アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
彼の全てが変わってしまった日は夢斗の暗い部分を作った。しかしそれは新しい物を生み出す日にもなる。
午前5時。
太陽が顔を覗かせる地平線。眩しく輝く太陽を見る青年が1人。
「晴れたな……」
夢斗だ。エボⅩの中で車中泊していた。
1年前のこの日は午後から雨が降っていた。そして起きてしまった悲劇。
午前7時。
夢斗はファミレスで朝食を食べた後実家へ。仏壇の前で手を合わせる夢斗。
(また……来たぜ)
「夢斗、あんたどうするの」
「行くぜ。拝まなきゃいけねーじゃん」
母に寺に行くか聞かれる夢斗。もちろん行くと答える。
「ありがとうございました」
住職に挨拶をして寺を後にした夢斗達。夢斗本人は念仏をちゃんと唱えていた。
1年前は奏夢の死を受け入れられず、葬式に集中できていなかった。念仏を唱えたりすると奏夢がいないという現実を突きつけられたからだ。
そんなこともあったため、ちゃんと念仏を唱えれるようになっただけでも大きく夢斗は成長したのだ。
「夢斗?どうしたんですか」
「遥?咲耶も……」
声を掛けられた夢斗が振り向くと咲耶と遥が立っていた。
「俺は……」
「あら、夢斗の知り合い?」
夢斗の母が咲耶達に聞く。
「そうですね……」
「夢斗が迷惑かけてないかしら」
「俺めちゃくちゃかけてる自覚あるわ」
「ほらもう……」
「夢斗はなんだかんだで周りに交わるのが上手なんですよ」
今度は遥が自己紹介。
「申し遅れましたが……私は芸能事務所283プロダクション所属プロデューサーの瀬戸遥と申します」
「プロデューサー?あなたすごいわね!」
「まだまだ新人ですけど……アイドルのみんなと頑張ってます!」
「白瀬咲耶です。夢斗には……たくさんの事を教えてもらってます」
「え?そんな事なくね?」
「夢斗は気づいてなくても私達は教えてもらっているのさ」
「わり、ちょっと行くわ」
「私達も一緒に大丈夫でしょうか?」
「いいわよ。こんな日だけど夢斗に仲のいい人がいる事が私嬉しいの」
夢斗の母が言う。
少し移動して共同墓地へ。
「星名家」と彫られた墓石を綺麗に掃除する夢斗達。
「お墓……」
「遥達に言ってねえっけか?妹がいたって」
「初耳です。まさか……」
「ああ。妹……奏夢の命日だ。1年前のこの日に交通事故で殺されちまった。12月25日の事件に関係してる」
「渋谷駅前のあの事件に……」
「事件を起こしたヤツらにな。小日向さん達も関わってる」
拝んだ後。
「少しここに残ってていいか?」
「いいわよ」
母達が一足先に墓を後にした後、残っているのは夢斗と遥、そして咲耶の3人だけ。
「夢斗のお母様は明るい方ですね」
遥が言う。
「そうか?カナが死んだ後はいつも喧嘩してた」
「……妹さんはどんな方だったんですか?」
「あいつは俺以上になんでもできた。あいつはやらないって言うだろうけど……もし走り屋になったらあいつは俺以上にエボⅩを乗りこなしてたかもしれないな」
「夢斗以上に……この兄あっての妹か」
驚きを隠せない咲耶。
「カナはアイドルになりたいって夢を持ってた。カナだったら余裕でなれただろうな。夕美みたいになりたいって言ってたよ」
「相葉夕美さんですか……」
正午。
夢斗の母にお昼ご飯を作ってもらって夢斗達と一緒にご飯を食べた遥と咲耶は夢斗と共に宇都宮を散策していた。
「なんにもないだろ?東京と違ってさ」
「そんな事ないさ。栃木ならではの発見だってあるさ」
「咲耶は高知から来たっけか。高知って何が有名なんだ?」
「カツオとかだね」
「はえー……」
「前から聞きたかったんですが夢斗はなぜエボに乗ろうと思ったんですか?」
遥の質問。この天才がなぜランエボという車を選んだのか。
「親父がモータースポーツ好きでさー。ガキの頃からスーパーGTだとかF1とか見たよ。でも俺は好きだとは思ってなかった」
「でも、WRCを見てそん時見た赤い車だけはなんか頭から離れなかった。それがエボだった。三菱がWRCにまだ参戦してた時の最後のエボだった」
「エボⅥですか?」
「ああ。そこから俺は三菱の車……エボを知ろうと足を踏み入れた」
「その時の俺はエボしか頭になくってさ。それ以外のメーカーの車とか全然知らなかったぜ。加えて昔の車は全く興味なかった(笑)」
「だから貴音の車が最初Zだってわからなかった」
夢斗が知る車の年代は2000年代前だと1980年代から1990年代の間を少し知っている程度。ただしその少しはFC3S・FD3S型RX-7、RB系GT-Rやシルビアなどメジャーな車に限る。
それに70年代、70年代以前は夢斗は全くわからないのだ。そのためTE27型スプリンタートレノ・カローラレビン(1972年)やヨタハチことスポーツ800(1965年)などは見ても答えることができない。その辺の知識は浩一に負けているのだ。
