアウト。コースインだ。

美世はピット内で静かに出番を待つ。

 

 

 

 

 

 

レース開幕。

一斉にマシンが1位目指して走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

「モチュールここは苦しいっ!エプソンの前に出られない!」

ハイテンションな実況がコース中に響く。

現在モチュールGT-Rは5位。

富士スピードウェイ最大の特長であるホームストレートでオーバーテイクを狙う34号車だが前に出られない。

しかし「その時」を狙うべくプレッシャーをかけ続ける。

美世もモニターを睨むかの如く見ている。

 

 

 

「よし……行ける」

鈴木が呟く。

実はモチュール陣営はタイヤ無交換作戦を行っていたのだ。

事実他のライバル達のマシンがタイヤ交換のためにピットインしているがモチュールのみはコース上に残ったまま。

順位を少しでも上げるための作戦。しかしそれ故にタイヤ消耗は激しくミスが許されない諸刃の剣とも言えよう。

鈴木の読み通りモチュールGT-Rは着実に順位を上げる。

 

 

しかしライバル達も黙って見てるわけにはいかない。

燃料補給とタイヤ交換を終えたマシンが続々とピットアウトしていく。

 

 

 

2周後、モチュールはピンチに陥る。

後ろには岩崎操るカルソニックGT-RとゼントSC430が迫っていた。

(隙を見せたら終わりだぜーーーーっ)

岩崎が猛プッシュ。

激しくプレッシャーをかけられるモチュール陣営。

若干ペースを乱され、このままだと確実に抜かれる。

 

 

 

 

その時鈴木が動く。

鈴木が無線でドライバーに通達する。

「この周でピットインだ。原田さんの出番だ」

「原田さん、行けるかい?」

「もちろん!」

 

 

 

 

 

 

メカニック達が一斉に動き出す。美世も動く。

メカニック達はタイヤやインパクトなどそれぞれ物を持ち、GT-Rのピットインに備える。

 

 

 

 

「おーっと?モチュールここでピットインか!?」

「後続のカルソニックが首位になった!」

「タイヤを交換してませんでしたからね……。ここで巻き返しを狙っているのかと」

モチュールGT-Rがピットインする間に岩崎のカルソニックGT-Rが首位になる。

 

 

 

 

 

「ジャッキ上げろ!」

「リアタイヤOK!」

「フロントよし!」

メカニック達のスピーディな作業の中で美世は素早くマシンに乗り込む。

新品のタイヤに履き替えられた赤いGT-Rがピットアウト。

首位を走る岩崎のカルソニックGT-Rを狙うべくコースインだ。

 

 

 

 

コースイン直後のタイヤは全く食いつかない。

レース専用のタイヤはグリップ力が市販品のタイヤに比べて遥かに高い。

その代わり構造の違いから寿命が非常に短い。

熱で表面のゴムを溶かしてグリップさせるという構造上どうしても長く使えない。またタイヤの温度管理が非常に難しく、最大限グリップを発揮出来る温度がシビア。

新品のタイヤになったためタイヤに熱を入れないと食いつかないのである。

 

 

 

 

しかし美世はそんな事気にしない。

一つ一つのコーナーで確実にタイヤに熱を入れていく。

首都高(ストリート)で積み上げた技術を駆使し、前のマシンを追う。

 

 

 

(来たか)

サイドミラーに見えた赤い車を見て岩崎はアクセルを踏む右足に力を込める。

近づく赤いGT-Rはたった今ゼントSC430を抜いてきた。2位に浮上したモチュールGT-Rが岩崎の背後に迫る。

 

 

 

「モチュールがっ!モチュールがカルソニックに迫るーーーーっ!!」

「原田の怒涛の追い上げでモチュールが2番手っ!岩崎のカルソニックGT-Rを射程圏内に捉えているーーーー!」

「今日の原田は乗れている!今日は何かが起こるレースになりそうだーーー!」

実況が会場全体を興奮させる。

 

 

 

 

 

 

(さすが岩崎さん……っ!簡単に前に出してくれない……)

