アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
彼が見せる技術。そして彼が抱え続けた過去。夢斗は新天地東京で何を思うのか?
そして、物語は動き出す。
STAGE1 体験、超高速ステージ
夢斗が入学してから数日が経った。彼は相変わらず周りとぶつかる事が多い。その度に浩一が夢斗の発言の解釈を相手に伝えるという事が今の所毎日のようにあった。
今は授業開始前の休み時間。
「夢斗……。マジで意識してるか?敵を作るなって」
「してるさ。あいつらの考え方がおかしいし」
「意識してないって言うんだぜソレ」
今朝も女子と喧嘩。浩一が何とか説得したが、こんな調子じゃ自分が持たない。
そこに教師が入ってきた。今日から始まる新しい授業の教師。今日の授業内容は、オリエンテーションだ。
「名前と出身、部活動の紹介をしてくれ」
こうして生徒は1人ずつ紹介していく。
「星名ー。お前の番だ」
「センセー。俺は『せな』じゃなくて『ほしな』ッスよ」
「おお、悪い」
「星名夢斗。栃木から来たッス。……部活動?」
「部活動に入っているなら言ってくれ」
夢斗が浩一を見る。
「部活動入ってねえ……」
「俺もだ……」
「何言ったらいい!?」
「俺に聞くな!」
「センセー!入る『予定』はOK!?」
「構わんよ」
「じゃあ自動車部!!」
やがて浩一も呼ばれる。
「俺は津上浩一です!群馬県出身!俺も自動車部に入部予定です!」
「え?お前群馬なの?」
「初めて知ったのかよ!!……あ、そういや言ってなかったっけ」
「今初めて聞いた。群馬か。アレか、あの豆腐屋のいる所」
「そうだな」
オリエンテーションを終えた夢斗達が向かっていたのは、自動車部の部室。
「浩一はさー、部活動見学で自動車部行った?」
「行ったけど?」
「なんでここ見学者いないんだ?」
「夢斗。お前それ知らずに行ったのか」
「自動車部はな、裏では首都高を走るチームなんだよ」
「その無法地帯っぷりを恐れて新入部員が中々入らないんだとさ」
「首都高を走るってのは聞いた。無法地帯って……」
「色々悪評があるんだよ。ここ」
やがて部室に到着。
部室の戸を開けると部員達がこちらに視線を向ける。
「お!君達は入部希望者か……って君もか」
夢斗を見て呟く部員。
「うっは、俺有名人らしい」
「そうだな、悪い意味で」
浩一が呆れる。
「入部希望で来ました!」
「おお、君と……君か」
「俺の扱い悪くね?」
「当たり前だろ……」
「俺は自動車部部長の
「俺は副部長の
軽く説明した後、見学。
そこではジムカーナの大会に出るための練習をしていた。
「あれ、インテですよね」
「そうだ。ここのクルマさ」
浩一が指した先の車は「ホンダ インテグラtype-R」(DC2)。
パイロンを中心に綺麗にターンしていく。
VTEC特有のエンジンサウンドを轟かせ加速していく。高回転までブン回していく。
「上手いですね〜」
「アイツはFF乗らせればダントツで早いんだよ。『FFのスペシャリスト』って俺達は呼んでるぜ」
「……もうちょい舵角小さくなんないかな」
「夢斗……。大人しく見ろ」
「浩一君と言ったっけな。君は車持ってるかい?」
「浩一であってますよ。俺はFDを」
「FDか。いい車じゃないか」
「君は何に乗ってる?」
友也が夢斗に聞く。
「俺すか?エボⅩ」
「ランエボか。どんな感じだ?」
「『ちょっと』いじったくらい」
「済まないが二人とも今車を持ってこれるか?」
「あ、はい全然大丈夫です!」
「何やるんです?」
「この後わかるさ。楽しいぞ」
言われるがまま2人は車を取りに行く。
駐車場に着いた2人。
「何やるんかねぇ……」
「まさかこの後いきなり首都高行くんじゃ……」
「いや、それはねーよ。こんな早くに……」
そこに夢斗に声をかける少女が1人。
「やっほー。夢斗君」
「おっす、夕美」
「相葉ちゃん!」
夕美は入学式での夢斗と浩一の喧嘩の後も夢斗とよく話していた。席が隣なのでよく話す。
「やっぱ相葉ちゃんの笑顔が眩しい……っ」
「きもいぞ、浩一」
「キッパリ言いすぎだろぉぉぉ」
浩一の叫びを無視して続ける。
「夕美はこれから仕事か?」
「うん。新曲のレコーディング」
「へー。なんて曲?」
「フフ、秘密!」
「えー、秘密って聞くと余計知りたい」
そこに浩一が答える。
「あ、わかった!『お花の妖精使いフローラル夕美』のエンディング曲!」
「何だそれ?」
「すっご〜い!大当たりだよ!」
説明しよう。「お花の妖精使いフローラル夕美」とは女児向けのアニメである。アイドル達が出演するのもあり、大きなお友達も見る大人気番組である!
