アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
夢斗はどう乗りこなすか?
ここは都内某所のビルの会議室。
夢斗は以前遥に依頼されたアイドルフェスタのお手伝いのために遥に同行していた。
「すっげー真剣ッスね」
「私語はなしでお願いします」
夢斗が周りを見渡すと関係者達が見える。どう見ても偉い人もいる。
「小日向さんも真剣だなー」
「……はい、こちらで手配しますので。……お願いします」
1年前に似た会議に出席した蓮。あの時は武内Pといたが今日は自分1人。
「瀬戸さん、ユニットはどうするんですか?」
「ユニットは5つ。全員出します」
遥を見ているとまだ新米だった時の自分を思い出す蓮。1年前の事が懐かしく思える。
「赤羽根さんは?」
「もちろん全員だ」
研修のためにハリウッドに行ってきたという赤羽根P。
天海春香など超有名アイドルをプロデュースしているだけあってベテランの風格を見せる。
「あざーっす」
「タメ口しない!」
「ええー」
「ええーじゃなく……!」
「瀬戸さんも大変だね……(笑)」
「夢斗君を手伝わせるならそれ相応のメンタルがいるよ……」
会議後……。
「もう……」
「わりー、楽しかった(笑)」
げっそりした遥とは対照的にキラキラして出てきた夢斗。
夢斗への注意で疲れ果てている遥。一方、会議の様子が面白かったらしく「るんっ」と来たらしい夢斗。
「帰り運転してください」
「お、了解」
「えっ」
夢斗があっさり受け入れた事にびっくりする遥。てっきり「やだ」と言うと思っていた。
「インプ運転してみてえし」
夢斗の意外な発言。
夢斗と遥はWRCを共に争った三菱とスバルのファン。ミツビリストとスバリストという関係。
そんな夢斗がライバル車インプレッサに乗るのだ。
正午。
昼間の首都高を走る一般車はピークの時間帯よりは少ない。
副都心エリア3号渋谷線。
高樹町付近のストレートをフル加速で走る青いインプレッサ。
「セッティングがすごいドンピシャだ……。ちょっと気になるとこあるけど……。走らせてて楽しい」
夢斗をしてこう言わせる遥のセッティング。特に足回りがよく出来ている。
「足回りは妥協しませんからね」
自信満々に言う遥。彼女の言葉に嘘はない。父にアドバイスを受けながら仕上げた遥の仕上げ方はほぼ完璧。夢斗の操縦に追従できている。
裏を返せば普通の人のセッティングで夢斗の操縦を追えるのが驚異的なのだ。
夢斗がセッティングすれば恐ろしくピーキーで普通の人は乗りこなせないじゃじゃ馬になる。
だが遥のセッティングは普通の人でも扱え、そして夢斗のドライビングにも対応できるのだ。
夢斗が絶賛する足回り。遥のインプレッサは夢斗の意思を形にする。
「そーいやこれってなんだ?」
「ちょっ、いじらないでください!」
DCCDを知らない人のために説明しよう。
そもそも4WD車にはフロントタイヤとリアタイヤの回転差を解消するためのセンターデフと言う物が装備されている。
スバルはこれに差動制限力をドライバーの任意に変更できる装置を加えた。それをDCCDと呼んだ。これによってフロント・リアのトルク配分を変更しているかのような挙動を車両に与えた。
大まかな構造としてはセンターデフに、フロントとリアに決められた比率で基本トルク配分を行うプラネタリーギヤと電子制御で差動制限を行う電磁式LSD機構を組み込んだ物。
ドライバーはセンターデフのロック率を直結からフリーまで、運転中に任意に設定することができる。
遥のインプレッサは
GDB型は二度に渡るフェイス変更を受けた。遥のインプレッサは涙目と呼ばれるアプライドモデル名「C型」。
C型では丸目ことA型、B型での基本前後トルク配分45.5:54.5から初代インプレッサ(GC・GF)と同じ35:65に戻した。
また、車の挙動やドライバーの意思に応じてセンターデフのロック率を自動で設定するオートモードが追加搭載された。
なぜトルク配分を初代インプレッサと同じに戻したかと言うとA・B型のトルク配分ではアンダーステアが頻発したためである。
ステアを深く残した状態からの立ち上がりでアンダーを誘発する事が4WD車、そしてインプレッサの中でも丸目では比較的顕著に出る。
ある雑誌での企画でGC8とA型を乗り比べてのアタックでフロント45.5とフロント35の違いがサーキット走行でははっきりしているのだ。
そのような事もあり、一般ユーザーの要求に合わせたのだろう。
赤坂見附付近。
DCCDをいじった夢斗がインプレッサを曲げる。……いや、滑らせる。
「こんな……っ。こんな場所で滑らせないでっ」
遥が夢斗に訴えるが意味なし。