岩崎のGT-Rに阻まれ美世は前に出られない。

首都高でも速く、そしてサーキットでも速い。「最速」は伊達ではない。

 

 

 

 

2台のGT-Rのバトルがモニターに映るモチュールのピット内。

全員が祈るような気持ちで見守っていた。

鈴木が無線で美世に指示を送る。

「原田さんの方がタイヤはいい。カルソニックの方がタイヤを酷使しているはずだ……」

カルソニックGT-RはモチュールGT-Rのピットインの前にタイヤ交換を行っている。

そして首位を狙うために猛プッシュをしていたのだ。

首位になった現在、さすがに抑えているとはいえタイヤは確実に消耗している。

「突破口を見つけてぶち抜くんだ。原田さんならやれる」

 

 

鈴木が今回美世をセカンドドライバーにしたのは理由があった。

美世は富士(ここ)を走った事がないわけではない。美世は休日にサーキットを走る事があるのだが、その中で富士も走った事がある。

今回の一番の理由が美世の調子だ。

前回のスポーツランドSUGOでは順位自体は振るわなかった物の、一時は1位を維持し続けていた。しかも1位になるまでの順位の上がり方も凄まじく1周に3台以上追い抜いた事もあった。

絶好調の美世に今回賭けたのである。

 

 

 

 

「……!?」

岩崎は軽い衝撃を受ける。

後ろの赤いGT-Rからリアバンパーを軽くつつかれたのだ。

ギリギリまでスリップストリームの効果を高めるための美世の行動だ。

スリップストリームしてる後ろの車にリアバンパーをつつかれるというレース人生で初めての経験である。

「なら、こっちもやるしかナイじゃん!」

 

 

 

コカコーラコーナーを立ち上がる2台。

カルソニックGT-Rはウェイトハンデを背負うためモチュールGT-Rに差を縮められる。

すぐ後ろに肉薄してるモチュールGT-Rを振り切るべく岩崎は100Rでの突っ込み勝負に出る。だが美世のGT-Rを100Rで引き離しても直後のヘアピンで追いつかれてしまう。

(ハンデがなきゃいいけどなっ)

 

 

 

 

もつれ合いながら2台はパナソニックコーナーに向かう。

テンションが極限まで高まった美世の意識が変わる。「ブレイク」だ。

 

 

 

「モチュールとカルソニックがっ、パナソニックコーナーへ突っ込む……うわーーっ!!」

 

 

「「「おおおおおおおっ」」」

観客がどよめく。

 

 

見えたのはカルソニックGT-Rよりも速く突っ込んでいくモチュールGT-Rとそうはさせないと言わんばかりにラインを締めて首位を守ろうとしたカルソニックGT-Rだった。

 

 


 

 

(行っけええ)

カルソニックGT-Rより速く美世のGT-Rがコーナーイン側に付こうと動く。

それに気づいた岩崎が美世のラインに被さるように動いた。

 

 


 

 

「2台がっ!すごい争いだーー!」

美世が若干無理をして高いスピードで突っ込む。岩崎のGT-Rよりも僅かに速くコーナーへ入った。オーバースピード気味にモチュールGT-Rは軽く(アウト)に流れる。

しかし美世は曲げた。モチュールGT-Rがインに入る。

「接触っ!!軽い接触がありながらも2台とも譲ろうとしない!!」

アウトにいた岩崎のカルソニックGT-Rが美世のGT-Rに軽く接触したのだ。

厳密には美世がアウトからインに入ろうとした岩崎とぶつかったのだが。

岩崎と美世は1位を取るべく全力で戦っている。

 

 

 

ホームストレートで轟音を轟かせつつカルソニックGT-Rの背後に迫るモチュールGT-R。

(決める!)