浩一はクラシックカーについての知識も深いため、夢斗が浩一に勝てない唯一の事だ。
「話戻すとエボ乗りたいってなるワケよ。んで免許取った時にちょうど現行販売されてるエボⅩがマイナーチェンジ入ってさ。それ欲しくて金貯めた」
「ま、つい先日またエボⅩマイチェン入ったけどな(笑)」
夢斗が購入したエボⅩは2011年10月20日にマイナーチェンジが行われたモデルだ。
そして数週間前(2012年10月10日)にエボⅩは再びマイナーチェンジが行われた。
「んで俺はエボを買った。んでカナと出かけようと約束していたんだ」
そして起きてしまった1年前の悲劇。
「これがきっかけで親父は車を嫌うようになっちまった。悲しいけどこれホントの話なのよね」
約束は果たせない。そして狂っていった周り。狂いから抜け出す頃には何もかもが変わり果てた夢斗。
「なんだか私と似てますね」
遥が言った。
「なんでよ?」
「お父様の影響で車が好きになった……私も親の影響でインプレッサに乗ると決めたから」
「その車はWRCという舞台で戦い、その活躍からファンがいる。私もスバリストですから」
「なるほどなー。……咲耶ってなんでエボⅨを選んだ?」
「私自身を変えたかった。そのきっかけさ」
「咲耶も今日行くんだろ?」
「ああ。決着をつける」
咲耶も夢斗と同じように今日バトルをする。相手は因縁の相手である悪魔のZを駆る四条貴音。
夢斗の手によって悪魔のZに迫るスペックとなった黒いエボⅨでZを狙う。
その後夕方に栃木を出発した夢斗達は集合場所に向かう。
夢斗達が栃木を出発する少し前。
美穂は落ち着かない様子で廊下を歩いていた。この間見た美世と岩崎の走りが強く残り、頭から離れない。自分も走り出したい。それだけが美穂の頭にはあった。
一刻も早く行動したい。そう思った時には美穂は美世を探していた。
「美世さーん!美世さーん!!」
「美穂ちゃん?どうしたのそんな慌てて」
「走りたいんです、私も」
「美世さんなら夢斗さん達がどこを走るかわかりますよね」
「美穂ちゃん、本気なの?」
「本気です。この間の美世さんの走りが私を動かしてるんです!」
「……湾岸線だよ。私も行くから」
「はい!」
(私が夢斗さん達より速く走れるなんて思っていない!けど!)
(私は走りたい!今までは蓮さんについて行っただけだったけど)
(今日の走りは自分が走りたいから走るんだ)
出張中の蓮に届いたメッセージ。
「美穂ちゃんも行くって」
美世からだ。
「僕は行けないけど……美穂ちゃん。無事に帰ってきてね」
(FC……美穂ちゃんを守ってほしい)
ここは765プロライブ
蒼いS30Zに乗り込むのは銀髪の少女。貴音だ。
「ぜっと……。『彼女』との走りを楽しみにしているのですか?」
無機質な存在であるはずのZと会話する貴音。答えが返ってくるはずがない。しかし貴音はZの言葉がわかっているかのように話す。
「私も……楽しみです。彼女には全力を出して戦うのが礼儀だと思います」
「だから……頼みますよ。ぜっと」
L28が吠えた。「準備完了」と言わんばかりにエンジン音が轟き、Zは走り出す。
それを見ていた赤羽根P。
「貴音……」
走りをヤメない貴音。当初こそ必死にやめさせようとしたが貴音は降りなかった。赤羽根Pはいつしか考え方も変わった。
(貴音……走るのはいい。でも、これだけは絶対に守ってくれ)
(みんなの元に無事に帰ってこい)
PM10:00、大黒ふ頭PA。
そこには蒼いS30Zと黒いエボⅨ、蒼いインプレッサと銀色のエボⅩが静かに佇む。
そこに3台の車が入ってきた。
紅いR34GT-R、白いFC、そして最後に入ってきた蒼い1台。
「鷹目……」
GDB型インプレッサ。それは遥のC型以降のモデル「F型」だ。鷹目のようなヘッドライトが戦う車と言うことを直感的に理解させる。
そしてサイドに大きく描かれた「壱撃離脱」。
降りてきた男は……。
「岩崎基矢さん……!?」
遥は驚愕。しかし夢斗は全く動じない。
「なんかすげーインプ」
……いつも通りだった。
「俺は岩崎基矢だ。よろしく」
「星名夢斗っす」
「君のことは原田さんから聞いてる。……すごい事するね、君は」
「イヤイヤ。俺はフツー」
「自分の事を自分でもよくわからないって事か。話題だぜ君。いや、『銀色の革命者』」
「え、なにそれ」
「!?知らないのか!?」
「初耳っすけど。え、俺そんな言われてんの!?」
「知らなかったのか……」
「あのインプ見たことあるよーな」
夢斗は1度このインプレッサを見た。その時は派手だとしか思っていなかったが。
「このインプはRの魂を継いでいるんでね」
「しっかし岩崎さんがインプを出してくるとは……」
