アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
天才の走りの秘密とは!?
10月のある日。
夢斗は蓮と話していた。
「小日向さんってなんでFDが好きなんスか?」
「他とは違うエンジンだから、かな。レシプロはよく見るし。今ロータリーはほとんどないからね」
「小日向さんFDの運転上手いっすもん。FDはピーキーだって浩一が言ってたけど小日向さんってソレ感じるんすか?」
「あるな〜。早めにカウンター当てないとスピンしたりとかあるし」
「逆に聞いてもいい?夢斗君はエボを乗りにくいって感じた事はあるかい?」
「ないっすね」
「即答かー。僕は四駆に乗った事はないから比較できないけど……。エボを上手く運転するコツってあるのかな?」
すると夢斗の答えが返ってきた。
「コツ?ないっすね。そもそも動きが『見える』んで」
「……!?どういう意味?」
「んー……。自分でも説明しにくいっす」
「俺もよくわかんないけど、色んな所の動きがなんとなくわかるんすよ。例えばこれ以上ステアリング切ったらスピンするとか。あのラインまでなら踏めるとか。そういうのが目で見えるんす」
夢斗の話した事に唖然とする蓮。
「いつの間にかそういうのができる……いや違う。わかるようになったっす」
夢斗が幼かった頃。まだ奏夢が生きていた時の事だ。
夢斗は物の動きを捉える事に長けていた。それはもはや未来予知の領域と言えた程。
だが、信じて貰えなかった。「アニメの見すぎ」と言われた。
しかし夢斗の言うことを聞かないと本当にその通りになった。それはそれで気味悪がられる。
奏夢はそんな夢斗を理解できた数少ない存在。
夢斗の「ソレ」は今は視覚的に車の限界がわかるというモノ。夢斗の視界にはリアルタイムに車の状態が見えている。タイヤの切れ角やタイヤのグリップが耐えられる限界などが。
夢斗が何らかの操作を行えば見えている情報もその度に変化する。
その「見える」ライン以内だったらどんなコントロールもしてみせる夢斗。
周囲から見たら明らかなオーバースピードでも曲がる。
何故そんな事が可能かは夢斗本人もわからない。しかしこれがあるからこそ夢斗の走りは成り立っている。
以前に友也が夢斗のエボの足回りの極端な硬さを指摘した事があるのだがその際の友也の指摘はある程度当たっている。
「夢斗の反応速度に合わせる」という推測を立てた友也だがその推測にはひとつ足りない物があった。
それは夢斗の限界領域を上げるための方法という事だった。
夢斗のドライビングに純正の足では全く追従できなかった。その結果試行錯誤しながら乗った結果足回りの硬さを変える事で一応の解決にはなった。しかしそれでもエボが夢斗の足を引っ張った。
何もかもが夢斗の求めるモノに足りなかったのだ。
咲耶と初めてバトルした際に咲耶のエボⅨについて行く事ができたのは夢斗の技量が大きい。もしも浩一がエボⅩを運転していたらそもそも勝負になってないだろう。
そんな「未完成」のエボⅩで「完成」したエボⅨを追えたのが奇跡だ。
最終的に夢斗のエボがスピンしたのは「慣れ」も大きいがその際の状況も関係してる。
その時夢斗は初めて首都高を走った。
それこそミスせずに走れたら1人前の首都高でいきなりのバトル。夢斗でなくともむちゃくちゃの一言。
そして「動揺」だ。咲耶のエボⅨを抜こうとした際、ブラインドコーナーであったためコーナーの向こうが見えなかった。驚いた夢斗が回避しようとした時にコントロール可能な「ライン」をオーバーしたのだ。
この物語を読んでいるあなたもイメージしてみよう。
綱渡りをやっていて「自分は落ちない」と言っている人を例にしてみよう。
その人は一定の条件の中でやっているとする。
「観客が静かにじっと見ている」という条件でイメージして頂きたい。その人がミスしない理由が見つけられるだろうか。
観客は静かだ。だが、観客がおんぶしていた赤ちゃんが泣き出してうるさくなると考えたらどうか。
綱渡りしている彼は赤ちゃんを泣き止ませようと動く親、赤ちゃんの泣き声などが意識に入ってくる。
あなたも作業中にうるさくされて気が散るなど体験した事があるだろう。
彼はその結果綱渡りを失敗したとする。
赤ちゃんの泣き声などという「想定外の事」に調子を乱されたというのが彼の失敗理由。
話を戻すと夢斗がスピンした理由の中には「外部要因による動揺」がある。
例えずば抜けた技術を持った夢斗でもミスだってする。
天才だって普通の人間だ。
咲耶とのバトル後、大阪に向かいエボⅩをアップデートした夢斗。
