アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
一方夢斗は……。
STAGE31 目覚めの紅
9月の最後の日。
蒼いR34が首都高へ。シートに座るのは美世だ。
岩崎に引き渡す前の最終調整をしている所だ。
(乗れば乗るほど魅せられていくのがわかる)
美世が岩崎のR34を運転するのは今回が初めてではない。
しかしその度に感じる高揚感。自分が車とシンクロするのがわかる。
自分の思いのままに動く。それが当たり前。
岩崎のR34の動きは限りなく自分そのものと言えるような正確性を持った動き。
(4速へーーー)
シフトチェンジしてもその加速は一瞬たりとも途切れない。
いつまでも加速していくような感覚。
回転数という縛りがなければどこまでも回るだろう。
「おっ、やる気?」
いつの間にかS2000がR34の後ろにいた。
ゆっくりとアクセルを踏み込んでいきR34はS2000を離していく。
S2000も追いつこうとするが差は歴然。
(こんなにすごい車は負けない……。こういう車があたしの理想)
S2000はバックミラーから消えた。
(でも……この車は……。あたしの車じゃない)
そう、この
「大丈夫……問題ないかな」
高木が仕上げたボディは問題ないようだ。とはいえ少しでも不安があればダメだ。そういう車に美世はしたくなかった。
そのためR34の心臓部であるRB26のセッティングを変更。最大1200馬力出るセッティングから大きくパワーを落として最大800馬力にまで下げた。
その分あらゆるステージで最大限のパフォーマンスを発揮しやすくなった。
また、美世が新たに投入した新パーツによりレスポンスなどを改善。
全盛期の時よりも速くなっているかもしれないのだ。
「迫れるかな。この車に」
最近ずっとそんな事を考えている。自分で仕上げた車が今度は敵になる。
憧れでもあり敵でもある車。複雑な気持ちを抱きながら美世はRを走らせる。
その後再び自分のRに乗って岩崎のRに近づくために走る。
同じアプローチでも結果はまるで違う。
(どうしたらいい?)
踏めない。迷いが大きくなっていく。
帰宅後。
無意識に自分のRを見ると……。
「なんか変わった……?」
気のせいか紅色が微妙に変わったように見える。
「気のせいだよね」
翌日。
美世は部屋のカレンダーをめくる。
10月になった。そして今日は岩崎にGT-Rを引き渡す日だ。
準備をして待ち合わせ場所の辰巳PAへ向かう。
冷え込んできた東京の朝の中を蒼いGT-Rは走る。
待ち合わせ場所に着いた美世。
「あれ?あのR32って……」
紫色のR32GT-Rが止まっていた。とりあえずRをR32の隣に停める。
R32から降りてきた人物。
「岩崎さん!藤巻さんも!」
藤巻もいることに驚く美世。
「原田さんすごいな……。本当に直してみせた」
藤巻は美世の仕上げた岩崎のRを見て言う。
藤巻を感心させるほどの美世の仕上げ方。これまで数々のGT-Rを仕上げた藤巻がここまでレベルの高い仕上がりになったGT-Rを見るのは初めてだった。
「岩崎、乗ってみたらどうだ」
「ちょうど俺も乗ってみたいって思ってた」
「原田さん、教えてほしい」
PAを出発する2台のGT-R。
先に出てきたのは「迅帝」と呼ばれ首都高最速と呼ばれた蒼いR34。続いて迅帝以前の首都高最速だった「パープルメテオ」のR32。
伝説のGT-Rが再び首都高へ戻ってきた。
「だいぶパワー落とした?」
「はい。ボディの負担を考慮して800馬力に」
「NOSはそのままで。フルショットで920馬力は出るかと」
「パワーが落ちたって事を感じないな……。寧ろ扱いやすい。どんな状況でも踏めるって思うな」
「ありがとうございます」
岩崎に感想を言われて喜ぶ美世。
憧れのマシンを自分の手で修復し、持ち主の岩崎に絶賛された事が美世は嬉しかった。
2台は湾岸線へ。
多摩川トンネルからフルスロットルでRはカッ飛んでいく。
「足も悪くない……。これならドッグファイトで武器になる」
(すごい)
美世は岩崎の技術に驚いていた。
美世にチューンされたR34を少し乗っただけでもう乗りこなしている。
セッティングなども全部変わっているのにソレを気にする様子は見られない。
「原田さん、ありがとう。俺のワガママを聞いてもらって」
「いいんですよ。何より……この車はあたしにとって特別な存在ですから」
岩崎と別れた後は藤巻に送ってもらい家に帰った美世。しかし帰ってきても岩崎の運転のインパクトが強く残っていた。
翌日、283プロへ向かう銀色のエボⅩ。
「なんだ?遥が呼び出すなんて初めてだぞ」
