アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
夢斗達に勝機はあるのか。
ここは新環状エリア。
銀座区間を疾走する2台の車があった。1台は首都高の伝説として恐れられる「悪魔のZ」。そしてもう1台は悪魔を討たんと追う黒いエボⅨだ。
(このエボでもこの区間を
(とはいえあちらだって同じはずなんだ!)
橋脚にぶつからないように回避、そして橋脚地帯を抜けたらアクセルペダルを踏み込んでいく。
黒いエボⅨは悪魔を貫こうと突進するかのような加速を見せた。
「曲がってくる速さが段違いです……。でも、私達は負けません。そうでしょう、ぜっと」
貴音の意思がZに伝わる。Zは「もちろん」と言うようにさらに加速する。
(あのZと一体化するような信頼感)
(あのZを絶対に裏切らないってわかる)
(パートナー……この言葉が一番似合うのは君達だろう)
「……私は心のどこかでエボを信じていなかったかもしれない。全開で踏んでいる時でもどこかで疑っていたのかもしれない」
(でも……夢斗を見て考え方を変えた。夢斗は誰よりも車の事を理解しようとしている)
(自分のエボⅩ、美穂のFC、そして私のエボⅨ。自分から触って……深く知ろうとした)
(そして夢斗は……乗り手の事を考えた車にできる。結果、美穂の望みも実現できた。そして私のエボは……)
「今、悪魔と最高の戦いができているーーー」
「だから……信じて前に進む!!」
場所は変わって湾岸線。
蒼いインプレッサと銀色のエボⅩがもつれ合うように走る。
「どんだけパワーあるんだよっ!?あれインプだよな!?」
「私だって……信じられないです。どれほどのパワーが……?」
インプレッサのテールランプが夢斗の視界から消えそうだ。
現在、明らかに夢斗のエボⅩが不利だ。差は広がる一方。
(悪いな……こっちだってプライドがある)
インプレッサのコックピットでは岩崎が本気の表情をしていた。
自分は迅帝としての役目を終えた。しかし、走りをやめたわけではない。「挑戦者」として岩崎は走っている。
つばさ橋を直進していき、インプレッサは横羽線に入った。
横羽線はドライバーも車もごまかしが効かない。純粋に車の仕上がりとドライバーの腕が問われる。
荒れた路面がボディを突き刺す。路面に足元をすくわれそうになる。
そんな路面を何の迷いも見せずに突っ切るインプレッサ。少し遅れてエボが続く。
(首都高ではとにかくパワーがいる)
(モアパワー、モアトルク。それが重要視される)
(このインプレッサはそれを両立できた。このエリアで暴れる事ができるんだっ!!)
800馬力というパワーを叩き出す
羽田トンネル出口付近でインプレッサのクーリング走行を狙い、近づいた夢斗のエボⅩ。
「にゃろー、もっかい加速されたらまーためんどくさい事なる」
「夢斗……」
「なに?」
「あのインプレッサのコーナリングスピードがエボと同じ気がするのですが……」
「……!?」
その瞬間、夢斗の中で何かが飛んだ。
エボの走りからは繊細さが消えていく。夢斗の意識を包み込もうとする感覚。
(俺は……っ。俺は!!)
「絶望」への抵抗。意識が飲み込まれかける中必死に抗う。
エボⅩの、言い換えれば夢斗唯一の武器。コーナリングだ。
600馬力オーバーの車がゴロゴロいる首都高ではエボⅩの560馬力は低パワーカテゴリに属する。それでもハイパワー車に今まで対抗できていたのはエボⅩのエアロパーツがもたらす高ダウンフォース、そして夢斗の技術からだった。
レーシングカークラスのダウンフォースを発揮する夢斗のエボⅩ。これだけで大きな武器だ。コーナリング技術に優れる蓮のFDすら置いていくような別次元の速さで曲がる。これがなければ夢斗の今までの走りはない。
そして夢斗自身の技術。ジムカーナなどで培った技術が夢斗の速さを形作る。
それが通用しない。
今まで負けなしの武器が通用しない。夢斗の持つパフォーマンスが否定される。
「夢斗、落ち着いてください!!」
「……っ!!」
焦りを見せる夢斗。そんな夢斗を初めて見た遥。
いつもおちゃらけてる夢斗がここまで追い詰められている。遥から見たら「異常事態」以外言葉が出てこない。
場面は再び変わって咲耶達の元へ。
咲耶のエボⅨは悪魔のZを捉えようとしていた。Zのテールランプの赤い光が咲耶の視界いっぱいに入ってくる。
