アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
そして、エボは進化する!!
友也のスープラが咲耶のエボⅨを追う。友也のスープラは約570馬力。一方で咲耶のエボⅨは最大460馬力。スープラの2JZ-GTEの前には4G63のパワーでは分が悪い。事実、スープラはジリジリとエボⅨに近づいている。
「……どうだ」
友也はエボⅨの真後ろに着く。
扇島付近。ここからは本物のパワーが要求される超高速エリア。
「……っ!」
エボⅨの前に出ようとする友也のスープラだが、一般車が多く中々前に出られない。もし抜くタイミングをミスすれば一般車を巻き込みかねない。それでもエボⅨには食らいついていた。
「やるね……。でも、まだまだこれからさ」
ブーストコントローラーを操作し、ブースト圧を上げる咲耶。コントローラーを操作する音が車内に響く。
モニターには1.4と表示される。これがエボⅨの最大ブースト圧である1.4kgだ。
それに応じてエボⅨは速度を上げる。逃げにかかったのだ。
「面白い!」
友也も追い上げて行く。その後ろには工藤のR33もいた。
「おいおい、友也。置いていくなよ」
「悪い悪い、楽しくて」
やっとの事で追いついた夢斗達。浩一は頑張ってアクセルを踏んできた。
「長谷川さん達が速すぎるって!……あれ夢斗は?」
夢斗のエボⅩは浩一の少し先にいた。だが、少しずつだが浩一から離れていく。
「ゆ、夢斗?」
「悪い、俺も行ってくる」
「ちょ!?」
そう言うと夢斗のエボⅩは浩一のFDを置いていく。
「夢斗〜!置いていくなよ〜!」
横羽線を抜けC1エリア内回りに到着。
咲耶は今まで何とか持ちこたえていた。友也のスープラを抑えるのに必死だった。それも超高速エリアで。しかし、C1に入ったらこちらの物だ。
「悪いけど……ここでやる」
浜崎橋から銀座区間へ。
コンクリートに囲まれて圧迫感を感じる。そこをハイスピードで走る。
タイトなS字が続く。コーナリングマシンのエボⅨが颯爽と抜けていく。
友也のスープラはここで若干遅れをとる。
「重いスープラでは……」
トンネルを抜けた後に待ち受けるのは3つの橋脚が待ち受けるC1エリアの難所地帯だ。この橋脚に吸い込まれるように刺さり、愛車を犠牲にする走り屋は多い。
エボⅨがコーナーイン。まず3台は橋脚を避ける。この危険地帯で果敢に攻める友也のスープラ。1つ目の橋脚を抜けるとエボⅨの真横に並ぶ。さすがは走り込んだ時間が長いだけある。
2つ目。これもクリア。だが、工藤のRが失速してしまう。
「やべ、ガスケットやったか……」
ガスケットをヤってしまい、R33は引き下がる。
残ったのは咲耶のエボⅨと友也のスープラの2台。
「うっしゃあ!どうだ!」
サイドバイサイドのまま、最後の橋脚へ。その直前には、ジャンプスポットがある。これでコントロール不能になり壁に吸い込まれるのはよくある事だ。
2台は一瞬浮く。その直後に着地の衝撃が車内に伝わる。
2台は最後の橋脚もクリア。アクセル全開で江戸橋分岐前の区間を走る。
「行けっ」
直後の急なコーナーを目前にして友也はブレーキングを一瞬遅らせ、エボⅨの前に出る。
そこから細かいスピードコントロールをして神田橋方面に向かう。形勢が逆転していた。
しかし、咲耶も黙っていない。スープラの後ろに着きプレッシャーをかけていく。
神田橋周辺のコーナーは緩やかだ。しかし、路面が荒れているのもあってステアリングが取られやすい。気を抜いた瞬間にコントロールを失うのも不思議な事ではない。
「タイヤがきついか……っ」
友也のスープラはタイヤの消耗に苦しんでいた。その大パワーがタイヤを追い詰めていた。
コーナーを抜けた2台の眼前には千代田トンネルが見えてきた。
「……!!」
一瞬だが、スープラがスライドした。咲耶はこれを見逃さない。
ブレーキングを始めるスープラ。真後ろにいたエボⅨがラインを変える。エボⅨがインを刺したのだ。
「ここでか!」
友也は横に並ぶエボⅨを見る。自身が外側にいるためにアクセルを踏めない。エボⅨが再び前に出る。
「まだ……っ、あっ!」
友也がアクセルを踏んだ瞬間、リアタイヤが流れ出す。ハーフスピンに入ったスープラを何とか止めたが、エボⅨには完全に離された。
「らしくねぇミスだな……」
友也のコンセントレーションは完全に消える。
後ろから眩しい光が飛び込み、思わず友也は目を細める。後ろから聞こえてくる少し高めのエンジンサウンド。
銀色のボディがスープラのヘッドライトの光を跳ね返す。
「な……無茶だ!」