第1コーナーを目前にフルブレーキングする2台。

しかし美世のRは一瞬だけタイミングを遅らせて岩崎に並ぶ。

「ここで仕掛けるのかーー!!」

「並んだっ!!サイドバイサイドだ!!」

岩崎がイン、美世がアウト。

美世のGT-Rが岩崎のGT-Rに被さるようにアウトからインへ。

 

 

 

 

 

速い。岩崎が美世のRに抜かれた。

カルソニック陣営は大混乱に陥る。

 

 

 

 

「行ったあああああ!!34号車の原田が前に出たあああっ!!」

「岩崎の12号車をアウトから大胆にオーバーテイク!!あの状況で仕掛けるとは誰一人予想できませんでした!」

美世は一歩間違えたら自身がオーバーランしそうな状況だったのである。

しかもインの岩崎がコーナー侵入に圧倒的に有利だったのを覆すオーバーテイクだった。

スタンドから大歓声が上がる。

 

 

 

 


 

 

 

 

「……すげえ」

夢斗が漏らす。

「見てよかった?」

蓮が夢斗に聞く。

「もちろんッスよ。こーやってプロのレースを見れるなんてあんまりないっスから」

蓮が美世のレースを見ると夢斗に言ったら夢斗が食いついてきたため夢斗は蓮についてきてここに来た。

「小日向さんもあんな感じにレースするんスか?」

「僕は耐久レースだからああいった感じとはちょっと違うけどね。でも大体同じだと思ってる」

「レース自体時間が長いから注目されにくいけどね」

「へぇー……」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「モチュールGT-Rはカルソニックの猛追に耐えられるか!?」

ファイナルラップが近くなりモチュールのピット内に緊張感が漂う。

 

 

 

 

(さっきは驚かされた。けど、こちらだって度肝を抜く技はある)

岩崎は再び前に出るべくアクションを起こす。

 

 

 

「カルソニックが飛び込んできた!」

ダンロップコーナーに青いGT-Rが突っ込む。タイヤをギリギリまで使ってのブレーキング勝負。

(う……わっ)

美世は思わず後退してしまう。

マージンを限界まで削って攻める岩崎は再び美世の前に出る。

「岩崎が、岩崎が再び首位に返り咲いた!」

「カルソニックが1位!モチュールは再び首位に戻れるか!?」

 

 

 

 

 

(やっばーーーーー)

美世の前を再び走っている岩崎のGT-R。

(次がファイナルラップ)

(どうする!?このままじゃっ)

混乱して思考が止まりかけてる美世。

しかしギリギリ残った集中力である事に気づく。

(リアタイヤが終わってる)

カルソニックGT-Rはリアタイヤのグリップが残っていなかった。先程から僅かにリアタイヤがスライドするのを美世は見ている。

何より岩崎は美世よりも長く走行している。集中力が切れていてもおかしくない。

(やるしかないでしょ!!絶対勝ちに行く!!)

 

 

 

「ファイナルラップ突入!!勝つのはカルソニックかそれともモチュールか!?」

会場全体のテンションが最高潮に達する。

 

 

 

(タイヤが……!いいぜやってやる!!)

リアタイヤの消耗に苦しみながら走行する岩崎。

(絶対前に出る!!)

僅かな集中力で前のGT-Rを仕留めようと狙う美世。

 

 

 

 

 

「くぅ!!」

美世はインについてブロックするカルソニックGT-Rの前に出られない。

100Rを抜けてヘアピン。2台はラインを綺麗に立ち上がる。

 

 

 

「どうするっ!!」

美世は本当に後がない状況に飲み込まれそうになっていた。

相手は首都高最速の岩崎。あっさり自滅するような事は望めない。

その時不意に美世の脳内に内藤の言葉が浮かんだ……。

 

 

 

 

 

ダンロップコーナーからネッツコーナー。

軽くブレーキを踏みながら曲がって最終コーナーのパナソニックコーナーへ。

岩崎のGT-Rがブレーキを踏んだ瞬間だった。

 

 

 

 

「なにっ!?」

岩崎が右を向いた。見えたのは赤いボディ。

美世が最後の最後に突っ込み勝負に出たのだ。

(お願いっ!!)

