アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
超高速ドッグファイトは止まらない。
STAGE36 不敗神話
「その新しくなったR……どうだっ!?」
岩崎のRは速度を上げながら湾岸を駆け抜けていく。
美世のRは一定の距離を維持しながら少しずつ距離を詰めていく。
「いいよ……R!もっと行ける!」
藤巻と蓮によって組み上げられた新生GT-Rは美世の操縦に応える。
部分的にとはいえ岩崎のRと同じパーツが組み込まれた美世のRは岩崎のRに引けを取らない。
空港トンネル手前。
3車線の緩やかなバンクコーナーを抜ける3台。蒼紅のGT-Rと純白のFCが走り抜けていった。
「上手いな……」
岩崎はFCのドライバーの技術に感嘆していた。丁寧な走りでありながら速さも確保している。だが、岩崎が驚いている一番の部分はここ一発の爆発的な速さだった。
FCの車内。
普段美穂が運転しているFCだが今日は蓮が運転していた。
美世を見守ると言ったものの、自身のFDは車検で手元にない。それでも美世の所には行かないといけないため美穂に頼んでFCを持ってきてもらったのだ。
「岩崎さん……すごいな。攻撃的な走りだけど破錠感がない……」
首都高はリスクを承知で攻めてもリターンは小さい事が多い。無理に攻めて自爆するのがほとんど。
そのため首都高ランナーはある程度の
しかし岩崎はそんなモノ関係ないと言うばかりの攻めの姿勢を見せていた。
恐れを知らないかと思う程のプッシュだ。だが、これ程のプッシュができるドライバーは岩崎だけではない。夢斗もだ。
蓮のプッシュ自体は並のレベル。
プッシュの勢いは夢斗の方が上なのだ。しかし夢斗でも蓮を超えることができない部分がある。それが岩崎の言う一発の爆発的な速さだ。
「蓮さん、美世さんは勝てるんですか?」
美穂が聞く。
「どうかな……。岩崎さんの実力は僕も知らないから……」
「でも……美世さんならきっと」
「……美世さん、頑張って!」
美穂は美世にエールを送る。
(岩崎さんの走りは見てきた。スーパーGTで見せたあのプッシュができるんだ。遅いわけがない)
(けど……美世さんはやるだろう。岩崎さんを超えるような「なにか」を……)
大井から横羽上り入り。
テール・トゥー・ノーズのまま走る2台のR34。
(ブースト良好、エンジンは問題なし)
湾岸から長時間全開走行を続けていたがコンディションは良好。
以前の仕様では高回転域での水温上昇が早く、肝心な時に踏めない事があった。だが今のRなら気になりもしない。
(原田さん……このRは最高だ)
岩崎は心で美世に告げる。それは美世には聞こえていなくともその走りで美世に伝わる。
美世の仕上げたRは岩崎の求めていたモノを形にしたと言うべき完成度を誇った。
最高の走りがこのRで出来て美世と戦える。それだけでも岩崎は嬉しかった。
横羽を上って行く2台のGT-R。
膠着状態を突破しようと美世が動いた。
「……なるほど」
スリップストリーム。美世が選んだ行動だ。
(そういえば……富士でつっつかれたな)
9月に行われたスーパーGT第6戦で岩崎はスリップストリームで岩崎に食いついた美世にカルソニックGT-Rのリアバンパーをつつかれている。
(近づくんだ……!)