白煙の中、4輪スライドしながらS字コーナーをクリアするインプレッサ。
夢斗は一般車をドリフトで避けながら走ってるのだ。
「……嘘でしょ」
美世はバックミラーで見えた光景に唖然とする。
インプレッサが映画のワンシーンのように一般車の間をドリフトで抜けているのだ。
首都高でこんな豪快なドリフトをするドライバーは初めて見た。
「GT-Rならやれるか?」
夢斗は
「あれって原田さんじゃないですか。……いけない事はないんじゃ」
「んじゃ、やってみる」
「えええ!?」
夢斗はR34に迫る。紅いGT-Rを撃墜せんとばかりに猛加速。
「やる気……ってわけかぁ!」
3速に落としRを加速させる美世。戦闘態勢に切り替わっていく意識。
集中力が高まり、ステアリングを握る手に力が入る。
気がつけばバックミラーにインプレッサのヘッドライトの光が眩しいほどに入っていた。
西新宿JCT。
狭い道を並走する2台。有利なのはR34。
だが、夢斗は焦らない。
「……曲がれっ」
クラッチを蹴った。エンジンの回転数が跳ね上がり、リアタイヤが流れ出す。
インプレッサは暴れだした。
「何やって……!?」
遥は夢斗のやっている事の意味がわからず混乱。
「ドリフトですけど?」
「わかってます!でもなぜ……」
甲高いスキール音を響かせながら先のコーナーへ向かって突っ込んでいくインプレッサ。
「そんな……できるかっ」
美世はインプレッサのドライバーがやっている事に軽い目眩を感じた。
200km以上出ているインプレッサ。コーナーインには速すぎる。明らかなオーバースピード。
「ほいっ!」
サイドブレーキを引いた夢斗。
インプレッサはラリーに出る車のように真横に近い角度を向く。
インプレッサはR34の外側から被さるようにしてコーナーへ。
「こっちが……不利じゃん」
コーナースピード自体は美世の方が速い。しかしインプレッサのドリフトに当たらないように減速するしかないのだ。インプレッサは壁とR34に迫る。
「そんな!?」
遥は自分の目を疑った。
自分のインプレッサがR34の前に出ているのだ。
「なんで……できるんだ!?」
美世は自分の眼前に見えるインプレッサの腹を見て驚く。
一般車がいて、しかも首都高。こんな状況でドリフトできる技術が美世に衝撃を与える。
インプレッサが前に出る。
低いボクサーサウンドが轟き、インプレッサのテールランプが遠のく。
「……完敗か」
美世はアクセルを抜く。完敗したのだ。
下道に降りて美世達は合流。
「あんな所でドリフトって……」
「なんとなーくッスよ。なんとなく」
「それがおかしいんですよ!?夢斗の運転見てると命がいくつあっても足りないです!」
「夢斗君すごすぎでしょ」
遥と美世がモータースポーツ談義している中、夢斗は遥のインプレッサを見ていた。
「アナログ……」
「どうしたんですか、夢斗」
話が終わったらしく、遥が戻ってきた。
「やー、インプレッサってアナログだよなって」
「どういう事ですか?」
「いやほら、エボって電子機器多いじゃん。AYCとか……。エボⅩはS-AWCだっけか」
AYCはアクティブ・ヨー・コントロールの略。
ハンドル角、速度、ブレーキ、旋回時のGなどセンサーを基に後輪左右の駆動移動をコントロールする。コーナリング中に発生するヨー・モーメントを制御し旋回性能を向上させるシステムだ。
一方、S-AWCはスーパーオールホイールコントロールの略。
三菱が開発したアクティブディファレンシャル「アクティブセンターデフ」にAYCなどの機能などを組み合わせた物と思ってほしい(ちなみにアクティブディファレンシャルの例としてはスカイラインGT-Rの「アテーサE-TS」が該当する)。
「小日向さんのFDに乗ったり、遥のインプ乗って思ったけどそういう『ハイテク』に頼らないじゃん。全部ドライバーの腕じゃん。だから使いこなせれば無茶苦茶速いじゃんか」
「全ては自分自身が車の速さを決めるってな」
夢斗は蓮のFDに乗って思った。
だから夢斗は純粋に自分の腕が問われるFDやインプレッサに乗って思った。
『ローテク』な車で速いドライバーは強いと。
「んじゃ、またね」
「原田さん、今度のアイドルフェスタ頑張りましょう!」
「もっちろん。アクセル全開でいくよ」
夢斗達はそれぞれの向かう所へ。
「あたし……どうしようかな」
美世の迷い。
自身の技術に自信を失いかけていた。
夢斗の技術が美世に衝撃を与える。
美世の精神は不安定になっていく……。
ネタ解説です。今回はこれだけです。
・「ハリウッドに行ってきた」
「劇場版アイドルマスター 輝きの向こう側へ!」のラストでハリウッドに研修へ行った事から。ここでの赤羽根Pは帰国後という設定。
次回、夢斗に敗れた美世。
彼女の苦しさは車にも及び……。