朝早くに電話がかかってきて283プロへ来て欲しいと言われ、朝食を素早く食べて来た夢斗。
283プロに到着。
「あ!夢斗さん!」
「お、果穂。ゴーバスターズ見てるか?」
「はい!この間はギャバンがすごかったです!あのっ、ところでギャバンってなんですか?」
「今から30年前だからな……知らないのも当然か。俺も生まれてないし」
特撮談義をしつつ、部屋へ。
「うーっす。遥いるか?」
「あ、夢斗君だ!プロデューサーは今はづきさんと話してるからまだ戻ってこないよ」
めぐるが出迎える。
「めちゃくちゃ暇だわ。めぐるー、遊ばね?」
「いいね!何やるの!?」
「……とにかく遊ぼうぜ(無計画)」
この後夢斗は果穂とめぐると色んな遊びをして時間を潰した。
「すみません、待ちました?」
遥が戻ってきた。遥が部屋を見ると3人が
「プロデューサー!夢斗君がズルいよー!」
「ちゃんとした戦法だわ」
「夢斗さん強いです!!」
「……もう少し手加減したらどうですか」
「ムリ」
たとえ遊びでも手を抜かない男、それが夢斗。
「んで話ってなによ」
「夢斗に頼みたい事があって……。11月にあるアイドルフェスタのお手伝いを頼みたくて」
「裏方の仕事ってやつかい?やるけど」
「ありがとうございます!」
遥の頼みを引き受ける夢斗。
「夢斗さんっていい人ですよね!」
「そうですね……。誰にでも一定で。ある意味一番親しみやすい人だと思います」
果穂の言葉に共感する遥。
誰にでも同じ態度。よく言えば「フラット」。悪く言えば「無礼」。
283プロからの帰り道。
夢斗はゲーセンに寄る。趣味の太鼓の達人をやるために。
「ん?あれって……」
夢斗が見たのは太鼓を叩いてる1人の少女。夢斗も知っているアイドルだ。
「やるか」
「もう1回だけ……ひゃっ!?」
「わり、一緒にやらせてくれ。智絵里がどんだけやれるか気になってさ」
緒方智絵里だ。彼女は太鼓の達人で凄腕のドンだーだとファンに知られてる。
バラエティ番組の企画で太鼓の達人で勝負する企画の際、大会に出たような実力者にも勝っている程の腕前。
「よし……!」
「んじゃ、俺も本気でやる」
2人が選んだのは「エンジェルドリーム」。
難易度はおにの裏。通称「裏鬼」と呼ばれる難易度。
「天使が降りてきたら」
「羽わけてもらおう」
2人は真剣な表情でバチを動かす。
周りに少しずつ人が集まる。しかし2人は目もくれずに譜面を捌いていく。
「さぁーー!」
サビに入り2人のバチの動きが変わる。素人から見ればとんでもない動き。
「「同じ夢の色たどりつけるから〜」」
気がついたら歌っていた。歌いながら最後までやりきった。
結果は2人ともフルコンボ。
「やった……!!」
「上手いなー。さすがガチ勢」
全良を達成した2人。
そんな2人に近づく男達。
「智絵里ちゃん上手いね〜。今度は俺とやってほしい」
「あ、あの……」
「いいからいいから。さ、やろう」
無理やり智絵里を引っ張ろうとする男。だが。
「がっ……!?何しやがる!!」
夢斗が男を蹴っ飛ばしたのだ。
「あのな……お前ら智絵里の事をなんだと思ってんの?自分とやってる事が同じだからって好き勝手やるって違うだろうが。常識勉強し直せガイジ」
「この野郎……!!」
夢斗に殴りかかるが逆に夢斗の重い一撃をモロに食らう。
「一応智絵里を助けるため、っていう名目だ。たとえ俺を殺っても智絵里が証人になるからテメーは捕まるだろうな。あくまで俺は正当防衛っていう認識だ」
「智絵里、逃げるぞ」
「わわっ……」
2人は店を飛び出して逃げた。
「悪いな、怖い思いさせて」
「大丈夫です……。えと、夢斗さんですよね」
「ああ。そっか、智絵里は俺と直接会ったことなかったな」
智絵里は夢斗の事を「ピンキーキュート」のメンバーの卯月と美穂から聞いてたが直接の面識はなかった。
「夢斗さんってなんで初めて会う私にこんなに優しくしてくれるんですか」
智絵里は聞く。襲われかけた際に夢斗が男達から智絵里を助けた。もし夢斗が助けていなかったら今頃智絵里はどうなっていたかわからない。
「優しくっつーよりはあん時は単純にやべえって思ったからな。一応俺もアイドルに関係してるし見過ごす訳にはいかなかった」
「優しいは違うと思う。俺はやる事をやっただけだって思ってる。周りからもみくちゃにされるほど怖いモンはないし。しかもそれが見知らぬ人でも自分のファンでさ」
「でも守るべきラインを守れてねえのはファン失格じゃねーかって。浩一の姿勢を見習うべきだっての」
ファンでもモラルを守らなければならない。ソレを守れないのはファンどころか社会的にも失格だ。
「夢斗さんは誰かを頼るってできるんですか?」