だんだんと自身に迫ってくる前の蒼いGT-Rのテールランプ。
富士の時のようにギリギリまでRを近づける。
「なるほどな……面白いじゃん!」
岩崎はトップギアである6速にシフトアップ。アクセルペダルを床を突き破らんばかりに踏み込んだ。
「くぅ……っ」
800馬力を発揮するRB26が吠える。先程までの加速とは全く異なる暴力的な加速に岩崎は震える。それは恐怖心をも上回る興奮による物だ。
美世のR34のヘッドライトの光が離れていった。
「さっすが岩崎さん……前のようにいかないか」
美世のテンションは高まる。前を走る相手をぶち抜くという目標、そしてその相手が岩崎。燃えない訳が無い。
美世は自分の持つ全ての技術を総動員して立ち向かう。
C1エリアへ突入した3台。
危険度トップクラスのこのエリアを怯むことなく突き抜けていく。
(超高速エリアでもテクニカルエリアでもこのRは応える)
(意識が一体化する)
どんな攻め方をしてもRは岩崎に逆らう素振りを見せない。
銀座区間。
いい路面とは言えないこの区間でフルスロットルで駆けるR。
車が若干跳ね、コントロールを奪われそうになる。だが、岩崎と美世はコントロールを失わずに狭いC1エリアを突き進んでいく。
「行ける」
蓮はFCで限界ギリギリまで攻める。C1エリアでは軽量なFCは速い。
蓮のテクニックと相まってFCは岩崎達よりも高いスピードで車がハネる路面を走る。
黄色いオーラがFCを優しく包み込んでいた。
(流れるRをコントロールするのがどれ程の難しさか)
(500馬力を超えた途端、一気に激変する操縦感覚)
(俺達はそれすら優しいようなモンスターを操っているんだ)
ドライバーの意思とクルマの動きが合わなければクルマは破錠する。
800馬力に到達するようなマシンを駆る以上、そんな事があったら命取りだ。だから首都高ランナーは車との「対話」ができて初めて1人前と言えよう。
C1から再び横羽方面へ入る。
GT-Rの最大の武器である
車任せにアクセルを床まで踏みつけ、速度を上げる。後は車次第で決まる。
「原田さん……」
岩崎は美世のRを初めて見た時の事を思い出していた。
あの時は自分を脅かすような存在ではなかった美世のR。
しかし今は自分に並ぶような実力者になった美世が駆るGT-R。遅いワケがない。
「だから……戦えるのが本当に嬉しい」
(そして……俺のGT-Rを超える。原田さんは俺のRを意識に焼き付けて……速くなる)
「ねえ、彼女は勝つの?」
林原が内藤に聞く。
「知るかよ。俺でも勝てなかったヤツにアイツが勝てるって言い切れねえよ。でもな」
「アイツは勝敗を気にしてないと思うぜ」
「どういう意味?勝つために挑んだんじゃないの」
「憧れなんだよ、アイツにとってな。だから一緒に走る事ができるだけでアイツは十分だろう」
「優劣を求めたがるのがヒトってもんだ。勝ち負けってのをはっきりさせたいがためにな。アイツもそんな奴だ」
「でも、今日だけはそんなの関係ない」
(ヤバい、めちゃくちゃ楽しい)
極度の興奮状態から美世はテンションがハイ。その瞬間美世はブレイクを発現する。
岩崎のRに引っ張られていた美世のRが岩崎のRの前に出ようとしていた。
「いいね……最高だっ」
岩崎も全力で迎え撃つ。
「……!?」
蓮は美世のRに違和感を感じた。
自分が美世のRを紅く塗装した訳だが、塗装の輝き方が変化している事に気づく。
(変化しているって言うのか!?まさか……)
コーナー1個をインベタのラインで抜けていく。270kmというスピードでのラフな操作は姿勢を乱し、最悪クラッシュだ。
ギリギリまでテンションが上がっている美世と岩崎だが、操作は精密機械のように正確。2台のR34は同じラインで走行する。
プレッシャーに抗う美世。岩崎の存在感はまるで山のようだ。それでも。
(熱く……なれるっ!ヤメれないんだーーー)
(原田さん……君に組んでもらって嬉しかった。このRは俺が今までに乗ってきた車の中で最高の車だ)
(このRの心臓……RBは俺のもうひとつの心臓だ)
(でもすまない……俺は)
「それ」は岩崎のこのR34での最後の走りを示す言葉だった……。
「もう1年になるのか……」
青年を狂わせる事になった出来事から1年。彼はやっと前に進めるようになった。
「後で行くからさ。待っててくれよ」
誰もいなくなった部屋に残された写真。
それは「夢」が詰まった大切な1枚だ。
「湾岸……ここでケリを付けよう」
湾岸線に入った2台のR34。
狂ったスピードでの超高速バトルが再び始まる。
勝つのは「挑戦」か「伝説」か。
決着の時が迫る。
争う2台のGT-R。
紅いGT-Rと蒼いGT-Rは「速さ」だけを決めるために戦う。
そしてその時は迫る。
今回はネタなしで真面目に書いたはずなのに短い……。
次回はもっと長くなる……はず。
次回、伝説のマシンとのバトルの行方は!?
そして……紅きGT-Rが覚醒する。