岩崎のある動きに賭けた美世の作戦。

それは……。

 

 

 

 

 

「しまったーーーーーーーっ」

岩崎のGT-Rのリアタイヤがブレイクし縁石から車体半分がはみ出てしまう。

失速した岩崎のGT-Rの前を赤いGT-Rの丸いテールランプが通り過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

美世の脳内に浮かんだ内藤の言葉。

「相手は必ず油断する瞬間がある。それを突いて前へ出ろ」

初めて美世が首都高でバトルした帰りに内藤が言った言葉。

その時は「そうですか」と終わっていたが、今になって考えてみると内藤の走り方を表している言葉。

「追撃のテイルガンナー」と呼ばれた彼の走りは旧型の(FC3S)で最新の車をチギる走り。

それは油断した相手を後ろからぶち抜く事だ。スリップストリームで相手の後ろに張り付き、キメる。

美世は土壇場でこの言葉を思い出しイチかバチかで岩崎のミスを誘ったのだ。

 

 

 

美世の目論見通り岩崎はミスして体勢を崩す。

美世は失速する青いGT-Rをぶち抜いていく。

 

 

 

「赤いGT-Rが!!モチュールが大逆転して優勝だーーーー!!」

赤いGT-Rがゴールラインを超えた瞬間会場中が大歓声を上げる。

 

 

 

 

「原田さんおめでとう!!」

「え……?あたしが勝ったの……?」

未だに信じられない様子の美世。

しかしやっと結果を認識できると体の内側から感情が溢れ出した。

「ーーーーーやったあっ!!」

 

 

 

 

スーパーGT第6戦リザルト 

エントラント:NISMO

マシン:MOTUL AUTECHGT-R

予選:4位

決勝:1位

(58ポイント、総合ランキング3位)

 

 

 

 

 

表彰台の真ん中に立つ美世。

こういったレースで表彰台の真ん中に立つ経験は初めてではない。カートをやってた時に優勝経験があるからだ。

しかし憧れの舞台で優勝できた喜びは格別。

 

 

 

 

 

「美世さん……良かったですね」

喜びが溢れる美世を見て嬉しそうにする蓮。

「夢斗君?」

夢斗は何かを考えてるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表彰式終了後。

撤収作業をしてる美世の前に岩崎が。

「おめでとう、原田さん」

「ありがとうございます、岩崎さん」

「俺もまだまだみたいだ」

「そんな事ないですよ。あの状況での突っ込みはあたしにはできませんでした」

「……次は負けない」

「あたしもです」

 

 

「そういえば……車はどうだい」

言うまでもなくあの蒼いR34GT-Rの事。

「ボディ修復が終わってエンジンのセッティングをしてる途中です」

「そうか……」

「あと一つ……言っておきたくて」

「なんだい?」

「『ケリつけろよ』って言ってました」

「もちろんさ……。もう俺は迷わない」

 

 

 

 

 

 

帰り道。

夢斗はレースの光景を思い出していた。

(プロ……。思い切り競い合える舞台か……)

美世のレースは夢斗に残す物があった。

 

 

 

 

 

 

 

美世は岩崎との激闘の末、悲願の初優勝。

同時に岩崎とのもう一つの戦いも迫っている事も感じていた。

 




岩崎を下し初優勝を飾った美世。
美世の姿は夢斗を動かした。





ネタ解説です。
・タイヤ無交換作戦
これは当時スーパーGTに参加していたRE雨宮(クラスはGT300)が行った作戦。2009年ではタイヤ無交換作戦というギャンブルを行い、開幕戦岡山から第4戦セパンまで、4戦連続表彰台という大偉業を成し遂げました。これがあまりにもすごかったため他のチームも行った程。
・実況の内容
今回の実況は年度関係なくネタが出てます。気になった方はスーパーGTをチェック!



やっと行事がある程度片付いた……。お待たせしまい申し訳ありません。
それと次回はバンドリから登場する人物あり。苦手な方は注意。





次回、「夢」とはなにか。
憧れか、目指すモノか。それとも思い描く未来か。
「夢」を追いかける者達の明日は。
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