「振り切りましょう……」
Zが先程までとは違う動きを見せる。妖しげに揺れたその蒼いボディは咲耶を突き放す。
「来たか……!」
Zのあの加速の前に敗れた記憶。しかし今の咲耶はそんな記憶が霞むようなテンションだ。
「さあエボ……私達も行こうか!」
吠えるエボⅨ。咲耶のテンションが最高潮に達した。
フルブーストのエボⅨが轟音を轟かし、疾走する。
超高速でコーナーを抜けて立ち上がりでZとの差を詰める。4WD車であるエボの本領発揮だ。
「く……っ」
明確に貴音が動揺した。このZをもってしても今の咲耶とエボⅨを突き放す事ができない。
「想像以上の進化……!貴女達は……」
「夢斗……。もし私が君に会うことがなかったらこんな走りができなかっただろう」
「初めて君に会ったあの日も……君に驚かされた。初めて走る首都高を君よりも首都高を走り込んでいる私よりも速く走ってみせた」
「夢斗……君は走るためにあらゆる事ができる。誰も成しえなかった事すら」
「そして……あの日も」
流星群が夜空を彩った夏の日のバトル。
あの時は勝負に夢斗と共に最後まで残った咲耶。しかし勝負としては咲耶はほとんど負けていた。
それでも最後まで夢斗の走りを見て咲耶は思った。
広い広い首都高を誰よりも速く、そして自由に駆け抜けた。そんな夢斗の走りが自身を変えてくれるだろうという望み。
今の自分の走りが「自由」かと聞かれたら「まだ」と言うだろう。だが、いつか形にできるように。
夢斗の
(夢斗……。私は飛びたい!!)
その瞬間、エボⅨからは黄色いオーラが出現。そのオーラの色は何も見えない空を照らす光のように……。
一方の夢斗達の状況は最悪の一言。
冷静さを失った夢斗の走りはグダグダ。岩崎のペースに飲み込まれていた。
夢斗達を後ろから追う美穂も状況の悪さがわかった。
「夢斗さん……」
二次エア供給システムが作動して銃声のような爆音と一緒に炎を吹き出すエボⅩ。
岩崎のインプレッサもミスファイアリングシステムを当然のように使っており、夢斗が低速コーナーで詰めようとしても立ち上がるスピードが圧倒的。
高速コーナーも低速コーナーも速い。夢斗は気が狂いそうな状況でマージンを限界まで削って攻めていた。
(エボ……。耐えろ……)
(俺も耐えるからさ……。最後まで諦めんな……っ)
極限まで集中力を張り詰めた夢斗が駆るエボⅩからは青いオーラが現れる。
「君は速い。速いよ。でも……その脆さはなんだ?」
夢斗は確かに速い。岩崎のこのインプレッサにここまで着いてこれる。それだけでも褒めれる事だろう。
しかし、その走り方はあまりにもリスクが大きい。それに加えてドライバーの状態がはっきりとし過ぎている。夢斗の動揺や焦りがバレバレなのだ。槍と言うよりは諸刃の剣としか言えない。
「こんのォーーーーーーッ!!」
「夢斗!無理ですよ!」
明らかなオーバースピードで突っ込み、案の定姿勢を乱して失速するエボⅩ。それでも事故らないのは夢斗がギリギリのラインで操れているから。
しかしそう何度もそれができるワケではない。夢斗が限界を迎えるカウントダウンは秒読み段階に入っていた。
「夢斗君は今どこに……」
黄色いFDに乗って首都高に入った蓮。現在地は湾岸線。流し始めて30分は経ったが夢斗達の姿を見ていない。
(無事に帰ってきて……みんな)
「……さて。そろそろ行こうじゃないか」
「スピードの化身を超える車を見てみたいっていうオレのワガママに付き合わせてしまってすまないナ」
「僕ももう一度だけ……Zをこの目で見たいので。断る理由がないですヨ」
「くくく……。今夜みたいな夜はもう来ないだろうさ。だからこそオレは首都高へ行きたい」
(Z……)
ボボボォォォオオオオオオオ
蒼いZが動き出す。
時代を越える車を同じ名の車で追いかける。特別な存在だったあの
「もう一度……あの最高速ステージへ」
自身の唯一の武器が通用しないという最悪の状況で必死の抵抗をする夢斗。夢斗は危険なレベルまで踏み込んでしまっていた……。
そして悪魔のZを探す人物達の正体と目的は……。
今回はネタありませんが、ちょくちょく以前の話が入ってます。見返すのもありかも?
次回、絶望の中で夢斗は……!?
咲耶と貴音のバトルも決着が迫る。バトルの勝者は!?
そして……首都高にあの男が戻ってくる。「相棒」は彼に応えるのか!?