大きく姿を変えたエボⅩの大きな変更点は足回りだ。
以前の足回りから変更した結果、エアロ装着で新たに得たダウンフォースと合わさって超高速コーナリングが可能となった。
その旋回速度は首都高ランナー御用達のコーナリングマシンであるFD3Sすら置いていく。
しかしその分操縦難易度は高くなり、並のドライバーではエボⅩを曲げられない。乗るドライバーが夢斗だけだというのもあってほぼデメリットになっていないのだが。
性能が向上したエボⅩは夢斗の求めていた基準に達した。
特に限界がさらに引き上げられたのもあってそれまで以上に夢斗の走りにキレが増した。その結果、蓮のFDや咲耶のエボⅨと互角の勝負ができるようになった。
「こうやって聞くと夢斗君はすごいなって」
「聞き慣れてますよ、そういう事」
夢斗の話した事に衝撃を受けたが、ソレを夢斗の強さと認めた蓮。
「そうだ、僕のFDに乗ってみてくれないかな?夢斗君の技術がエボ以外でも通用するのか知りたくて」
「あー、イイですけど。浩一にFD乗せて貰えなくてFDってどんな感じか知りたかったんスよ」
蓮は自身のFDを夢斗に運転させて首都高へ上がる。
「ロータリーってすっげー!!」
蓮のFDを運転している夢斗の感想。
レシプロエンジンとは構造が根本的に異なるロータリーエンジン特有のフィーリング。滑らかな加速でスピードを上げるFDに夢斗は感動する。
「慣れてしまえばスゴい楽しいっス」
「でしょ?峠走ってたから走らせるのが楽しくてね」
軽快にC1エリアを走るFD。夢斗の運転するFDは蓮の運転と少し異なる動きはあれども基本的な動きは全く同じ動きをしている。
「そういえば……夢斗君は車の限界が見えるって言ったけどどうやってそれを処理しているの?」
気になっていた事を聞く蓮。
リアルタイムに情報が見えるという事は当然それらを処理しつつ車の操作を行っているわけであり、夢斗はそんな中でどんな運転をしているのかが引っかかっていた蓮。
「俺はふっつーに運転してるだけッスね。運転してると見える物がどんどん変わっていくからそれを解決できる動きをヤるだけで。っていう事を浩一に言ったら『んな事できるか』って言われて」
ちょっと前に夢斗に蓮と同じような事を質問した浩一。
夢斗からの返答は大体蓮が聞いた事と同じなので省く。
「情報ね……」
夢斗はリアルタイムに情報を処理しつつ車の操作を行う事を聞いた浩一。
「んじゃ、体験してみるか?俺の見えてる物」
「へ?」
そんな浩一に夢斗が用意したのはニンテンドーDS。初期型のモノだ。
「今から浩一はDSで脳トレやってもらう」
「脳トレ懐かしー」
脳トレを始めた浩一。
「んで、コレやれ」
今度はPS3のグ○ンツーリスモ5を浩一にやらせる。
夢斗がセットしていたコースはニュルブルクリンク24h。浩一だけで走るタイムアタックだ。
使う車はロータリーエンジンのチューニングで有名な「RE雨宮」のチューンドカーである「雨宮μ過給圧上昇7」。
一般のユーザーでも作れるような仕様ながら筑波サーキット59秒台を記録したチューンドカーだ。
夢斗のルールで車は一切セッティングを変えていない。要するに吊るしだ。
「なあ、コレ意味あるの」
「まだコレウォーミングアップだぞ」
車の動きを確認するため浩一はコースを2周した。しかし特に変わった事は今の所やっていない。
「っつーわけでホイ」
「おい、今やってるだろが」
夢斗がハンコンを握る浩一にDSを渡す。当然できるわけがない。
「無理だっつてんだろ!?」
「あー、わかったよ!んじゃ俺が問題言うから解きながら走れ!」
夢斗がDSを持ち、浩一に問題を言っていく。
「問題!俺が今から読み上げる文をひらがなで表すと何文字になるか言え!」
「『都会に疲れて田舎暮らしを始める』!」
「は!?えーとっ、19!!」
「当たり!次っ『為せば成る為さねば成らぬ何事も』!」
「えっと、17!?」
「当たり!次はーーー」
「おい、ホント意味あんの!?」
「あるからやってんの。今のでダメとか次やれんぞ。これからが本番だわ」
夢斗がコースはそのままにマシンを変更。選ばれたのは……。
「おい待てや!」
夢斗が選んだ車は「TVR」の「サーブラウスピード12」。
この車は最大出力811馬力、そして車重はなんと1020kgというモンスターマシン。実車は装備は最小限に留まりABSすらも装備されていない。あまりの危険度から市販が不可能と判断されて発売が中止される程の車だった。
そんなモンスターマシンを走らせるのはニュルブルクリンクという世界最大のサーキット。
「あと、こうな」