「新エンディング曲のレコーディングがこの後あるんだ。夢斗君達は何やってたの?」
「自動車部の見学。車持ってきてくれと」
「この車が夢斗君の車?」
「そうだ。これ以外俺にとって大事な物はないね」
「大切に乗ってる事はいいと思うよ。あ、そろそろ行かないと!」
「やべ、俺も行くわ」
シートに座り、イグニッションキーを回す。
エンジンが始動し、夢斗はエボを発進させる。
「夕美ー、行ってくるわー」
「うん、頑張ってねー!」
浩一もFDに乗り込み、FDを発進させる。
数分後。
部室前には黄色いFDと銀色のエボⅩがあった。
「これから君達の技術を見る。これ次第で競技のメンバーも選ぶ」
「とはいえ、君達はまだ免許取ってから車に乗る時間は浅いと見込んだ。基本ができればまずいい」
「とりあえず、先にどっちがやるか決めてくれ」
ジャンケンして決めた。
「げっ、俺かよ」
「ま、やってみ」
浩一が先にやる事になった。
やる事はまず高速スラローム。
その後に8の字からのパイロンを目印にスピンターンして戻る。
最後は低速コーナーを連続で抜けてゴールだ。
こう言っただけではどうって事はないように見える。しかし、この様に「競技」としてだと捉え方が変わる。
「競技メンバー選ぶってなったら頑張らないと……」
このテストは競技メンバーの選考も兼ねた物だ。タイムを出せなければ意味が無い。
「ちなみにクラッシュして車が壊れる事はまずないから安心してくれ。パイロンやパッドがあるから」
浩一のFD3Sがスタート。やはりこういう事には慣れてないようで、スピードが出ていない。
「もっと踏め……っ」
焦りが出ている浩一。高速スラロームはクリア。直後に待ち受けるのは8の字だ。
「やばっ」
入った直後、スピードが出過ぎてスピン。慌てて復帰するがこのミスで12秒近いタイムロス。
パイロンを目印に折り返して、ゴール直前の連続低速コーナーエリアに入っていく。
危ない所があったが、何とか無事にゴールした浩一。
「はぁっ、はあっ」
思い切り踏むという事がないとこれだけの事でこんな息の上がり様だ。
「おいおいスピンするなよ……」
「夢斗……。お前はどうだ」
「……楽だろ」
「言ったな。ホントだといいな。もし大口叩いて俺より遅かったら、今までのお前の発言も口だけだったって思う事にするからな」
「そっか」
夢斗がかったるそうな調子でエボに乗り込む。エンジン始動。4B11が唸る。
「よーい、スタート!」
合図と同時にエボⅩが飛び出していく。4WDのエボⅩだけあってスタートダッシュが速い。
高速スラロームをするエボⅩ。ほとんどエボはロールしない。外から見てもわかる程足が極端に硬い。
だが、驚くのはそれじゃない。全く無駄のないスラロームだ。ほぼハンドルを切らずにスイスイと抜ける。
「なんだありゃ。一切無駄がない」
部員達が驚く。浩一も驚愕する。
「上手い……!」
直後には8の字。
だが夢斗は涼しい顔して8の字ドリフトをしていた。
「エボをどうやったらあんな振り回せるんだ……!?」
4WDのエボは4輪全てが駆動する事もあって各車輪のグリップ力が高い為、舗装路でのドリフトは困難を極める。それはエボⅩだけではなく、ライバル車のインプレッサなど4WD車全てに言えることだ。
だが、夢斗はそんな事関係ないと言うように余裕でエボをドリフトさせていた。
8の字した直後、夢斗はフルスロットル。
爆音を上げてエボⅩが猛スピードで突っ込んで行く。
「やべえぞ、クラッシュする!」
「オーバースピードだ!!」
部員達が慌てる。浩一も心配する。
「夢斗……。お前死ぬ気か!?」
猛スピードで走るエボⅩのコックピット。夢斗に焦りは全く無い。ステアリングを切る。
すると荷重移動が発生し、フェイントモーションに入った。
「よっ」
すかさず夢斗はサイドブレーキを思い切り引く。
全てのタイヤから白煙が上がり、エボは真横を向く。横を向き始めた瞬間にアクセルオンでテールスライドを維持する。
エボⅩが見えなくなる程の白煙が上がり、エボを見れない。
スライドコントロールを行ってパイロンスレスレに旋回する。
「ヤバいぞ、アイツすごい上手いっ!」
「なんだアレ、あんな完璧な4駆ドリ初めて見た!」