「原田さんも知らなかったんですね」
遥が美世に聞くと美世は肯定する。
「岩崎さんが言うには昔ジムカーナやってた時の車だったのを改造したって」
「夢斗と似てる……」
「どういうこと?」
美世は遥の発言の意味がわからない。
「夢斗は部活でジムカーナの大会に出たりしてます。岩崎さんも昔ジムカーナをやってたんですよね?」
「『ジムカーナ上がりの首都高ランナー』なんですよ。2人とも」
「……そうか!」
岩崎はアマチュア時代は峠を走り込んでいた。その経験もあってジムカーナも得意である。一方夢斗はいろは坂最速。そして全関東学生ジムカーナ選手権に初参戦で優勝している。しかも個人記録と団体記録両方。
似た者同士な2人の決定的な違いは車だ。テクニックのインプレッサとメカのエボ。
「さて、やりましょうか。白瀬咲耶」
「ああ。今夜ケリをつける」
先に咲耶のエボⅨが出発。その後に蒼いS30が続く。
咲耶達は夢斗達とは別のルートでバトルする。場所は咲耶が初めてZを見て、そして敗れた場所でもある新環状だ。
「私達も後から追います」
美世は美穂と共に夢斗達を追う。美穂と美世はそれぞれ愛機に乗り込んだ。
「さあ、始めるか」
「りょーかいっス」
こんな時も呑気な夢斗。エボに乗ろうとすると遥もエボに乗ってきた。
「……なによ?」
「私も乗せてください」
「インプで来たらいいじゃん」
「私は岩崎さんの走りを見たくて。……って言っても信じないでしょうけど」
「うん(即答)」
「本当は夢斗が死なないために。今日あなたが死んだら妹さんの後を追う事になる……。そればかりは絶対にあってならないから」
「いや死なないから。そこまで疑ってる?」
「どうも胸騒ぎがするんです」
「勝手にしてくれ……」
こうして夢斗はエボに遥を乗せてパーキングエリアを出発。行き先は湾岸だ。
(もう始まってるかな……)
346プロを出てきた蓮。今日は早く美世と美穂が帰った。美世が夢斗にバトルの事を伝えてると聞き、その相手が岩崎と知った蓮。
だが、2人のバトルに美穂もついて行くと聞いた時は驚いた。
「会えるかわからないけど……」
黄色いFD3Sが動き出す。向かう先は首都高。
(……Z)
空高く輝く星を眺める。
またの名を「ルシファー」という明けの明星が高く高く東の空に見える。
手は届かない。それでも。
(お前は……争い続ける)
Zが何をしてそしてどこにいるのかわかる。まるで見えるように。
ついに始まった今夜だけのバトル。
絶対に交わらなかったはずの人物達が集う。首都高という
ついに迎える決戦。
革命者達は伝説を越えられるのか。
ネタ解説です。
・奏夢のアイドル象
明確な設定はしてませんが、もしも彼女がアイドルになったら絵が得意なアーティストアイドルになるかなと。デレマスやミリマス風にタイプ分けするならデレではパッション、ミリマスではVo、ミリシタではAngelといった所。星井美希や本田未央といった個性の系譜のアイドル達に近い感じです。デレでのタイプがパッションなのは彼女の憧れである相葉夕美にちなんでです。
・高知の名物
咲耶の出身地は高知県。高知県ではカツオの一本釣りが有名でその歴史は400年以上。カツオのたたきが美味しいんだとか。
ちなみに私は当初咲耶の出身地を東京だと思ってました……。
・「最後のエボ」
エボⅥがWRCに投入された2001年は第1戦や第3戦で優勝を果たした三菱でしたが、第10戦ラリー・ニュージーランドを最後にWRカーへ移行したため、WRC最後のGr.車両であるランサーエボリューションをベースにしたワークスマシンの系譜は終焉を迎えました。そのため市販車ベースとしてのエボの参戦はここで終わりました。一応三菱はその後もWRCには参戦しましたが2005年にワークス活動を休止。業績が悪化した三菱自動車工業の経営を立て直すべく、自社の再生計画を優先的に行うためでした。
夢斗の発言は市販車ベースのエボとしての最後のエボという意味。WRカーとしてのエボは参加してました。
・「全く興味なかった」
STAGE27の伏線回収。エボを知る事に集中したあまり夢斗は他のメーカーの車をほぼ知らないのです。
・岩崎のインプレッサ
「首都高バトルⅩ」に登場するインプレッサがモデル。性能面はAVOターボワールドのGDBインプレッサを参考にオリジナル設定を加えてます。それにしても何をしたら2トンという車重になるんだろ……?
先日学校の行事でアメリカに行ってきました。そこでカマロやコルベットはもちろん、ガッツリチューンが行われている日本車なども見ました。アメ車を登場させれたらなぁ……(出せるとは言ってない)
いよいよ大詰めに入る物語。年内に完結するかな……?
最後まで頑張るので応援よろしくお願いします!
次回、伝説が夢斗達を阻む。
追い詰められる夢斗に勝機はあるのか!?