夢斗はコースの天候を豪雨に設定。ただでさえコントロールが困難なじゃじゃ馬を雨の中で走らせるという超高難易度。
しかも夢斗のルールでタイヤはレーシングタイヤに設定される。レインタイヤなしでの雨の中の走りは困難を極める。
「んで、3位以内に入れなかったら罰ゲームな」
レースだ。
「もちろん問題も解きながら。今度は自分で持ってな」
DSを渡された浩一。
「間違ったらケツバットな」
「理不尽」
たった1周。
車はアシスト一切なしで運転する。晴れの日でも手を焼くようなモンスターマシン。
そして多数の情報を処理しながらのレース。どう考えても無理ゲー。
「無理じゃボケ」
浩一は7位でレースを終えた。14台中7位。
「はーいんじゃ罰ゲーム」
夢斗は浩一の後ろに立ち……。
「ライダーキック」
ドゴオッ
「ああああああああああああ」
浩一の名誉のために言っておくと浩一は夢斗から出された問題は全問正解。
情報処理はなんとかなったが、やはり車が大きい。ブレーキング時のミスなど重大なミスを3回した。それでもある程度順位を上げた浩一は評価できる。
「お前やれや」
「おう」
今度は夢斗が全く同じ条件でやる。
約10分後。
「どうなってやがる」
夢斗はしっかりと1位を取った。夢斗は全くミスをせずにスピード12を走らせたのだ。
「んで、どういう事だ」
「脳トレは情報処理。実際俺の頭は脳トレ以上の膨大な情報が常にあるんだ。脳トレで根をあげたらお前が俺になったらお前脳みそパンクするぞ」
情報処理。リアルタイムに変化し続ける車の状態を判断して車のコントロールの限界に迫る夢斗。
「スピード12は車の動き。頭の中で情報をチンタラ捌いていたら車の操作が疎かになるだろ」
夢斗の言う通り問題を考えていたらもう次のコーナーが目の前に迫り、慌てて操作していた浩一。それが理由でブレーキングミスもあった。
化け物を制御しつつ必要な事を選んで実行する。言葉にしても普通ではない。
「んでまとめると?」
「必要なのは情報処理能力と空間認識能力。あとは俺でしかできねえよ」
「ざっくりすぎだろ」
「すげえ量の情報を一瞬で処理しながら車を狂いなくコントロール。ちょっとでも気を抜くと破錠」
夢斗のその能力をまとめると「車の限界などが視覚的に見えている」。
その分相当なレベルの情報処理能力や空間認識能力が要求されるため、夢斗だから可能なのだ。
また、他車の動きも見えている。以前友也の運転するハチロクの動きを見てアレンジを加えたり咲耶のエボを避ける事ができたのもこの能力があってできた事だ。
「それは浩一君が無理って言うよ」
「俺にとっては普通なんで」
夢斗はFDを自由自在に動かせるまでになっていた。短期間であっという間にFDの特性を掴んだのである。
「おもしれー……」
口から出た夢斗の言葉。今まで感じたことのない楽しさ。
FDならではの楽しさが夢斗を刺激する。
(楽しー)
「FD楽しーッスね。俺じゃ小日向さんの運転に届かねーっス」
「初めてであれだけできれば全然大丈夫だよ。すごいな、夢斗君」
夢斗の意識に飛び込んだFDの走り。エボとは違う感じが夢斗を満たした。
「るんってする!」
夢斗のドラテクに関わっていた能力。そして「それ」を理解する蓮。
エボとはまた違うFDに乗った夢斗は何を思ったのか?
夢斗の速さの秘密。
それは限界が目でわかると言う物だった。それを強さと見る蓮。
そして蓮のFDを運転した夢斗は……?
ネタ解説です。
・浩一が使った車
「雨宮μ過給圧上昇7」は浩一のFDのモデルになった車です。詳細は本文にあるので省略。
「サーブラウスピード12」はグランツーリスモ2での初登場時点では「じゃじゃ馬」を軽ーく通り過ぎたとんでもない化け物マシンで、まともに走らせることはほぼ不可能でした。
その反面プレゼントカーとしては最高額の売却額(5000万Crだっけ?)を誇り、お金不足を助けました。
ここで登場するのはGT3以降の仕様。余談ですがGT2ではコンセプト仕様が収録されてました。
・「すげえ量の情報を一瞬で処理しながら車を狂いなくコントロール」
夢斗の速さの秘密。情報が見えていてリアルタイムに変わるそれを処理して走ると言う物。
簡単に説明すると「ガンダムW」のゼロシステムや「鉄血のオルフェンズ」の阿頼耶識システムみたいな物が夢斗の視界に常にある、って感じ。そのため、「情報を処理できないと……脳が壊れる」by夢斗
ロボットアニメでありがちな「脳に情報が送られる」ってどんな感じだろう?怖くて体験したくないですけど。
あと夢斗の紹介を少し加筆しました。
次回、『ライバル』に乗る夢斗。
技術が全ての車を夢斗はどう操る!?