友也も驚いた表情だ。
「彼は一体何者だ……?」
浩一に聞く。
「アイツは……地元栃木でいろは坂最速だったらしいです。俺は半信半疑でしたが……。あれを見たら信じるしかありません……!!」
「いろは坂最速……!?銀色のエボⅩ……まさか、彼が噂になっていた少年か!」
その噂とは、正体不明の銀色のエボⅩがたった一夜でいろは坂最速になったと。だが、そのエボⅩは「走った事がない」いろは坂を一度のアタックでマスターし、いろは坂最速だったMR2を破ったのだと。
最後の低速コーナーも綺麗にドリフトで繋げて抜けてきた。文句無しのゴール。
タイムは浩一のFDが出したタイムを30秒近く上回っていた。
「な……」
「へっへー、どうだ」
友也が驚いた表情で記録を見る。
「今までここに入部したヤツ全員がこれをやったが……歴代最速記録を更新したぞ……!」
部員達は驚きを隠せない。
夢斗の記録は歴代最速記録だったのである。
「嘘でしょ……!?」
「友也……もしかしてこの子超大型新人だよ!?」
「だな……」
友也が夢斗に聞く。
「これだったら確実に君はここのエースドライバーだぞ」
「ジムカーナの大会が今度ある!出てくれないか!?」
「イヤっすよ」
「何故!?」
「俺は言いましたよ。そんなつまらなそうな事やりたくないって」
「俺はそっちが言った『首都高を攻める』って事に惹かれて
「もし、俺をそのジムカーナの大会で使うために入部させるってなら俺はここには入りませんよ」
夢斗の発言にざわめく部員達。部長の誘いを蹴った。普通に見ればとんでもない事態である。
「夢斗ー!!お前何言ってんだ!」
浩一が夢斗に怒鳴る。しかし夢斗は聞かない。
「浩一……。もしお前までそうさせたいなら俺はこの学校辞める」
「はっ!?」
「俺は今まで自由なんて無かった……。ここに来たのも深い意味はない。目的が無かったんだよ……。とりあえず大学行けばいいって思ってな……」
「そんな中で唯一自由を感じれると思ったのは、『首都高を攻める』って事が出来る
「首都高を攻めるって言うアンタの言葉を信じて俺は来た!ソレがないんなら俺はココを辞める!!」
夢斗の発言に静まり返る部員達。浩一も黙るしかない。友也も考え込む。
やがて友也が口を開く。
「君は何故……そこまで『自由』にこだわるんだ?」
「俺は……ずっと一人だった。誰にも俺の考えをわかってもらえないし……。俺が何を言っても理解しようとさえしなかったんだ!!」
浩一なら身に染みてわかる夢斗の性格。
「理解しようとしないヤツらと関わるのがもう辛かった……。だから俺は地元を出てきた」
「自分が決めた『常識』で周りを縛る!ソレが違う奴を自分達のグループから追い出そうとする!俺の考え方に自由ってないのか!?」
「峠だって……周りの事を取り入れようとせず『遊び』しか出来ないくせに上手い奴には嫉妬する……。いろは坂を走ってたヤツはみんなそういう目で俺を見てた」
「でも……首都高ならそんな事ないと思った。同じ目的の為に人が繋がって走る……ソレが走り屋じゃないのかって」
「もしアンタ達が地元のヤツみたいな事をするなら……俺は出ていく」
夢斗の主張を聞いた部員達。
夢斗は「周り」から理解されず、周りの「普通」を押し付けられたーーー。それに耐えきれず地元栃木を出て「首都高」という自由を求めこの部に来たと言っているような物だ。
「君の言い分はわかった。では君はどうしたい?」
「首都高を走る。俺はそれ以外したくない。ジムカーナなんて峠走ってたら簡単にしか見えないから……」
「ジムカーナは峠を走るみたいに同じ事するだけだ……。ソレが嫌いなんだ……。同じ事を繰り返すだけってのが」
「でも首都高なら『同じ事』がない。いつでもその走りしかないから」
友也が口を開く。
「君のその技術は是非欲しい。だが……君は競技はやりたくないんだろう?しかしな、君が走らなくても他の人が走らなければいけない。君は他人に教えるのは得意か?」
「全然。わからないって言われる」
「君のその走り方をみんなの手本にしたいんだ。君は走らなくてもいい。君は首都高に専念すればいい」
「友也!」
部員が叫ぶが友也は続ける。
「君は……常に新しい事をしたいんだろう?」