夢斗のエボⅩが友也のスープラを追い越してエボⅨを追う。
「君はココを初めて走るんだろう!?」
「そーっすけど。でもちょっとやってみたいっす」
電話越しに聞こえる声は、なんとも呑気な声だ。
「首都高の怖さを知らないのか……!?」
友也は夢斗の思考回路がどうなっているかを知りたいと思った。恐らくこの考えは友也だけではなく、夢斗を見た人全員が思うことだろう。
そんな友也を置いていく夢斗のエボⅩ。前を走るエボⅨを追いかけていく。
「……?」
咲耶は後ろに見えるエボⅩに違和感を感じていた。エボⅩのその動きは首都高初心者その物。しかし、時折見せる動きは只者ではない研ぎ澄まされた動き。このギャップに違和感を感じていたのだった。
自分を追いかけてきている以上、引き下がるのも後味悪い。
「やらせてもらうよ……」
エボⅨを加速させる咲耶。それに追従する後ろのエボⅩ。
C1の路面をもろともせずに走る咲耶のエボⅨだが、後ろのエボⅩも負けていない。パワーは咲耶のエボⅨが上。だが、その差が帳消しになるコーナリングスピードでエボⅩは詰めてくるのだ。
「……!?なんだこの車!?」
思わず咲耶は焦りを見せる。着実に差が詰められているーーー。
「あのコーナリングスピードはなんだ……!?」
友也が夢斗のエボⅩを見て呟く。見た目はほぼノーマルのエボⅩがエボⅨに近づいていくその姿は奇妙な絵面だ。GTウイングを付けているエボⅨにノーマルのリアスポイラーのエボⅩが近づいている。ダウンフォースがまるで違うのに何故。
しかし、友也は夢斗のエボⅩに一つの弱点を見た。
「あの足回り……。少しのミス一つで一気に足をすくわれるセッティングか……!」
ジムカーナのテストの時に見せたあの極端な足の硬さだ。夢斗の反応速度に合わせる為の物だと友也は推測した。しかし、あの硬さは小さなミスも許容しない。ミスした途端にコントロールを失うようなピーキーなセッティングだったのである。
「頼む……ムリするな!」
「離れないっ」
咲耶のエボⅨは追い詰められていた。なんだアレは。咲耶はプレッシャーに追い詰められていく。
「あんな車……見たことがないっ」
「行けるっ」
夢斗はエボⅩを限界までプッシュしていく。友也が言うようにノーマルのリアスポイラーのエボⅩでここまで咲耶を追い詰めていたのは夢斗のそのコーナリング技術にあった。しかしエボⅩの足はミスが許されないあまりにもリスクが大きいセッティング。反比例するその組み合わせでここまで走れていたのがおかしい事だ。でも、夢斗はソレが関係ないというように走る。
「行けーーーっ」
2台は新環状右回りに入る。相変わらずエボⅩは離れない。咲耶は集中力が切れかかっていた。
「うっ……!」
焦りからくる小さなミスが咲耶自身を追い込んでいた。このままだと破錠しかねない。
大井Uターンに入る2台。夢斗のエボⅩが咲耶のエボⅨを追い抜こうとする。
ところが……。
「やべえ!?」
無理に追い抜こうとした結果、坂道の頂点の見通しが悪くコーナーの先が見えない。これに驚いた夢斗は反射的に回避行動を取る。しかしこれが元でエボⅩのバランスは崩れスピンしかける。
「やっべーーーっ!」
辛うじてクラッシュは避けたが、エボⅨが続く。
「危ないっ」
「……っ!?」
咲耶はステアリングを切り、バランスが崩れたエボⅩをぎりぎりで回避する。
「えー!?」
「フツーはぶつかるよ今のっ!?」
夢斗は驚きを隠せない。完全に俺が負けた。
「いや、すげえわ。これが首都高のバトルか……」
大井パーキングエリアに来た夢斗達。エボⅨから降りてきた人物に驚く。
「女の子!?」
まず浩一が驚く。
「すごいな……」
友也が驚きを漏らす。あれ程の腕を持つ上に美人。
「スゲーな、アンタは」
夢斗がタメ口で接する。
「おい夢斗、人を置いていってこれは許さんぞ」
浩一が静かにキレる。
「すみませんね、このバカが迷惑かけて」
「私は平気さ。私の名前は白瀬咲耶」
「俺は津上浩一って言います」
「俺は長谷川友也って者です」
友也が敬語になっている。
「俺、星名夢斗。咲耶、あの技術俺に教えてくれ!」
「夢斗……!」
浩一が夢斗をひっぱたく。
「いってー!何すんだ!」
「初対面の人、しかも女の子にそんな口の聞き方があるかっ!」
「私は構わないよ。むしろ私も君の技術に興味があるものでね」
「えええ!?」
「結果はああだったけど、勝負としては私の負けだ。あの技術はどうやって得たんだい?」
「咲耶さん、こいつに聞いてもダメっすよ。まず言ってる事わからないんで」
「そーだな。グッて踏んでギャって曲げる!車が吹っ飛ばないようにドンって抑えればOK!」
「わかるかっ!」