智絵里が夢斗に尋ねる。
「……昔の俺はそうじゃなかった。俺は周りから疎まれてさ。みんなから突き放されてた。裏切られたり見捨てられたりとよくあったよ」
「でも、俺は1人になっていることで周りからの助けに気が付かなかった。夕美達に教えてもらわなかったら今でも俺は1人で生きていこうとしたと思う」
夢斗と周りの違いが生んだ深い溝。
それを埋めたのが夢斗が嫌っていた「周り」。
「智絵里は小日向さんとか頼んないのか?」
「頼ります。けど……どうやって声をかけたらいいのかわからなくて」
「とにかく声を自分からかけないと変わんない。小日向さんなら話をちゃんと聞いてくれるだろうしさ」
やがて夢斗は智絵里を346プロまで送った。
去り際に智絵里は言う。
「今日はありがとうございました。……なんだか夢斗さんの話が心に残って」
「困ったら周りに聞く。これ一番大事な」
「はいっ」
「あと、楽しかったぜ。また一緒にやろうな」
「誰かを頼る……昔の俺はそんな事しようともしなかったな」
智絵里に見た過去の自分。
自分みたいな体験を繰り返させないために夢斗は他人のために生きる。
翌日。
美穂のFCが美世を迎えに来ていた。
美世のRが点検のために藤巻の元に置いてあるため美穂がわざわざ迎えに来たのだ。
「ごめんねー、あたしの車点検しててさ」
「大丈夫です!それに私のななさんのこともあるし」
346プロへ到着。
美世が仕事の準備をしていると珍しい人物がいた。
「あれ、歌織ちゃん?」
「美世ちゃん!」
765プロのアイドル桜守歌織だ。彼女が悪魔のZと共に走ってきた「ブラックバード」を駆る。なおブラックバードという名だが銀色だ。
彼女自身は現在首都高を走ってない。どうやら父といろいろあったらしい。
「貴音ちゃんがまた誰か狙ってるの?」
「ええ。黒い車を」
「あー……」
美世は誰かわかった。ちなみに美世も彼女とは面識がある。
「……そーいや歌織ちゃんはなんでいるの?」
「お仕事の打ち合わせで。亜季ちゃんと一緒に」
彼女は今週末の自衛隊基地訪問ライブに出る。大和亜季と合同でやるらしい。
夕方。
346プロ女子寮ではいつものような光景が。
「美穂ちゃーん」
「響子ちゃん?」
「味見お願いします!」
響子特製カレーの味見を頼まれる。
「もう少し濃い方が私は好きかな?でもみんなが食べるならこのくらいがいいかな」
「なるほどっ!ありがとう美穂ちゃん!」
「……私普通ではなくなってるのかな」
美穂はふとそんな事を思った。
普通の女の子と自分で思ってたがよくよく考えてみるとおかしい。
まず自分のやってる事。「アイドル」という非日常的な体験。自分はそれに憧れた。それはまだいい。
次に車。これが一番の問題。普通に公道を走るならまずいらない程の高性能車。しかもそれで首都高を走る。
何やってんだろう……と美穂は思った。
変化が起こる夢斗達。近づく決戦。
首都高ランナー達はまた明日を迎える。
返還されたR34。岩崎はこのRで戦うべき相手と戦う。
一方美世のRに変化が……?
ネタ解説です。
・Rのチューン内容
大幅なパワーダウンが行われた岩崎のR34。文中では「ボディ保護のため」となってますが、メタ的な理由では「1000馬力オーバーは差が大きすぎる」という事からです……。
・パープルメテオ
岩崎の師匠であり、かつて首都高最速であった「藤巻直樹」ことパープルメテオ。今回愛機R32と共に登場。
愛機R32はガレージザウルスのR32がモチーフです。
・「ギャバンってなんですか?」
2012年2月26日から2013年2月10日まで放送された「特命戦隊ゴーバスターズ」。その31話と32話で映画「宇宙刑事ギャバン THEMOVIE」とのコラボがありました。
「宇宙刑事ギャバン」が1982年に放送されて2012年当時で30年が経過しています。そのため果穂ちゃんはギャバン自体を知らなかったのです。夢斗はメタルヒーローも知ってますが。
・緒方智絵里と太鼓の達人
緒方智絵里役の大空直美さんは太鼓の達人プレイヤーとして有名。それが反映されてか智絵里もアニメ版シンデレラガールズで太鼓の達人をプレイするシーンがあります。
彼女と夢斗がプレイした「エンジェルドリーム」はデレステでもカバーされています。そのメンバーの中に智絵里もいます。ぜひやろう(宣伝)
・桜守歌織登場
前作「疾走のR」では準主人公だった歌織。ここでは走りません。
理由は去年の出来事が関係している模様……。
私事ですが今月末に東京モーターショーに行ってきます。モーターショー初めてなので楽しんできます。
次回、夢斗の速さの秘密が明らかに!?
常人では理解不能な夢斗の能力が明かされる!