「そうっす」
「君が走りのコーチになってくれないか?教える事で発見もある」
「いいすね」
「そして君が一番したい首都高を走る事が君のやる事のメインだ……。どうだ?」
夢斗が口を開いた。
「ソレなら俺はやりたいっすね」
「交渉成立だな」
友也が手を差し出し夢斗も握り返す。
「浩一君はどうする……?」
友也が浩一に問う。
「俺もココに入ります。夢斗の技術はよくわかりました。でも夢斗はその技術の上手な使い方をわかってない……。もし俺がいないと夢斗は絶対にその技術をわかってもらえないから……」
「そうか……」
友也が部員を集め、告げる。
「みんな、今日から星名夢斗君と津上浩一君が入部した!みんな仲良くしてくれ!」
拍手が起こる。
「さっきはあんな言ってすまなかったっす」
「いいさ。俺も自分で言って忘れてしまってたからな」
部活動終了後、帰ろうとしていた夢斗達に友也が告げる。
「今日の夜空いてるか?」
「予定はないっスよ?どうしたんすか?」
「来れるなら今夜11時に大黒
「来たーっ!待ってました!」
夢斗のテンションが上がる。
「あの……どうするんです?」
「首都高を覚える為に走る。首都高は覚えておいて損は無い」
「時間厳守で大黒集合!いいな!?」
「はい!」
「了解っす」
友也の話を聞き、学校を後にする。
PM11:00。
大黒PA。車が数台ある以外はガランとしている。
銀色のエボと黄色いFD、それと赤いスープラと黒いR33だ。
「今日は首都高を覚える為に走る。いいな」
各自それぞれの車に乗り込み、大黒を後にする。
いよいよ首都高を走り始める4台。一般車が少し多い。平日の夜は仕事のトラックも多い。
「しっかりとついてこい。遅れるなよ」
友也のスープラが先頭に夢斗のエボ、浩一のFD、工藤のR33を引っ張る。
やがて少しずつスピードを上げていく。
「うわ……速い」
浩一は法定速度以上のスピードに恐怖を抱く。一方で夢斗は未知の体験にワクワクしてた。
「コレが首都高……!るんってきた!」
エボⅩを加速させる。友也のスープラにピタリと張り付く。
「おっ、踏むね。だがここからはその余裕は続くかい」
湾岸線鶴見つばさ橋。3車線をめいっぱい使い一般車をかわして速度を上げる。
浩一は200kmオーバーの世界を初体験。恐怖でアクセルを踏む右足が震える。
「……っーーー」
夢斗のエボⅩのスピードメーターも200kmを指す。峠では味わえないこのスピード感。夢斗のテンションを上げていく。
「……!」
友也が何かを見つける。黒いエボⅨだ。
「バトルはこうやるんだぜ」
友也のスープラがエボⅨをパッシング。するとエボⅨがシフトダウンし、加速。バトルを受けるという合図だ。
「そう来なくちゃな……!」
友也のスープラは加速していく。置いていかれる夢斗達。
「は……速い!」
「おお。かっとぶねえ」
R33のドライバー工藤もエボⅩとFDを追い抜きバトルに参加する。RB26の大パワーがR33を前に進ませる。
「GT-R……やっぱ痺れる!」
浩一は感動。
「置いてかれたら迷子じゃんか……」
夢斗はエボを加速させる。
「へえ、今やる気じゃなかったけど……いいか」
黒いエボⅨを運転する咲耶が後ろのスープラを見て戦闘態勢に入る。
「私に最後までついてきてくれるかい!?」
エボⅨを加速させるとバトルに突入していく。
「速いって!長谷川さんバトルに入った!?」
「だろ。あれが首都高のバトル……」
首都高でのバトルは夢斗に大きな衝撃を与える。
「自由」を求めて首都高を目指した夢斗。彼が目指した首都高は彼に何を思わせる?
なかなか天才の考え方を言葉にするのが難しい……。
ネタ解説です。
・夕美のレコーディング
「お花の妖精使いフローラル夕美」のED曲のレコーディングに向かった夕美ですが曲は「シンデレラガール劇場」でも流れた「Dreaming Star」です。
・夢斗の過去
夢斗の性格の元になった「氷川日菜」のように「天才」という夢斗。
しかし、その才能を妬まれ自身を理解しない「他人」に縛られるのが嫌で栃木から上京したのです。
天才も天才なりに苦悩するのです。自由が好きな夢斗にとっては理解されない事がとても辛いのです。
次回、夢斗初バトル!!