「なるほど……」
「わかってる!?」
「何となくわかるさ。君の走り方を見ればわかるんだ……」
「咲耶さんもすげーっす」
「そうかい?普通だと思うけど」
「あ……」
浩一は察した。咲耶も夢斗と同じだと。
「やべえ……ついていけない。バトル的にも会話的にも」
「……だな」
友也もそう思うしかなかった。
この後それぞれのルートを通って家に帰る。
数日後。
部の集まりがあった。ジムカーナのメンバーの話し合いのためだ。だが、約1名いない。
「夢斗……どこいった?」
「今日学校来てたか?」
「いえ……見てないっす」
夢斗が
「電話も繋がらないし……」
「事故とかじゃないよな」
友也が心配する。結局、話し合いは夢斗抜きで進められた。
その夜、浩一は再び首都高にいた。夢斗ならここにいてもおかしくないと思ったのだ。
「アイツ……本当に人を振り回すヤツだな」
ここを初めて走った時はまともにアクセルを踏めなかった。慣れろ、と念じながらアクセルを踏む。
「アレは夢斗……か?」
銀色のエボⅩが見える。しかしシルエットが全く違う。
とはいえエボⅩのナンバープレート番号は紛れもなく夢斗のエボⅩの番号だ。
「あいつはナニやってた……!」
キレ気味でFDをエボⅩの横に着ける。エボⅩを運転するソイツの顔は忘れるわけない夢斗の顔。しかしリアフェンダーには「WORKS-R」と謎のステッカーが。
「なんだコレ……?」
するとエボⅩが急加速。FDを一瞬にして置いていく。
「!?」
加速が別物になったエボⅩを呆気に取られて見る浩一。
「待てコラ」
浩一も負けずにFDを加速させるが、エボⅩには追いつけない。
「このヤロ……。遊ぶってか!?」
エボⅩとFDは新環状を走り抜ける。しかしエボⅩはこの間とは見違えるような速さだ。
「コーナーを一つ抜けると差が広がるっ!」
大小関係なくコーナーを抜けると確実に差が広がっていた。
エボⅩのコーナリングフォースがGTウイング装着で高められているにしてはあまりにも効果が大きすぎるのだ。ウイングだけではあんなコーナリングスピードは出るわけない。
「エアロが変わってるけど……それだけではムリのはず」
なら何故。バケモノじみたスピードで曲がれるんだ。浩一がわかった限りで付いているのはリアディフューザーとGTウイングだけ。ただし、見えているのは「リア」だけだ。
「……ディフューザー?」
何故エボⅩにディフューザーを……?
「浩一……お前のFDではムリだぜ。この新生エボⅩについてこれたら褒めてやるけどな」
散々人を振り回しといてこんな事を言う夢斗。
この数日間、あの時の走りで「足りなかった」物をエボⅩに加えていたのだ。ちょっと遠くにも行って作ってもらった物もある。
高揚感を感じるエキゾーストノートを聞きながら、アクセルを踏む。もっと踏みたい。
「この音イイぜ……」
ワンオフで作ってもらったマフラーの奏でるハイトーンのエキゾーストノートは夢斗のテンションを高めていく。
「あの時は『確実に』踏めなかった……。でも」
「今のエボは『確実に』踏めるっ!」
4速にシフトアップ。ブローオフバルブが抜けるカン高い音が響く。
超高速でコーナーを抜けていくエボⅩを見るしかない浩一。追いつけないと判断したのだ。
「お前……エボをいじってたのか」
「くっそー、アイツはそういう事はしっかりするヤツだもんな」
夢斗の努力を認めるしかない。
ちなみに翌日夢斗は当然だが友也に怒られた。
「だが反省しない」と夢斗はやっぱり言う。
「あの技術は私が持てる物じゃない……」
咲耶は夢斗の技術に注目する。が、それは自分の手には出来ないと感じた。
「あの時の車のように……絶対的な速さが欲しいっ」
1年前、手も足も出ずに完敗した蒼い車。あの車の前を走りたい。その為の技術が欲しい。
「いつか前を走るさ。今度は勝つよ」
夢斗と咲耶、2人の天才が会う。エボを駆る者同士が会った時、物語は大きく動き出す……。
夢斗と咲耶、2人の天才の初バトル。
夢斗は負けましたが、実力者咲耶を追い詰めた。
そしてエボⅩは首都高を「走る」為のマシンに進化!
ネタ解説です。今回ほぼネタないけど……。
・夢斗のミス
咲耶を追い詰めた夢斗ですがラストはコントロールを失い、クラッシュしかけてます。これは「湾岸ミッドナイトC1ランナー」でノブと荻島の初バトルが元になってます。ノブは荻島に追い詰められて最後はハーフスピンしています。
首都高での初バトルで夢斗は何を見つけたのか?
そして夢斗のエボⅩは何があったのか?
物語は「伝説」を追いかけた者達を巻き込んでいく。
首都高に情熱を燃やす者達の物語は加速する!